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【相談室】困った上司をどうするか(前編)

勤続数十年と、部課長・課長補佐・課長級と順調に昇進していったものの、日頃の業務の中で、議会対応や部下とのコミュニケーションなど、悩みや不安を抱えている方も多いでしょう。

今回は、困った上司シリーズとして、タイプ別に対処法を八尾市 こども若者部長の吉川 貴代さんに回答いただいた。

【連載】
case1:議会答弁の経験がなく不安です。何をどう準備したらいいでしょうか。

case2:管理職として具体的な調整が苦手です。どうしたらよいでしょうか。
case3:部下の昇任に対する反応にギャップや課題を感じています。
case4:課長から見た困った上司(副市町村長/部・局長編)への対処法について教えてください←今回はココ
case5:課長から見た困った上司(首長)への対処法について教えてください。

お悩みcase4

課長から見た困った上司(副市町村長/部・局長)への対処法について教えてください。

自治体で課長に昇任!

課長になって改めて気づくのは、“課長決裁”で決定できることは、かなり多いということだと思います。

今まで、係長や課長代理として課長にお伺いを立てていたけれど、“もうしなくてもよい” “自分で判断して仕事を動かすことができる”、これが課長の醍醐味です。

ところが、「いやいや、そんなことはない」という課長もおられるでしょう。課長から見た“困った上司”の存在です。

基礎自治体の場合、類型・規模に応じて、組織が課制、部制という違いがあります。本稿の前編では、基礎自治体の課長からみた上司として、副市町村長(以下、副市長)、部長や局長(以下、部長)と想定します。

なお、副市長は1人制の自治体が約8割※1ですから、1人で行政全般を守備範囲とする副市長が多いですし、副市長の配置がない基礎自治体もあります。

そうなると、部長も課長に比べると守備範囲が広い。しかも、この上司たちの多くは50歳代以上※2。彼らが良いほうに変化すると期待するのはムダで、それどころか、年齢・経験というよろいをまとっているだけに厄介です。

割り切って、課長は部下職員と共に快適に仕事できるように過ごせるようにするほうが得策です。以下は、各地の自治体職員経験者の話をもとに、困った上司をタイプ別に列挙してみました。

※1 総務省(「地方自治月報第60号」4(3)副知事・副市長村長の定数に関する調(令和3年4月1日現在)
※2 総務省(「平成30年地方公務員給与の実態」)によれば一般行政職の部局長相当職は52~59歳が約92%
 

◆タイプ別困った上司

課長が「副市長や部長は忙しいだろうから、細かいことは言わなくてもよいだろう」というのは基本的に正しいです。

ところが、副市長も部長も、細かいことも知っておきたい。それはなぜか。課長が担当している事業の中で、議会の一般質問や予算・決算の審査において頻出のものは、気になります。

こういうものは、変更点やトラブルをタイムリーに情報提供するに限ります。

ところが、これでは満足しない上司もいる。この人たちは、政策全般を見るのが苦手で細かいことだけが視界に入る“木を見て森を見ず上司”です。

極度の心配性だと思われますので、変更点やトラブルは報告するという運用が現実的でしょう。議員からの問い合わせに「知らなかった」は副市長や部長が気分を害する可能性が高いです。
 

上司は課長に仕事を丸投げしたのに、“私は聞いていないとキレる上司”は困ります。途中経過をどこまで報告するか見極めが肝要です。

守備範囲が広い上司の場合、日々、様々な報告を受けて打ち合わせをします。全てを完璧に理解して記憶していれば最良ですが、上司の中で優先順位が低いものは、課長が思っているほど覚えていません。

そのため、途中経過を報告するときは、簡単でもメモを提示して説明しましょう。証拠を残すためです。それでも文句を言いだしたら、どうしたいのかを丁重に聞き出しましょう。

上司が曖昧な返事に終始するとしたら、彼・彼女はその事の本質を理解できていないのかもしれません。具体的な事業に関しては課長のほうが詳しいでしょうから、分かりやすさが決め手です。
 

“ああ言えばこう言う上司”も困ります。間違いは誰にでもあり、それを訂正される場合もあると思います。

ところが、間違いでもなく、課長が一生懸命に説明しても、難癖をつける。では、上司はどうしたいのか、そこが分からない。

1と2に共通しますが、上司は自分の考えや知識がないからこういう行動をする。このタイプの上司には、あえて複数の案を示すか上司が好みそうな先行事例を見せるなどの誘導が効果的です。

また、課長が係長たちと議論し、事業の再編をしたい、新たな事業を始めたい提案したのに再編したら利用できなくなる人がいるからダメ、今まで通りが無難などと理由を並べて、提案を否定する。

変化を好まない・恐れる上司は前例踏襲を好みます。このタイプの上司には、再編や新規事業をしないリスクを提示すると良いでしょう。
 

上司を交えて議論し、〇〇事業を廃止することを決めました。首長に説明することになり、上司も同席、首長が難色を示しました。

上司がすかさず、「私も廃止に反対なのですがねぇ」と言い出した。えっ!上司が一変!?これでは人間不信に陥ります。ではどうするか。

首長が難色を示している時点で、この日の説明は切り上げるほうが賢明です。首長が難色を示す理由を聞きだすことに徹します。そして、後日に再チャレンジします。

一変した上司をすっ飛ばして……というわけにはいかないので、上司に手柄をもたせるように立ちまわります。不本意ではありますが、上司を選ぶことができない以上、こういう方法も一案です。

本稿の作成にあたりご協力くださいました自治体職員経験者の皆さん、ありがとうございました。本稿の後編は「困った首長」を予定しています。
 


 

吉川 貴代(よしかわ きよ)さん

大阪府 八尾市 こども若者部長。1989年入庁。人権文化ふれあい部次長、政策企画部長などを経て現職。日本福祉大学社会福祉学部非常勤講師、大阪公立大学大学院都市経営研究科博士後期課程在学中。

著書:

 

 

 

 「自治体でいきなり課長になったら読む本」(学陽書房)

 

 

 

 

 「はじめてでも乗り切れる!公務員の議会答弁ガイド」(学陽書房)

 


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