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福島県いわき市

ひっ迫するコロナ対応現場を救った、住民向け医療相談アプリHELPO(ヘルポ)とは?

2025年問題を目前に控えた現在、“健康なまちづくり”は全国の自治体に共通する目標だ。しかし、医療の分野でもリソース不足が起きており、さらにコロナ禍が拍車をかけ、人々の不安は増しているのが実情。

そんな中、いわき市では医療相談アプリHELPO(以下、ヘルポ)の活用を住民に奨励し、そのサービスを通して安心を届けている。さらに、コロナの問い合わせ対応により疲弊していた保健所の負担を、アプリの活用で大幅に減らせたという。同市スマート社会推進課の松本さん、秋山さんに取り組みの詳細を聞いた。

[提供]ヘルスケアテクノロジーズ株式会社

健康課題解消に向けて見出した解決策

いわき市は、地域課題解消に向けた施策の中でもとりわけ健康の分野を重視している。全国でも生活習慣病の出現率や標準化死亡比(※)が非常に高く、循環器系の疾病や2型糖尿病はワーストクラスという状態にあるからだ。

また同市では医師・医療機関の不足も課題となっている。東京23区の倍近い面積の約7割は中山間地域で、健康・医療サービスを受けづらい地域も多く、さらに地域の高齢化と免許返納の問題等も絡んでいる。「こうした状況に危機感を感じていた」と松本さんは語る。

必要なときに必要な健康・医療サービスが受けられる体制をつくらなければ、というのが喫緊の課題でした。そこにコロナ禍が重なってきたことで、より一層厳しい状況に陥りつつありました」。

 

そんな中、ソフトバンクとヘルスケアテクノロジーズから提案されたのが、「HELPO(へルポ)」だった。へルポはスマホから健康に関するチャット相談をはじめ、病院検索やECサイトからの医薬品購入などができるヘルスケアアプリで、全サービスが24時間・365日対応し、このアプリがあれば地域の健康・医療サービスを充実できるというのが提案の内容だった。

採用について検討をする中、同市では令和3年4月に、地域課題をデジタル技術の活用等で解決することをミッションとしたスマート社会推進課が発足。へルポの導入検討が一気に加速した。

「当課発足直後の5月に再提案をいただいたのですが、課題解決に非常に有用だと判断し、まずは導入に向けての調査に入りました」。

松本さんらは、へルポをすでに導入している自治体や、類似のサービスを提供している事業者、それを使っている自治体にヒアリングするなどして情報を収集。並行して、事業実施に向けた庁内の調整も進めて行った。

「当市では、令和2年度に策定した第2期いわき創生総合戦略(以下、総合戦略)において、重点推進モデルの中に“地域医療の充実と健康寿命の延伸”を掲げ、地域の将来を見据えて新しいテクノロジーやサービスを積極的に活用することで、健康・医療の課題に対処していくこととしています。へルポはこの方針に合致するものだったので、庁内の合意も得やすく、正式に導入を決めました」。

※標準化死亡比:人口構成の差異を除去して死亡率を比較するための指標。標準化死亡比が100以上の場合は国の平均より死亡率 が多いと判断され、100以下の場合は死亡率が低いと判断される。


■ 関連記事|【静岡県藤枝市の導入事例】24時間365日利用できるヘルスケアアプリで、住民の不安を解消。
 

 

コロナ禍でも活躍!保健所の業務に貢献したへルポの利便性

同市が比較検討した同様のサービスは7社あったが、その中で「やはりへルポにしよう」という結論に至った理由は、「自社で医師や薬剤師、心理カウンセラー等の複数の医療スタッフを常駐させている点」、そして「24時間365日、ほぼリアルタイムで対応する点」だと松本さん。

「健康・医療サービスなので、スピード感と信頼性が重要です。その基準をへルポは満たしていました。当然、コスト面での比較もしましたが、その点でもほかと比べて有利であり、このサービスなら“最小の経費で最大の効果を上げる”という自治体の原則もクリアできると確信しました」。

ただし、導入に際してはハードルもあった。医師会・薬剤師会への説明と了承だ。特に医薬品のECサイトという機能には薬剤師会からの反発が懸念されたが、逆に「ぜひ登録し、販売側としてこのサービスを活用してほしい」と伝えることで理解が得られた。また、医師会からは、コロナ禍で医療現場がひっ迫しているという背景もあり、前向きに捉えていただいて了承を得ることができた。こうしたハードルを乗り越えた上で、令和3年12月からへルポの運用を開始した。

 

いわき市においては運用当初、へルポ利用の対象者は「妊娠期にある人」と「未就学児を持つ世帯」に限定した。同市でもほかの多くの自治体と同様、少子化や若者の人口流出が大きな課題となっており、総合戦略の中でも子育て支援への注力がうたわれている。

子育て世帯を健康・医療の面からも支えたいという市の思いがありました。また、財源的に無理のない範囲で始めるにあたって、対象を特定する際に当市においては最も必要性が高く、理解を得やすい領域でもあったのです」。

へルポの運用開始後、スマート社会推進課は子育て支援担当部署と連携し市の広報チャネルをフル活用すると同時に、子育てのサポートをしている様々な機関・施設にも周知への協力を依頼。登録者は順調に増加していった。

 

そうした中、新型コロナの第6波で感染者が急増し、保健所の業務がひっ迫。令和4年4月にへルポの利用対象者を拡大することにした。秋山さんは当時の状況をこう振り返る。

「4月の段階では保健所の現場業務がかなり差し迫った状況で、他部署から職員を応援に出してなんとか乗り切っていました。しかし人海戦術ではなくもっと効率的にできないかということを考え、へルポが使えないかと提案したところ、保健所側でも『これはいい』という反応だったので、すぐに濃厚接触者と自宅療養者を利用対象とすることにしました」。

ただし、濃厚接触者と自宅療養者では対応が異なり、その基準は県が決めたものに準じている。こうしたイレギュラーに対応できるかどうかヘルスケアテクノロジーズに打診したところ、同社は快諾。保健所と協力して急ピッチで対応フローをつくり、迅速に対象者を拡大した。

「通常、こういったサービスは全国統一のオペレーションで提供されていると思いますが、ヘルスケアテクノロジーズはいわき市と福島県の仕様に合わせて対応してくれました。とても感謝しています」と秋山さん。この結果、保健所の負担は大幅に軽減し、職員や医師の負担も軽くなったという。

 

コロナウイルス感染者・濃厚接触者の問い合わせに対応

自宅療養者、濃厚接触者に関しては、保健所の職員が24時間体制で電話による対応をしていたが、感染の急拡大でマンパワーが不足し現場の状況がひっ迫。事務職員までが電話対応するような状況に陥った。へルポの導入で症状に関する相談や医者による入院の判断などが任せられるようになり、保健所はもちろん医師の負担も大きく改善された。

 

 

利用を全市民に拡大、そしてさらに次のステップへ。

4月のへルポ利用対象者拡大の後、7月には夏休みのニーズ増加を踏まえて小学生の児童を持つ世帯までさらに対象範囲を拡大。8月からは新型コロナ感染者の急増に対応するため、内田市長の提案で全世帯を利用可能とした。今は、いわき市民であれば誰でも利用できる状況になっており、普及にも力を入れていると松本さんは語る。

非常にいいサービスだと私たちも確信しています。市長もヘルポの活用をSNSで発信するなど積極的に呼びかけを行い、実際に加入者が増えています」。

子育て世帯を対象としたスモールスタートから、一気に市民全体へと対象を拡大したが、サービスに関するクレームは入っておらず、逆に感謝の言葉が松本さんの元にも届いているという。

「子育て中の方から『いつでも相談ができ非常に助かっています。本当にありがたいです。』と連絡をいただいたときには、導入して良かったと思いました。初めての子育てをコロナ禍の中ですることに不安が多かったのだろうと察しますが、へルポでは直接医療機関には相談しにくいようなささいな悩みでも親切に対応してもらえたようです」。

 

もちろん、これらの取り組みで全ての課題が解決したわけではない。松本さんはこれまでの経緯を踏まえて、すでに次のステップを見据えているという。

「例えば、どこの自治体でも課題になっている救急車両の出動の負担があります。比較的軽度の症状で、救急搬送の必要がない方も連絡されるケースが多く、消防の負担になっているのが実情。『ならば有料化を』という案もあるのですが、我々のねらいとしては市民の負担を増やす前に現場の負担軽減で解消したい。そこで消防とも連携して、我々とは別のチャネルから“へルポという便利なサービスがありますよ”ということを市民に周知してもらう、といったことを考えています」。

また、高齢者への対応も課題の1つだという。

「スマホでチャットを……となると高齢者には難しい部分もあります。そこで、現在すでに行っている『お出かけ市役所』という地域に車両で出向きアウトリーチ型で行政サービスを提供する取り組みがあるので、それを通して地域の方にヘルポの案内を進めていこうといったアイデアも出ています。例えば公民館や集会所などで、アプリの入れ方や使い方をレクチャーする、というイメージです」。

 

自治体間の連携も視野に入れ、地域に愛されるサービスを目指す。

全市民を対象として、市長自らその利便性を発信し、さらには他自治体にも広めようとしている同市の健康づくりへの取り組み。その軸にあるヘルポについて松本さんは以下のように解説する。

へルポの一番の強みとして感じるのは、いつでもどこでも相談できる、というリアルタイム性です。夜間や休日でも、おでかけ先でも何かあれば相談でき、自治体や地域医療でカバーできない部分をフォローしてくれるので、市民にとっては心強い存在になります」。

 

そしてさらに、松本さんはほかの世代や地域に向けた展開も視野に入れているという。例えば“フェムテック・メンテック”という分野だ。

「現在、こうした分野の取り組みを市内の企業や団体と連携して進めています。そこで市民へサービスを提供する際に、へルポを利用する方法も有効ではないかという話も出ています。あるいは近隣自治体にもこのサービスを広めて、健康づくりを広域で連携できないかといった考えもあり、働きかけを進めている段階です」。

いわば地域住民の“命綱”となる、へルポの多彩な機能。今後も同市では広報活動などを行い、普及に努めていくという。

「導入前にヒアリングした際、類似のツールを導入している他自治体では“普及が一番の課題”だと言われていました。当市でもまだまだ活用が十分に広まっている状況とはいえないので、今後の利用促進を加速させていこうと考えています」。

 

いわき市 総合政策部 スマート社会推進課
右:参事兼課長 松本 雄二郎(まつもと ゆうじろう)さん
左:事務主任 秋山 泰行(あきやま やすゆき)さん

 

1つのアプリで様々なヘルスケアサービスを提供

 

お問い合わせ

サービス提供元企業:ヘルスケアテクノロジーズ株式会社

E-mail:htkk_helpo_contact@healthcare-tech.co.jp
住所:〒105-0014 東京都港区芝2-28-8

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