ジチタイワークス

生徒が先か、先生が先か。ICT教育をスムーズに進めるにはまず管理職の意識改革と教育から。

校長が変われば学校が、日本の未来が変わる

約40年の教員生活を経て福田 晴一さんが次のステップに選んだのは、プログラミング教育研修の講師だった。令和2年4月より小学校でのプログラミング教育が必修化された現在、校長を対象とした研修に力を入れている福田さんに、管理職への意識改革の必要性と、これからの学校のあるべき姿を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.9(2020年4月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。

プログラミング教育の導入へまずは管理職の意識改革を

小学校の元校長がなぜIT業界の新入社員になり、プログラミング教育研修の講師となったのか。そして、なぜその対象が“校長”なのだろうか。 

「私自身も校長として在職中にプログラミング教育の指導教員研修を受けたのですが、そのとき必要だと感じたのは“校長の理解”でした。研修で教員の意欲が上がり、プログラミング教育を年間計画に組み込むにしても、コスト的な問題がクリアになって教材を購入するにしても、最終的には校長が首を縦に振らないと導入が進まない。小学校へプログラミング教育を導入するには、とにかく校長がその必要性を理解することが不可欠でした」と福田さん。

そんな思いを胸に講師となった福田さんに、チャンスが訪れたのは平成30年12月。小学校だけで160校もある神戸市からプログラミング教育研修の依頼が入った。まずは管理職の意識改革と銘打った校長研修、そして翌年に教員向け研修を行うことを提案。デジタルリテラシーが高くない校長の“アレルギー”を取り除く施策が始まった。

時代の流れに沿った教育でもう一度社会を引っ張る“学校”へ

アレルギー克服のポイントは、校長の立場を考えた研修内容だ。「校長も元々は教員です。まず今の社会情勢を踏まえ、なぜ国がプログラミング教育の導入に至ったのか、その背景をきちんと説明することが大切です。その上で実際に児童に扮しての模擬授業を体験してもらうと、これからは授業や環境の整備が必要であることをスムーズに納得していただけるんです。

新しい形の授業に童心に返ったように取り組み、うちの教員にも研修を受けさせたいと前向きな反応を皆さんからいただきます」。活発なコミュニケーションがもたらす“楽しい体験”と共に、プログラミング教育の重要性をそれぞれが実感すれば、“アレルギー”を払拭することができるようだ。 これを機に、現在では校長へのプログラミング教育研修が全国で実施されている。

福田さんが強調するのは、“テクノロジーだけではダメ”という視点だ。「テクノロジーの発展により、障害者や多国籍などを含めるこれまでの“多様性”の観点にAIやロボットが加わってきました。時代に合った子どもの感性やリテラシーを育むためには、環境の整備だけでなく教員の指導力が不可欠であり、時代の流れに沿った校長の意思決定がさらに重要になってきます」。

家にないテレビやコンピューターが学校にあった昔に比べ、今は社会に揃うインフラが学校にないのが現状だ。プログラミング教育の導入により、再び学校が社会を引っ張る存在になることを期待したい。

福田 晴一さん
NPO法人「みんなのコード」 学校教育支援部主任講師

元杉並区立天沼小学校校長。約40年の教員生活を経て、61歳でIT業界に転職。プログラミング教育の指導者養成主任講師として全国各地で研修を実施。

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