ジチタイワークス

千葉県習志野市

~きみに負担は残さない~ 官民連携手法を用いた公共施設再編再配置事業  「大久保地区公共施設再生事業」

取組概要

全国的にも老朽化が進んでいる本市の公共施設の老朽化対策として、平成26年3月に策定した「公共施設再生計画」のモデル事業として実施。

京成大久保駅周辺1km圏内にある4つの施設(屋敷公民館、藤崎図書館、あづまこども会館、生涯学習地区センターゆうゆう館)と、同駅前に立地する3つの同種施設(大久保公民館・市民会館、大久保図書館、勤労会館)の機能を統合し、市民の利便性向上や、施設の老朽化対策、財政負担の軽減、周辺地域の活性化といった観点から、官民連携手法(PFI手法等)を導入し、同駅に隣接する中央公園と一体的に、新たな生涯学習施設を再生整備する。

取組期間

平成25年度 ~(継続中)

※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2020」の応募事例から作成しており、本記事の内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。

背景・目的

【背景】
習志野市では、全国的にも早い段階の平成18年度ごろから、持続可能な行財政運営を進めるための大きな課題として公共施設の老朽化問題に着目し、その対策について検討を進めてきた。

平成21年3月には、公共施設の老朽化の実態を、ハード情報だけでなくコスト情報を含め見える化した資料として「公共施設マネジメント白書」を作成、公表し、そのデータを基に、平成24年5月には、「総量圧縮」、「長寿命化」、「財源確保」を3本柱とする「公共施設再生計画基本方針」を決定した。

その後、平成26年3月には、市が保有する123施設の老朽化対策の事業計画を明らかにした「公共施設再生計画」を策定し、持続可能な行財政運営の下で、将来世代に過度な負担を先送りしないことを理念として老朽化対策を進めている。

「大久保地区公共施設再生事業」は、「公共施設再生計画」のモデル事業として位置づけており、「公共施設再生計画」の検討段階の平成25年度から、同時並行で検討を進めてきた。

【目的】
本事業は、「持続可能な文教住宅都市の実現のために生涯学習の拠点機能を拡充するとともに、地域の活性化を図ること」を基本理念としており、この基本理念の下で、
1.将来世代に過度な負担をさせることなく、時代の変化に対応した公共サービスを継続的に提供する。
2.多世代が交流し、地域コミュニティが活性化する場をつくる。
3.市民協働・官民連携で賑わいを創出する。  の3点を事業の目的としている。

取組の具体的内容

・本事業は、事業目的を達成するために、
1.    対象施設の機能を集約し、すべての習志野市民のための生涯学習の拠点を整備する。
2.    民間活力を導入することで、維持管理・運営コストを削減するとともに多様なサービスを提供する。
3.    躯体活用型建替(リノベーション)や官民連携により、初期費用を抑制する。
の3点を目標に掲げ事業を推進した。

・具体的には、京成大久保駅周辺1km圏内にある4つの施設(公民館、図書館、児童館等)と、同駅前に立地する3つの同種の施設の機能を統合し、PFI事業により、同駅に隣接する中央公園内に2つの新たな生涯学習施設を再生整備することとした。

・事業の実施にあたっては、対象施設が複数の所管課にわたることから、関係各課による検討会議を設置するとともに、施設の統廃合を伴うことから、市民との合意形成に配慮した。

・また、施設の複合化、建替えと リノベーションの同時実施、民間収益事業など、事業スキームが複雑になることから事業計画の立案段階から、民間事業者との対話を重視したスケジュールとした。

・本事業は、本市初めてのPFI事業であり、施設の再生整備を行うとともに、維持管理業務及び運営業務を一体的に実施し、事業期間は、平成29(2017)年3月から令和21(2039)年8月までの約22年間、民間事業者との契約金額は、7,235,892,000円(税込)。

・この他、敷地内の市有地を定期借地権により貸し出し、民間事業者によりPFI事業と一体となった民間付帯事業を実施する。

・現在は、令和元年11月に、北館、南館が、公園、駐車場等を含め「プラッツ習志野」としてプレオープンし、本年7月には、北館別館のリノベーションが完了している状況である。

・今後は、旧大久保公民館・市民会館の解体撤去と、当該敷地の定期借地により民間施設が建設予定であり、令和3年末には、フルオープンの予定である。

特徴(独自性・新規性・工夫した点)

・市域全体を対象として実施する「公共施設再生計画」において、市内を5つのエリア(人口3万人規模)に分けて公共施設の再編再配置を計画する中で、当該地域を生涯学習の拠点施設を配置するエリアマネジメントを導入し、同種の複数施設をその機能を維持し総量圧縮を行いつつ再編再配置し、一体的に再生整備する。(8施設【7建物】の機能を保ちながら、3建物に統廃合し集約する。)

・コスト削減と既存建物の有効活用の観点から、新築とリノベーションをあわせて実施。

・民間活力の導入によるコスト削減、サービス向上を目指し、施設の整備及び維持管理運営にPFI手法を導入。

・公有資産の有効活用のため、敷地内に定期借地権を設定し民間の提案による事業を実施。

・「公共施設等適正管理推進事業債」を活用し、財政負担の軽減を図る。

・地元企業の参画を促すため、「公共施設再生地域プラットフォーム」を設置、開催。

取組の効果・費用

【効果】
1.    市民サービスの充実
・耐震性能の確保による安全性確保、バリアフリー対策などのハード面のみならず、開館日・開館時間の拡充、図書館の蔵書数の増加、閲覧スペースの拡充や、新たな事業として、フューチャセンターやプレイパークの設置などソフト面の充実強化を図っている。
・また、市民要望が強かったカフェを民間事業として導入する。

2.    事業コストの削減
・事業契約後のVFM(バリュー・フォー・マネー)は、2.7%、約2.3億円の削減効果。

3.    総量圧縮の実現と財政負担の軽減
・既存施設の統廃合により、機能を維持強化しつつ、床面積を223㎡削減。
・公共施設等適正管理推進事業債の導入による財政負担の軽減。
(約33億1,300万円の公共施設等適正管理推進事業債を発行することにより、元利償還金の50%が交付税措置される。)

4.    まちづくりへの効果
・生涯学習施設整備事業と民間付帯事業(カフェ及び若者向け賃貸住宅)を一体的に実施することにより、多世代が交流する賑わいの場の創出と、定住人口の増加が期待できる。

【事業期間、事業費総額】
事業期間:平成29(2017)年3月から令和21(2039)年8月まで
事業費総額:7,235,892,000円(税込)

取組を進めていく中での課題・問題点(苦労した点)

・施設の統廃合を伴う事業であることから、利用者、地域住民などのステークホルダーの理解を得ることが難しく、合意形成の取組みに労力が必要であった。

・対象施設が複数の所管にわたることから、事業計画の調整・検討に時間を要するとともに、事業の実施段階になった段階で、新たな要望が多発しその調整に手間取った。

・事業スキームが複雑であったことから、事業の初期段階から民間事業者との対話を繰り返し、事業の実現可能性を探り、対話等への参加者も多く、複数グループからの提案を期待したが、実際の事業者選定段階では、最終的に1グループのみと提案となってしまった。

・事業実施段階においては、要求水準書など解釈等、市と民間事業者との認識の相違があり、その調整に時間を要するとともに、市民、利用者からも様々な要望があり、それらへの対応に苦慮することが多い。
 

今後の予定・構想

・「大久保地区公共施設再生事業」は、民間付帯事業(定期借地部分)を含め、施設整備は令和3年度中には完了する予定だが、その後、令和21(2039)年度までは、維持管理・運営が継続することから、施設所管課と連携し、適切なモニタリングを実施しつつ、本市の生涯学習の拠点施設としての役割を果たし続けられるよう努力していく。

・「大久保地区公共施設再生事業」は、本市の公共施設(建築物)の老朽化対策に関する個別施設計画である「公共施設再生計画」のモデル事業であり、今後は、事業の取組みに関する多角的な評価を行い、その結果を踏まえつつ、「公共施設再生計画」の他の事業の実施、計画の見直し等を実施していく。

・今般の新型コロナウイルスへの対応により、本市を含めた地方公共団体の財政状況は更に厳しい財政状況である。また、新しい生活様式に対応した公共施設のあり方の検討も必要である。したがって、本事業の成果、反省等を踏まえつつ更なる公共施設の再生に向けた計画と実践に取り組んでいく。

他団体へのアドバイス

・現在、全国の市町村では、総務省からの要請に基づき、公共施設の老朽化対策のための個別施設計画を策定しているが、本市の経験では、計画策定段階よりも、個別事業の実施段階では、より困難な状況が発生するこが分かっている。したがって、早期に実行段階に移行し、実装段階での経験を踏まえた個別施設計画の柔軟な見直しを行うことが重要と考える。

・今後の行政運営において官民連携手法の導入は不可欠ではあるが、民間事業者と連携して公共サービスの提供を行うことは、行政と民間が、十分にお互いを理解し立場を尊重しながら事業を実施していくことが必要だ。行政の課題解決を一方的に民間事業者に任せるのではなく、庁内での意識を統一し、お互いの特徴を理解し合いながら、明確な契約に基づき、適切なリスク分担を行いつつ事業を推進することが大切だ。

取組について記載したホームページ

http://www.city.narashino.lg.jp/joho/matidukurisanka/koukyou_saisei/project/index.html

問い合わせ先

千葉県 習志野市(ならしのし) 資産管理課
047-453-9308

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