ジチタイワークス

熊本県南小国町

【安部 千尋さん】公務員、転職する。

港区役所、一般社団法人でのキャリアを携え、移住したのは人口4,000人ほどの熊本・南小国町。“手触り感”のある地域での取り組みとは。

※下記はジチタイワークス公務員特別号(2021年3月末発行)から抜粋し、インタビューの内容やプロフィールは原稿作成時(同年2月中旬)のものです。

株式会社SMO南小国
未来づくり事業部 部長
安部 千尋 さん

あべ ちひろ:2011年、東京都港区に入庁。総務部人事課では採用や障害者インターンシップ事業等に携わり、産休・育休を取得後復帰。2016年に麻布地区総合支所区民課へ異動。2017年に退職し、災害の復興支援や地域での人材支援などを行う「一般社団法人RCF」へ転職。岩手県と首都圏企業のCSR・CSV※創出事業やNPO法人新公益連盟事務局を担当。2019年4月に熊本県阿蘇郡南小国町に移住し、「株式会社SMO南小国」に入社。起業・新規事業創出、コワーキングスペース運営といったローカルベンチャー事業や商品開発などに携わっている。

※CSR=Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)
※CSV=Creating Shared Value(共通価値の創造)


自分のしていることを実感できる楽しさは、小さな町だからこそ。

Q.在庁中に興味があった分野を深めるため、転職されたとか。

人事課在籍時に、障害者インターンシップ事業を担当していて、行政が取り組む上でこの事業にどのような効果があるのか、経済性以外の部分でどう評価されるのかということに興味を持って調べていたんです。すると当時、活動による社会的インパクトや社会的価値を評価するSROI※やSIB※という考え方が日本でも起こり始めていて。産休・育休を経て今後の働き方を考えたとき、「やりたいことをやろう!」と思い、SROIやSIBを事業として実践していた団体へ転職。そこで働いていたとき、たまたま縁を持った南小国町の方々との出会いが大きな転機になりました。

※SROI=Social Return On Investment(社会投資収益率)
※SIB=Social Impact Bond(社会貢献型投資)

Q.南小国町のどんなところに、移住する魅力を感じましたか。

夫の実家が隣県だったこともあり、帰省時に南小国へ行ってみたんです。自然豊かで林業や農業が盛ん。温泉も湧いているので観光業も整っており、熊本市や福岡、大分からも2時間以内で行けるので、東京からのアクセスも悪くない。何より、やる気のある方がとても多く、町全体のポテンシャルが高いことも魅力的でした。実際に役場の職員の方から話を聞いてみると、これまで様々な事業をしてきたが単発で終わっていることに悩んでいる、と。そこで「これまで町の事業に関わった人たちを集めて、今の南小国の情報を伝え、また訪れてもらうという“関係性の紡ぎなおし”のようなイベントをやりませんか」と提案したんです。すると職員の方から二つ返事で「いいですね!町長も参加します!」と(笑)。平成30年12月に東京で開催し、50名ほどが集まってくれました。

そのときにも「この自治体、すごいな」と感じ、私も南小国の方々ともっと一緒に何かをしたいと思って、実際に住むにはどうしたらいいのかなと具体的に考え始めました。ちょうど様々な要因がうまく重なって、翌年には家族で移住。それから間もなく、96%を同町が出資しているまちづくり会社「SMO南小国」で働き始めました。現在は、町内での起業や新規事業創出の推進、外部の方に訪れてもらうためのプログラムの実施や商品開発、ワーキングバケーション、クラウドファンディングの活用事業などを行っています。

行政とのやりとりも多いので、書類の書き方や進め方など公務員時代に身につけたスキルが活かされていますね。それと同時に、区役所では人材育成の制度が充実していたことを実感しました。小規模自治体では、研修や昇任制度といった職員のスキルアップの機会が少ないんです。その結果、根本的な能力は変わらないのに、自治体独自の施策を生み出すチャンスが制限されているのかもしれない。そんなケースに直面したこともあり、今後一緒にやっていく中で、職員のスキルを上げるような機会をつくれたらと考えています。

Q.港区とは人口規模が異なる自治体でのやりがいとは。

いわゆる小規模自治体の南小国へ来てすごく感じるのは、地域の皆さんの顔や経済の流れが分かっている中で、自分のしたことがどんな影響を及ぼすのかが良くも悪くも見えること。住民の方が「これを解決してほしい」ということを一緒に考えて、実際に行ってみてどうだったか、最後まで見届けられるダイナミックさがあります。

東京では自分が何かをしても、何かが変わるとは思えないことが多かった。でもこっちでは「何かしたら絶対に何かが変わる」という確信、“手触り感”を持ちながら多様なことに取り組んでいけるのが、すごく面白いですね。

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