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【セミナーレポート】“伝わる広報”をつくる!〜誇れるまちの情報を届ける工夫と時間の作り方〜

「大切な情報を住民にしっかり届けたい」「地域の魅力を、もっと住民に伝えたい」——そんな思いを抱えながらも、庁内の調整や原稿・校正対応に追われていませんか? 原稿依頼や校正の往復、各課との調整など、作業に追われて誌面の工夫まで手がまわらないことも多いはずです。
そこで、本セミナーでは、限られた時間でも“伝わる発信”を実現する方法と、作業を効率化して企画・編集に集中できる工夫を、自治体事例と共に紹介します。
概要
■テーマ:“伝わる広報”をつくる!〜誇れるまちの情報を届ける工夫と時間の作り方〜
■実施日:令和8年2月27日(金)
■参加対象:無料
■申込者数:337人
【神奈川県葉山町】戦略的広報は「目的」から始まる
最初に話を伺ったのは、神奈川県葉山町で広報を務める宮崎愛子氏。Instagramの公式アカウント「葉山オフィシャル」において、約4万人のフォロワーを獲得するまでに至った経緯と戦略的広報をお話しいただきました。

【講師】
宮崎 愛子 氏
神奈川県 葉山町 政策課 秘書広報係
2011年葉山町入庁。広報紙・HP・SNSを担当し、2015年に公式Instagramを開設。まちの魅力を発信し、全国広報コンクール入選や講演実績多数。
成功の再現性を高める6つのステップ
「大きなイベントを開催したのに参加者が少なかった」「先進的な取り組みなのに住民の方に利用されない」「業務に追われて、新しい企画を考える時間も予算もない」。自治体の広報には、こうした悩みが少なくありません。
広報に必要なのは、センスや特別な技術ではなく、戦略です。限られた人員と予算のなかで成果を出すには、広報を目的ではなく、課題解決のための手段として捉えることが欠かせません。

戦略的広報を進めるうえで軸になるのが、6つのステップです。

まず、広報で解決したい課題を見つけること。次に、その解決策を広報の目的として設定すること。さらに、ターゲットを絞り、そのターゲットに合った媒体を選ぶこと。そのうえで、インプットとアウトプットを繰り返しながら改善し、最後は楽しみながら継続していくことです。こうした流れを押さえることで、広報の成功を偶然ではなく、再現可能なものに近づけていくことができます。
発信するのは「観光地」ではなく「暮らしの魅力」
葉山町で向き合った課題は、人口減少でした。葉山町では少子高齢化に加え、人口流出も起きていたため、広報の目的を移住定住促進に設定しました。その結果、Instagramの公式アカウント「葉山オフィシャル」は、人口約3万人のまちで約4万人のフォロワーを持つまでに成長しました。アカウント開設前はマイナスだった社会増減も、開設後にプラスへと転じています。しかも、この取り組みは予算ゼロ、担当職員1名で続けてきたものです。限られた体制でも、目的を明確にした広報は成果につながります。

葉山オフィシャルで発信しているのは、まちの暮らしが伝わる一瞬です。投稿に人物を写すときは、シルエットにすることもあります。顔が見えると、その人個人の物語として受け取られやすくなりますが、シルエットであれば、見る人が「自分がここで暮らしたら」と想像しやすくなるからです。移住定住促進に必要なのは、名所の紹介だけではなく、そのまちで暮らすイメージを持ってもらうことです。

こうした話をすると、「うちには海がない」「富士山が見えない」と感じる方もいるかもしれません。ただ、地域の日常は、外から見れば十分に魅力的な非日常です。実際、葉山町では郵便局の外観のような、まちの人にとっては見慣れた風景も投稿の題材になっています。ぜひ、ないものを探すのではなく、地域にあるものの中から魅力を見つけることを大切にしてください。

おしゃれな建物がなくても、食べものは強いコンテンツになります。グルメは幅広い世代の関心を集めやすく、反応も得やすい題材です。

住民と一緒にまちの魅力をつくる
どんな内容を投稿すればよいのか分からないときに有効なのが、住民参加型の仕組みづくりです。葉山町では「#葉山歩き」というハッシュタグを呼びかけ、住民や来訪者に投稿してもらっています。すると、小道や建物、飲食店など、まちの魅力が自然に集まってきます。そのなかから反応のよい場所や題材を見つけ、公式として改めて撮影し、発信する。すると、その投稿を見た人がまた訪れ、再び投稿する。こうして、魅力の発掘と発信が循環していきます。行政が一方的に魅力を決めるのではなく、住民や来訪者とともにまちの魅力をつくっていく仕組みです。

この仕組みは、公平性の面でも意味があります。例えば飲食店を紹介した際に、「なぜこの店なのか」と問われたとき、住民や来訪者の投稿をきっかけにしていると説明できれば、納得感が生まれやすくなるからです。事業者側も「それなら、お客さんにハッシュタグをつけてもらおう」と参加しやすくなり、広報が行政だけのものではなく、地域全体を巻き込む取り組みへと広がっていきます。
ターゲットは絞っても対象は絞らない
改めて、6つのステップに沿ってお話します。葉山町では人口減少を食い止めるために移住定住促進を解決策と設定しました。

そして、ターゲットを「これから住む場所を探す若い女性」に設定しました。葉山町は持ち家比率が86.53%と高く、住宅購入層は20代・30代が中心です。さらに、家庭内の購買意思決定において女性の影響が大きいという民間の調査結果も踏まえ、まず届けるべき相手を明確にしました。誰に向けて発信するのかを定めることで、表現の軸がぶれにくくなります。

ターゲットを絞ることはほかの人を排除することではありません。入口を明確にすることで発信の力が増し、そこから周囲へ広がっていくことがあります。実際、葉山町でも当初は若い女性の反応が中心でしたが、その後は男女比もほぼ同じになり、年代も広がっていきました。ターゲットは絞るけれど、対象は絞らない。この考え方が、自治体広報では重要になります。
媒体選びと継続の工夫が成果を支える
媒体としてInstagramを選んだのは、当時、若い女性ユーザーが多く、写真や動画で直感的に暮らしの魅力を伝えやすかったからです。大切なのは、「はやっているから選ぶ」のではなく、「目的に合っているから選ぶ」ことです。

さらに運用では、インプットとアウトプットを繰り返していきます。SNSは反応が見えやすいため、改善を重ねやすい媒体です。ただし、流行の表現をそのまま自治体が使うと違和感や炎上につながることもあり、感度と見極めが必要です。

継続のためには、無理なく続けられる工夫も欠かせません。取材のついでに撮影する、同僚に写真でひと言を求めてゲーム感覚にする、暖色と寒色を交互に並べて見栄えを整える。こうした小さなルールを持つだけでも、運用は続けやすくなります。義務感だけでは長続きしません。広報を日々の業務のなかに自然に組み込み、楽しみながらまわしていくことが、結果として成果につながっていきます。

小さくても良いので、手段を目的化せず、課題解決のための戦略的広報を、皆さんと取り組んでいけたらと思っています。
【参加者とのQ&A(※一部抜粋)】
Q:課内決裁はどのように行っていますか?
A:人を傷つける内容はNGなど、最低限のルールを町長までと情報共有した上で、事務決裁なしで運用しています。ただし、課長や課員、特別職も含めてアカウントをフォローしているので、事後確認はあります。もちろん、それで投稿取り消しなどになったことはありません。
Q:後任の方が同じ視点で運用できるよう、工夫していることがあれば教えてください。
A:実は育休で二度お休みしている間、次の担当者に引き継いでいたときもフォロワー数の増減等に影響はありませんでした。目的(葉山町の場合は移住定住促進)をしっかり共有できていたら、細かいルールがなくても運用可能だと思っているのと、担当者によって感性やクオリティーが違うのがまた魅力だと思っています。
Q:アカウントの投稿に添えられたひと言に、心をつかまれています。考えるときに意識していることはありますか。
A:オフ会で「中の人や役場の人がフレンドリーで親近感がよかった」と言われたことがあり、意識していることといれば「友達やインフルエンサーの投稿に混ざっても違和感ない文体」です。あとはできるだけ短い文章を心がけています。
Q:投稿写真は何で撮影していますか。
A:Canon EOS 6D Mark IIです。
【株式会社エレクトロニック・ライブラリー】広報を支える「情報」と知っておきたい「著作権」
第2部に登壇したのは、株式会社エレクトロニック・ライブラリーの河合紗希氏。広報業務を担当する上で必ずおさえておきたい「著作権」の重要性と、自社サービスについてお話しいただきました。

【講師】
河合 紗希 氏
株式会社エレクトロニック・ライブラリー
営業部 主任
2017年ELNET(株式会社エレクトロニック・ライブラリー)入社。営業部でインサイドセールスやセミナー企画、販促施策の設計を担当。
「情報の収集」や「共有」を安全に行うために
私たちは、必要な記事だけを朝一番に収集・配信するクリッピングサービスと、過去の記事を横断的に検索できるデータベースサービスを提供しています。あわせて、セミナーやメールマガジンを通じて、著作権への理解を深めていただくための情報発信も行っています。
自治体広報の業務は多岐にわたります。限られた人数と時間のなかで、こうした業務を並行して進めているという声も多く伺います。そのなかで、よく挙がる困り事は4つあります。企画のネタ探しに時間がかかること。他自治体の事例やトレンドを調べたいのに探しにくいこと。ニュースや紙面に掲載された情報を庁内で共有するのに手間がかかること。さらに、上層部への報告や情報共有が大変だという声もあります。

つまり、広報業務の土台には、情報の収集と共有があります。そして、それは欠かせない一方で、負担にもなりやすい業務です。
ここで一度立ち止まって考えたいのが、その情報の収集や共有を安全に行えているかという点です。業務として記事や報道を扱う以上、著作権の知識があると安心です。最近は、自治体や企業で記事の利用方法をめぐるトラブルも増えています。例えば、購入した新聞から、記事をピックアップしてPDF化し、それを庁内イントラネットの共有フォルダに保存する。この行為は日常業務の延長のように見えるかもしれませんが、著作権の観点では注意が必要です。

記事をスキャンしてPDF化する行為は「複製権」の侵害になり得ますし、庁内で閲覧できる状態にすることは「公衆送信権」の侵害になり得ます。購入した紙面であっても、業務で使う以上、「私的利用」にはあたりません。庁内で共有する場合は、新聞社などから正式に利用許諾を得る必要があります。
では、記事をそのままコピーせず、要約して共有すれば問題ないのか。ここも注意が必要です。丸ごとコピーしていないから大丈夫と思われがちですが、元の記事とそっくりな構成や表現で要約すると、著作権侵害にあたるおそれがあります。逆に、勝手な要約が記事の改変とみなされる場合もあります。

記事を使う場合は、著作権者に利用許諾を取るか、「〇月〇日付の〇〇新聞に紹介されました」といった形で掲載情報を案内する、あるいは紙面に付箋をつけて回覧するといった方法が、著作権の観点では安心です。情報共有の手間を減らしたいからこそ、方法は慎重に選ぶ必要があります。
広報の現場では、著作権確認まで手がまわらない
ただ、現場では「そこまで丁寧に確認する余裕がない」という声も少なくありません。情報収集や共有の作業が重くなればなるほど、本来注力したい企画立案や発信業務が圧迫されてしまいます。
そこで提案したいのが、DXサービスによる課題解決です。記事を切り抜く手間を減らし、著作権の不安なく庁内共有できます。しかも全国各地の新聞から必要な情報を集められる環境が整えば、広報担当者の負担は大きく変わります。
ELNETが提供するサービスの特長は3つあります。ひとつ目は、全国紙から地方紙まで約100紙を扱い、1988年以降の約5,000万件以上の記事から検索できることです。人手だけでは追いきれない範囲まで、幅広く情報を収集できます。

※対象媒体は2026年2月時点
二つ目は、新聞記事を切り抜きイメージのまま確認できることです。見出し、写真、図表も含めて掲載時のまま見られるため、記事の印象がつかみやすくなります。

三つ目は、我々が著作権者からの許諾を得たうえで提供していることです。お客様は著作権の心配なく、安心して活用いただけます。

毎朝のクリッピングから過去記事検索まで対応
具体的なサービスとしては、毎朝必要な記事を収集・共有できる「モーニングクリッピング」と、約40年分の過去記事を検索できる「ELデータベース」があります。必要な情報を毎日受け取りたい場合にも、他自治体の事例をさかのぼって調べたい場合にも対応できます。自治体向けの固定料金プランもあり、記事リストサービスや広告費換算オプションを利用すれば、メディア掲載の効果測定にもつなげられます。

このほか、広報担当者向けのセミナーや校正ツール、メールマガジンなども提供しています。また、広報担当者同士のつながりやスキルアップの場としても活用いただけるサービスも展開中です。お困りごとがあればELNETまでぜひご相談ください。
【参加者とのQ&A(※一部抜粋)】
Q:記事をそのまま共有するのではなく、概要がわかるように要約して庁内で共有することも問題がありますか。
A:記事を読まなくても内容がわかるような要約は、著作権法で保護される「翻案」にあたるため、著作権者の許諾が必要となります。
【北海道北斗市】“できること”から始める広報改革
第3部に登壇したのは北海道北斗市で広報広聴係を務める佐藤亜矢子氏。手探りで進んできた広報係としての4年間の歩みを振り返るとともに、参考になるポイントを解説していただきました。

【講師】
佐藤 亜矢子 氏
北海道 北斗市 総務課 広報広聴係
教育、税務、(一財)地域活性化センター派遣を経て2022年4月より現職。他自治体担当者との情報交換や書籍で学びながら、一人担当者として「できること」から始める等身大の広報改革を実践中。
1年目は違和感から始まった
私は4年前に広報担当に就任しました。着任当初、実績も知識もなく、広報担当は1人。正解もわからないまま、手探りで悩み続けた4年間でした。
1年目は、とにかくモヤモヤしていました。広報担当になって最初に感じたのは、「うちの広報紙、正直読みづらいな」という違和感です。
当時は、デザインを工夫すれば何とかなるのではないかと思っていました。そこで最初の1年間は、タイトルを装飾したり、レイアウトを自分なりに工夫したりして、見た目で解決しようとしていました。けれど、結論から言うと、全く解決していませんでした。なんとなく「読みやすいでしょう」と思っているだけで、そこに根拠がなく、自分でも説明できなかったのです。
それでも、1つだけ最初から決めていたことがありました。表紙には市民の顔を載せたいということです。そこで、これまでの人脈を活かし、地域に出て写真を撮るようにしました。これが私の最初の一歩でした。あわせて、印刷業者さんと少しでも円滑にやりとりできるように、専門用語を覚えることも意識しました。

2年目で見えてきた広報の役割
2年目にまず取り組んだのは、フォトコーナーを新しく作ったことと、広報の年間掲載計画を見直したことです。小さなスペースでもフォトコーナーを始めたことで、写真で伝えることをこれまで以上に意識するようになりました。特に、顔が分かる写真や子どもの写真はやはり目にとどまります。ここで、写真の力は本当に大きいのだと実感しました。
また、記事数を把握するために作っている年間掲載計画を丁寧に見直してみると、各担当課から提出された記事のなかに、ターゲットとなる読者が同じなのに別々に掲載しようとしているものがあることに気づきました。そこで、広報の立場から担当課に働きかけ、関連する記事を統合し、読者にとって分かりやすい形で届けるようにしていきました。こうした取り組みを通じて、庁内での横の連携を少しずつ促していきました。

3年目にたどり着いた発想
そして、3年目になる頃。少しずつ、見えてきたことがありました。行き着いた答えはとてもシンプルで、文字量を減らすこと。ジャンプ率を意識すること。写真やピクトグラム、グラフを増やして、目線の誘導を意識することです。
一番大変だったのは、文字量を減らすことでした。正直、これは怖さもありました。担当課の感覚としては、「大事なことを削られる」と受け取られることもあるからです。そこで、文量は減っても、分かりやすさは上げるという点に意識して取り組んできました。
ここで私が心がけたのは、市民目線です。
「私が読んで分からないなら、市民はもっと分からないと思う」。そこをブレずに持ち続けたことで、周りから何を言われても、自分の意見を貫くことができました。

今でも忘れられないのは、地域の民間拠点特集を作ったときのことです。調理ボランティアの方や利用者の方と打ち解けるために、何度も現場に足を運び、ボランティアや、プライベートでの盆踊りの練習にも参加しました。そうやって関係を築いた積み重ねがあったからこそ、自然な表情の写真を撮ることができたのだと思います。
この特集を見た方から、「あまりボランティアのことをよく思っていなかった夫が、ボランティアの意義や地域拠点の重要性を理解してくれて、快く送り出してくれるようになった」と言われたことがありました。自治体広報は全住民に平等に届けるものですが、『誰が読んでも平均点のもの』を目指すのではなく、『誰かの心に届く広報をつくりたい』。そう思うようになった出来事でもありました。

4年目に見えた組織の課題
4年目になって、着任時からずっと感じていたことがはっきりしました。それは、何も工夫せずに載せて終わりの「アリバイ広報」になっていないか、ということ。また、職員の広報スキルにバラつきがあり、属人化していないかということでした。これは私1人の問題ではなく、組織全体の課題だと確信しました。
そこで4年目には外部アドバイザーを加えて広報のあり方を検討しました。広報戦略アドバイザーを招聘して行ったのは、大きく3つです。1つ目は、広報基本方針と広報業務マニュアルの作成。職員誰もが分かりやすい広報ができるように、「5W1Hを意識する」「お役所言葉を使わず、分かりやすい言葉を使う」「人は視覚から情報を得るので、写真や見出しを工夫する」といったことを具体的に示しました。自分のなかに基準ができたことで、対応がブレにくくなり、庁内調整や交渉の武器にもなりました。

2つ目は、研修会の開催です。方針を作るだけでは意味がありません。市全体で情報発信を強化していくには、管理職が広報を「付随業務」ではなく、「行政サービス」の一部として認識し、理解と意識を共有することが必要だと感じています。
そして、令和7年11月号でリニューアルを実現しました。大きな変更点は3つあります。
1つ目は、読みやすさの追求です。お知らせ記事を横書きにしたことで、限られたスペースでも読みやすくなり、縦書きで11記事だったものが、写真を入れながら13記事掲載できるようになりました。

(Before)

(After)
2つ目は、欲しい情報を見つけやすくするための再編です。分散していたお知らせ記事を横書きに統一し、見づらかった情報をカテゴリーごとに整理しました。必要な情報にたどり着きやすい誌面に変えています。

(Before)


(After)
3つ目は、カラーの特性を活かした見せ方です。北斗市の広報紙は、表紙と裏面だけがカラーです。そのため、白黒ページにあったフォトギャラリーを裏面に移し、見ている方が楽しい気分になれるようなレイアウトにしました。

このリニューアルは地元紙にも取り上げられ、Yahoo!ニュースにもなりました。4年かけて、1つの形になったと感じた瞬間でした。
ここまでで私が学んだことは大きく分類すると4つあります。

1つ目は、MUD(メディア・ユニバーサル・デザイン)アドバイザーです。基本的なフォント、行間、文字間、余白の使い方など、この資格で学んだことはとても役に立っています。感覚ではなく、「なぜそうなるのか」を説明できる知識があると、内部調整がしやすくなりました。
2つ目は色彩検定で、私は2級を取得しました。2024年4月に改正された障害者差別解消法により、配色においてもバリアフリーの視点がより重要になっています。色の組み合わせやコントラストに配慮することは、誰にとっても見やすい情報発信につながります。
3つ目は、ナッジです。読みやすさや構成は単なるデザインの問題ではなく、人の行動を促すための心理設計でもあります。読者の脳を疲れさせない工夫や、「読みやすそう」と感じてもらうための視覚的な仕掛けが必要になります。
また、文章の修正をお願いするときにも、ナッジの考え方は有効です。一方的な指示は相手の心理バイアスが発動しやすく、上から目線のニュアンスを与えてしまいます。人は正論を言われるのが嫌いです。正論だけでは、うまくいきません。一方的に「修正してください」と言うのではなく、「行政の知識が少しある私が読んでも分からなかったのですが、市民が読んだらここは分かりますかね」と問いかけるようにしています。すると、「そうだよね、分かりにくいよね」と相手も納得しやすくなります。指示ではなく問いかける姿勢が大事なのだと感じます。
行動したこと
広報の仕事は、行政の中では少し特殊です。
そして人員配置は直ぐには解決できない問題です。庁舎内で理解を得るのが難しいとき、私は外に仲間をつくりました。全国の広報担当者との交流が、技術面だけではなく、心の支えとなっています。これが1人担当で続けられた理由の1つです。
心がけていること
広報には締め切りがあるので、私はいつも後ろから逆算して仕事をしています。原稿は予定どおりには集まらない。そう考え、あえてスケジュールは少しタイトに組んでいます。余裕を前倒しで作っておくことで、自分の心にも余裕が生まれ、周囲にも落ち着いて対応できるようになります。
また、いい反応を必ず共有することも心がけています。「こんな反応が来ていましたよ」「この記事、分かりやすいと言っていましたよ」。そうした声を担当課に伝えると、広報が担当者にとっても自分事になります。モチベーションも上がり、相談や提案も増えてきます。結果として情報が集まりやすくなり、市全体の広報の質が安定していくのです。
4年間を振り返って、必要だったと感じるものは「担当者の熱量」と「意思決定層との方向性の共有」です。熱量がないと、途中で心が折れてしまいます。でも、熱量だけでは前には進めません。周囲の理解を得るためには、押し通すのではなく、一緒に納得してもらうことが必要です。
この2つが合わさったとき、「良くしたい」という思いや、「できることから始める勇気」は自然と湧いてくるのではないでしょうか。実際、3年間の積み重ねがあったからこそ、4年目の変化につながったのだと思います。全部を完璧にやる必要はありません。できることから、小さなことから始めていく。そのきっかけが、今日の話のなかに1つでもあれば嬉しいです。
【参加者とのQ&A(※一部抜粋)】
Q:記事内容によっては、レイアウトの都合上などもあり文字を小さくすることがあります。すると住民の方から「もとに戻してほしい」との声をいただくことも。このような指摘を受けたことはありますか。
A:あります。その際は、MUDアドバイザーで学んだことを盾にしました。広報基本方針の中では、考え方はまとめていますが文字のポイント数などはまとめていません。質問者の方の原稿を拝見しなければ大きいことは言えませんが、文字の大きさよりも、行間や文字量に気を配ってみてはいかがでしょうか。
Q:私自身、言い回しの変更を提案することがあるのですが「町民にはわからない」ということ自体を理解してもらえないことがあります。どのようにして周囲を納得させていったのか教えてください。
A:遠回りになってしまいますが、私の場合、担当課の文章をもとに、まずは自分で文章をつくってみます。そして両方を見せて、「どちらがわかりやすいですか?」と聞いています。そうすると何か気づいてくれます。みなさん、変えることが怖いんですよ。そこを広報が先陣を切ってあげると意外と簡単に通ります。
Q:わが自治体も文字数が多く「アリバイ広報」になっているのが悩みです。担当者は説得できても、その上の上司を説得できないと断られてしまいます。北斗市様ではどのように解決されましたか。
A:悩みますよね、お気持ち痛いほどわかります。私だけの力ではどうにもならない場合は、アドバイザーや地域住民の方など第三者に協力していただきました。それでもダメなときは、一旦折れます。そしてタイミングを見計らって再挑戦しています。
【株式会社PR TIMES】自治体からの情報発信にプレスリリースを活かす方法!
第4部に登壇したのは、株式会社PR TIMESの高田直幸氏。プレスリリースを作成する上で欠かせない視点を解説していただきました。

【講師】
高田 直幸 氏
株式会社PR TIMES
パートナービジネス開発室
新卒でコンサルティング会社に就職後、地域の情報が全国に発信されるサポートをしたいと考え株式会社PR TIMESに参画。自治体・行政とのアライアンスや、自治体様向けの「災害復旧復興プログラム」を担当している。
PRとは何のために行うものなのか
PR活動の目的は、大切な存在に情報を届け、行動してもらうことです。この大切な存在こそがターゲット。ターゲットに情報を届けて、行動してもらうためには、まず事実を伝える必要があります。

ただ、今は事実を伝えただけでは、なかなか覚えてもらえませんし、行動にもつながりません。そこで大切になるのが「Why」です。なぜこの取り組みをするのか。なぜこの人に来てほしいのか。なぜこの地域でやるのか。その背景や目的まで伝えて初めて、相手の感情が動き、行動変容につながっていきます。

広報は、あらゆる手段を使って情報を伝えることです。そのなかでプレスリリースは、報道関係者に向けた情報提供資料です。従来は、紙で記者クラブなどに持ち込み、記者が記事や番組にしなければ生活者には届きませんでした。
しかし今は違います。デジタルでの情報発信が可能になり、SNSやWeb上で誰もが情報を収集できる時代になりました。プレスリリースを配信すれば、記事にならなくても生活者に一次情報を直接届けることができます。つまり、プレスリリースは「記者向けの資料」であると同時に、「生活者にも読まれる文章」になっています。だからこそ、読まれることを前提に作る必要があるのです。

読まれるプレスリリースに必要な5つの要素
プレスリリースには、必ず入れてほしい5つの要素があります。それは「タイトル」「リード文」「画像」「本文」「連絡先」です。タイトルで「読むか読まないか」が決まると言っても過言ではないので、50文字程度で結論とメディアフックを伝えるタイトルが重要です。大事なキーワードは前に置く。誰が、何のために、何をするのかが見えるようにしましょう。

例えば「サービスを市内に導入します」というタイトルでは、何が重要なのか伝わりません。そうではなく、「市内には在宅介護の必要な人が何人いて、介護人材が逼迫している。そこでこのサービスを導入し、課題解決に取り組む」といった形で、地域課題と打ち手が分かるほうが伝わります。
5W2Hとメディアフック
配信前に考えていただきたいのは、「伝えたい内容が全て文章に含まれているか」「世間が知りたいポイントがあるか」という2点です。そのために「5W2H」と「メディアフック」というフレームワークを参考にしてください。これらが合わさって初めて、ニュースとしての価値がある情報になります。
5W2Hの中で特に重要なのが「Why」の部分です。誰が・何を・どこで・いつ、といった情報は書かれていますが、「どうしてやるのか」「どうしてこの地域でやるのか」という目的意識が書かれていないことが多いです。背景や課題感、何を解決したいのかをしっかり書くことで、メディアや生活者に納得感と共感を与え、それが行動に変わります。その上でメディアが求めているのは、私たちが「出したい情報」と「社会の関心」が重なっている部分です。この重なりを意識して発信してください。


タイトル、リード文、画像で読むかどうかが決まる
タイトルは、誰が何のために何をするのかが一目で分かるようにすることが大切です。例えば、「情報発信プログラムを提供します」より、「PR TIMESが自治体のプレスリリース配信を無償化、災害からの復旧・復興に向けた特別プログラムを提供」としたほうが、内容が伝わりやすいでしょう。固有名詞よりも、まず中身が分かることが優先です。

また、リード文は要約ですので、全文は読まれない前提で、冒頭に重要な情報をまとめてください。タイトルに入れづらいWhyやHowを補う役割もあります。
本文は、興味を持ったメディアに「取材の余白」を伝えるイメージです。なぜ取り組んでいるのか、担当者の思いなどを書き、取材の質問ポイントを提示するようにしてください。

プレスリリースには、メディア露出を増やす以上の価値があります。「あのテーマならこの地域だよね」というひと言を生み出せることが、プレスリリースの魅力だと、私は考えています。
【株式会社ジーアングル】「やりたい広報を叶える」新しいコンテンツ制作
最後に登壇したのは、株式会社ジーアングルの関 健太朗氏。これからの広報業務に欠かせないAIを活用したコンテンツ制作の手法についてお話しいただきました。

【講師】
関 健太朗 氏
株式会社ジーアングル
社長室 室長
プログラマー・システムエンジニア。20代からフィリピン・セブ島のオフショアスタジオを立ち上げ、2年間従事。国内に戻ってからは新規事業やAI導入の責任者として数多くの自社システムやAIソリューションを生み出している。
広報に必要な「スピード」を支える技術
私たちジーアングルは、もともとゲームや映像で使われる音楽、キャラクターの声、ナレーション収録など、音に関わる制作を行ってきました。そのほか、イラスト、広告デザイン、CMやドラマの撮影・編集、アニメ制作まで、幅広いコンテンツ制作を手がけています。
近年は、キャラクターデザインや実写映像との合成、BGMなどをAIで手がける作品制作も行っています。もちろん、クオリティーだけで見れば、人が丁寧に作り込んだものにはAIはまだ及びません。ただ、制作スピードは圧倒的です。
広報に携わっている方であれば、SNSを含め、今の広報にはスピードが強く求められていることを実感されていると思います。しかし、人の手だけでコンテンツを作るには限界があります。例えば、通常の方法で制作しようとすると制作期間は2カ月以上、コストは200万円以上かかるものが、AIを活用した場合だと制作期間は3日、コストは1本あたり15万円程度にまで圧縮できます。自治体広報にとっても、このスピード感は大きな意味を持つと思っています。

ここで、「それなら全部AIに任せればいいのでは」と思うかもしれません。ただ、制作の現場から見ると、AIの役割はあくまで一部です。映像制作には、編集以外にも多くの工程があります。何のために作るのかを考える企画。目的を実現するための構成やシナリオ。現場でしかできない実写撮影。そして、完成したコンテンツをどう届けるかという発信設計。こうした根幹の部分は、人が考え、組み立てる必要があります。AIは、あくまで制作の一部を加速させるための技術です。

この考え方は、自治体広報にも重なると思っています。日々の広報活動で皆さんが積み重ねてきた経験、地域理解、住民との接点、現場感覚。そこにAIを組み合わせることで、初めて意味のあるコンテンツになります。AIだけで広報を成立させるのではなく、広報の実践知を持つ人がAIを使うことに価値があるのです。
一方で、自治体ではセキュリティやルールの制約があり、まだAIを十分に使えないところも多いと思います。けれど、企業だけでなく行政機関にも、AI導入の波は確実に来ています。だからこそ、どんな技術があり、何ができるのかを知っておくことが大切です。いざ使える状況になったとき、順応できる準備をしておく。その差は大きいと感じています。
目指すのは「一緒に作れる仕組み」
では、今この段階で何を備えておけばよいのか。私たちは、単にコンテンツを制作して納品するだけではなく、お客さまと一緒に作る仕組みを提供したいと考えています。課題や目的を聞き、一緒にコンテンツを考え、制作過程も共有しながら、発信後の反応を見て次につなげていく。これを繰り返すことで、持続可能な広報体制をつくることができます。

スピードに課題を感じているなら、AIを活用したコンテンツ制作を一緒に進めることもできます。ただ制作物だけを渡すのではなく、どう作るのか、その考え方やポイントも共有する。そうすることで、次の広報活動にもつながっていきます。
それでも「そんな時間もない」という方からご相談いただくこともあります。そういったお客さんに持続可能な仕組みを提供した事例を2つ紹介します。
1つ目は、宮城県加美町の中新田高校との事例です。学校側には、応募者が年々減っていること、そしてその対策を十分に打てていないことが課題としてありました。そこで、生徒にコンテンツ制作の授業を行い、生徒募集につながるPR施策を一緒に考えました。実際に、高校のイメージキャラクターを生徒とともに考え、校歌を現代風にアレンジしたミュージックビデオも制作しました。この映像はYouTubeで1万回以上再生されています。

2つ目は、沖縄県名護市での事例です。飲食店の方々は、SNSやPRの重要性は理解していても、日々の業務に追われて、そこまで手がまわらないという課題を抱えていました。そこで、地元の大学生を集め、まずはGoogleマップに店舗情報を掲載する取り組みを行いました。学生に写真の撮り方や掲載方法を伝え、飲食店と大学生をつなぐことで、情報発信の負担を減らしながら、若い視点での発信にもつながっています。

この2つの事例に共通しているのは、ターゲットに近い若い世代を広報に巻き込んでいることです。忙しくて広報まで手がまわらないという課題を補うだけでなく、届けたい相手に近い人が制作や発信に関わることで、結果的により届きやすいPRになったと感じています。
「やりたい広報」を実現するには、最新技術を知ることと同時に、それを地域や現場の課題にどう結びつけるかを考えることが欠かせません。気になった方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
【参加者とのQ&A(※一部抜粋)】
Q:AIを使っていくべきだとは思うものの、うまく使い切れていないのが現状です。
A:弊社でも最初はなかなか使えないでいました。使える機会があれば少しでも使ってみて、こんなことできるんだぁ程度でもよいので触ってみることをオススメします!
お問い合わせ
ジチタイワークス セミナー運営事務局
TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works











