
掃除・洗濯・調理などの家事代行サービス
少子化対策には、子育て世帯の負担を軽くする環境づくりがカギとなる。丸森町では、未就学児を養育する世帯に5万円分のクーポンを発行。家事代行サービスの利用を促し、親の負担軽減につなげているという。
※下記はジチタイワークスVol.39(2025年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[PR]株式会社ダスキン
丸森町
子育て定住推進課
精神保健福祉士
鈴木 敦子(すずき あつこ)さん
家事に追われる親のために頼れる仕組みをつくりたい。
出生数が年々減少する同町では、安心して出産・子育てができる環境整備に取り組んでいる。そうした中で見えてきたのが、行政や周囲の人を頼れず、日常生活で負担を抱え込む子育て世帯が多いという現状だ。「核家族化が進み、週末にまとめて家事をする共働きの家庭が増えています。そんな家庭に、子どもとゆっくり向き合い、ほっと一息つく時間をつくってほしい、気分をリフレッシュしてほしいと思いました」と、子育て定住推進課の鈴木さんは語る。
解決策として着目したのが、家事や育児の支援サービスだ。国の交付金を活用し、子育て世帯を訪問する制度もあるが、要支援家庭を主な対象としたものが多い。「対象者が限られる上、“誰かに手伝ってもらうと要支援家庭と見られるのでは”と、利用をためらう世帯が多いことが想像されました」。サービスを受けること自体に慣れていない家庭も多いため、まずは身近に感じてもらおうと、幅広い子育て世帯が気軽に体験できる形を模索。そして「丸森町家事・育児支援サービス利用応援事業」を実施することに。未就学児を養育する世帯を対象に、民間企業が提供する家事代行や子どもの世話のサポートに使える5万円分のクーポンを交付するという内容だ。
広範囲に対応可能な事業者が子育て支援の道を開いてくれた。
事業の実現に向け、まずは登録事業者の選定を開始。最初に立ちはだかったのは、“希望する地域まで来てくれる事業者がいない”という現実だった。「当町は宮城県の最南端にある小さなまちで、中心部を少し離れるとほとんどが山間部です。まちの面積も広く、全域をカバーしてくれる事業者がなかなか見つからず、苦戦しました」。
そうした中で出会ったのが、隣町に店舗を構える「ダスキン」だ。同社は、掃除や調理などの家事代行サービスを時間単位で提供。全国に店舗があり、入社時に身元保証書を交わしたスタッフが家庭を訪問する。「隣町から来て、町内全域をまわってもらえるのは心強いですね。地方にも店舗がある強みを実感しました」。さらに懸念していたのが、“紙のクーポンに対応可能か”という点だった。同町では対象世帯に2,000円券を25枚交付し、事業者が使用済みのクーポンや利用明細を提出する仕組みを考えていた。「クーポンを集めて確認したり端数の計算をしたりと手間がかかるので、対応してくれるか不安でしたが、その点も快諾してくれて本当にありがたかったです」。
加えて同社は、第三者機関による「家事代行サービス認証」も取得済み。なじみある企業としての安心感も、登録の決め手となったそうだ。そのほかにも条件に合った4社が集まり、令和4年8月に同事業をスタートさせた。
“子どもとの時間が増えた”と利用者から喜びの声が届く。
クーポン利用の約8割は掃除が中心だが、調理を依頼する家庭も少なくないという。利用者アンケートでは、“スタッフがフレンドリーで安心できた” “10品以上の料理をつくり置きしてもらえたので、すごく助かった” “お風呂を自分ではできないくらいピカピカにしてもらえた”といった喜びの声が上がっている。「手間が減ったことで気持ちが軽くなり、子どもと関わる時間が増えたという声もあり、本来の目的を達成できたように思います」。また、店舗や同町には近隣自治体からの問い合わせもあり、事業への関心は広がっているようだ。
同町では今後もクーポンの利用を促し、“他人に頼りやすい環境”を整えることで、助けが必要になる前に手を差し伸べられる体制を目指す。「手伝ってもらうことを当たり前に、いわば“丸森町のスタンダード”にしたいですね。自分や周囲の人が子育てで何に困っているのか、何をしてもらえたら助かるのか。そうした小さな視点で考えていくことが、大事だと思っています」と語ってくれた。