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【相談】家事・育児との両立が大変で、昇任に意欲的になれません…

異動や昇進、副業、転職…公務員を悩ませるキャリアの問題。

この連載では、キャリアコンサルタントの国家資格を持ち、公務員の仕事やキャリアに関する著作も多い小金井市の堤直規さんに、公務員のキャリアに関するお悩みに答えていただく。

今回は、「仕事と家事・育児の両立」に関するお悩みについて、執筆いただいた。

 

今回の相談者

「家事・育児との両立が大変で、昇任に意欲的になれません。でも、このままだとマミートラックにはまってしまいそうで心配です」(30代女性)

 

こんにちは。本日はご相談ありがとうございます。

お話しを伺っていると、家事・育児との両立が大変なので、昇進したいという気持ちが起こらない。ただ、それが専門性を高めたり、将来的に昇任を改めて考えるときに不利になったりしないか、心配だということですね。

家事・育児との両立は大変な問題ですね。また、昇任が自分の働き方にどう影響してくるかを一度よく考えてみることは大事です。一つひとつ考えていきましょう。

自分たちなりの家事・育児の「分担」「いい加減」を

お話を伺う中で気になったのは「夫が家事・育児を手伝ってくれない」という部分です。

自然に出た言葉だと思うのですが、夫婦お二人とも働いている訳ですから、家事・育児は「分担」するものであって、「手伝う」ものではないですよね。

例えば、夫が早起きして朝に家事をし、朝、妻はゆっくりとして夜に家事をする。妻の負担が何かと大きいので土日は夫が家事をする。学童保育所は妻だけど、学校関係は夫が対応する等々、二人で話し合って考えて、自分たちなりの自然な「分担」ができるとよいなと思います。

その上で、何を大事にするかを考えておくとよいです。例えば、忙しい中でも家族との団らんの時間をつくり、月1回は家族で外食する。必ず子どもの行事には参加する。掃除についてもいつもキレイにしておきたいところとそれ以外を分けて考えておく。そうすると忙しい中でも豊かに過ごせますし、それ以外のことが多少疎かになっても自分を許すこともできます

そんな自分たちなりの「分担」と「いい加減」をつくっていけるといいですね。

ところで、こうした話をすると、年収が高い配偶者に対して引け目を感じて「分担」を言い出しにくいという方がよくいらっしゃいます。

「あるある」だとは思いますが、そこを気にしてしまったら、あなたらしいキャリアを咲かせることはいつまでも難しくなってしまいます。仕事と家事・育児だけでなく、今後のために学習・休養をという時期だってあります。あなたが笑顔で幸せを感じられることは、家族一人ひとりの幸せにとっても必要なことです。

よりよいお互いの未来のために、お互いがそれぞれに笑顔で自信を持って働いていくために、何ができたらよいのか。焦らず諦めず、ぜひそんな話し合いを重ねてください。

昇任することによる「大変さ」「面白さ」

お話からは、係長職や管理職への昇任を意識されているように感じられました。

基本的にはどの自治体も女性の昇任に積極的ですから、無理に急がなくてもよいと思います。自分にとってよいと思える時期に昇任すればいい。「この人に昇任してほしいな」と思ってもらえる存在であろうとすることが大事なのだと思います。

ただ、なぜ自分は昇進したいのか/したくないのか。それによって40代・50代の自分の職場での役割や働き方がどう変わってくるのかは、よく考えてみた方がよいでしょう。

例えば、「係長や管理職は大変だ」と多くの人が思っているように感じますが、そうでもありません。求められる役割や能力が主事・主任とは異なるだけです。ある調査では、女性の方がそのギャップによるショックは低く、一方で「なってよかった」という思いが強いという結果が出ています。女性の方がいわば覚悟を決めて目指し、目指してみたら思っていたほど大変ではなく、やりがい・メリットが大きいということでしょう。一方、スムーズにこなしているように見える男性管理職たちだって当初はショックを受け、それを克服しているのです。

それに、管理職には裁量があるので工夫次第で働きやすくできる面も大きいです。職場がメンバーでうまくまわるようになると、自分自身でやることはグッと減ります。陰日向でそのために何をしてきたかは、あまりわかってもらえなかったりしますけれど(笑)

逆に、現場の第一線で働き続けるのも大変なものです。だから、イチロー選手やキングカズは偉大なのですよね。

昇任しないということは「今のまま」ということではありません。加齢による体調などの変化に加えて、公務員は毎年昇給しますから、その経験年数なりの強みと貢献が求められます。30歳の主任と50歳の主任では給与が大きく違いますから、同じ働きでよい訳はありません。若手からの突き上げをくらうことになります(「若い人々の競争性と攻撃性に対処する」という、この時期に直面する課題とされます)。

管理職は大変かもしれないですが「面白さ」もかなりあります。「チームで成果を出す」ことが何よりの醍醐味です。管理職等として求められるマネジメントやリーダーシップなどを昇任前から学び実践することで、昇任に伴う「大変さ」はかなり軽減されます。

マミートラックに陥らないために

育児等について管理職等から「配慮」されて、負担は大幅に軽減されたけれど、仕事は単純なものばかり。将来につながる重要な経験・実績を積むことができず、ずっと単純な仕事ばかりとなる…そんなマミートラックに陥らないか心配なのですね。

マミートラックを走らされる羽目になるかは、人事当局や上司の理解度に大きく影響されます。理解度が高ければ、そもそもマミートラックが存在しないでしょう。残業が難しい、子どもの発熱などで急に休暇を取る場合もある。そうした時間的な制約には配慮しますけれど、仕事はメリハリを利かせて、質としては相当な貢献となる職務を割り振ることになるからです。そうした職場では協力体制もしっかりとできています。

ただ、残念ながら、この点はまだまだ課題がある場合が少なくありません。ですので、まず自分自身でよく意識して、必要な対応を行っていく必要があります。端的に言えば、将来を見据えて担当・経験しておきたい業務を吟味して、それをいつの時期にどのようにやっていくかの青写真を描いておくことです。例えば、管理職を意識しているのであれば、基本的な行政スキルに加えて、議会対応・人事管理などについても学んでおく。新規事業の立ち上げなどの経験を積んでおくなどが役立ちます。

可能ならば、家事・育児が少し落ち着くタイミングで管理部門等での経験も積めるとよいです。それが難しい場合には、それらの部署・業務に詳しい上司・同期などとの関係を深め、指導や助言を受けられるようにしておけるとよいです。自分を理解して応援してくれる「スポンサー」を意識してつくり、その期待に応えようとすることでリズムができます。
メリハリを付けつつ自分の役割を果たそうとし、今後を意識して謙虚に学んでいることは、必ず伝わります。自治体はどこでも人材不足。謙虚に学んで自らの役割を進んで果たそうとする人材は、喉から手が出るほど欲しいのですから。無理して「スーパー」を目指したりしないで大丈夫。大事なのは「自分なり」を日々磨いていくことです。

ご参考になりましたでしょうか?

家事・育児との両立に昇任、とても大変で悩ましいですね。ただ、自分一人で両立しようとするのではなくて、自分と配偶者と職場の3点で支える形を作っていこうと意識することだと思います。今は大変だと思いますが、ここでの経験と培った関係が今後に大きくつながります。ぜひ自分らしく自分なりのキャリアを。応援しています!
 

今回の処方箋

・自分たちなりの「分担」と「いい加減」をつくっていく

・昇進は無理に急がず、自分にとってよいと思える時期に

・将来を見据えて、どんな経験をいつ積むか、青写真を描いておく


この連載で取り上げてほしいお悩みを募集しています!コチラよりお待ちしております。

 


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堤 直規(つつみ なおただ)さん

小金井市福祉保健部新型コロナウイルス感染症対策担当課長、キャリアコンサルタント(国家資格)。

1971年生まれ。東京学芸大学教育学部卒業、同大学院社会教育専攻修了。2001年小金井市入所。前職はIT関係。情報システム係、国保税徴収担当、企画政策係長、納税課長、行政経営担当課長を経て、2021年10月から現職。2018年にキャリアコンサルタントとして登録。
著書に『公務員1年目の教科書』(学陽書房 2016年)、『公務員ホンネの仕事術』(時事通信出版局)等4冊。2020年度は月刊『ガバナンス』に「未来志向で考える!自治体職員キャリアデザイン」を連載。趣味は旅行と日本酒・ワイン。特にキャンピングカーでの気まま旅。

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