人のためになる仕事を!という思いで公務員になったものの、若手の方は特に、失敗に対する恐怖心を抱いていたり、組織体制や風土にギャップを感じ、不安に思ったりしている方が多いのではないでしょうか。
今回は、仕事をしているとミスや失敗が多く、そのたびに落ち込みます……といったお悩みに対し、元 島根県総務部財政課課長の芳賀 健人さんに回答いただいた。
【連載】
case1:ミスや失敗が多く、そのたびに落ち込んでしまいます。どう対処すればいいでしょうか。 ←今回はココ
case2:今の仕事がやりたいことではなく、モチベーションを高く仕事に取り組むことができません。
case3:上司との協議で思うように説明できません。何から気をつければいいでしょうか。
お悩みcase1
若手職員ですが、仕事をしているとミスや失敗が多く、そのたびに落ち込んでしまいます。どうしたらいいでしょうか。
失敗をポジティブに捉える
私も20代を振り返ると、青ざめるものから照れ笑いで済ませられるものまで、大小数え切れない失敗をしてきました。そんな当時を振り返りながら、この若手職員さんのお悩みについて、考えてみたいと思います。
まず、若手時代は分からないことが多いです。私も1年目の頃、前任者から引継を受けても言葉が分からず、“分からないことが何か分からない”状態でした。そして、仕事内容だけでなく仕事の進め方も分かりませんので、何かとミスや失敗を重ねていました。
しかし、失敗した分、“次からはこうしよう”と学ぶこともあります。私も当時の先輩から言われた「若い頃は、仕事はどう取り組むものかをつかむためにも、たくさん失敗と質問をしてほしい」という言葉が心に残っています。
そう考えると、“失敗=ダメなことではなく、成長への糧、より大きな失敗をしないための第一歩”とポジティブに捉えられないでしょうか。
抱え込まず早めの相談を
次は、失敗時の対応についてです。若い頃、あるイベントの準備をしていた際、あいさつをしてもらう方の予定を押さえられておらず、別の予定が入っていたことが直前に判明したことがあります。
すぐに上司に報告すべきでしたが、当時の上司は怖い方で、報告を悩んでしまいました。そうして朝から悩み続け、やっと相談したのが夕方。上司から「いつ連絡があったの?」と聞かれ、「今朝です」と答えたら、「報告が遅い」と?られました。
その後は上司から指示が出され、バタバタと調整を行い、無事、出席してもらえることになりました。
こうした経験から、トラブルや失敗のときに切り出しにくい気持ちは、私もよく分かります。
しかし、今となって思うと、こういうときこそ、早めに周囲に相談すれば良かったと思っています。
というのも、上司目線では、早めに相談してもらえれば、チームでカバーできます。上司も、若手職員の皆さんより経験がある分、カバーの方法に詳しいかもしれません。
一方、時間が経つと、事態が悪化し、対策として取り得る選択肢も少なくなっていきます。当事者としても、放置していたのを?られることを恐れて言い出しづらくなります。
加えて、隠していたミスが発覚すると、“なぜこうなるまで報告しなかったのだ”と、隠したこと自体がとがめられます。それによって、皆さんがコツコツ積み上げてきた信頼が崩れれば、今後の仕事がやりにくくなるかもしれません。
そう考えると、対策が思い浮かばなくても、抱えきれないと思ったら、“とりあえず第1報です”と伝えてみてください。?られても良いのです。その上で、上司の指示を仰いで、迅速に対応しましょう。
通常モードに戻るために
最後は、失敗したときの心持ちです。失敗すると、何だかんだヘコみますよね……。私も若い頃は、失敗するたびに自己嫌悪になってしまう時期がありましたし、今も、ひきずることがあります。
落ち込むのは良くないと思いつつも、落ち込んでしまうのは、人間ですし、仕方ないかもしれません。
ただ、それが長期にわたると、精神衛生上も良くないですし、仕事にも影響してくる可能性があります。
そのため、私個人としては、失敗をしたら反省という意味での落ち込みはしつつも、早めにそこから回復して通常モードに戻るよう心がけたいと思っています。
特に部下をもってからは、自分の気のもちようがメンバーにも影響するため、より心がけています。部下と一緒に失敗したときも、上司が早めに切り替えできていると、部下も切り替えやすいですよね。
例えば私の場合だと、通常モードに戻るために次のようなことを考えたりします。
また、落ち込んだときだからこそ、しっかりご飯を食べ、睡眠をしっかりとることも大切だと思います。
好きなことをしてリフレッシュすることも良いですね。
失敗したときの考え方は人それぞれと思いますが、今回のお話が、少しでも若手職員の皆さんの参考になればうれしいです。
芳賀 健人(はが けんと)さん
元 島根県総務部財政課課長。福島県出身。平成25年に総務省に入省。長崎県、大臣官房、自治行政局などで勤務後、平成31年4月から令和5年3月まで島根県に出向。出向中、若手職員向けに仕事の仕方の連載に取り組み、令和5年3月に「知っていると仕事がはかどる 若手公務員が失敗から学んだ一工夫」(ぎょうせい)を出版。高等学校教諭一種免許(公民)取得。
著書:
「知っていると仕事がはかどる 若手公務員が失敗から学んだ一工夫」(ぎょうせい) |
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