ジチタイワークス

沖縄県

【森田 修平さん】気負いすぎていたことに気づき、子どもの自己決定を尊重するように。

“失敗が許されない組織風土”といわれがちな自治体。ですが、最初からうまくいくことなんて少ないはず。

このコーナーでは、今活躍する職員に“試行錯誤した経験”や“失敗の乗り越え方”をインタビュー!つまずきを学びや改善に変えていくヒントをお届けします。

※下記はジチタイワークスVol.28(2023年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

 沖縄県 中央児童相談所
森田 修平(もりた しゅうへい)さん

“沖縄の福祉を変えたい”と福祉専門職で入庁し、児童自立支援施設などで子どもたちに向き合ってきた森田さん。思うようにいかないことも多い中で、自らの失敗に気づき、考えや接し方を変えていったのだそう。


01 失敗したな……と思ったエピソードを教えてください。

入庁後、児童自立支援施設で勤務しました。同施設は、主に非行傾向のある中学生の自立を支援しており、敷地内に学校もあります。私の仕事は子どもたちと寝食をともにし、一人ひとりの自立に向け支援すること。自分なりに熱意をもって子どもたちと向き合っていました。しかし3年ほど経つ頃、自分の支援方法に疑問を抱くように。大人は子どもより知識や経験が豊富なので、子どもが失敗しないように先まわりして、自分の考えややり方を押し付けがちだったと子どもたちの言動から気づいたのです。例えば、子どもが中学校を卒業して就職したいと言っても、将来のために高校進学を勧めたり、スポーツや勉強も効率を重視してアドバイスしたり。

良かれと思って支援しているつもりでしたが、結果的に子どもが自ら考えて行動する機会を奪っていたのです。大人の助言通りに行動した子どもは、失敗すると大人のせいにしてしまいました。また、退所後も困難に直面すると失敗してしまうことが多く、本来の自立支援とはいえない状況に陥っていました。

02 対応していく中で学びになったことは?

現場の職員たちと話し合いを重ね、子どもたちが自らの意志で決定できる環境づくりが大切だと気づきました。そのために、子どもたちのニーズを適切に把握するという基本に立ち返りました。一人ひとりを観察すると、それぞれの考えや悩み、課題が見えてきます。それをもとに子どもに対し、メリットやデメリットを伝え、選択肢を提示すること。どんな選択をしても100%正解はなく、もし失敗しても支えると伝えること。今、決めたことが正解でないこともあり、その時々で立ち止まり考えればいいと話すこと。そうやって、自分自身で決めることの大切さや重要性を伝え、行動化に努めました。

自己決定を重視するようにかじを切ってから、子どもたちが自ら考え行動し、いきいきとして責任感が出てきました。ちなみに、私は野球の指導をしていました。「自分たちで考えて行動してごらん」と試合に臨んだところ、自分たちで考えプレーし良い試合に。約20年ぶりに全国大会出場を果たしました。

03 失敗からの学びを、その後にどう活かしましたか?

児童自立支援施設の子どもに限らず、全ての仕事で会う様々な背景をもつ大人に対しても、これらの学びを活かすことができています。相手の話を聞き、観察をして、色々な方法を示し、自己決定してもらうことが重要だと実感しています。“うまくいかなかったらまた一緒に考えましょう”と伝えて、安心してもらえるように心がけています。

04 仕事をする中で大切にしていることと、今後について聞かせてください。

子どもと話すとき、相手の言葉を大切にして言い換えないように意識しています。例えば、相手が父親を“パパ”と言うのにこちらが“お父さん”と言い換えてしまったら、否定された気分になると思います。取り巻く人の環境や気持ちを知ることが大切だと考え、市町村や学校現場の業務を体験させてもらったことがあります。現場の人たちの悩みや考えが少しは理解でき、良い経験になりました。

より良い支援をするためには、とにかく相手を知り、顔が見える関係をつくることが大切だと考えています。私が目指しているのは、子どもや関係者に気軽に相談してもらえること。何かできるわけじゃなくても、一緒に悩める人でありたいです。

児童福祉の現場にいると、一番の失敗は“死”だと思います。上司から“生きていたら何でもできる”と言われて、本当にその通りだなと。悩んでいる保護者や関係者の表情が穏やかになり、子どもたちの笑顔が増えるように、これからも挑戦していきます。

森田さんに迫る!一問一答

公務員になろうと思ったきっかけは?
大学時代、実習先の児童自立支援施設を訪問したのがきっかけ。仕事中に大好きな野球ができる!と思いました(笑)
 

今の森田さんを漢字であらわすと?
「変」 「挑」
 

仕事で落ち込んだときの気持ちの切り替え方は?
YouTubeで“泣ける動画”を検索、見て泣いています。
 

仕事をする上での小さなこだわりは?
こだわりをもたないことがこだわり。あと、デスクにはお菓子が常に入っています。

 

 

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