ジチタイワークス

長野県松本市,茨城県鹿嶋市,大分県佐伯市

【THE談会】多彩な地域貢献のカタチとは?公務員副業のリアル

読者の皆さん、集合~!

世代や分野を問わず集まった公務員たちが、時にシビアに、時に楽しく「ワーク&ライフ談議」に花を咲かすコーナー。今回は、徐々に広がりをみせる公務員の副業事情に注目!現在副業をもつ皆さんと、活動から得られるものや、庁内調整の注意点まで、リアルな経験を語り合いました。

※下記はジチタイワークスVol.31(2024年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

菊見 祐介(きくみ ゆうすけ)さん
茨城県鹿嶋市 総務部 税務課 主事

2022年入庁。キャリアコンサルタント国家資格を取得し、退庁後や休日を利用して活動中。キャリアカウンセラーとして主に学生の就職活動を支援。

★ キャリアカウンセラーとは?
相談者との対話を通して、個人にとって望ましいキャリアの選択・開発を支援するキャリア形成の専門家。

 

田中 裕子(たなか ゆうこ)さん
長野県松本市 教育委員会 学校給食課 主査

食品会社などを経て、2007年に管理栄養士として入庁。アクティブ・ブック・ダイアローグの認定ファシリテーターとして、各地で活動中。

★ アクティブ・ブック・ダイアローグ(ABD)とは?
1冊の本を複数人で読み合わせ、気づきを得る読書法。田中さんは“対話の手段”としてABDを活用している。

 

後藤 好信(ごとう よしのぶ)さん
大分県佐伯市 建設部 建築住宅課 副主幹

2005年、建築職として入庁。2015年に河野さんと公務員まちづくりユニットを結成。購入した空き家をリノベーションし、地域活性化に取り組む。

★ リノベーションまちづくりとは?
遊休不動産(空き家や空き店舗)の活用を起点に、地域の人や文化をかけ合わせてビジネスを生み、まちの経営課題を解決する手法。後藤さん・河野さんは同地区の空き家を1軒ずつ購入し、その手法を実践中。地域イベントのプロデュースなども行う。

河野 功寛(かわの かつひろ)さん
大分県佐伯市 建設部 都市計画課 副主幹

2010年、建築職として入庁。後藤さんとまちづくりに取り組みつつ、一般社団法人を立ち上げて、地元の高校生と地域をつなぐ活動にも従事。

 

\私が聞きました!/

ジチタイワークス編集室 児玉(こだま)

皆さんとお話しして、公務と副業が相互に活かせていることに感動!副業というより“複”業、パラレルワークも一つの選択肢だと感じました。

 


やりたいことに挑戦したら、それが副業になって今がある。

児玉 皆さんが副業活動を行うことになった経緯を教えてください。

田中 きっかけは、5年前にたまたま参加した他自治体のワークショップでした。公務員と市民が“対話”する姿に衝撃を受け、価値観が変わる体験をしたんです。“私もこういう場をつくりたい!”と火が付きました。同じ頃に参加した研修でアクティブ・ブック・ダイアローグ®(以下、ABD)を知り、対話を促すツールにピッタリだと思ったので、講座を受けてABD認定ファシリテーターに。無報酬の活動が多いですが、大学や企業向けでは謝金をいただくこともあります。

菊見 私は就活時にお世話になったキャリアカウンセラーに触発され、自分も後輩の力になりたいと資格に挑戦しました。鹿嶋市への就職が決まっていましたが、“資格が取れたらキャリアカウンセラーもやる!”と決意。そのタイミングが、入庁1年目の7月でした。活動では、大学生の就活相談や、報酬をいただいてセミナー講師などもやっています。

後藤 私は大学卒業後に地元に戻り、まちをよくしようと若手で団体を立ち上げて活動を始めました。壁にぶつかりながらも手当たり次第に動く中で出合ったのが「リノベーションまちづくり」という手法です。これなら佐伯市でもできると、河野さんとそれぞれ空き家を購入。2階を自宅、1階を店舗やオフィスに改築し、賃料収入を得ています。2年前にはまちづくり会社を立ち上げ、株主として関わるように。まちの人や自分が動き、稼ぐことで、少しでも市の税収につなげようと意識することも大事だと思っています。

河野 私はずっと、自分を変えたいと思っているのに一歩を踏み出せない公務員でした。後藤さんと一緒に、プライベートでリノベーションスクールに参加したことが大きな転機となり、今に至ります。近年では一般社団法人の理事として、高校生と地域や大人をつなげる活動にも従事しています。講演などで報酬をいただくこともありますが、法人活動は今のところ無報酬です。

成長する自分を見せることで、理解が進み、頼られる存在に。

児玉 公務員の副業はハードルが高いイメージですが、皆さんはどうでしたか?

田中 人事からは、自分の余暇の範囲で、社会通念上高額でない謝金なら自由に受け取ってよいという回答でした。

菊見 庁内に前例や規定がなかったため上司や人事に相談すると、一緒に考えてくれて。今は公益性が高い仕事を中心に、都度報告しながら活動しています。最初から相談ベースで話をしたことで、安心してもらえたんだと思います。

河野 新しいことを始めるときは人事に相談しています。まちづくり会社は民間の仲間2人と後藤さんの4人で立ち上げましたが、公務員をしながら営利法人の役員になるのは困難なので、出資を行い株主という形態で参画。佐伯市の判断は、国家公務員規定に準じています。

児玉 副業の経験が公務に活かせたことはありますか?

田中 人脈が広がったことで、頼れる人が全国にできたことですね。3年前に初めて事務職に異動し、正直疲弊していたのですが、ABDでつながった他自治体の人から解決のヒントをもらったことも。本当に心強く感じています。

菊見 学生向けセミナーのアンケートで、“現役公務員の菊見さんだからこそ説得力があった”という言葉をもらうことがあり、公務のモチベーションになっています。副業活動でネットワークも広がり、商工観光課の移住就労説明会に関わるなど、“庁内副業”も始めています。

河野 私も部署を越えたプロジェクトや地域づくりなどの事業に関わる機会が増えました。庁外での地域活動を見て、徐々に認めてもらえたんだと思います。

後藤 空き家の購入や会社設立など、リスクを取ってきたことで、ビジネス感覚が身に付いたと思います。市の事業に対しても、運営や継続という先を見越した視点で考えられるようになりました。

挑戦が公務への活力にもなる!今を諦めず小さな一歩から。

児玉 ビジネス感覚ですか。報酬を得ることにも意義がありそうですね。

後藤 公務員だからボランティアでやるのが正しいと思ってきましたが、続けることが難しいと感じたことも。でも今は頑張って得た資金を元手に会社設立という投資につなげるなど、まちのための活動ができていると思います。

田中 私はある企業から依頼を受けたとき「報酬はぜひ受け取ってください。それに見合う質のものを提供してもらえると思うので」と言われ、対価をいただくことへの意識が変わりました。

菊見 確かにそうですね。私も“報酬以上に価値のあるセミナーにしてみせる!”という責任感につながっています。

河野 公務に対しても、“給与以上の仕事をしている”と胸を張れる自分でありたい気持ちが強くなりました。副業のおかげで公務への意識も変わりましたね。

児玉 最後に、副業に興味のある人や、現状にモヤモヤしている人にエールを!

菊見 副業を勧めるつもりはないんです。趣味やスポーツと同じように、自分らしさを追求する手段の中に副業があるのなら、ぜひ挑戦してほしいと思います。

田中 今の部署で思うように動けなくても、第三の場はつくれるし、自己実現もできる。自分を責めなくていいし、諦める必要はないんです。組織の外に出てみると、世界が開けていくと思います。

後藤 副業ありきではなく、公務員だからこそできる地域課題の解決と副業が一緒にできたら。小さくても“自分事”として携われる何かがあるといいですよね。

河野 そうですね。私もモヤモヤを抱えた公務員でしたが、一歩を踏み出せたことで今があります。踏み出すには勇気が要りますが、いきなりジャンプして高いところに行かなくていい。背伸び程度のことを試しながら、自分に合っていること、できることの領域を少しずつ増やしていけばいいんだと思います。

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