読者の皆さん、集合~!
世代や分野を問わず集まった公務員たちが、時にシビアに、時に楽しく「ワーク&ライフ談議」に花を咲かすコーナー。今回は、管理職として活躍するお二人に、編集室の辻(小郡市から研修派遣中)からお悩み相談!“役職者への昇任”について、ざっくばらんに語っていただきました。
※下記はジチタイワークスVol.33(2024年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
後藤 好邦(ごとう よしくに)さん
納税課、高齢福祉課、体育振興課、都市政策課、行革推進課、企画調整課、社会教育青年課などを経て現職。2013年度より係長、2022年度より管理職。
自治体職員をどう生きるか(学陽書房)
著:後藤 好邦
「自治体職員の生き方」をテーマに、30代からどう過ごし、どう働き、どう生きるか、その実践術を伝える。未来を見据え、地域に飛び出し、時代に合った政策づくりを行うための、必読の一冊。
大阪府八尾市 こども若者部 部長/1989年入庁。
保護課、資産税課、介護保険課、子育て支援課、市民ふれあい課、人権文化ふれあい部、政策企画部などを経て現職。2002年度より係長、2005年度より管理職。
自治体でいきなり課長になったら読む本(学陽書房)
著:吉川 貴代
もっと先だと思っていたのに、急に課長になってしまった!何から準備すればいいの?議会っていつ?そもそも課長の仕事って何がある!?ベテラン管理職が易しくひも解く“課長仕事”の教科書。
辻 裕介(つじ ゆうすけ)さん
道路建設課で4年間、主に道路用地の買収業務に従事。その後はコミュニティ推進課で6年間、自治会などの地域コミュニティ支援に取り組む。2024年4月からは、株式会社ジチタイワークス マガジン編集室に研修派遣中。誌面企画や取材・制作に日々挑戦している。
係員からチームリーダーへ、係長は役割が変わる転機。
辻 私は今年35歳で、同年代がチラホラと係長に昇任しはじめています。自分もそういう年代になったという自覚はあるものの、役職にあまりポジティブなイメージをもてなくて……。お二人は係長になりたいと思っていましたか?
吉川 役職に就くこと自体、発想になかったですね。平成元年の入庁時は、係長でさえほぼ男性という状況。初めて女性係長と一緒に仕事をしたのが11年目で、やっと役職を身近に感じるようになりました。なので、今ここで管理職として話しているのも不思議な感じなんですよ。
後藤 私は、自分がやりたいことを実現するために早く偉くなりたいと思っていたので、係長に昇任し、希望部署に異動が決まったときはうれしかったですね。でも実際になってみて、部下をもつ大変さを初めて痛感。30年の公務員生活の中で、係長1年目が一番きつかったです(笑)。
辻 そうなんですね(汗)。お二人は係長になる前に何か準備をしていましたか?
吉川 そろそろ自分に順番がまわってくるのでは?と思いはじめてから、上司である係長の言動を観察するようになりました。私だったらどうするか、という視点でシミュレーションをしていましたね。
後藤 プライベートで活動していたまちづくりコミュニティで若者と交流もあったので、その経験は少し役に立ったと思います。とはいえ係長として部下と接する上では、仕事ならではの大変さが。それまで自分の仕事だけ考えてやってきたのに、上司を説得し、係員と折り合いをつけ、役割分担をしてチームで業績を上げないといけない。相手のことを考えて仕事をするようになりました。
部下の話を聞き、ともに考え、対話を通して信頼関係を築く。
辻 調整には苦手意識があって、上と下の板挟みが不安です。係員とのコミュニケーションなど、チームを動かすために大事にしてきたことは何ですか。
吉川 最初は誰でも気負いがありますよね。私が常に心がけてきたのは、一緒に考えることです。公務員の仕事は、限られた資源の中でよりよい施策を展開すること。だからこそ、話し合うプロセスが大事なんです。すぐに答えが出なければ、時間を置いてまた一緒に考えるようにしています。できない理由を探すより、できる方法を模索する方が、仕事は楽しくなりますから。新しい部署に異動したときは、上司だからといって知ったかぶりするのではなく、分からないことは部下に聞けばいい。その方が、結果的に信頼関係は早く築けると思います。
後藤 私が大事にしてきたのは、どんなに忙しくても係員の相談には手を止めて向き合うことです。自分に別の意見があったとしても、まず相手の考えを聞き、対話を通して落としどころを見つけていくようにしています。
吉川 私は年上の部下との接し方が難しいと感じた頃がありました。味方になってもらうためには、敬意をもって丁寧に接することに尽きると思います。また、役所内の同世代や、ちょっと上の人と情報交換するのもいいですよ。組織の風土や特徴が分かっている人に相談すると、すごく役に立つアドバイスがもらえることがあります。マニュアルに書けないようなことも教えてくれる(笑)。
後藤 役所内で相談相手が見つからないときは、外に目を向ける方法も。私は係長のとき、ほかの自治体で尊敬できる人と出会い、大きな刺激を受けたんです。その人から学んだことを職場で実践していくうちに、役所内に尊敬する上司ができたり、人脈が広がったりしました。新しい事業を進めるときなどは、やっぱり、中のつながりも重要だと思います。
自分だけで業務を抱え込まず、人に任せて経験値を上げる。
辻 係員に任せるか自分でやるか、業務の割り振りはどう決めていますか?
吉川 基本的に係員に任せて、チェックする側にまわるようにしていました。そうしないと、係員たちの仕事のスキルが上がらないんです。それぞれ抱えている仕事量や、得意・不得意を見極めながら担当を決めていました。繁忙期や緊急度の高い業務は例外ですが、一歩下がって係全体を見渡すことに軸足を置いた方がいいと思います。
後藤 本当にそうですね。今、課長の立場から見ていると、係長が一番業務を抱えて大変そうにしている。もっと仕事は振っていいんです。例えば、私は係員のときから議会の一般質問の答弁書を書かせてもらって、とてもいい経験になりました。係員に頼むと「私にそんなスキルはありません」と言われるかもしれませんが、「できると思っているから頼むんだよ」と伝えてみては。素案だけ考えてもらうなど、まずは経験させてみるのもいいと思います。本人のスキルが上がるし、業務の平準化にもつながります。これは係長の仕事だという固定観念は、取っ払った方がいいですね。分担していくことで、係員が成長できて係長もラクになります。結果的にチームの業績も上がっていくと思いますよ。
辻 もし係長になったら、なるべく仕事を振って責任は自分がもつというスタンスを理想にしていたので、お二人の考えを聞いて安心しました。
成長のチャンス到来と受け止め、自分を信じて頑張ってほしい。
辻 これから係長への昇任を控えている職員に、エールをお願いします。
吉川 係長の内示があったら、まさにチャンス到来です。誰にでもまわってくるものではないし、この人ならできると認められたからこそ来た話です。ありがたくポジティブに受け止め、どんどんチャレンジしてください。決して一人ではなくて、難局は係員も課長もフル動員で乗り越えていくことが大事。そうすればきっと次の道が開けます。子育てや親の介護などの家庭事情もあると思いますが、しんどいときは周囲に助けを求めればいいんです。楽しく公務員生活を送ってくださいね。
後藤 その通りだと思います。係長という立場でしか学べないことってたくさんあるんです。役職者になり、部下をもって仕事をするのは、プライベートの活動では経験できないこと。またとない成長の機会をもらったと考えてください。特別なことをしなくても、係長の仕事を全うするだけで、すごく成長できますから。まずは最初の1年、気負うことなく、不安に感じることもなく、自分と係員を信じて頑張ってほしいです。
辻 一人で抱え込まず、職場の人たちと助け合っていけば何とかなると思えました。日頃から仲間を大事にして、前向きにいきます。ありがとうございました。
令和7年度も 研修派遣 を募集中です!
ジチタイワークスを含むホープグループでは、自治体職員の研修派遣を令和7年度も募集しています。業務イメージや研修スケジュールなどの詳細は、下記までお問い合わせください。
株式会社ホープ 人事部 後藤 ✉goto@zaigenkakuho.com