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愛知県犬山市

公開日:2021-04-09

官民学連携で、ブランドトマト栽培!高齢者の就業機会と特産品を創出。

福祉・医療
読了まで:4分
官民学連携で、ブランドトマト栽培!高齢者の就業機会と特産品を創出。

高齢者に働く機会を提供し、地域社会の活性化に貢献する「シルバー人材センター」。市町村単位に置かれ、公益社団法人として運営されている。犬山市シルバー人材センターでは会員数の減少に対応すべく、市と連携して高齢者でも取り組みやすく魅力的な就労機会確保のため、ブランドトマトの栽培と販売を開始。同市の石黒さんと古田さんに話を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.13(2021年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

シルバー人材センターの会員にフィルム農法で新たな仕事を創出。

愛知県の北部に位置し、近年、国宝・犬山城の城下町に観光客が増加して注目されるようになった犬山市。同市のシルバー人材センターは、定年の延長や働き口の多様化により、一時期1,000人を超えていた会員が現在800人ほどに減少しているという。「会員数の減少に対し、センター職員は危機感を持っていたようです。市としても、センターには市の補助金に頼らない自立した経営基盤を築いてほしいと考えていました。また、観光地なのに特産品が少ないことも課題でした」と石黒さん。

課題解決のために情報収集をする中、偶然センターの職員が見つけたのが「アイメック®農法」だ。これは、土ではなく特殊なフィルムの上で栽培する農法で、神奈川県に本社を置く「メビオール」が開発したもの。経験や知識を必要とする土づくりが不要なため、農業初心者のセンター会員でも取り組みやすく、さらに高糖度の野菜ができるという。

地元の2大学にも協力を要請!官民学が連携して挑んだトマトのブランド化。

前述の課題を解決するため、同市とセンターで協議を重ね、アイメック®でトマトを育てて販売する仕組みをつくろうと決めた。平成27年度に基本計画を作成し、3年にわたって地方創生の交付金を受けながら、平成29年度に約1,300㎡のアイメックハウスを建設。企業の担当者から農法に関する研修を受け、ミディトマトの試験栽培を始めた。平成30年度には「おいしい花子」というブランドネームで販売をスタート。翌年から本格栽培をスタートし、同市のふるさと納税の返礼品にも加えた。

取り組みに当たって、地元の2大学とも連携した。名古屋芸術大学では、学生とセンター会員で3回のワークショップを開催。商品名を「おいしい花子」と決め、ロゴマークもつくった。また、名古屋経済大学では、経済学部の授業の一環で「おいしい花子」を題材として、どこにどう売るかマーケティング戦略を考え、管理栄養学科ではトマトを加工してスムージーを試作した。大学に声をかけた理由について、古田さんは「地元の高齢者と若い大学生が交流し一緒に考えることで、このトマトがより地域に根付くと考えたのです」と話す。

農業未経験者でも短期間で習得しやすいというアイメック農法を選択したものの、本当に高品質のトマトができるかどうかが一番不安だったという。また、実際の栽培時に、品質がどの程度確保できるか、どれだけの収穫量が見込めるかが分からないといった不安要素がある中、販売先からの条件にどう答えていくか悩むことも多く、時には低価格でしか売れないことも。しかし、市の広報紙やメディア、試食販売などで地道にPRするうちに、名前とおいしさの認知度がアップ。今では収穫量が安定し、300円/150gほどのブランドトマトとして定着してきた。

70~80歳の会員たちがいきいきと楽しく働く。

現在、「おいしい花子」に携わっているセンターの会員は50人ほど。「おいしいトマトができたことで会員の皆さんはやりがいや自信を持ち、とても楽しそうに栽培や販売に従事されています。栽培技術もトマトの評判も確実に上がっています」とセンター職員は話す。現在は地域の農業法人と連携し、センター運営の直営店「城下町プラザ」をリニューアルオープンするなど、取り組みはさらなる広がりを見せている。

官民学の連携により、複数の地域課題を改善に導いた好例といえるだろう。

コラボ店舗としてリニューアルしたシルバー城下町プラザ。

課題解決のヒントとアイデア

1.課題を明確にしアンテナ高く解決法を探す

犬山市では①高齢者が働きやすい②センター主体で継続できる③市の特産品になるの3条件を意識して仕事を探した。その結果、センターの職員がたまたまテレビで見たアイメック®農法を導入することになった。

2.地域の大学と連携して若者と高齢者の交流を図る

芸術と経済という各大学の得意分野に合わせて、取り組みへの協力を要請。高齢者と学生が交流することで地域に愛される特産品をつくり、学生にとっては成長の機会になってほしいという人材育成のねらいもあった。

3.農業法人とタッグを組みさらなるブランド化を目指す

現在、シルバー人材センターが苦手とするPR・WEB・商品開発に強い地元の農業法人と連携し、さらにブランド力を高めていこうと模索中だ。これからも積極的に連携の輪を広げていきたいと考えている。

官民学連携で「おいしい花子」が誕生

Interview

官だけで課題を抱え込まず、いろいろな人たちに関わってもらうことで解決の道が開けるかもしれません。同様の課題を抱える自治体の方々にも、ぜひチャレンジしてほしいですね。

犬山市 経済環境部産業課 農政担当
右:石黒 貴之さん(いしぐろ たかゆき)
左:古田 裕三さん(ふるた ゆうぞう)

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高齢福祉
農業
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