人のためになる仕事を!という思いで公務員になったものの、若手の方は特に、失敗に対する恐怖心を抱いていたり、組織体制や風土にギャップを感じ、不安に思ったりしている方が多いのではないでしょうか。
今回は、上司との協議で思うように説明できません……といったお悩みに対し、元 島根県総務部財政課課長の芳賀 健人さんに回答いただいた。
【連載】
case1:ミスや失敗が多く、そのたびに落ち込んでしまいます。どう対処すればいいでしょうか。
case2:今の仕事がやりたいことではなく、モチベーションを高く仕事に取り組むことができません。
case3:上司との協議で思うように説明できません。何から気をつければいいでしょうか。 ←今回はココ
お悩みcase3
上司との協議で思うように説明できません。何から気をつければいいでしょうか。
堂々と説明を
私も若い頃、上司を納得させられる説明ができず、苦労していました。そのため今回は、私が説明の際に気をつけている“型”について、お話したいと思います。
まず、説明が苦手な方は、堂々と話す心がけをしてみてください。というのも、おどおどして説明されると、聞き手は、この仕事は大丈夫かな?と不安になってしまいます。そして不安に思ったら、色々質問したくなってしまいます。
そうした場合、往々にして質問された側はうまく答えられず、場が停滞してしまいがちです。まずは形からと思って、相手の目を見て堂々と話し、相手を安心させましょう。
案件名・種類からはじめる
仕事をしていると、時々こういうことがあります。
「先日、○○さんから○○という話がありました。その後、○○さんに確認したところ、○○と言われました。○○を調べたら、○○でした。………それで、どうしましょう」。
私も若い頃、このように出来事を時系列順に思い出しながら、説明していました。ただ、こうした場合、最後の「どうしましょう」を聞くまで、聞き手は何が求められているのか分からず、なかなか頭に入ってきません。
そこで、堂々と説明することに加え、“ひと言目”として、案件名と種類を宣言してみてください。
例えば「~のスケジュール設定についてご相談です」「~の会議についてご報告です」といったフレーズです。
そうすることで、相談なのか・報告なのか、急ぎなのか・急ぎじゃないのか、ルーティン案件なのか・イレギュラー案件なのか、聞く側は気持ちの準備ができます。
相談であれば自分に判断が求められるため、相手の話を丁寧に聞こうと意識します。報告であれば、終わったことなので、ある程度リラックスして聞きます。また、急ぎであれば、間違った判断をして手戻りが発生しないよう、集中して聞きます。ルーティン案件であれば、リラックスして聞きながらも、例年の対応はどうだったか、今年はそれと異なる対応をするかなどを頭に巡らせます。
さらに応用編として、どこまで了解を得るべき案件かも伝えられると、なお良いです。
上司が判断すれば次に進む話なのか、幹部に方針を図らなければならない話なのか。後者であれば、上司は幹部の顔を思い浮かべ、了解を得るためにはどうするかを考えながら話を聞きます。
このように、ちょっとしたひと言で、聞き手も次に取るべき一手を考えることができ、スムーズな協議につながっていくかと思います。
相手の様子を見ながら説明する
次に、余裕があれば、聞き手の様子を見ながら説明してみましょう。
若い頃の私は、自分の言いたいことを伝えるのに必死で、聞き手の様子を見ることはできませんでした。資料に書いてある内容を読み上げつづけ、顔を上げると、上司の目が資料の前半で止まっていたことも、しばしばでした。
ただ、考えてみると、発した言葉は相手に届かなければ意味がありません。その意味では、説明のゴールは、“自分が素晴らしい説明をすること”ではなく、“説明した内容が相手に伝わり、理解・納得され、相手に行動・判断してもらうこと”かと思います。
そのため、慣れてきたら説明の際には、目の前の資料に自分の目をくぎ付けにするだけではなく、相手の様子に気を配れると良いと思います。
例えば、相手が自分の説明箇所を順調に追ってくれていれば、そのまま続けても良いですが、相手が途中で止まっているなら、無理に続けても相手の頭には入らないでしょう。
説明の途中で相手の様子を見て、“ここまでのところは大丈夫ですか?”と、区切るのも良いですね。
また、相手によっては“説明を聞きたいタイプ”と、“資料があるなら資料をまずじっくり読みたいタイプ”がいます。「ちょっと読むね」と言われたら、じっと相手の様子を観察し、質問に備えましょう。
スキルは見て盗むこと
以上、説明の仕方についてお話をしましたが、もし機会があれば、先輩・上司の説明を観察してみてください。
“上司の説明は落ち着いていて、安心感があるな”、“このひと言目、今度使ってみようかな”、“資料中の番号を読みながら、聞き手の目を誘導しているな”など、観察から学んだことをまねて、アレンジと実践を繰り返す中で、自分なりの説明の仕方が見つかるかもしれませんね。
今回のお話も、スキルアップの一つの考え方として、参考にしてもらえるとうれしいです。
芳賀 健人(はが けんと)さん
元 島根県総務部財政課課長。福島県出身。平成25年に総務省に入省。長崎県、大臣官房、自治行政局などで勤務後、平成31年4月から令和5年3月まで島根県に出向。出向中、若手職員向けに仕事の仕方の連載に取り組み、令和5年3月に「知っていると仕事がはかどる 若手公務員が失敗から学んだ一工夫」(ぎょうせい)を出版。高等学校教諭一種免許(公民)取得。
著書:
「知っていると仕事がはかどる 若手公務員が失敗から学んだ一工夫」(ぎょうせい) |
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