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シビックプライドとは?醸成のメリットと自治体の取り組み事例の紹介。

地域社会を活性化し、住民の協力を促進する「シビックプライド」に、近年注目が集まっている。その理由は、シビックプライドを高めることで定住率が向上し、新たな住民をも惹きつける効果が期待できるからだ。少子高齢化・人口減少が進む今、自治体間での競争は激しくなるばかりである。そうした中、今後もシビックプライドの重要性は、一層増していくだろう。今回はシビックプライドについて、その定義やメリット、そして自治体の先進事例を紹介する。

【目次】
 • シビックプライドとは
 • シビックプライドがもたらすメリット

 • シビックプライドを醸成するには
 • 各自治体の取り組み事例
 • シビックプライドの醸成に取り組む意義は大きい

 

シビックプライドとは

シビックプライド(Civic Pride)は、地域や自治体に対する住民の誇りや愛着、そして地域社会に貢献する意識を指す言葉である。地域住民のシビックプライドを育むことは、地域社会の活性化や魅力の向上に寄与し、住民の協力を促進する重要な要素となっている。
 

‐ 定義と概念の理解 -

シビックプライドは、「自分が住んでいる地域に対する誇り」と定義される。 住民が自分たちの地域や自治体に誇りをもち、それを支え改善しようとする姿勢をあらわす。ここで重要なのは、単に「郷土愛」や「郷土意識」を指示しているわけではないということだ。

大切なのは、その地域社会に住む一住民として、地域の発展に貢献していこうという意識である。その当事者意識こそがシビックプライドであり、その意味では生まれ故郷であるかは関係ない。たとえその地域が生誕地ではなくとも、住んでいる都市に対して住民が誇りをもっているのであればシビックプライドといえるだろう。

似た言葉に「シティプロモーション」があるが、両者の違いは主にその対象の違いにある。シビックプライドは「地域内」の住民の意識を指すのに対し、シティプロモーションは「地域外」への働きかけを意味する。ただ、両者は互いに補完関係にあるため、シティプロモーションの一環としてシビックプライドという言葉が使われることも多いという。

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- 歴史と起源 -

シビックプライドの起源 は、19世紀までさかのぼる。イギリスで18世紀半ばから産業の変革と石炭の利用によるエネルギー革命がおき、それに伴い社会構造も大きく変わり、技術革新や製鉄業の発展、さらに動力源としての蒸気機関の活用が進み産業革命がおこった。

産業革命は都市基盤にも大きな変化をもたらし、工場の周辺に労働者が住むようになり、都市化が進んだのだ。イギリス国内にそういった工業都市が相次いで乱立し、都市間での競争も激しくなっていく。そのため、住民のアイデンティティを築くためにシビックプライドという概念が誕生したといわれている。

日本でシビックプライドが語られるようになったのは2010年前後であるが、自治体関係者を中心に近年注目が集まるものの、全体としてはまだ浸透していないのが現状といえるだろう。

シビックプライドがもたらすメリット

シビックプライドの知名度はまだ限定的であるものの、それが地域社会にもたらすメリットは多岐にわたる。

例えば、一般にシビックプライドの高さと定住率は比例関係にあるといわれる。そのため、シビックプライドを高めれば、人口流出を抑えることができるだろう。さらに、住みやすいという評判が広まれば、新たな定住者や移住者を引き寄せる効果も期待できる。そうなれば少子高齢化の改善につながり、若者の転出減や出生率増加などが実現できる可能性も秘めている。

さらに、シビックプライドを醸成することで地域へのコミットメントがより強まるため、地域サービスの質向上や人的交流の活性化も期待される。住民同士が協力しながらまちづくりを行ったり、イベントや文化活動を主催したりと、活気ある住みやすい地域が形成できるだろう。

シビックプライドが犯罪抑制にもつながるといわれることもあり、まさにシビックプライドの醸成に取り組むことはいいことずくめと言っても過言ではないだろう。

シビックプライドを醸成するには

シビックプライドを醸成するために、様々なアプローチ方法があるが、まずは地域の魅力を外部に発信することが不可欠である。自治体が率先してその地域にしかないオリジナリティを外部に発信することで、地域の認知度が上がる。そうなれば、住民も自分たちの住んでいる地域に自信がもてるようになり、地域への誇りが一層高まるだろう。

また、制度や政策の整備も欠かせない。地道ではあるが、未解決の地域課題を一つひとつクリアにしていき、住民が住みよいまちづくりをしていくことが必要である。住民参加型のイベントやプロジェクトを支援するための枠組みを整え、住民が自分たちのアイデアや活動を実現できる環境を整備するというのも効果的である。

さらに、住民に対して直接できるアプローチとしては「地域学習」が挙げられる。これはイベントやワークショップなどを通じて、その地域の中にある魅力を再発見し、抱えている課題の解決策を考える教育手法である。地域学習は、小学校や中学校などの教育現場で実施されるのが一般的であるが、やり方次第で世代を問わずに実施できるだろう。

各自治体の取り組み事例

Case1.さがみはらみんなのシビックプライド向上計画(神奈川県相模原市)

相模原市は2021年、地域のシビックプライド向上を目指して「さがみはらみんなのシビックプライド条例」を制定した。全国の自治体で初めての試みであり、地域社会への参加を奨励するための重要な一歩だといえるだろう。

同市がシビックプライドの醸成に動いた背景としては、住民同士のつながりの希薄化や地域活動の担い手の確保などがある。「自分の住んでいる区以外に行ったことがない」という住民も少なくなく、そういった状況を打破するために取り組みが進められている。

KPIとしては継続居住の意向や認知度などが設定されており、そのために外部への発信やイベントの開催、ファンサイトの開設などが行われている。

同市が運営する「さがみはらファンサイト」は、地域の魅力を発信するプラットフォームとして機能するほか、相模原のことを知って学べる「さがみはら検定」、相模原の魅力的な写真を自由に投稿できる「さがみはら Favo」といった独自のコンテンツが楽しめる。(2023年9月現在サイトリニューアル中)
 

Case2.マグマシティ(鹿児島市)

鹿児島市では「マグマシティ」というプロジェクトを展開し、住民のシビックプライドを高める取り組みを行っている。同市の調査によれば、住民のまちに対する愛着・誇りは、首都圏や関西などの大都市圏より高いことが分かっている。一方で、情報発信不足や若年層の転出超過が課題となっており、そういった現状・課題を踏まえたシティプロモーション計画が組まれている。

このプロジェクトでは、「都市ブランディング」「シビックプライドの醸成」「関係人口の拡大・深化」という軸で取り組みが進められている。この3つの取り組みは密接な関係にあり、同時に取り組んでシナジー効果を生むのがねらいだ。

ことシビックプライド醸成の取り組みにおいては、大規模ワークショップ「PLAY CITY! DAYS」を開催。約100人の住民が対象となったこのワークショップでは、鹿児島市のPR動画を住民自らで制作したり、より良いまちにするためのプランをまとめたりと、地域の魅力を再発見し共有できる場が提供されたという。

シビックプライドの醸成に取り組む意義は大きい

シビックプライドは、住民が自分たちの地域に誇りと愛着をもち、地域社会の発展に貢献する重要な概念である。知名度としてはまだまだ低いものの、シビックプライドを育むことのメリットは大きく、転出抑制や少子高齢化、地域活性化など様々な効果が期待できる。

その醸成には、魅力の発信、制度の整備、住民参加型のイベント開催、地域学習の実施など、複合的な取り組みが必要となる。本記事では先進事例を紹介したが、まだまだシビックプライドに取り組む自治体は多くない。だからこそ、シビックプライドの醸成に取り組む意義は大きいといえるだろう。

 

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