東北まちづくりオフサイトミーティング」を立ち上げ会員を900名以上になるまで拡大させたり講演会を開いたりと、外部との繋がりを持ち、市職員の枠を飛び越えて活動している後藤好邦さん。その活躍ぶりは「スーパー公務員」とも呼ばれるほど。彼を突き動かす原動力は、いったい何なのか。インタビューをして見えてきたのは、ひとつの考えを貫く芯の通った姿だった。
※下記はジチタイワークスVol.6(2019年6月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
誰のための「安定」かを考える
公務員=安定。多くの方々はこう思っているかもしれません。確かに、身分が保証されているという面では「安定」と言えます。しかし「だから公務員になれば大丈夫」というわけではない。公務員という仕事は「いろんなチャレンジができる」から「安定」している。私は、そう考えています。
たとえば民間企業だったら、会社の方針にそぐわないことをしてしまうと、極端な話ですがリストラされる可能性があります。ところが、公務員であれば「市民の意見」をもとにあらゆることに挑戦できます。法に触れていなければよほどのことがない限りクビになんてなりません。自分の人生のための「安定」ではなく、目の前の人のために「安定」を活かす。それが、私たち公務員の誇りであり一番の魅力だと思っています。
オフからオンへの思考法
山形市役所に入庁した頃からこの考え方は変わっていません。まずは何でもやってみることが大切だと常々思っています。とはいえ、チャレンジの仕方がわからない人もいるでしょう。そんな方にぜひ実践していただきたいのが「オフからオンへ」です。
たとえば、地域のためにできることはないかと考えたときに、まずはプライベート(オフ)でボランティアなどに参加してみる。そこで得たノウハウを仕事(オン)に生かすのです。役所の職員は役所の中でしか活動できないと思われがちですが、そんなことはありません。平成21(2009)年に数名の仲間と立ち上げた「東北まちづくりオフサイトミーティング」も、オフから始まり気づけばオンに繋がっていました。外に出れば多くの知見に出会えますから、プライベートを活用してみてほしいですね。
仕事の目的を見つめる
自治体職員は3~5年で異動することがほとんどです。部署が変わるたびに覚えることが増えて大変な面もありますが、これもまた「チャレンジ」。どの仕事にも、達成した先には市民や住民の笑顔や喜びが待っています。自分の仕事の目的は何なのか。常にこのことを頭に入れていれば、何をすべきかイメージできますし、仕事で結果を残すことにもつながります。
この「仕事の目的を考える」は、改善業務を担当する際にも言えること。「毎年改善を求められてもどうしたらいいのか」と悩む方もいますが、それは手段が目的化しているからかもしれません。つまり「改善すること」がゴールになっている。そうではなく、目的を達成するために何をすべきか思い描いてみるのです。そうすれば、改善に向けたアイデアがどんどん生まれていくはずです。
育児休暇にもチャレンジ
私のことを「スーパー公務員」と呼ぶ方もいますが、とんでもない。評価していただけることはありがたいですが、自分自身はごく普通の公務員だと思っています。チャレンジを続け、失敗してもあきらめずに継続してきた。ただ、それだけです。
実は先日、一週間の育児休暇を取得しました。これもまた私の「チャレンジ」。普通の有給休暇と違い、「妻と一緒に子どもを育てる」という使命感を持っての休暇なので意識が自然と育児に向きますし、改めて妻の大変さを実感できました。まだ「男が育休なんて」という意見が残る世の中ですが、他の男性職員にも体験してみてほしいと、強く感じました。そのためには、やはり自分が挑戦する背中を見せ続けることが重要だと考えています。
PROFILE
1994(平成6)年に山形市役所に入庁。「東北まちづくりオフサイトミーティング」を立ち上げるなど、自治体職員が横のつながりを持つ機会を設ける。現在、職員向けの実用書を執筆中。