ジチタイワークス

東京都目黒区

根拠のある政策立案に向けて、データ活用を全庁で進める。

住民情報を整備・可視化するシステム

データを活用した事業計画の動きは、官民問わず様々な分野に広がりつつある。一方で、膨大な情報をグラフなどに整える作業は難しいが、目黒区ではシステムを使って実践中だ。職員研修も行い、データ活用に対する意識の変革を図っている。

※下記はジチタイワークスVol.34(2024年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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左から
目黒区
企画経営部 企画経営課
データ利活用推進担当係長
武山 大輔(たけやま だいすけ)さん

主任
森川 依美(もりかわ えみ)さん

データへの問い合わせが相次ぎ全庁に公開する動きが生まれた。

同区でのデータ活用に向けた動きは、若手職員グループが令和2年度、区長に提言したことから始まった。その主要メンバーで、当時税務課にいた森川さんは、各課から税に関連する統計データを求められることが多く、全庁に公開する必要性を感じていたという。「課税額によって、国民健康保険料や保育料が決定するなど、税は様々な情報にひも付いています。全職員が見られる環境をつくり、そこから情報や新たなアイデアを見つけてほしいと思い、データ分析システムの導入を提案しました」。

提案は採用され、令和4年度には自治体や民間企業でデータ分析の実務経験がある武山さんが、専門人材として入庁。民間企業でシステムエンジニアを務めた経歴をもつ森川さんとともに、企画経営課でデータ活用を全庁に推進することになった。導入したのは2種類のシステムで、オープンデータの可視化と、庁内向けに区民データの整備を進めている。後者には「Gcomホールディングス」が提供する住民情報分析システム「Acrocity×BI(アクロシティビーアイ)」を活用。約10年分の区民データを匿名加工し、可視化につなげた。現在は区の財務に関係するデータを整えているという。令和6年秋頃には整備が完了する予定だ。

庁内向けのデータ整備と並行し職員研修で考え方を根付かせる。

同システムでは、住民データから適切なグラフなどを自動生成できる。区民1人当たりの情報は年間で約5,000項目にもなり、10年分を整えるのは大変な作業だという。同システムの強みは、手作業では時間のかかるグラフ化や地図への反映、個人情報の匿名化などを任せられること。「区民データは規模が大きく、内製しようとしても全て職員で行うにはリソースが足りません。システムに投入するだけで、欲しい形に整う機能は重宝しています」と、武山さん。

搭載データは今後の政策立案に活用予定だが、まずは職員一人ひとりが日頃の業務と結び付けて考える習慣が必要だ。基礎を身に付けるため、同社紹介の講師を招き、約2年間でデータ活用の研修を複数回実施。実務担当者向けの研修では、“ふるさと納税の返礼品を充実させる”案をグループで出し合った。どんなデータが必要かを考えたり、システムを操作したりと、実践で理解を深めたそうだ。管理職向けでは、他自治体の事例から、施策案への判断基準などを共有。希望制にもかかわらず合計で100人ほどが参加し、関心の高さがうかがえたという。ほかにも要望があれば、武山さんと森川さんが随時実施している。

より効果的な政策立案のために小さな成功体験を積み重ねる。

取り組みは道半ばだが、部署ごとのデータをExcelで管理していたシステム導入前に比べると、着実に進歩しているという。「地域商品券の効果検証にデータを使いたいと要望があったり、事業計画の案を受け取った管理職がデータを見たかどうか確認したりと、庁内研修後の変化を感じますね」。これからの課題は実際に政策立案につなげることだという。「計画を立てるつもりでデータを見られるようになれば、理想とする形に近づきそうです」と、森川さんも強調する。

データ活用は、自治体の政策をよりよい方向へ導くための根拠として重要だ。同時に職員の業務をラクにする手段でもある。「“データを使わなければならない、資料に反映しなければならない”と考えるのではなく、無理のない範囲で取り入れてほしいです。ヒントの一つとして当たり前のように使われるものになるといいですね」と、武山さん。データ整備が完了すると同時に職員が活用できるよう、整備と研修を並行して進めてきた同区。ここまでの意識の変化と、これからの小さな成功体験の積み重ねが、予算や計画に活かされていくことに期待したい。

CHECK!

庁内向け勉強会

要望に合わせ、同社紹介の講師を招いて勉強会を開催。“自治体の所持するデータと有用性”“EBPMとは”などをテーマに講義する。初回は無料。

※写真はイメージです

導入実績

全国30自治体

滋賀県長浜市、大阪府大阪市、神奈川県寒川町 など

同システムをオープンデータ作成に活用した、宮崎県都城市の事例はこちら

お問い合わせ

サービス提供元企業:Gcomホールディングス株式会社

地方行政経営研究所

福岡県福岡市博多区冷泉町5-35
福岡祇園第一生命ビル12F

TEL:092-233-1472
Email:ebpm@gyoseiq.co.jp

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