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長崎県長崎市

公開日:2021-04-09

長崎県 長崎市「yoriyori」

企画・政策
読了まで:5分
長崎県 長崎市「yoriyori」

“まちを彩る”PR誌をピックアップ。魅力を取材し研究発表していきます。

※下記はジチタイワークスVol.13(2021年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

若者とまちの未来にフォーカス。リアルな同世代の声が共感を呼ぶ多様性マガジン。

昨年3月に創刊号が発刊された長崎市の地域情報誌「yoriyori」。若年層をターゲットに絞ったコアな冊子づくりは、庁内への丁寧な説明のかいもあり、前向きに始まった。実際に冊子を見てみると、若者好みのカルチャー雑誌のようにポップな表紙が目新しく、興味をそそられる。ページをめくると、コーナーごとにカラーの異なるイラストや大胆なデザインが取り入れられ、キャッチの斬新さもユニーク。また、30ページを超える情報量と登場する人物の多様さから、パワフルな取材力が伝わってくる。既存の広報紙に見られる“ステレオタイプ”なつくりから脱却し、若者を対象に振り切った制作スタイルは“脱行政”と評され、昨年の「日本地域情報コンテンツ大賞2020」では、新創刊部門で自治体初の最優秀賞を受賞した。

メインコーナー「ナガサキを遊び倒せ」の扉ページ。写真やイラストを織り交ぜたデザインが目を引く。

 

創刊に至った経緯について、担当の松尾さんはこう話す。「日本全国で人口減少が進む中、長崎市も若者の流出を抑え、移住・定住推進や関係人口を増やしたい思いがありました。そこで、大学進学や就職、結婚、子育てを迎える10代後半から20代に長崎を選んでもらうことが、まちの活性化につながるのではと考え、制作が決まりました」。

制作陣は公募で、地域情報に強く取材力のある「長崎文化放送(NCC)」に決まった。広報戦略アドバイザーを交え、編集者、ライター、カメラマンなど長崎出身・在住のクリエイターと長崎市が“手にとってもらえること”“若者に共感を得られる”を意識しながら制作している。3年間で5号の制作を予定しており“遊ぶ”“働く”といった人生の大切なテーマを段階的に特集。現在は4月に発行予定の3号目を制作中だ。(令和3年1月末取材時点)

地元の中華菓子「よりより」から付けたというタイトルも、覚えやすくウィットに富んでいる。「よりよりって噛めば噛むほど、味が出て、おいしいお菓子なんです。ねじれた形からも、長崎の多様な文化や価値観が合わさって発展していく感じがイメージできたので全員一致で決めました」。創刊号では「ナガサキを遊び倒せ」をキャッチテーマに50テーマの遊び場・遊び方を紹介。モデルやインフルエンサーなど長崎出身者、在住者に協力を求め、「長崎県人も知らなかった」との声もあった穴場情報などが盛り込まれた。

長崎で働く人物インタビュー。これまでの歩みにより“働く”をリアルに感じられる。

キラキラの理想だけではない、リアリティが共感の入口。

続く2号は昨年10月に発行。デザイン面での楽しさはそのままに、より深いテーマ“働く”について切り込んだ。「今の若い世代が働くことをどう感じているのか、アンケートを取ると、考えるだけでもエネルギーのいることだと伝わってきました。それを受け、憧れの職業紹介というキラキラした面だけでなく、リアルな長崎での働き方、“自分も頑張ってみたい”と共感を抱いてもらえるような誌面を意識しました」。

また、制作中の3号目でも、より伝わる情報誌にするために、テーマに見合う取材対象者へアンケート調査を実施。“出逢い”について、20・30代の独身・既婚者100人以上にアンケートを行ったという。職場以外の出会いで結婚した人やLGBTのカップルなど、出会い方や多様性に富む現代のテーマにも踏み込んでいる。

1・2号目に関して、気になる読者の反応は上々だ。「イラストやデザインが可愛くて手に取った」「行政がつくっているとは思わなかった」「スーパーにも置いてほしい」など、若者に加え、中高年にも好感触を得ているという。制作過程を経て、松尾さんは「私自身も20代後半ですが、知らなかった長崎のことや若者事情を知って考え方の幅が広がりました。この情報誌を通して、長崎をもっと好きになってもらいたいですし、県外の長崎ファンを増やしていきたいです」と熱意を見せる。

カジュアルなビジュアルで読者を惹き付け、中身は若者の本音や実情、まちのニッチな情報までを網羅。この深掘りのスタイルが“共感”を誘うyoriyori。若い世代とまちの未来をリンクさせたアプローチに、どんな化学反応が生まれていくのか楽しみだ。

学生へのアンケートをもとにつくられたコーナー。読者層である若者自らがつくることでより親近感が湧く。


 

制作秘話 01

制作スタッフ陣も30歳前後と若手で制作。若者が直面するライフテーマと長崎のまちをリンクさせ、“まちを選んでもらうこと”をゴールに定めた。

制作秘話 02

市内の大学生や市の職員など若い世代の現状や本音を把握するため、企画前からアンケート調査を実施。多いときで100名以上をリサーチした。

制作秘話 03

公共施設をはじめ、大学、カフェ、美容室、書店、商業施設など長崎市内と一部、東京に配布。インスタグラムなどSNSとの連動も始めた。

 

読めば読むほどクセになる多様性のあるカルチャーマガジン発行計画

長崎×若年層のライフイベントに焦点を合わせ、3年間で5号の制作・発行をプラン。創刊号は、判型B5・全34P

第1弾「遊ぶ」

「遊び場が少ない」という若者の意見を払拭すべく、長崎の50の遊び場や遊び方を紹介。

第2弾「働く」

多様な働き方を特集。Uターン者に聞く都会と長崎の暮らし、起業など“働く人の本音”を徹底追求。

第3弾「出逢う」

人生に変化を生む様々な出会いの形を紹介。独身・既婚者の実情を調査し、出会い方の指南も。

第4弾「住む」

ライフスタイルが多様化する中、こだわりや長崎ならではの生活など、様々な価値観を紹介。

第5弾「挑戦し成長する」

若者が直面するライフテーマとして掲げた最終章。長崎をベースとした生き方を提案する。


 

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