超高齢化社会が進むことに伴い、認知症と診断される人の数も増えている。「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によると、認知症の高齢者は平成24年時点で462万人だったが、2025年には約700万人になるとも予想されている。そこで、重要となるのが、認知症の人に寄り添う「認知症サポーター」の存在だ。認知症サポーターとは何か、そして各自治体の事例について紹介する。
【目次】
• 認知症サポーターとは
• 認知症サポーターになるには
• 認知症サポーターの活動例
• 自治体での活動事例紹介
• 今後も期待される認知症サポーター。自治体との連携も重要に
認知症サポーターとは
厚生労働省によると、認知症サポーターとは「認知症に対する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症の人やその家族に対してできる範囲で手助けする支援者」とされている。
先に紹介した通り、認知症高齢者の数は年々増加しており、誰もがかかる可能性がある病気となった。そこで、厚生労働省では、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向け、平成27年1月「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を策定し「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らしつづけることができる社会の実現」を目指すこととした。認知症サポーターはこの戦略の一環として誕生したものである。ちなみに、令和5年6月末現在、認知症サポーターの数は1,465万5,915人である。
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また、厚生労働省では認知症サポーターに期待されることとして、以下の3つを挙げている。
1.認知症に対して正しく理解し、偏見を持たない
2.認知症の人や家族に対して温かい目で見守る
3.近隣の認知症の人や家族に対して、自分なりにできる簡単なことから実践する
※厚生労働省HP「認知症サポーター」より抜粋
認知症サポーターになるには
自治体や企業・職域団体が実施する90分の「認知症サポーター養成講座」を受講すれば、認知症サポーターになることができる。養成講座実施主体別の対象者は以下の通りだ。
また、講師は「認知症サポーターキャラバン」のキャラバン・メイトが担当し、原則として受講料は無料となっている。
認知症サポーターの活動例
認知症サポーターは家庭や地域などで認知症の人に寄り添う存在であるが、それより進んだ「チームオレンジ」というグループでの取り組みが令和元年度より行われているので紹介したい。
1.チームオレンジの目的
認知症の人やその家族への生活面での早期支援。認知症の人本人もグループに参加できる。
2.活動
・ グループ立ち上げの際は、メンバーへのステップアップ研修を行う。また、チームリーダーが認知症の人たちとメンバーのマッチングを行う。
・ グループ単位での活動には、認知症の人の外出支援、見守り、声かけ、話し相手、認知症の人の居宅での支援などがある。
なお、チームオレンジとしてグループを立ち上げ、メンバーのステップアップ研修を行う際は、開催計画表・実施報告書を自治体事務局経由で全国キャラバン・メイト連絡協議会へ送付する必要がある。
3.チームオレンジに期待されること
1人の認知症サポーターだけでなく、グループ単位で見守りを行うことで、認知症の人の引きこもりを防止することが期待される。
また、メンバーである認知症サポーターには認知症の人やその家族を支えること、チームリーダー(キャラバン・メイト)には、メンバーとしての役割に加え、本人や家族から認知症に関する相談を受けた際に、必要に応じて専門機関等につなぐという役割も期待されている。
自治体での活動事例紹介
各自治体での活動事例についても見ておこう。
Case1.名古屋市中区 地域包括ケア推進会議認知症専門部会
愛知県名古屋市の中区地域包括ケア推進会議認知症専門部会では、認知症の人の外出や交流の機会を減らさないよう、「認知症バリアフリー」活動に取り組んでいる。
具体的には、認知症の人や要介護者の人、および介護者が外出しやすいよう、バリアフリートイレやサポート事業者の情報をグーグルマップに表示する「まちぶらオレンジマップ」の作成を行っている。
Case2.群馬県玉村町
群馬県玉村町の「チームオレンジ上飯島 第1」は、地域での生活を望む認知症の人もチームメンバーに入り、小学生の下校時の見守り活動などの社会活動を行っている。
この取り組みは認知症の人が適切なサポートを受けながら、日常生活や社会参加を続けるという好例といえるだろう。
今後も期待される認知症サポーター。自治体との連携も重要に
地域に根差して活動する認知症サポーターの存在はこれからさらに重要になると予想される。認知症の人だけでなく、その家族の声を直接聞くことで、適切な支援もできるはずだ。
自治体としても、認知症サポーターと連携し、認知症の人やその周辺の人たちが本当に求める住民サービスは何かを探っていく必要があるのではないだろうか。