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デジタルデバイドは高齢者だけの問題ではない!地域や個人の情報格差、どう解消する?

キャッシュレス決済サービスの普及や行政手続きのオンライン化など、情報通信技術が生活に浸透しつつあることを実感する機会が多くなった。

今後このような動きがさらに進むと、情報通信技術の活用で生活の質の向上が期待できる一方、活用できない人が今以上に不便になるであろうことも忘れてはならない。

本記事では、情報通信技術を活用できる人とできない人の格差「デジタルデバイド」の問題点について解説する。デジタルデバイドが起こる原因や解決方法についても考えていこう。

【目次】
 • デジタルデバイドとは?

 • デジタルデバイドが生まれる原因
 • デジタルデバイドの解消によって解決される問題とは
 • デジタルデバイド、どうしたら解消できる? 
 • 自治体のデジタルデバイドへの取り組みとは
 • デジタルデバイドの解消をしつつ、DXを進めよう

※掲載情報は公開日時点のものです。

デジタルデバイドとは?

デジタルデバイドとは、 インターネットなど情報通信技術を使える人と使えない人の間に生じる格差

デジタルデバイドとは、 インターネットなど情報通信技術を使える人と使えない人の間に生じる格差のことである。情報通信技術を使えない場合「オンラインで提供されるサービスが利用できない」「必要な情報の取得が遅れる、もしくは情報を得られない」という問題が生じる。

なお、デジタルデバイドは日本だけではなく、海外でも問題となっている。平成12年7月開催の九州・沖縄サミットでは、各国がデジタルデバイドの解消に向けた取り組みを行っていくという「IT憲章」が採択されている。

3つのデジタルデバイドを確認しよう

デジタルデバイドには以下の3つがある。それぞれの特徴を押さえておこう。

1.地域間のデジタルデバイド

地域間のデジタルデバイド

地域間デジタルデバイドとは、同じ国の中で生じる情報格差のことである。例えば、都市部ではインターネットや携帯電話につながる環境が充実しているが、地方に行けば満足につながらないというところも多い。

また、地震などの災害にあった被災地では、情報インフラの復旧が遅れ、長期間に渡り必要な情報が届かない場合もある。このようなケースも地域間デジタルデバイドとされる。

2.個人間のデジタルデバイド

年代、収入、障害の有無などによって、インターネットの利用率に差があるため、全ての人が平等に情報にアクセスできているわけではない。これが個人の間のデジタルデバイドだ。

インターネットを利用できない場合、生活の向上につながる情報やサービスにアクセスできず、あらゆる格差が生まれる原因になる。

3.国際間のデジタルデバイド

国際間のデジタルデバイド

先進国と開発途上国では、ITインフラにかける費用、知識などに大きな差があるため、情報格差発生の原因となっている。

情報格差があると、政治経済、教育、労働などの面でも格差が生まれる。これらの格差は国際社会の発展という視点で見ると弊害になるため、解決に向けての取り組みが求められている。

デジタルデバイドが生まれる原因

総務省の「令和5年通信利用動向調査」によると、 個人(6歳以上)のインターネット利用者の割合は86.2%となっている(※1)。

この結果から、インターネットなどの情報通信技術は多くの人に普及しているが、全ての人が利用できているわけではないことが分かる。

デジタルデバイドが生まれる原因について「令和5年通信利用動向調査」の調査結果から探っていこう。

年齢による格差

インターネットを利用する13~69歳の人は90%を超えているが、 70~79歳は67%、80代以上は36.4%となっており、ほかの年代と比較すると低いという結果が出ている(※2)。

※1・2出典:総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」

ちなみに、内閣府の「情報通信機器の利活用に関する世論調査」 (令和5年7月調査)では、インターネットを使わない70歳以上の人にその理由を尋ねているが、以下のような回答が寄せられている。    

インターネットを使わない理由(70歳以上) どのように使えばよいか分からないから    51.6% 必要があれば家族に任せればよいと思っているから    41.1% 自分の生活には必要ないと思っているから    39.1% 情報漏洩や詐欺被害などのトラブルに遭うのではないかと不安だから    26.6% 購入や利用にかかる料金が高いと感じるから    21.8% 以前使おうとした、もしくは使ってみたことがあるが、うまく使えなかったから    16.9% どこで何を購入すればよいか分からないから    15.7% 身近に携帯電話ショップや家電量販店などの購入できる場所がないから    1.6% その他    7.3% 無回答    0.8%

※出典:内閣府「情報通信機器の利活用に関する世論調査」(令和5年7月調査)をもとに株式会社ジチタイワークスが作成

所得による格差

以下のグラフのように、インターネット利用状況は所得によっても差が出ている。 

世帯年収別インターネットの利用状況 

出典:総務省「令和5年通信利用動向調査」図表1-8 世帯年収別インターネットの利用状況 

世帯年収が400万円超の場合、インターネット利用率は89%を超えているが、世帯年収400万円未満では80%を切っている。

特に200万円未満の場合は62.5%と非常に低い割合になっている。

世帯年収が低くなるほど、インターネットを利用しない人が増えているということが分かる。

地域による格差

以下は地域別のインターネット利用状況だ。

地方別インターネットの利用状況およびスマートフォンの利用状況(令和5年)

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出典:総務省「令和5年通信利用動向調査」図表1-12地方別インターネットの利用状況およびスマートフォンの利用状況(令和5年) 

東京都や神奈川県などがある南関東地方は90%を超えているが、東北地方は80.3%、四国地方は81.2%と差が見られる。

内閣府の「情報通信機器の利活用に関する世論調査」 (令和5年7月調査) では、インターネットを使わない理由について都市の規模別でも調査しているので参考にしてほしい。

障害による格差  

障害による格差  

障害の有無による格差についても理解しておきたい。例えば、視覚に障害がある人の場合、音声読み上げソフトなどの補助はあるが、画像や表などが多用されたサイトは理解しにくいということもあるだろう。

また、肢体が不自由な場合はパソコンやスマートフォンなど機器の操作が難しいという問題、知的障害がある人は欲しい情報を見つけるのが難しいという問題がある。

デジタルデバイドの解消によって解決される問題とは

デジタルデバイドが解消されると、生活上の問題の解決にもつながる。具体的にどのような問題が解決するかを確認してみよう。

インターネットで解決した生活上の課題は「健康」が最多

インターネットで解決した生活上の課題は「健康」が最多

総務省が平成23年に発表した「ICT 利活用社会における安心・安全等に関する調査研究報告書」によると、インターネットを利用して解決した課題で、最も割合が多かったのが「自分や家族の健康」についてであった。

なお、「健康」は生活上の悩みとして最も多く挙げられており、身近な悩みの解決にインターネットが利用されていることが分かる。

出典:総務省「ICT 利活用社会における安心・安全等に関する調査研究報告書」 p87

情報格差の解消

デジタルデバイドが解消されると情報格差も解消されるはずだ。例えば、自治体からの情報を必要な時にすぐに得られるようになる。また、日常生活のお得な情報の受け取りも容易になり、今まで以上に生活しやすくなるだろう。

高齢者の孤立を防ぐ

世代間のデジタルデバイドが解消されると、高齢者の孤立防止効果が期待できる。例えば、オンラインでのビデオ通話ができると、一人暮らしの高齢者の健康状態の確認も可能になる。また、ソーシャルメディアを活用することで、家族や地域の人とのつながりが持てる。

所得格差の解消

パソコンを活用できると、仕事の幅が広がる可能性がある。また、情報処理能力やネットリテラシーを身に付けることで有益な情報や正しい情報を得られるため、結果的に所得向上も期待できる。

デジタルデバイド、どうしたら解消できる?

デジタルデバイドはどうしたら解消できるのか、具体的な方法を考えていこう。

高齢者向けパソコン・スマートフォン講座の開催

高齢者向けパソコン・スマートフォン講座の開催

高齢者のデジタルデバイド解消のためには、まずはデジタル機器の使い方を覚えてもらい、難しいものではないということを体感してもらう必要がある。そこで、スマートフォン・パソコン講座の開催を検討したい。

継続的に利用してもらうためには、使い方を教えるだけでなく講座修了後のサポートも考えておくべきだろう。

無料で利用できる端末を準備する

「今すぐにはスマートフォンやパソコンを購入できない」という人のために、市役所や駅などの公共機関に無料で利用できる端末を導入するのも効果的だ。

また、機器が準備できても、ネットワークに接続できないというケースもある。例えばWi-Fiルーターのレンタルサービスの導入や、図書館などの公共機関でのWi-Fiの整備などを検討したい。

分かりやすい端末・コンテンツの開発

デジタルデバイド解消のためには、高齢者や障害がある人でも使いやすい端末の開発も必須だ。さらに、自治体のホームページにおいても、バリアフリーを意識し、誰でも見やすい・使いやすいサイト作りを心がけよう。

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自治体のデジタルデバイドへの取り組みとは

デジタルデバイド解消のため、国は「誰一人取り残さない」デジタル化に向けた取り組みを行っている。自治体としてもDXとともに取り組むべき課題といえるだろう。そこで、すでにデジタルデバイド対策を行う自治体の例を紹介する。ぜひ参考にしてほしい。

【東京都渋谷区】2年間無料でスマートフォンを貸し出し!

【東京都渋谷区】2年間無料でスマートフォンを貸し出し!

東京都渋谷区では、65歳以上のスマートフォンを保有していない高齢者のために、区が2年間無料でスマートフォン貸し出しを行うという実証事業を行った。この事業では、貸与された人向けに使い方講座の開催、専用コールセンターの開設、購入相談支援、健康アプリの利用促進なども行っている。

その結果、貸与開始期と比較すると、スマートフォンの利用が根付いてきているという調査結果も出ている。特に、「災害時に情報を得る媒体はなんですか」という質問に対し、スマートフォンと答えた人の割合は33.2%から58.4% と大幅に上昇した(※3)。

※3出典:渋谷区高齢者デジタルデバイド解消事業~研究成果報告書(概要版)~ p18
※実証事業は令和3年9月~令和5年8月の間で、すでに終了

【山口県宇部市】地域の要望に応じた高齢者向けスマホ教室の開催

山口県宇部市では、65歳以上の人を対象に無料スマートフォン教室を開催している。基本操作だけでなく、LINE、地図アプリの使い方や詐欺対策まで幅広くカバーした内容となっている。また、教室のサポート役として地元の中学生・高校生・大学生が参加しており、住民同士のコミュニケーションの場にもなっている。

開催場所も各地域のふれあいセンターとなっているため、簡単に訪れることができるところも高齢者にとっては嬉しい点だろう。

【高知県日高村】スマホ普及率100%を目指す!村まるごとデジタル化事業

高知県日高村では、村のデジタル化の一環として、「村まるごとデジタル化」を推進している。各住戸への光回線の敷設はすでに行われているが、それに加え、スマートフォン普及率100%および便利に使いこなせるようになることまでを目標としている。

具体的な取り組みとして、携帯電話会社と協力して出張販売所を設置したり、スマートフォン教室の開催、健康アプリの提供などを行っている。

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デジタルデバイドの解消をしつつ、DXを進めよう

住民の利便性向上や効率的な行政運営のため、DXは早急に取り組むべき課題であると同時に、デジタルデバイドの問題についても考えていかなければならない。特に、高齢者や障害を持つ人が情報通信技術をうまく使いこなせない場合、災害情報や行政サービスなどの必要な情報を取得できない恐れもある。

デジタルデバイドはすぐに解決できる問題ではないが、できるところから少しずつ始めていくべきだろう。今回紹介した自治体の例を参考に、何ができるか考えてみてはいかがだろうか。

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