住民情報分析システムを活用したオープンデータの作成
自治体のオープンデータが求められるが、活用しやすい形にするハードルは高く、なかなか進まないのが現状だろう。都城市は民間企業と連携し、時間と負担を最小限に抑えて、185項目ものデータ公開に至ったという。
※下記はジチタイワークスVol.28(2023年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]Gcomホールディングス株式会社
膨大な住民情報からのデータ公開には作業量と抽出の難度がハードルに。
デジタルを活用した地域課題の解決などを進める同市。蓄積している膨大なデータを地域に活用してほしい思いはあったが、人口や世帯数などの10項目ほどしか公開できていなかったという。「地域の企業や市民団体からは、“こんなデータはありませんか?”“公開されている種類が少ないです”などの声がありました。出せる限りのものを出すことが責務だと思うものの、活用しやすい形で公開する難度は高いのです」と佐藤さんは振り返る。
住民1人当たりの年間のデータは、税や福祉など約5,000項目もあるといわれている。公開したデータを活用してもらえる形にするには、絞り込む条件を決めたり、グラフにしたりと、複数の工程が必要だ。さらに、公開後は定期的な更新も伴う。担当者が異動しても、属人的にならずに管理できる体制の構築も課題だという。
同市では、「Gcomホールディングス」の提供するデータ分析システム「Acrocity×BI」を活用。過去にはマイナンバーカード交付率向上のための分析などに使ったことがあり、住民情報にひも付くデータが蓄積されているものだった。同社に一部作業を委託しながら、できる限りのオープンデータ作成に踏み切った。
ツール活用と業務委託で負担を軽減し2カ月で185項目のデータを公開。
公開に向けて、まずは同社に住民情報にもとづくデータの抽出を依頼。通常は公開できる形にするために、データを分類し、個人情報を守るための匿名化を行う。そこから一つひとつ適切なグラフに反映することで、活用しやすい状態になるといい、「当市が自力で同じようなデータを作成するのは不可能に近い量です」。ツールを活用することで、相当な時間も労力もかかる作業が自動化されるという。
完成した約600項目のデータから、出所や根拠を精査して公開できるものを選定。重複するものや、母数が少なく個人が特定されそうなものなどを除く作業を、同社に根拠を確認しながら進めたそうだ。
「ほぼ完成形でデータが上がってくるのが、すごく助かります。そもそも自分たちだけではつくれない種類のデータもある上、量が多すぎて作業が追い付かないでしょう。システムから引き出したデータなのでチェックの手間が少なく、当課の2人で業務の合間を使って選定できました。わずか2カ月で185項目のデータを公開できたのは画期的なことだと思います」。データの更新作業は来年3月に初めて行う予定。徐々に特別なスキルがなくても更新できるようにし、ゆくゆくは人の手を介さず公開できる状態を目指すという。
市民や企業にデータを還元して地域の活性化に貢献する。
公開したデータは、主に地域のビジネスに活用してもらう想定だという。データをクロス分析することで、取り組みにつながりやすくなる。例えば、民間企業が、オープンデータ上の介護や医療の情報を参考に、新たなサービスを検討する。また、企業数や各企業の従業員数、固定資産への投資の動向から、景気の良し悪しを見極めて市内進出を考えるなど、起業や投資を検討する材料になるそうだ。
「他自治体からも、オープンデータを増やせたことへの問い合わせが寄せられています。市内の高校から、データ分析の授業に活用したいとの相談も受けているところです。地域のことを知ってもらうチャンスですし、活用の好事例も周知していきたいです」。
市の所有するデータは、もともとは市民や地域企業のものだと話す佐藤さん。民間が有効活用することで、自治体が本来目指していた施策が実現し、人々の生活がより良くなることにつながるだろう。Uターンや移住、観光など、力を入れる施策は地域によって異なるが、住民情報の膨大なデータがあることは共通する。職員の負担を抑えてより多くのデータを公開し、活用してもらうという方法が、様々なまちにとって課題解決のヒントになるのではないだろうか。
都城市
総合政策部 デジタル統括課
佐藤 泰格(さとう ひろのり)さん
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