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【相談室】厳しい指摘ばかりの上司との付き合い方について教えてください。

気づけば中堅と呼ばれる立場になり、業務範囲も仕事量も増え、さらには結婚・出産・子育てとライフスタイルも変わったことで、ますます忙しく過ごす日々。仕事と生活とのバランスを考えると、今後のキャリアについて悩みや不安を抱えている方も多いでしょう。

今回は、「上司からいつも厳しい指摘ばかりで正直気持ちがめいっています。仕事に対して厳しい上司との付き合い方を教えてください」といった相談に、山形市 健康医療部 健康推進課課長の後藤 好邦さんに回答いただいた。

【連載】
case1:出世しても増えるのは仕事と責任ばかりでこの先が不安です。

case2:係長として期待される役割を果たすために何ができるでしょうか。
case3:忙しく時間がない中、課外活動に取り組むべき理由が分かりません。
case4:年上の部下や、やる気のない部下に対してどう接すればいいか分かりません。

case5:どうすれば組織横断的な取り組みや官民連携事業を上手に進められますか? 
case6:厳しい指摘ばかりの上司のとの付き合い方について教えてください。 ←今回はココ

お悩みcase6

係長として係に課せられたミッションを果たすため、係員とともに精いっぱい仕事に取り組んでいるつもりなのですが、課長はそう思っていないようで、いつも厳しい指摘ばかり受けています。正直、気持ちがめいってしまい、仕事にも身が入りません。仕事に対して厳しい上司との付き合い方を教えてください。

係長に求められる“ボスマネジメント”とは。

中間管理職である係長は、課長と係員をつなぐ橋渡し役として、双方の立場を理解しながら対応しなければならず、本当に大変なポジションだと思います。部下の想いをくみ取りながら係の意見を取りまとめ、それを上司である課長に伝える。そして、その伝えたことに対する課長の判断を自分なりにかみ砕き部下に伝える。

その点では、上司と部下とのコミュニケーションを円滑にするための翻訳家としてのスキルも求められます。こうした状況の中で、課長との折り合いがうまくいかないと非常につらい状況に陥ります。人には相性がありますので、100%うまくいく上司との付き合い方はないかもしれませんが、私なりに気を付けてきたことをお話ししたいと思います。

さて、皆さんは“ボスマネジメント”という言葉を聞いたことがありますか。ボスマネジメントとは、部下が自身の想いや目標を成し遂げるために、上司へ積極的に働きかけることです。

ちょっと乱暴な言い方をすれば、自分たちの意見や考えを実現するために、上司を上手に使うことでもあります。その立場になって改めて分かったことですが、課長になると大抵のことは自分で決められます。確かに、政策的なことや住民に大きな影響をおよぼすことなどは、首長や部長の判断を仰ぐ必要はあります。

しかし、課長の権限で決められることに比べれば、それほど多くはありません。首長や部長へのレクチャーの数に比べて、課長に確認することが圧倒的に多いことからも明らかです。そのため、係長が仕事で何かを実現するためには、まずは課長に納得してもらわないと先に進まないということです。このような状況を踏まえると、課長に対するボスマネジメント能力は、係長にとって非常に大事なスキルといえます。

信頼を得るための行動を心がけること。

ボスマネジメントで大事なことは何でしょうか。私自身は上司から共感を得ることだと感じています。

なお、共感には“信頼”と“魅力”という2つの要素があり、このうち“信頼”が特に重要だと私は感じています。それは、どんなに魅力的なことを提案したとしても、そこに信頼がなければ正しく評価されない可能性があるからです。皆さんのまわりにも「あいつのことは信用できない」といわれる人がいるかもしれませんが、そういった評価を上司からもたれた時点で、やりたいことが実現できる可能性は一気に下がります。

逆に「あいつは日ごろから一生懸命頑張っているから、何とかしてやりたい」と思われていたら、その可能性は高まるでしょう。そのため、このように上司から思ってもらえるよう、普段から信頼を得るための行動をとる心がけが必要で、こうした意識をもつことがボスマネジメントにとっても重要なことです。

上司の性格・考え方などを観察・分析すること。

それではボスマネジメントを実践するとは具体的にどういったことなのでしょうか。ここで1冊の本を紹介します。

それは『官僚に学ぶ仕事術』という本で、現在、静岡県掛川市長を務める久保田 崇(くぼた たかし)さんが、国家公務員時代に書き下ろしたものです。実はこの本を通して、私はボスマネジメントという言葉を初めて知りました。出版後、程なくして係長に昇任したこともあり、私自身、当書籍から多くのことを学ぶことができたと感じています。

この本の中で、久保田さんはボスマネジメントについて、“私が上司と付き合う上で気を付けていることは、上司を一人の人間として、よく観察し、分析しておくこと”としたうえで、上司の性格や考え方などを考慮しながら、資料づくりなどを行うことで上司の理解も深まり、政策決定までのプロセスも早くなると説いています。

人は一人ひとり性格も違えば、趣味や趣向も異なっています。当然のことながら、仕える上司も同様で、頭が固い人もいれば柔軟に考えられる人もいます。部下の意見に真剣に耳を傾ける人もいれば、話も聞かず自分の意見を押し付ける人もいるでしょう。また、簡潔な文章を好む人もいれば、様々な説明を盛り込んだ長文を好む人もいます。

どちらが良いとか悪いとかではなく、まずはそうした上司だという事実を受け止め、その人に合った対応を心がけることが大切です。


それは決して、ごますりや迎合するということではなく、あくまでも相手に合わせた接し方を心がけるということです。つまり、どういった接し方や提案の仕方をすれば共感してもらえるのか、上司に応じた方法を考え実践することが大事だということです。上司との折り合いがうまくいっていないという皆さん、どの上司にも同じように接していませんか。上司に合わせた接し方に取り組んでいますか。

人間関係がうまくいっていないとき、相手が変わらなければ、自分を変えるしかありません。このことは部下との関係性にも当てはまることですが、上司との関係性においては特に求められます。仕事に真剣に取り組むことに加えて、こうした上司に合わせた対応を心がけることで皆さんへの信頼は徐々に高まっていき関係性も改善していくと思います。ぜひ実践してみてください。

また、上司に提案する際に重要なことは、それを実践することによる課長にとってのメリットや組織にとってのメリットをしっかり伝えることです。

メリットの伝え方もボスマネジメントにとって重要な要素です。首長の考えや総合計画における重点項目との関係性を踏まえたメリットだと課長の関心も高まります。私自身も「この取り組みを実施することで、市長が重視している〇〇施策に貢献できます」と伝えながら、自分たちのやりたいことを課長に提案してきました。

こうした提案を行うことによって、仮にその提案が通らなかったとしても「〇〇係長は、政策的な貢献を意識して仕事に取り組む人材だ」と課長が意識するようになり、そのことが前述した信頼につながるともいえます。

折り合いがつかなくても自分だけで解決しようとしない。

ここまで上司に合わせた接し方や上司にメリットを伝えるといったボスマネジメントの手法についてお話しましたが、こうしたことを実践しても上司と折り合いがつかない場合もあります。その場合には第三者に相談することが大事です。

課内のほかの係長でも、課長補佐でも、部長でも良いと思います。自分だけで解決しようとすると、それが負担となり心身に異常を来す場合もあります。特にパワハラ系の上司の場合には、どんなに努力をしても実にならないことが多いともいえます。決して一人で抱え込まず、その悩みを誰かと共有するようにしてください。自分で自分を守ることも大切です。

長い人生において、いろんな人との出会いや関係性を構築することが成長につながります。仕事においても同様で、上司や部下との関係性から学ぶことや気づくことも多いと思います。その関係性をより良いものにしていくことが成長や成果につながりますので、そのような関係性を築けるよう、まずは自分にできることを実践してみてください。自ら積極的に動くというのがボスマネジメントの極意です。
 

後藤 好邦(ごとう よしくに)さん

山形市 健康医療部 健康推進課課長。1994年入庁。納税課、高齢福祉課、体育振興課冬季国体室、企画調整課、都市政策課、行革推進課を経て現職。総合計画の進行管理や次期総合計画の策定、仙台市との連携などを担当。自治体職員が横のつながりをもつ機会を生み出すため、2009年6 月に岩手県北上市の職員らとともに「東北まちづくりオフサイトミーティング」を発足し、会員を900名になるまで拡大させるなど、人・組織・地域・色々なものをつなぎ、東北、そして日本を元気にするための活動を実践している。

著書:

 

 

 

 「自治体職員をどう生きるか 30代からの未来のつくり方」(学陽書房)

 


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