コロナ禍での外出自粛が解除された後、国内旅行者に加えて海外からの旅行者が大幅に増えている。すでに多くの観光客の対応に追われているという地域も多いだろう。しかし、「自分たちの自治体の観光資源が何かが分からない」「観光資源はあるが、活かし方が分からない」という地域もあるのではないだろうか。
この記事では、観光資源とは何かを改めて理解し、集客や地域の盛り上がりにつなげる方法について考えていく。各地域の事例を参考に地域活性化のヒントを探していこう。
【目次】
• 観光資源の定義とは?
• 観光資源は「自然資源」と「人文資源」に分けられる
• 観光資源のランクと代表的な例
• 観光資源の実際の活用事例
• 観光資源を活かし、地域活性化につなげるアイディアとは
• 地元の魅力的な文化や景観にスポットを当て、地域活性化を目指そう
※掲載情報は公開日時点のものです。
観光資源の定義とは?
「観光資源」とは人々の観光需要の対象となるもののことである。ちなみに観光立国推進基本法の第13条では、観光資源について「史跡、名勝、天然記念物等の文化財、歴史的風土、優れた自然の風景地、良好な景観、温泉その他文化、産業等に関するもの」としている。
地域に以前から存在する身近なものが観光資源となり、観光客に注目される場合もある。そのようなものを見つけ出し活用することが、地域活性化につながる可能性もある。
観光資源は「自然資源」と「人文資源」に分けられる
観光資源は性質によって、山・湖・河川などの「自然資源」10種類と、寺社・郷土景観・建造物などの「人文資源」14種類の合計24種類に分けられる。それぞれどんなものがあるのかを見ていこう。
日本が誇る四季の花々、河川や山々など!自然資源
自然資源とされるものと定義を押さえておこう。
低山から鉱山まで、魅力も様々「山岳」
2万5千分の1の地形図に「山岳」として名称があり、観光としての魅力があるもの。
桜島や八ケ岳、白馬三山、穂高岳など各地の名山が挙げられている。
四季の花々が楽しめる「高原、湿原、原野」
2万5千分の1の地形図に名称が記載されている高原や原野、およびこれに類するもの。
サロベツ原野、ポー川史跡自然公園、蒜山高原、花之江河湿原など、自然のままの原野からハイキングコースが整備されている公園までバリエーションがある。
雄大な景色も見どころ「湖沼」
2万5千分の1の地形図に名称が記載されている湖沼およびそれに類するもの。
洞爺湖、オタトマリ沼、十和田湖、桧原湖、猪苗代湖、渡良瀬遊水地など、風光明媚な湖や沼の名前が並ぶ。
舟下りが名物の川も多い「河川、峡谷」
河川風景および一般的に名称が付いている峡谷などで、観光として魅力があるもの。
奥入瀬渓流、久慈渓流、最上川、龍王峡、長瀞岩畳、香嵐渓、大杉谷など、国指定名勝、および天然記念物に指定されている場所も。
マイナスイオンたっぷり!「滝」
2万5千分の1の地形図に滝または諸瀑として名称が記載されており、観光として魅力があるもの。夏は涼しく、秋は紅葉と、四季折々の風情が楽しめる。
袋田の滝、華厳ノ滝、千尋の滝など。
悠久の大自然を感じることができる「海岸、岬」
海岸風景、海中景観で観光として魅力があるもの。
浄土ヶ浜、犬吠埼、親不知・子不知、東尋坊など、国の天然記念物に指定されているものも。悠久の大自然を感じることができるスポットである。
鍾乳洞や断崖絶壁など、バリエーション豊か「岩石、洞窟」
岩柱・洞窟・洞穴・岩門・鍾乳洞・溶岩流・溶岩原・賽の河原・断崖・岸壁・岩礁・海蝕崖・海蝕洞などが対象。
川原毛地獄、フォッサマグナパーク、蘇洞門、屏風岩、鬼岳火山群など各地の魅力的なスポットが取り上げられている。
昆虫や鳥、魚も対象「動物」
日本特有の動物やその生息地が対象。
蕪島のウミネコ、鯛の浦のタイ、瓢湖の白鳥、トキの森公園、奈良のシカ、座間味のクジラなど。
四季を彩る花々は日本の誇り!「植物」
名木・巨樹・老樹・並木・森林・植物帯・植物群落・自生地・限界地などが対象。
阿寒湖のマリモ、山五十川の玉スギ、あしかがフラワーパーク、赤城南面千本桜、千本イチョウなど、四季を彩る花々や巨木の名前が挙がっている。
自然が作り出す不思議な現象!「自然現象」
噴火や泥火山現象などの火山現象、潮流や渦流などの潮流現象、樹氷や流氷などの気象現象で学術的に価値の高いものや観光として魅力があるもの。
オホーツク海沿岸の流氷や諏訪湖の御神渡、鳴門の渦潮、不知火などがピックアップされている。
人によって作り出された人文資源
次に、人文資源とされるものと定義を押さえておこう。
歴史を学べる貴重なスポット「史跡」
城跡を除く、生活・政治・祭・信仰・教育学芸・社会事業・産業土木・外国人などに関する遺跡で観光として魅力があるもの。
吉見百穴、加曽利貝塚、佐渡金銀山、関ケ原古戦場などが挙げられる。
時の流れを感じながら訪れたい「神社、寺院、教会」
由緒ある建築がある社寺、文化財を所蔵または付帯する社寺、境内や庭園が優れている社寺などが対象。
トラピスト修道院、中尊寺、牛久大仏、熱田神宮、猿田彦神社、飛鳥寺、法隆寺など。
貴重な歴史の足跡が刻まれた「城跡、城郭、宮殿」
軍事や行政府などの目的で建造された城跡・城郭・宮殿で観光として魅力があるもの。
五稜郭、小田原城、松本城、名古屋城、首里城など。
文化や歴史を感じる「集落、まち」
農山漁村・歴史的まち並み・繁華街・商店街など、土地の自然や歴史、文化をあらわす特徴的な地域が対象。
奥能登の黒瓦の集落群や小布施のまち並み、白川郷合掌造り集落、水木しげるロード、国際通りなど。
夜景や畑、市場などバリエーション豊か「郷土景観」
生業や風習・産業・風景など、土地の自然環境や歴史、文化をあらわす特徴的な景観で観光として魅力があるもの。
函館山からの夜景、日高のコンブ干し、八食センター、弘前のりんご畑、ストーブ列車、笠間焼、越前陶芸村などバリエーション豊かだ。
市民の憩いの場所「庭園、公園」
鑑賞や散策などのために造られた庭園や公園で、観光として魅力があるもの。
国営ひたち海浜公園、偕楽園、兼六園、大濠公園、仙巌園など。
料亭やホテル、駅や記念館などの「建造物」
建物・橋・塔などの建築物や構築物で観光として魅力があるもの。
太宰治記念館「斜陽館」、青函トンネル記念館、旧料亭金勇、天鏡閣、日立駅、日光金谷ホテル、富岡製糸場など。
地域の魅力が満載「年中行事(祭り、伝統行事)」
社寺や市町村、各種団体が開催日を決め年中行事として行われているもの。
大曲の花火、男鹿のナマハゲ、長岡まつり大花火大会、郡上おどり、阿波おどりなど。
様々な生物や植物のことを学べる「動植物園、水族館」
国内外の動植物を収集・飼育・展示する施設で観光として魅力があるもの。
おたる水族館、アクアワールド茨城県大洗水族館、ぐんまフラワーパーク、富士サファリパーク、日本モンキーセンター、マリンワールド海の中道など。
芸術や学びの宝庫「博物館、美術館」
国内外の歴史的資料や科学的資料や美術作品を収集・保存・展示している施設、歴史的事象などの記録・保存などのために作られた園地が対象。
十和田市現代美術館、JAXA筑波宇宙センター、おもちゃのまち、碓氷峠鉄道文化むら、彫刻の森美術館、福井県立恐竜博物館、ミキモト真珠島など。
思いきり楽しめる「テーマ公園、テーマ施設」
特徴的なテーマを表現し、それを体験するための園地や施設が対象。
江戸ワンダーランド日光江戸村、モビリティリゾートもてぎ、富士急ハイランド、野外民族博物館リトルワールド、ナガシマリゾート、グラバー園、ハウステンボスなど。
世界に誇る日本文化!「温泉」
温泉浴を体験できる施設が対象。
花巻温泉、乳頭温泉郷、蔵王温泉、草津温泉、熱海温泉など全国の有名な温泉がリストアップされている。
健康によいといわれる日本の「食」
日本や地域の自然・歴史・文化をあらわす食事や食文化、食事環境で、観光として魅力があるもの。
ビール園のビールとジンギスカン、石狩鍋、いちご煮、盛岡市のわんこそば、へぎそば、赤福餅、冷や汁など日本を代表するメニューが並ぶ。
日本の文化や歴史が分かる「芸能・スポーツ」
日本や地域の歴史、文化をあらわす興行・芸能・イベント。
ばんえい競馬、鎌倉能舞台、佐渡おけさ、隠岐牛突き、田川市の炭坑節など。
観光資源のランクと代表的な例
公益財団法人 日本交通公社の「全国観光資源台帳」では、日本の観光資源をS・A・Bの3つのランクに分類している。どのようなものか確認しておこう。
日本を代表するSランクの「特A級資源」
日本を代表する観光資源がSランクの「特A級資源」だ。一度は見てみたいと思われる観光地やイベントばかりである。いくつかの例を紹介しよう。
・大雪山(北海道)
・青森のねぶた・ねぷた(青森県)
・奥入瀬渓流(青森県)
・中尊寺(岩手県)
・草津温泉(群馬県)
・兼六園(石川県)
・富士山(山梨県・静岡県)
・法隆寺(奈良県)
・出雲大社(島根県)
・阿波おどり(徳島県)
・博多祇園山笠(福岡県)
・屋久島の森(鹿児島県)
一度は訪れてみたい!Aランクの「A級資源」
特A級に準じる観光資源が「A級資源」だ。日本のアイデンティティを示すもので、その土地に行く機会があればぜひ訪れたい場所ばかりである。こちらも例を紹介する。
・大通公園(北海道)
・ビール園のビールとジンギスカン(北海道)
・大曲の花火(秋田県)
・最上川(山形県)
・袋田の滝(茨城県)
・中禅寺湖(栃木県)
・鉄道博物館(埼玉県)
・横浜中華街の中華料理(神奈川県)
・大井川鐵道のSL列車(静岡県)
・名古屋城(愛知県)
・香川の讃岐うどん(香川県)
・唐津くんち(佐賀県)
・平和公園(長崎県)
地域の宝!Bランクの「特別地域観光資源」
Bランクの「特別地域観光資源」は地域のアイデンティティを示すもので、その地方に住んでいれば一度は訪れたいところだ。具体例を見ていこう。
・八海山・越後駒ケ岳・中ノ岳の「越後三山」(新潟県)
・七里御浜と獅子岩(三重県)
・富士本栖湖リゾートの芝桜(山梨県)
・かんざらし(長崎県)
観光資源の実際の活用事例
観光資源のランクや具体例から、どの地域にも観光資源と呼ばれるものがあることを理解したところで、各地域の観光資源の活用事例についても確認しておこう。
【広島県尾道市】 古民家を店舗やカフェ、アトリエに再生
広島県尾道市は、江戸時代に北前船の寄港地として栄えたまちである。NPO法人尾道空き家再生プロジェクトでは、このまちに存在する各時代の古民家を店舗やカフェ、アトリエなどとして再生している。その結果、地元の雇用や活性化にもつながっている。
【千葉県香取市佐原】 成田空港から好アクセスという立地を活かし古民家を宿泊施設に
千葉県香取市佐原は、江戸期の商家やまち並みが残る場所として、関東地方初の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されている地域だ。現在、官民連携の取り組みで古民家を宿泊施設へと再生し、魅力向上を図っている。都心部や成田空港からのアクセスが良好なこともあり、今後のインバウンド増加も期待されている。
【滋賀県】 サイクルツーリング「ビワイチ」を盛り上げる
滋賀県では、自転車でびわ湖や県内の観光地・景勝地をめぐる「ビワイチ」というサイクルツーリングの周知に取り組んでいる。公式ガイドブックの出版や「びわ湖一周認定証」の発行など、自転車を通じて県を知ってもらうことが狙いだ。
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▶ DMOとは?観光資源を活かしたブランディングで魅力的な地域づくりを
観光資源を活かし、地域活性化につなげるアイディアとは
観光資源を地域活性化につなげるための方法を考えてみよう。
地元企業や市民との連携で新たな魅力を発見!
自治体の力だけでは、観光資源を見つけ観光客増につなげることは難しいかもしれない。地元企業と協力し、民間の視点も借りながら新たな魅力を発見する努力もしていきたい。
SNSなどで拡散される仕掛けをつくる
近年、観光に行く場所を決めるのにSNSやWEBサイトを参考にする人も多い。多くの人に地域の魅力を拡散してもらうためにも「SNSに載せたくなるようなスポットや企画」や「人に教えたくなる場所」を演出したり、口コミを広げるような仕掛けをつくることも必要だ。
地域住民の意見を取り入れる
地域内には住民しか知らない魅力もあるはずだ。住民の意見を聞き、ほかの地域に住む人にもオススメしたいスポットやグルメをまとめ、パンフレット、WEBサイトで紹介するのもよいだろう。
地元の魅力的な文化や景観にスポットを当て、地域活性化を目指そう
観光資源といえば、富士山や京都・奈良の有名寺社など、誰もが知っている場所と考える方は多いかもしれないが、それだけではない。地域の住民から見れば「当たり前」の場所やイベントでも、ほかの地域や外国人から見れば魅力的に感じるものも少なくないはずだ。
地域活性化を図りたいのであれば、有名な観光資源だけでなく、地元の資源を活用することも検討しよう。その際は、地元企業や住民の力を借りることも考えたい。