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関係人口とは?持続可能な共生のための取り組みについてご紹介!

「関係人口」とは、その地域に居住してはいないものの、経済的・文化的な関わりを持つ人々のことを指す。
これまで行政では、観光や仕事で地域を訪れる「交流人口」や、地域に居住・移住する「定住人口」を増加させることで、地方の人口減少を解消したいと構想してきた。しかし地方へ定住してみたいと希望する人はいても、実際には仕事や家庭の問題などで実現は難しいものだ。そこで政府は交流人口でもなく定住人口でもない、その中間に位置する関係人口を創出することで、地域の活性化を目指している。

関係人口が地域づくりの担い手となるためには、地方自治体の後押しが必須だ。本記事では、関係人口を増加させるための具体的な施策や取り組みの事例を紹介する。

関係人口とは

関係人口とは、居住・移住する「定住人口」でもなく、観光目的の「交流人口」でもない、いわば中間に位置する人々のことを指す。
地域の発展に貢献できる人々は、必ずしもその地域に居住しているわけではない。地域にルーツがある人、地域の文化を愛する人、特別な思い入れがある人などを関係人口として、地域に関わりの深い人と位置付けている。

地方の人口減少や高齢化の課題に対して、関係人口は新しい視点で地域の魅力の再発見や住みやすい環境の創出に貢献するとともに、地域の活性化に重要な役割を果たすと考えられている。

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関係人口を増やすには

地域づくりの担い手となる関係人口を増やすためには、地方自治体が積極的に地域の魅力を発信する必要がある。オンラインでのイベントやリアル体験イベントを組み合わせ、観光して終わりにならない工夫が必要だ。

SNSやフリーペーパー、メディアを通しての発信も欠かせない。「地方で定住してみたいが、仕事の都合などで難しい」と考える人々に、まずは地域の良さを知ってもらうことが大切だ。
都会で暮らす人々が地方に関わるためには、多様なライフスタイルに対応していくことがポイントとなる。

そのための施策としてどのようなものがあるかを、次の項目で詳しく解説する。

具体的な施策

関係人口を増やすための具体的な施策をみていこう。

◆二地域居住

二地域居住とは、都市と地方で生活拠点を持つ暮らし方のことをいう。基本的には都会で暮らし、一定の期間だけ地方で暮らすといった生活をしている人が多い。リゾート地の別荘というよりは、古民家や空き家をリノベーションして思い思いの生活を築くスタイルが好まれている。

二地域居住のメリットは、都市と地方それぞれの良さを生かせる点にある。将来的な移住までは考えていないものの、好きなときだけ田舎暮らしを満喫したい——このような過ごし方が可能だ。

デメリットとしては、交通手段と住居管理がある。地方での移動手段は基本的に車が必要になるため、自動車免許を所有していない人にとっては移動が不便だ。また、住居の管理費・維持費のコストもかかるため、ワーケーションよりもハードルが高くなる。

移動と住居管理の課題を解決すれば、地域への継続的な関わりを期待できる。長期的な地方での暮らしの中で地域の文化やコミュニティに対する理解を深めることができ、地方創生への貢献にもつなげられるだろう。

◆週末移住・季節移住

週末移住は、平日は都会で働き、週末は地方で過ごすスタイルだ。リタイア世代の週末田舎暮らしのイメージがあるかもしれないが、子育てをきっかけに週末移住を選択する若い世代が増えている。平日は都会の学校に通わせ、週末は地方でのびのびと子どもを遊ばせる。あるいは仕事の疲れを癒やすため、自然の中に休息を求める人もいる。

季節移住は、例えば夏季には北海道、冬季には沖縄で暮らすといった、季節に応じて生活しやすい地方を選んで生活するスタイルだ。

週末移住・季節移住のいずれも、地域のコミュニティとのつながりを増やすことで愛着を持ってもらうことが大切になる。地域との長期的な関係を築くことができれば、関係人口を増やす効果的な手段となるだろう。

そのほかにも、ワーケーションやリゾートバイトなどの施策が考えられる。地方の特性や資源を活かして、都心の人々が参加しやすい施策を実施すると良いだろう。

関係人口創出の事例

自治体が関係人口創出のためにどのような施策を実施しているのか、その事例をみていこう。

Case.1 和歌山県(わかやましごと・くらし体験) 

和歌山県では「移住に興味を持ってはいるもののまだ将来は分からない」という人に向けて、和歌山での生活と仕事を体験できる「しごと・暮らし体験」を実施している。県内事業者のもとで仕事をしながらゲストハウスに宿泊し、実際に和歌山での暮らしをイメージできる。最大2泊3日の「起業・就農コース」と、最大5泊6日の「就労コース」があり、製炭からITまで182事業所以上が登録※している。参加者からは滞在しながら地域情報を収集できると好評で、令和2年度は70名以上の参加者があり、移住・就労につながる事例も報告されている。 

※和歌山県「しごとくらし体験  わかやまLIFE」より(令和6年1月5日時点)

Case.2 奈良県明日香村(あすかオーナー制度) 

農家の高齢化による荒廃農地が増加している明日香村では、歴史的景観を守るために「あすかオーナー制度」に取り組んでいる。平成8年度に開始した「棚田オーナー」は、地域住民の指導を受けながら田植えや稲刈りなどの農業活動を体験できる。1年を通してイベントを計画しており、収穫だけに終わらない地域住民との交流を深めることを目的としている。
さらに平成10年度には「うまし酒オーナー」、平成12年には「一本木オーナー」を開始。各地域の耕作放棄地を解消するために様々なプログラムを展開している。 

Case.3 岐阜県飛騨市(民間企業と連携!飛騨市ファンクラブ会員数7,000人突破中!)

飛騨市が平成29年1月に立ち上げた「飛騨市ファンクラブ」は、令和6年1月5日現在、会員数1万2,300人※を突破する人気だ。平成28年に飛騨市を舞台とした人気アニメ映画のヒットにより注目を集め、観光客が増加。この機会を活かそうとファンクラブを立ち上げ、関係人口の増加に努めた。

会員には、飛騨市オリジナル会員証、飛騨市PR用の名刺、市内の協力店舗での特典、会員限定イベント参加権、お得な情報の提供などが提供される。商工会議所や民間事業者を巻き込み、会員数1,000人を目指して地道な広報を続けた。SNSやふるさと納税業務と提携した広報の結果、口コミなどで認知が広がり、飛騨市に貢献したいというファンは現在も増加中である。 

※飛騨市「飛騨市ファンクラブ」より

関係人口創出がもたらす、新たな地方の可能性

関係人口の創出には継続的な取り組みが必要だ。具体的な施策としては、二地域居住、週末移住・季節移住の機会提供などが考えられる。地方の特性を活かしながら継続的な関わりを推進することで、地方に新たな息吹をもたらしてくれるだろう。

施策の中には必ずしも定住につながらないものもある。それでも地方の魅力を発信し、興味を持ってもらうことで、地方にも新たな可能性が広がるだろう。今回の特集で紹介した自治体の取り組みは、その可能性を示唆してくれる好例といえる。ぜひ参考にしてほしい。

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