ジチタイワークス

岩手県八幡平市

【中軽米 真人さん】相手の困り事を解決する意識が何事も円滑に進めるコツだと気づいた。

“失敗が許されない組織風土”といわれがちな自治体。

ですが、最初からうまくいくことなんて少ないはず。このコーナーでは、今活躍する職員に“試行錯誤した経験”や“失敗の乗り越え方”をインタビュー!つまずきを学びや改善に変えていくヒントをお届けします。

※下記はジチタイワークスVol.32(2024年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

岩手県八幡平市(はちまんたいし)
商工観光課 課長補佐
中軽米 真人(なかるまい まこと)さん

平成27年、起業家を生み出すための短期集中型プログラミング合宿「スパルタキャンプ」を始めた中軽米さん。今では人気の企画となっているが、実は立ち上げて軌道に乗せるまでには苦労や学びが多かったと打ち明ける。

01 失敗したな……と思ったエピソードを教えてください。

―― 正論めいたことを言うだけでは、人の心を動かせない。

平成27年に「起業志民プロジェクト」を立ち上げて以降、スパルタキャンプを9年間で28回開催してきました。初期こそ定員割れでしたが、参加希望者は右肩上がりで、これまで18カ国から4,500人以上がエントリー。市内で起業したのは13法人にものぼります。育てたメンバーが次世代の起業家志望者を指導する側にまわるという起業家育成エコシステムが自然にでき上がり、中にはGoogleのスタートアップ育成プログラムに採択される例も出ています。

今では形になっていますが、すぐにプロジェクトを実現できたわけではありません。もともと起業家を育てれば“地方でも面白いことをできる人が増える”という思いがあり、当時の市長に「プログラミングを教えて、地方で仕事ができる人を増やしましょう」と、ストレートに提案しました。正論ではありますが、当時はプログラミングがまだ一般的ではなかった。企画意図や重要性が伝わらず、市長に「うちは農業と観光のまちだから……」と却下されてしまいました。

02 市長に企画を再度提案すべく取り組んだことを教えてください。

―― ペインの原因を緩和・解消するため、考え得る限り最善の施策を。

当時は日本中で地方創生が叫ばれる寸前。当市でも人口減に非常に悩まされていました。そこで“地方から人がいなくなるのはなぜか”について独自で研究することに。住民基本台帳を分析すると、進学や就職のタイミングで約3割の若者が流出しているという事実が分かり、“市内でやりたい仕事がないからではないか”という仮説を立てました。そして、仮説を検証するために地元の大学からデータをかき集めたところ、市内にはほとんどない情報通信業に就職している人が多数という結果に。さらに、お盆の帰省時に全世帯に調査票を配り、地元に帰らない理由を聞いたところ、トップは“やりたい仕事がない”で5割を占めました。これが人口減少の原因の一つだと判明したのです。

これらのエビデンスをもとに、IT起業家の育成が地方創生につながることを、再び市長にプレゼン。相手が何をペイン(困り事・課題)に感じているか考え、丁寧に説明することで理解を得られました。

03 その経験からどんなことを学びましたか?

―― 相手が何を重要だと考えているか意識することを学びました。

自分はなぜこの企画をやりたいのか。誰が何に困っていて、どうすれば幸せになるのか。その答えは“現地・現場・現物”にあり、泥くさく動くことが必要だと思います。スパルタキャンプでも、各場面でみんなの困り事に耳を傾けて、宿泊施設を用意したり、シェアオフィスをつくったり。そうして今の形に発展させてきたのです。

机の上だけで大きな理想像を描いて事業を始めてしまうと、現実と合わず失敗しがちですよね。今やろうとしている事業は本当に誰かの課題解決につながるのか。そもそも根本的な原因は何なのか。事業を始める前に小さく試してみて、違うようなら修正したりやめたりすることで大事故は防げます。「大きく失敗する前に小さくやらかそう」というのが私のモットーです。

04 仕事をする中で大切にしていることと、今後について聞かせてください。

―― どうすれば“面白くなるか”を考えることです。

“世の中を面白くしたい”、その思いが私の原動力です。そのために公務員になり、プライベートでも“社会をよりよくしていきたい”という思いのあるスタートアップの支援を続けてきて、これまで関わった企業は優に100社を超えます。当市はもちろん、どうすれば社会が面白くなるかを追求しながら、これからも楽しく取り組んでいきます。

 

中軽米さんに迫る!一問一答

仕事で落ち込んだときの気持ちの切り替え方は?
家のワインセラーから秘蔵の1本を空けます。鉄板のつまみはチータラ。

プライベートでの失敗は?
新NISAを始めていないこと。すぐ始めたらよかったですね(笑)

自治体職員の皆さんにメッセージを
人生は、やるか、死ぬほどやるかの二択。やらない選択肢はないので、一生懸命に楽しく頑張りましょう!

このページをシェアする
  1. TOP
  2. 【中軽米 真人さん】相手の困り事を解決する意識が何事も円滑に進めるコツだと気づいた。