東京を拠点としたフリーランスでありながら、週3日は神戸市の職員として働く大橋さん。新しい働き方を実践し、感じていることとは。
※下記はジチタイワークス公務員特別号(2021年3月末発行)から抜粋し、インタビューの内容やプロフィールは原稿作成時(同年2月中旬)のものです。
兵庫県神戸市
市長室 広報戦略部 広報課
PRプランナー
大橋 秀平 さん
おおはし しゅうへい:大学卒業後、アパレルブランドを展開する「ラルフローレン株式会社」でメディアPRを担当。その後、広報コンサルティング等を行う「株式会社アクティオ」、デジタルマーケティング企業「AnyMind Group」へと転職し、PRや広報等に携わる。2019年に、神戸市の嘱託職員として市長室広報戦略部広報課のPRプランナーに就任。東京と神戸を行き来するダブルワークを実践しながら、メディア対応や各事業のPR、講習などに従事している。2021年春には、茅葺(かやぶき)文化を守るためのNPO法人を設立予定。2021年3月末、神戸市での任期を終了。
公務員×フリーランス。未経験の世界には多くの学びがあった。
Q.官と民、二つの仕事をすることになった経緯とは。
これまで海外ブランドの日本法人やPR代理店、ベンチャー企業の広報担当として働いてきました。スキルアップのため転職を考えていたときに見つけたのが、神戸市役所のPRプランナーの求人。以前から公務員の仕事には興味がありましたし、“週3日のみの出勤で東京在住でも可、それ以外は自由に働いてOK”という内容にも惹かれました。
実は、同時期に別の企業からも内定をもらっていたのですが、「これから先、公務員として働く機会はないかもしれない」と思い、飛び込むことに決めました。
Q.具体的には、どのような働き方をしているのですか。
週3日は公務員として、それ以外はフリーランスとして仕事をしています。以前は、東京から神戸へ通っていたのですが、コロナが発生してからは、ほぼリモートワークです。
役所での仕事は、大きく分けると3項目。在京メディア(テレビ局やインターネットメディアなど)とのコンタクト、役所の広報案件への対応や相談業務、PRに関する職員研修です。一方、フリーランスとしては、個人で契約した企業の広報業務を受託して取り組んでいます。こちらは東京や群馬、兵庫など、地域を限定せずに活動しています。
PR業務自体は、役所でも企業でも大きな違いはありません。ただ、PRを行うジャンルの広さは“公務ならでは”だと感じています。観光や農作物などはもちろん、子育て支援や福祉、建築、土木……など、役所内にある全ての部署が何らかのPRを必要としている。多くの部署から様々な相談が舞い込む中、市民に対し“いかに分かりやすく取りこぼしがないよう伝えていくのか”を考え、実行する毎日です。
その中で感じたことは、「公務員が当たり前だと考えていることの中には、市民にとって当たり前ではないこともある」ということ。例えば、市役所では行政特有の“お役所言葉”がよく使われますが、市民には分かりづらいケースも多い。私が仕事をするときには、これらを日頃使う言葉に言い換えるようにし、“伝わりやすさ”を心がけています。
また、職員向けの研修で「誰に向けてプレスリリースを書きますか?」という私の問いに対し、「上司に向けて」と答えた方がいました。実際に、ほとんどのプレスリリースが報告書のようになっていたことに驚きましたね。ずっとその方法が引き継がれ、指摘する人も正す機会もなかったのかなと。“誰に届けるのか”というPRの基本は大事にしてほしいですね。
Q.公務員を経験して良かったことは何ですか。
公務員として働く経験は、今後、仕事をしていく上で役立つものになったと感じています。幅広い分野のPRに同時に取り組むという機会は、企業ではなかなか経験できないことですね。
また、公務を通して、茅葺職人がいる神戸市の企業と出会ったのですが、これをきっかけに、茅葺技術を守るNPO法人をつくることになりました。新たな縁が得られたのは、とてもありがたいことだと感じています。他にも、リモートワークの機会が増えたことで、“距離が遠くても仕事ができる”という自信を持てたこと。これなら日本だけではなく、海外とも仕事ができるなと、ワクワクしています。
任期終了後は、新しい仕事を開拓しながら、神戸市の地域活性にも協力していきたいと思います。