DMATは災害発生から48時間以内に活動する医療チーム!被災者を支える6つの災害派遣チームもご紹介
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DMAT(ディーマット)とは大規模災害や多数の傷病者が発生した事故現場での医療行為を担当する医療チームのこと。
新潟中越沖地震や東日本大震災などの大規模災害や、新型コロナウイルスの感染が広がったダイヤモンドプリンセス号などに派遣され、医療活動を行った。
本記事ではDMATの歴史や活動内容、DMAT以外の6つの災害派遣チームや、DMATが出動した過去の事例について詳しく解説する。有事の際にスムーズに連携できるよう、DMATについての理解を深めたい。
【目次】
• DMATとは?
• DMATの活動とは
• DMAT以外の6つの災害派遣チーム
• 過去にDMATが活躍した任務とは
• 合同訓練などを通してDMATとの連携を深めよう
※掲載情報は公開日時点のものです。
DMATとは?
DMATは災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team)の頭文字を取った略称で、大規模災害や多くの傷病者が発生した事故現場での医療行為を担当する医療チームのこと。医師、看護師、業務調整員で構成され、災害発生から48時間以内に活動できるよう専門的な訓練を受けている。
DMATの歴史
日本でDMATの必要性が認識された背景には、平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で初期医療体制の遅れと、災害医療への意識の低さが浮き彫りになったことがある。平時の救急医療レベルの医療が提供されていれば、救命できたと考えられる「避けられた災害死」が500名存在した可能性が後に指摘されている。
アメリカにはすでに組織化されたDMATがあり、災害の多い日本でも必要ではないかと考えられていた。そうした中で、全国に先駆けて平成16年、東京都が都民の生命と財産を守る危機管理の一環として「東京DMAT」を設置。翌年の平成17年には厚生労働省が「日本DMAT」を発足した。
DMATの構成
DMATは基本的に医師1名と看護師2名、業務調整員1名の計4名を1チームとして構成する。
都道府県の要請を受けて派遣され、自衛隊や警察、消防と連携しながら医療活動を行う。令和4年4月時点でDMATの研修を修了した人は全国で15,862名、2,040チームがDMAT指定医療機関に登録済となっている。
DMATの活動とは
DMATの活動として、具体的には以下のようなことが行われる。
DMATの活動内容
「トリアージ」と呼ばれる、重傷度や治療緊急度に応じた傷病者の振り分けに加えて、傷病者の応急処置、重症患者の医療機関への搬送もDMATの役割だ。さらに、現場の病院や避難所、救護所での被災者・被災地支援や、ほかの医療チームなどとの情報共有や連携も行っている。
メンバーそれぞれの役割
DMATチームの医師は医療の提供とメンバーの統括、看護師は診療補助や被災者・負傷者のケアなどを行う。業務調整員は傷病者の情報をカルテに入力する役割を担うほか、DMATチームのメンバーの食事や宿泊先の手配なども行う。
災害現場に派遣されるまでの流れ
大規模災害が発生すると、被災地となった都道府県の自治体から厚生労働省へDMAT派遣要請が出される。その後、速やかにDMAT指定医療機関に通達され、DMAT指定医療機関からDMAT登録者が被災地に派遣される。
DMAT以外の6つの災害派遣チーム
大規模災害発生時には、DMATのほかにも専門の訓練を受けた複数の支援チームが派遣される。ここからは、DMAT以外の6つの災害派遣チームについて解説していく。
被災地医療を中期的に支える「JMAT(ジェーマット)」
JMAT(Japan Medical Association Team:日本医師会災害医療チーム)は、日本医師会によって組織された災害医療チーム。JMAT の最終目標は被災地に地域医療を取り戻すことだ。医師、看護師、事務職員などで構成されたチームが、DMATと入れ替わるように被災地に入り、避難所や救護所での医療支援や健康管理のほか、被災地の医療機関への引き継ぎを担当する。被災地の医師会による「被災地JMAT」と、被災地外の医師会が派遣する「支援JMAT」が協働して、災害発生直後から収束・復旧期に至るまで被災地医療を中期的に支える。
精神医療を支援する「DPAT(ディーパット)」
DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team:災害派遣精神医療チーム)は、災害発生時の精神保健医療ニーズに対応する医療チームだ。精神科医師、看護師、業務調整員のほか、被災地のニーズに合わせて児童精神科医、薬剤師、保健師、精神保健福祉士や公認心理師などでチームが構成される。被災地の精神保健医療の支援や、地域の医療従事者、救急隊員、自治体職員など支援者への専門的支援などを行う。
福祉・心理的支援をする「DWAT(ディーワット)」
DWAT(Disaster Welfare Assistance Team:災害派遣福祉チーム)は、被災者の生活機能の低下や要介護度の重度化などの二次被害を防ぐために、災害時の一般雛所で福祉支援を行う民間のチームのこと。DCAT(Disaster Care Assistance Team:ディーキャット)の名称を用いる場合もある。介護福祉士、介護支援専門員、保育士などの福祉専門職で構成され、避難所にいる高齢者や障害者、子どもなど災害時要配慮者に対して福祉的支援を行う。
災害死や健康二次被害を防ぐ「DHEAT(ディーヒート)」
DHEAT(Disaster Health Emergency Assistance Team:災害時健康危機管理支援チーム)は、災害発生後に健康危機管理・公衆衛生学的支援を行うチームのこと。都道府県・政令指定都市の専門的な研修を受けた医師や薬剤師、保健師などの保健所職員、1チーム5人程度で構成される。
被災した都道府県の保健医療調整本部と、被災地の保健所をサポートするための専門チームで、災害発生時に1週間から数カ月程度活動する。
リハビリで被災者を支援する「JRAT(ジェーラット)」
JRAT(Japan Disaster Rehabilitation Assistance Team:日本災害リハビリテーション支援協会)は、災害発生時にリハビリ医学の視点から支援を行う組織。リハビリ医、理学療法士などの専門職がチームを組み、災害関連死を防ぐための災害リハビリテーション支援を行う。現地の避難所管理者や保健師などと協力して、避難所の被災者を対象に身体・認知機能の低下を防ぐリハビリを実施したり、避難所の生活環境を改善したりといった活動に取り組む。
栄養・食生活を支援する「JDA-DAT(ジェーディーエーダット)」
JDA-DAT(The Japan Dietetic Association-Disaster Assistance Team:日本栄養士会災害支援チーム)は、大規模災害の発生時に栄養支援活動を行うための専門的トレーニングを受けた栄養支援チーム。東日本大震災では食事や栄養の問題が深刻化したことから、日本栄養士会が2011年に設立した。ほかの医療支援チームや行政と連携しながら、災害時の食支援を行う。
過去にDMATが活躍した任務とは
ここからは、過去にDMATが活躍した任務を見ていこう。
平成19年「新潟県中越沖地震」
平成19年7月16日に発生した新潟県中越沖地震では、地震発生から約3時間後に派遣要請を受けてDMATが被災地での医療活動や支援を実施した。日本DMATが発足してから、初めて組織的に活動した事例でもある。
新潟県中越沖地震で甚大な被害に遭った柏崎市の中で、災害拠点病院でもある刈羽郡総合病院を支援する形でDMATが活動。傷病者が集中して混乱した院内で、DMATが中心となりほかの支援チームや院内スタッフとともにトリアージ、傷病者や搬送車両の動線整理、外来治療、ほかの病院への患者の搬送などを行った。
平成23年「東日本大震災」
平成23年3月11日に発生した東日本大震災には、全国から約340隊、約1,500人のDMAT隊員が派遣された。災害発生直後の3月11日から3月22日まで、12日間にわたって医療活動を実施。
被災地域にある病院の支援、ドクターヘリや救急車を使った患者の搬送、被災地域で対応するのが難しい重症患者を被災地の外に搬送して治療を行う広域医療搬送、被災した病院から患者を避難させる病院入院患者の避難搬送など、多岐にわたる医療活動を行った。
令和2年「新型コロナウイルスの感染が拡大したダイヤモンドプリンセス号」
令和2年2月3日に横浜港に入港したダイヤモンドプリンセス号は、新型コロナウイルスの感染が拡大してクラスターが発生した。厚生労働省は2月7日に日本DMATへ派遣要請を行い、2月8日からDMATが船内で活動を開始。
活動初日には1日に60人以上の新規発熱患者が発生しており、乗客の中には高齢者も多かったことから基礎疾患がある人も多く、医師の処方が必要な人が約2,000人、そのうち命に関わる処方が約1,500人分必要な状況になっていた。
ダイヤモンドプリンセス号メディカルセンターや自衛隊が対応を行っていたものの、圧倒的な医療資源不足もあり、必要な医療が届かない事態となっていた。派遣されたDMAT隊員が支援に当たり、乗客乗員への救命医療の提供と、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための活動を行った。合計472人のDMAT隊員が派遣され、2月8日から26日にかけては766件以上の診察、548件以上の往診、432件以上の電話対応を実施。患者搬送に関しては、2月8日から3月1日にかけて合計769 件の患者を病院に搬送した。
合同訓練などを通してDMATとの連携を深めよう
DMATは大規模災害などで通常の医療機関の機能が著しく損なわれるような状況でも、 現地で医療を提供して被災者の命を救うことを目的に派遣される医療チームだ。
DMATの活動は自治体、消防、 警察、 自衛隊などと連携して行うことが多いため、これらの機関との協力体制を強化するための合同訓練も実施されている。有事の際にDMATとスムーズな協力体制が構築できるよう、平時の訓練を通してDMATとの連携を深めておきたい。