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ふるさと納税の自治体へのメリットとは?成功事例も併せてご紹介。

多くの自治体が活用しているふるさと納税は、寄付者だけでなく住民にもメリットのある制度だ。ふるさと納税によって税収が上がれば、これまで着手できなかった事業を実施でき、よりよい行政サービスの提供につながる。

本記事では、ふるさと納税とは何か?を説明するとともに、自治体側が得られるメリットや注意点、ふるさと納税の成功事例を紹介する。

【目次】
 • ふるさと納税 制度の概要

 • 自治体へのメリット・デメリット
 • 成功事例(宮崎県都城市・千葉県南房総市)
 • ふるさと納税はPRや行政サービスの向上に活用できる

ふるさと納税 制度の概要

ふるさと納税とは、都道府県や市区町村に対して行った寄付のうち、2,000円を超える部分について、一定の限度額まで寄付者の所得税・個人住民税から全額が控除される制度のことだ。

限度額は所得に応じて異なり、控除を受けるためにはふるさと納税の翌年に確定申告などを行う必要がある。ただし、平成27年4月1日から、確定申告の不要な給与所得者などは 、寄付先が5団体以内である場合、寄付を行った各自治体に申請することで、確定申告せずに控除を受けられる手続きの特例「ふるさと納税ワンストップ制度」を活用できる。

本制度は、進学や就職を機に、故郷から離れて働いている人でも、「生まれ育ったふるさとに貢献できる制度」、「自分の意思で応援したい自治体を選ぶことができる制度」として創設された。そのため、ふるさとの自治体は、寄付金を貴重な収入源として、現在の住民に様々な行政サービスを実施できるようになる。

ふるさと納税では、寄付者自らが寄付先の自治体を選択できるだけでなく、寄付金の使途も指定できる。本制度の活用者は多く、総務省によれば、ふるさと納税による控除が適用された人数は平成25年度には11万人であったのに対し、令和元年度には395万人と大きくその数を伸ばしている。

ふるさと納税の受け入れ件数も年々増加しており、令和4年度には5,184.3万件と制度開始以降初の5,000万件を超えるほどとなった。

自治体と寄付者、両者にメリットのあるふるさと納税制度をうまく活用することで、行政サービスの拡充を図れる。

自治体へのメリット・デメリット

ふるさと納税は自治体にどのようなメリットをもたらすのだろうか。注意点とあわせて説明する。

メリット

ふるさと納税制度によって、自治体は次のようなメリットを得られる可能性がある。

◆税収向上につながる
働き手が都市部に流出する傾向にある地方においては、減少する税収への対策としてふるさと納税を活用できることは大きな利点だろう。ふるさと納税では、その自治体に居住したことのない人でも寄付できるため、全国から広く寄付を募り税収を増やすことが可能だ。

◆自治体のPRになる
ふるさと納税は地域のPRにも活用できる。返礼品で地場産品や地域の良さを実際に確かめてもらえるほか、ポータルサイトなどを活用して広くふるさと納税を募ることで、そのまちをより多くの人に認知してもらえる可能性がある。地域への宿泊など体験型の返礼品を用意すれば、観光客誘致にもつながる。

◆関係人口の創出を見込める
総務省が行った「ふるさと納税に関する調査結果」によると、各自治体はふるさと納税を通して寄付者との関係づくりのための取り組みを行っているという。例えば、広報紙やパンフレットの送付、お礼状の送付、特産品等の送付によってまちの取り組みを伝えている。

ふるさと納税を通して自分たちのまちに、継続的に関わる人を増やすことで、地域活性化につながる新たな取り組みの実現も目指せるだろう。

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デメリット

このようなメリットがある一方で、次のようなデメリットが生じることもある。

◆事務負担が増加する
寄付金の受付や申告にかかる事務負担の増加は、地方自治体において大きなデメリットといえる。人口減少によって職員の採用も困難化している中、事務作業の増加は大きな負担となるだろう。ふるさと納税のための取り組みによって、時間外労働などコスト面での負担が増えることも考えられる。

◆税収減の可能性がある
様々な地域に寄付ができるからこそ、住民が活用することで、まちの税収が減少する可能性がある点は理解しておきたい。他自治体のふるさと納税を継続的に行う人が増え、さらに自分たちのまちへ寄付がない場合、税収が減少しつづけることになる。

◆担当職員のモチベーションにより税収にバラつきが生じる可能性がある  
担当職員の意欲の差が、年間の寄付額の差につながる可能性があるとみられている。異動によって担当者が代わった後に寄付額が減少すると、予算の組み立てが難しくなることもあるだろう。

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注意点

ふるさと納税を積極的に活用したい場合、自治体側は制度をよく理解しておく必要がある。ふるさと納税においては、返礼品に一定の制限が設けられていたものの、自治体によっては豪華すぎる返礼品を用意し寄付金を集めているとして、度々問題となっていた。

これを受けて、ふるさと納税の本来の趣旨に沿った運用がなされるよう、令和5年10月に制度が改正され、運用の適正化に向けた大臣指定の通知が行われた。

これからふるさと納税に注力したい自治体は、次の5つの点をよく理解し、適正に運用できるよう努める必要がある。

1.    指定対象期間を通じた指定基準への適合
各自治体は、返礼品が指定基準に適合していることを常に確認し、指定対象期間の開始後に新たな返礼品を用意する場合には都道府県を経由して総務省に届け出を行う。
2.    寄付金募集のための宣伝広告や情報提供の方法
返礼品を強調した宣伝広告を行わない、適切な寄付先の選択を阻害するような情報提供を行わないなど、募集適正基準に沿わない宣伝・情報提供を行わないよう注意する。
3.    募集費用総額5割以下基準
指定対象期間における寄付金の募集に要する費用の額は、寄付金受領額の5割以下におさめるよう求められている。募集費用には、寄付金受領証の発行事務に要する費用、職員の人件費、ポータルサイト運営事業者に支払う費用などが含まれる。
4.    返礼割合3割以下基準
返礼品等の調達に要する費用の合計額は、個別の返礼品ごとに寄付金額の3割以下におさめる。物価上昇による変動も例外とはならないため、返礼品の調達費用の変動に応じて数量や寄付金額の調整を行う必要がある。
5.    地場産品基準
返礼品は、“都道府県等の区域内において生産された物品または提供される役務その他これらに類するもの”とされている。例えば、区域外産の肉を区域内で加工しているものや、地域との関連性が希薄な役務は地場産品基準に適合しない点に注意が必要。

成功事例(宮崎県都城市・千葉県南房総市)

case.1 宮崎県 都城市

都城市は、多くの寄付金を集めている注目の自治体だ。同市では、平成26年からふるさと納税の件数と寄付額を大きく伸ばしている。

当時の市長は市の対外PRに注力すると明言し、「みやこんじょPR課」を新設し、各種メディアへの露出や新たなイベントを開催するなど様々なPRを行った。その一つとしてふるさと納税にも取り組んできた背景がある。

同年10月、ふるさと納税をリニューアルするにあたり、“分かりやすいPRが必要”として、返礼品を“肉と焼酎のみ”にする大胆な改革を行った。また、返礼品の質にもこだわり、他自治体との差別化を図った。

その結果、平成26年度の寄付額は、前年度比50倍を超える約5億円を達成し、その後も多くの寄付者から寄付金を集めている。

case.2 千葉県 南房総市

南房総市では、ふるさと納税で得た寄付金を子どもたちのための事業に活用するとしている。

そのうちの一つ、「ふるさと育英サポーター制度」は、“返礼品なし”で寄付金を募る形をとっている。同制度は、学校外教育サービス利用助成事業や、進学のための奨学資金に充てられる。

また、寄付金は毎月2,000円からの定額で募っており、クレジット決済による自動引き落としが可能だ。

子ども医療費助成事業や放課後児童健全育成事業、発育発達支援事業 などに寄付金が活用されている。

同市では、寄付金の使途と事業費をホームページで公開しており、寄付者はその使途をいつでも把握できるようになっている。

ふるさと納税はPRや行政サービスの向上に活用できる

多くの自治体が活用しているふるさと納税は、寄付金による税収向上とそれによる行政サービスの向上に加え、自治体のPRにも役立てられる。自治体の認知度が上がり、関係人口を増やすことで、地域の活性化も目指せるだろう。

ふるさと納税制度を積極的に活用したい自治体は、制度理解を深め、適正に運用するよう注意しながら施策を実施していく必要がある。

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