
法令や規定を要約し最適な答えを提供する生成AI検索
自治体の職員は人事異動が多く、常に新しい知識の習得を求められる。そんな職員の負担を軽減しようと、生成AIの検索サービスを導入した茨城県。検討の経緯や運用方法、実際の効果などについて話を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.38(2025年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[PR]株式会社アイアクト
左:政策企画部
情報システム課
課長補佐 稲垣 健一(いながき けんいち)さん
右:政策企画部
情報システム課
主事 和賀 智紀(わが ともき)さん
業務初任者の負担を軽減するために実証実験を経て生成AI検索を導入。
数年ごとに異動があるため、業務に関する知識や情報の蓄積に課題を感じる自治体は多いだろう。同県では、こうした状況の打開策として生成AIに着目した。「業務初任者は、法令などルールに関する知識を身に付けるのが大変です。昨今は、技術的な進歩によって、生成AIに知識を学習させることができます。それを活用すれば、職員にかかる負担を軽減できるのではないかと考えました」と和賀さん。従来は、膨大な資料から手当たり次第に情報を探したり、上司に口頭で確認したりしていたため、その改善策を模索していたそうだ。
令和5年度には、導入に向けて複数の生成AI製品の効果検証を行った。財務会計事務や高圧ガスなど業務初任者がつまずきやすい分野を設定し、その分野に関係する職員で約30人のワーキングチームを編成。それぞれのテーマを生成AIに学習させて、職員に使ってもらい、複数製品の検索と回答の精度を比較した。結果、業務改善に役立つ手応えが得られ、生成AIの導入を予算化することに。令和6年春にプロポーザルを行い、「アイアクト」の「コグモエンタープライズ生成AI」を選定。同年8月に導入し、財務会計、高圧ガス、人事労務の分野で利用している。
職員が手順に沿って管理画面を操作しチューニングで回答精度を高められる。
同サービスでは、庁内システムの各所に散在するドキュメントから必要な情報を集約して活用できる。さらに根拠資料検索機能と回答文生成機能が付いているため、職員の質問に対して、法令、国からの通知、業務マニュアルなどから関係する箇所を探し、分かりやすく回答してくれるという。検索結果の画面には、回答の要約文と参照した資料のURLが表示される。「職員は何をするにも根拠が必要なので、すぐに資料を確かめられるのは便利ですね。URLから直接、資料の該当ページへ飛べるため、調べる時間が大幅に減少しました」と稲垣さん。
同県が導入前に比較検討した生成AIサービスの数は2桁以上にのぼる。「製品によって表示の形式や資料の参照方法などに違いがあるので、色々と試してみました」。その中で同サービスを選んだ決め手となったのが、職員が柔軟にチューニングを行えることだったという。「管理画面は情報システム課で操作しています。生成AIの回答が間違っていると感じたら、原課から指摘してもらうようにしています。正しい回答と根拠資料をひも付けることで、精度の高い回答を導き出せるように調整。専門用語を登録して、生成AIに覚えさせる作業も行っています」。管理画面はエンジニアなどの特別な知識をもつ職員に限らず、扱いやすい仕様だという。
育てたAIがみんなの力になり日頃から頼れる心強い存在に。
実際に業務で利用している課からは、“想像よりも使いやすく、回答精度も高い”“根拠資料を出してくれるから答え合わせがしやすい”という声が寄せられている。そうはいっても、回答がいつも正しいわけではない。チューニングに関しては、原課との調整に手間がかかるが、将来を見据えて取り組んでいるという。「AIを育てておけば、みんなが活用できる。何でも知っているベテラン職員のようなものですね」と稲垣さん。異動しないベテラン職員が各課にいれば、これほど心強い存在はないだろう。
自治体職員は常に行政のプロとして見られ、未経験の業務に着任したばかりでも住民や事業者に対応する。「私も初任時には資料探しに時間を費やし、上司と2人がかりで調べたこともありました。生成AIによって職員をサポートできれば、本来注力すべき住民サービスや、施策立案などにもっとエネルギーを割けると期待しています」と和賀さん。知りたい情報を迅速に入手でき、参考となる回答を提示してくれる生成AI。うまく活用すれば業務効率が上がり、より質の高いサービスの提供につながっていくのではないだろうか。
お問い合わせ
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TEL:03-6206-3669
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