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【セミナーレポート】公共施設脱炭素はどう進める? 庁内連携のリアルと工夫

環境・エネルギー
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【セミナーレポート】公共施設脱炭素はどう進める? 庁内連携のリアルと工夫

各自治体が動き始めている公共施設の脱炭素化。しかし、未着手の施設も依然として多く、全施設への展開を見据えると、庁内調整などに悩むケースも少なくありません。単発の導入で終わらせずに、多くの施設へ着実に展開する道筋を描くにはどうすれば良いのか——。

そこで、本セミナーでは脱炭素化を検討する際に参考となる、具体的な手法や事業者を紹介しました。

概要

■テーマ:公共施設脱炭素はどう進める?庁内連携のリアルと工夫
■実施日:令和8年7月10日(金)
■参加費:無料
■申込者数:212人

【京都府 舞鶴市】“削減した電気代で回す”再エネ導入 体育館の脱炭素と庁内連携の工夫

最初に話を伺ったのは、京都府舞鶴市役所の菊本雄紀さん。市体育館で実現できた脱炭素化を別施設へと横展開した取組における工夫に加え、直面した課題などを率直に解説していただきました。

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【講師】
京都府 舞鶴市 生活環境課
主査
菊本 雄紀 さん

平成26年度に舞鶴市役所に入庁。危機管理・防災課、企画政策課を経て生活環境課で地球温暖化関連の業務を行う。舞鶴市SDGs未来都市推進本部メンバーとして再生可能エネルギー設備等の導入を提案。

きっかけは「SDGs未来都市」への選定

舞鶴市は京都府北部に位置し、城下町として発展した西舞鶴と、海軍ゆかりの港町である東舞鶴の二つの市街地をもつ人口約7万人のまちです。山と海が隣接して平地が少なく、湾の形状から風も比較的弱いため、再生可能エネルギーの導入条件に恵まれた地域とはいえません。

そんな舞鶴市が再エネを導入するきっかけとなったのは「SDGs未来都市」への選定です。SDGsの実現に取り組むべく市長をトップとする庁内横断組織「SDGs未来都市推進本部」を設置し、脱炭素のチームには生活環境課だけでなく、資産管理や産業部門の職員も加わりました。オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社とも連携し、「市内公共施設の電力を再エネで賄う」という舞鶴版RE100を目標に掲げました。

「実質費用ゼロ」の仕組みをつくる

しかし、最初から全施設への導入は難しいため、設備更新の必要性が高く、省エネ・再エネの効果を得やすい施設を調べました。そこで選んだのが、文化公園体育館(現「KYOEIアリーナ」)です。ただし、庁内から示された条件は「新たな予算措置なし」。厳しい制約でしたが、避難所である点を生かして地域レジリエンスの補助金を活用し、事業費の約2分の1を確保しました。

さらに、水銀灯や蛍光灯をLEDに更新して電気代を削減し、屋根に32kWの太陽光発電設備、58kWhの蓄電池、EMSを導入しました。削減できる電気代をリース料に充てることで、初期費用だけでなく、実質的な負担も抑える計画です。

導入後、年間の電気使用量は約30万9,000kWhから約15万4,000kWhへ、CO2排出量は178.8tから89.1tへ減少しました。太陽光の発電量も目標の3万kWhを上回る約3万5,000kWhを記録。電気代は約620万円から約360万円となり、約260万円を削減できました。コロナ禍で体育館がワクチン接種会場として連日稼働した中での結果であり、手応えのある事業となりました。

別の施設にも展開するが……

令和3年には東体育館へ事業を横展開しました。太陽光、蓄電池、LED照明に加え、EVの充放電設備であるV2Xも導入し、デマンド抑制による基本料金の削減も計画に組み込みました。使用電力量はおおむね試算通りとなり、目標も達成しています。

ところが、令和4年2月のウクライナ侵攻を受け、電気代や建設資材が高騰。PPA(Power Purchase Agreement)やリースの単価も上がり、削減効果が高騰分に相殺される状況になりました。令和4年度の新しい取り組みとして、浄水場や浄化センターへのPPA導入も検討しましたが、将来の電気単価を見通せず、「実質費用ゼロ」とは言い切れません。庁内では「新電力」や「再エネ」へのリスクが課題となりました。

結果、事業は承認を得られず、令和5年度には補助事業への応募を断念。その後、キーマンの異動や庁内横断チームの解消が続き、人員体制も課題となっています。

停滞を経験して感じた教訓

これまでを振り返って感じていることは3つあります。1つ目は、現実的な目標を設定すること、また、再エネ導入を最終目的にしないことです。電気が再エネであろうがなかろうが、施設利用者さんへのサービス内容が変わるものではないことに注意が必要です。「防災面の強化」や「エネルギー供給の不安解消」、「エネルギー価格高騰対策」といった切り口で提案し、手段として脱炭素が結果的についてくる形にするのが良いかと思います。

2つ目は、成功した前例に縛られないこと。舞鶴市では「実質費用ゼロ」が庁内調整の強い材料になった一方、次の事業でも同じ条件を求められる足かせになってしまいました。横展開する際には別のスキームに挑戦し、「一定の費用はかかるが、電気代を抑えられる」形で事業化を検討しておくべきだったと感じています。

3つ目は、便乗できる機会を逃さないことです。環境部局だけで庁内を動かすのは容易ではありません。庁内を上げての事業に参画、他課の困りごとの解決手段として脱炭素を提案など、独自で動くより他部署の施策と連携することが脱炭素を進めるコツかと考えています。

【参加者とのQ&A】

Q:予算ゼロとは言え、パネル設置やLED設置は費用が必要で、電気代で採算が取れる仕組みということでよかったでしょうか?

A:その通りです。導入にあたってはリースの形式を取りましたので、初期費用はかかっておりません。契約期間中にリース料を払いますが、その金額が削減された電気代の範囲内であるため、結果として元が回収できるという仕組みです。

【AGC株式会社】窓・壁で進める自治体の脱炭素:建材一体型太陽光発電ガラス(BIPV)

続いて登壇したのは、AGC株式会社の渡 信彦さん。屋根置き太陽光パネルだけでは進まない脱炭素化に対し、自社製品の「建材一体型太陽光発電ガラス(BIPV)」を用いた自治体での採用事例などを解説していただきました。

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【講師】
AGC株式会社 建築ガラスアジアカンパニー
日本事業本部 新市場開拓グループ
渡 信彦 さん

2012年AGC(株)入社後、研究開発部門に在籍。その後、事業開拓部・オートモーティブカンパニーで新規事業創出に従事。経営コンサルティングファーム勤務を経て、2022年11月AGC(株)事業開拓部に復帰。2026年3月より建築ガラスアジアカンパニー日本事業本部新市場開拓グループを兼務し、BIPV事業を推進。

建物を発電に使うBIPV

日本では太陽光発電のさらなる導入拡大が求められていますが、設置に適した平地は限られてきています。斜面などへの無理な設置は災害リスクにつながり、新たな土地開発には生物多様性への配慮も欠かせません。

そこで注目したいのが、建物への設置です。屋根だけでなく、窓や壁、トップライト、ひさし、フェンス、バスシェルターなど、これまで発電に使ってこなかった面を活用すれば、新たな土地を造成せずに発電容量を増やせます。


当社が長年培ってきたのは、遮熱や断熱といった機能をガラスに持たせ、建物や自動車の設計に合わせて納める技術。今回ご紹介する「建材一体型太陽光発電ガラス(BIPV)」も、その強みを脱炭素に生かした製品です。当社はBIPVに約20年取組、さまざまな建物への導入を重ねてきました。

BIPVは、太陽電池セルを2枚のガラスの間に挟み、発電設備と建材の役割を一体化したものです。新築に加え、既存窓の入れ替えや、窓の内側への後付けにも対応できます。屋根置きが難しい施設でも導入の余地があり、市民の目に触れる場所で脱炭素の取組を見える化できる点が大きな特徴です。

BIPVは初期投資が必要になりますが、他と大きく違うのは「見える化・市民への訴求」と「設置自由度」です。屋根置きの場合、耐荷重の問題や積雪、防水工事の問題で置けない施設もあります。また、オフサイトPPAや証書購入は手軽ですが、対策していることが市民に見えにくく、将来的な証書価格の高騰も懸念されます。一方でBIPVは、屋根置きができない施設にも設置でき、建物と一体化しているため、市民の目に触れる形で脱炭素活動を「見える化」できるのが特徴です。

自治体の課題に合わせた導入事例

羽田空港第2ターミナルでは、屋上太陽光だけでは足りない発電容量を、垂直のガラス面に設置したBIPVで補いました。屋上と窓面を組み合わせ、施設全体で239.5kWを確保しています。敷地利用に制約のある大規模施設で、使える面を広げた事例です。

横浜市では、市庁舎1階アトリウムの既存窓の内側に後付け型BIPVを設置する実証を行いました。工事は2日で、実証後の原状回復も可能です。

静岡市では、駅前のシェアサイクルステーションのガラス屋根にBIPVを導入しました。令和4年に起きた台風15号で行政の情報発信が滞った経験から「平時の利便性と災害時の備え」を両立する拠点として検討されたもので、平時は電動アシスト自転車の充電とサイネージの稼働に使い、災害時には充電ポートの開放と情報発信に活用します。道路占用や新設構造物の安全性など、複数部署にまたがる課題がありましたが、台風災害の経験を踏まえ、「部署の壁を越えて検討すべき事業」と位置づけたことで合意形成が進みました。

旭川市では、新設したリサイクルセンターの2階窓面に導入しました。豪雪地では屋根や地上のパネルが雪に覆われるため、窓面を選択。旧施設では年間約3,000人の見学実績があり、施設の特性を生かし、環境学習にも役立てています。脱炭素化推進事業債を活用し、初年度の一般財源負担を10%に抑えた点も特徴です。

BIPVの導入では、窓や壁に設置できるかだけでなく、その施設で何を実現したいかを整理することが出発点になります。脱炭素に加え、防災、環境教育、景観、地域へのPR、施設更新などの目的を重ねることで、庁内にも価値を説明しやすくなるのです。

【株式会社エナーバンク】再エネ調達で庁内を動かすリバースオークションサービス

株式会社エナーバンクの佐藤一輝さんは、電力調達において多くの自治体が抱えている課題を共有した上で、自社製品「エネオク」を活用した解決策を提案。各自治体での事例や具体的な進め方も紹介していただきました。

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【講師】
株式会社エナーバンク
セールス・PM本部 官公庁セールスチーム
佐藤 一輝 さん

自治体向けサービスを扱う企業の営業として約11年間に渡り多くの自治体の地域課題に向き合いシステム導入や運用支援に従事した経験を持つ。現在はエナーバンクにて、コスト抑制や脱炭素化を実現支援するべく全国の自治体にエネオクの導入を推進。

現状維持にもリスクがある

公共施設の再エネ化を進める際、大きな壁となるのが庁内の合意形成です。環境部署は目標達成に向けて動きたい一方、施設所管課や管財・財政部署からは「電気代が高くなるのではないか」「契約変更の手間が増える」「今の電力会社から変える必要があるのか」といった懸念が出ます。

私たちは、エネルギー調達をシンプルにすることを目指すスタートアップ企業です。これまで多くの自治体の電力調達を支援してきた経験から、再エネの意義だけを訴えるのではなく、他部署にとっての課題解決と組み合わせることが、庁内を動かす鍵だと考えています。

従来通りの契約を続けることにもリスクがあります。電力市場の変化によって価格が高騰するほか、一般競争入札が不調・不落となり、割高な契約や最終保障供給に至る可能性もあるからです。料金体系も複雑になっており、事業者の情報収集、予定価格の積算、仕様書の作成などを職員だけで担う負担も軽くありません。

そのため庁内調整では、「再エネを導入したい」と働きかけるだけでなく、電気代の抑制や調達業務の効率化まで一体で提案する必要があります。

自治体側の負担ゼロの「エネオク」

こうした課題を解決する方法の1つが、私たちの電力調達サービス「エネオク」です。リバースオークションと呼ばれる競り下げ方式を採用し、小売電気事業者が他社の提示価格を見ながら、期間中に何度でも価格を下げられる仕組みです。最も低い価格を提示した事業者との契約を検討できます。

もちろん、自治体様は無料でご利用いただけます。再エネにすると高くなると思われがちですが、電力に含まれる再エネ価値はわずかです。大半を占める電気料金そのものをオークションで抑制できれば、コストを削減しながら再エネ化も実現できます。

明細の準備と契約手続きだけで利用できる

利用にあたっては、まず過去の電気料金明細をご提供いただきます。それをもとに私たちが使用状況を分析し、オークションの開始価格を積算します。対象施設、再エネ比率、料金プラン、事業者の条件、支払い方法、請求の分け方などを調整し、仕様書の作成から事業者への周知、質問対応、結果報告まで支援します。

ポイントは、複雑な料金体系を同一条件で公平に比較できる柔軟性と、業務負担の軽減です。通常、事業者の情報収集や見積もり、仕様書作成など多大な手間がかかりますが、エネオクなら一気通貫で対応できます。職員様が行うのは、最初の明細提供と、最後の契約手続きだけです。

従来の入札と比較するとこのようになります。

自治体の導入事例

こうした弊社のサービスは、環境省の「再エネ調達実践ガイド」に手法の1つとして掲載されており、環境省自身も利用しています。また、財務省の「収支改善取組事例」でも紹介されており、国も推奨し全国で実績のある手法として安心してご検討いただけます。

たとえば関東の人口約7万人の自治体では、地球温暖化対策実行計画の目標に対して実績が大きく下回っていました。再エネへの切り替えによる電気代の増加や、契約担当課の業務負担が懸念されましたが、再エネ100%と価格抑制を両立できる点が導入の決め手となりました。庁内説明も支援し、再エネ化と電気料金の大幅な削減を実現しています。

人口約5万人の自治体では、各部署が個別に電力調達を行っていたため、事務負担が課題となっていました。そこで、太陽光発電設備を設置できる施設も少なく、電力契約の切り替えによる脱炭素化を選択。初年度から多くの施設で再エネ電力を導入し、2030年度の目標を前倒しで達成しました。

一部施設から始めて成果を庁内に見せる

とはいえ、最初から全施設を対象にすると、調整の負担が大きくなります。まずは環境部署が所管する施設や庁舎、学校、水道施設など、効果を示しやすい場所から始める方法もあります。そして、その成果をもとに管財・施設所管部署へ提案する。こうして段階的に対象を広げれば、庁内の理解も得やすくなるケースも多くあります。

「エネオク」は官公庁140団体で導入実績があり、平均削減率は15%、単一施設では最大44%の削減事例があります。脱炭素を進めるためには、相手部署に追加の負担を求めるのではなく、抱えている課題を聞き、その解決策として再エネ調達を提案することが大切です。コストと業務負担を同時に抑えられれば、庁内連携を進めるきっかけにもなると考えています。

【佐賀県 小城市】小城市庁舎の再エネ自給自足とBCP強化 公共施設への導入と庁内意識啓発の取組

第4部に登壇したのは、庁舎に太陽光と蓄電池を導入し、「電気の自給自足」の仕組みを構築した佐賀県小城市の古賀勝貴さん。全国に先駆けて取組を進めた工夫や、庁内をどう動かしたかなどを伺いました。

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【講師】
佐賀県 小城市 環境課
副課長
古賀 勝貴 さん

平成15年度に入庁後、下水道整備や処理場建設、教育部局にて学校建設や施設改修などを担当。その後、財政、入札・契約を担当し、管財部局にて市有財産や庁舎管理に携わり、庁舎の再エネ導入を担当。令和6年度から現職。環境行政・資源循環・脱炭素を担当。

大雨災害をきっかけに、72時間の電源を確保

小城市では、市役所庁舎の職員・来庁者用駐車場にカーポート型太陽光パネルを設置し、発電した電気を庁舎で活用しています。余った電力は、道路を挟んだ保健福祉センター「ゆめりあ」にも活用しています。基本的には、庁舎で使う電気を自給自足しながら、避難所となる施設の電源も確保する仕組みです。

事業のきっかけは、令和元年と令和3年に発生した大雨災害です。市内では浸水被害があり、防災拠点である庁舎の業務を災害時にも続けられる体制づくりが課題になりました。当時、庁舎には72時間分の非常用電源がなく、燃料の備蓄も約14時間分でした。防災部署から改善を求められる一方、庁舎の電気代や維持管理費も高く、照明のLED化も進んでいませんでした。

そこで、平時の電気代削減と、非常時の業務継続性向上を両立する「庁舎防災機能強靭化事業」を実施。環境省の補助事業を活用し、太陽光発電、蓄電池、省エネ設備を一体的に整備しています。

駐車場には1,200枚の太陽光パネルを設置し、発電容量は552kWpとなりました。さらに、3,456kWhの蓄電池を備えた2階建ての制御・蓄電池室を新設。EMSとBEMS、省エネ空調、LED照明、自営線も整備しました。総事業費は約8億6,000万円ですが、補助金や地方債を活用し、実質負担は事業費の約28%に抑えています。

駐車場のカーポート型太陽光パネルは非常に強固な作りで、耐震設計も最上クラスです。いかなる災害時でも活用できるよう、杭も打っています。蓄電池は1階に収納しており、2階には電気を変換・制御するインバーターなどが入っています。

建物側にはBEMSを導入し、電力の使用状況に応じて照明や空調の出力を制御しています。需要と供給のバランスを調整できる仕組みです。庁舎内には閲覧用のモニターを設置し、発電状況や消費電力を来庁者や職員が見られるようにしています。これにより職員の意識も高まっています。

電力系統については、基本的には電力会社との契約を解除し、基本的に自給自足する仕組みを構築しています。余剰電力は「ゆめりあ」に送り、照明や空調の一部に活用。非常時には、避難所となる福祉センターの運営を継続できるようになっています。もちろん、日照不足などで足りない時は隣の施設から電気をもらったり、緊急時に高圧を投入したりする仕組みも備えています。

防災機能と年間1,000万円の電気代削減を実現

整備後は72時間以上の非常用電源を確保し、外部で停電が起きても庁舎業務を継続できるようになりました。令和2年度の実績をもとにすると、年間約62万kWhの電力と約360tのCO2、約1,000万円の電気料金を削減できる見込みです。現在の電気料金に置き換えれば、削減効果は年間1,500万円以上になると考えています。この取組は、新エネ大賞の「新エネルギー財団賞」を受賞し、BELSでも最高評価の星5を取得しました。

庁内調整で難しかったのは、工事中も庁舎を閉鎖できないため、「居ながら施工」が必要だった点です。業務への影響を抑えるため、庁舎内の工事は時間外や休日を中心に実施。駐車場は工事範囲を絞り、近隣の市有地や借り上げた土地を臨時駐車場として使用しました。

職員には駐車場所を交代で変更してもらい、庁内グループウェアを使って工事日程や使用制限を早めに周知。図面も添えて、どこが使えないのかを分かりやすく伝えています。現場にも足を運び、職員や施工業者と細かく調整を重ねました。

庁舎で得た経験をほかの施設へ

こうした庁舎の事例は、築30年以上の小城市生涯学習センターの改修にも生かしています。当初は一部のLED化と空調改修を予定していましたが、補助事業や地方債を組み合わせ、対象範囲を拡大。太陽光発電、蓄電池、BEMSも導入しました。

公共施設の電力契約も再エネプランへ切り替えています。低圧264施設は令和4年度から、高圧29施設は令和5年度から実施し、一般的な電力契約と同程度以下の価格を競争入札で確保しました。

さらに、残りの公共施設についても検討するため、令和6年度に「太陽光導入可能性調査」を環境省の補助金で実施しました。79施設の中から、ポテンシャルが高い17施設について詳細な分析を行い、その結果をもとに担当部署と話し合い、コスト削減効果や防災面、PPAによる負担軽減などを説明し、今後の計画を立てているところです。

職員の意識啓発という点においては、クールビズやゴミの分別などの取組を強化しています。独自に「クリーン選手権」や「アルミ缶回収チャレンジ」を2年連続で実施し、楽しみながら関心を持ってもらうため、職員互助会と連携して景品を準備したり、アルミ缶の売却益を商品に充てたりしています。

脱炭素だけを目的に掲げても、庁内の理解を得るのは簡単ではありません。コスト削減や利便性、防災力の向上といった実利を示し、現在の予算の中で取り組める方法を提示することが大切だと考えます。また、職員にとって“楽しさ”を取り入れることも連携のきっかけになります。小さな行動変容を積み重ねながら、脱炭素を庁内全体へ広げていきたいと考えています。

【アイリスオーヤマ株式会社】次世代高効率LEDによる公共施設脱炭素:補助金・J-クレジットを活用した省エネ戦略

最後に登壇したのは、アイリスオーヤマ株式会社の根本碧海さん。補助金を活用したLED化のノウハウを始め、配線工事不要で省エネを最大化できる自社の「無線照明制御(LiCONEX)など、省エネ戦略について解説していただきました。

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【講師】
アイリスオーヤマ株式会社
省エネソリューション事業本部 ライティング事業部 マネージャー
根本 碧海 さん

アイリスオーヤマ株式会社に入社後、関東圏で約4年間、公共施設LED化に従事。メーカー視点で賃貸借契約による費用平準化や費用対効果の算出、最適な照明プランを手がける。直近はJ-クレジットを活用したGX事業を推進し、自治体の脱炭素化を支援。

公共施設のLED化は道半ば

アイリスオーヤマは、法人向け事業の主要商材としてLED照明を扱っています。事業を始めたのは2010年で、東日本大震災では、被災地の企業として節電需要に応えたいという思いから、LED照明の開発・供給に力を入れてきました。

公共施設の脱炭素化では、照明のLED化が比較的取組やすく、省エネ効果も見込みやすい施策です。一方で、予算や人手の不足によって更新が進んでいない施設も少なくありません。今回は、発注方法の工夫や無線制御、J-クレジットを組み合わせ、LED化を進める方法をご紹介します。

皆さんご存知の通り、水銀に関する水俣条約により、直管蛍光灯は2027年末までに製造・輸出入が禁止されます。照明メーカー各社も期限を待たずに生産終了を進めており、交換用の蛍光灯を確保しにくくなることが予想されます。

公共施設のLED化率は市場全体で約65%ですが、学校や保育施設、公園などの公共施設では50%以下にとどまっています。

では、なぜ進捗が鈍いのでしょうか。その背景には、大きく3つの課題があります。1つ目は、資材費や人件費などの上昇による公共工事費の高騰です。2つ目は、限られた財源の中で空調や建物の老朽化対策が優先され、照明まで予算が回らないこと。3つ目は、自治体の技術職員が減り、設計や効果の算定、事業者選定に時間がかかっていることです。

公共施設のLED化を加速させるために

こうした課題への対応として増えているのが「賃貸借」です。メーカーやコンサルタントの設計ノウハウを使えるため、検討から実施までを速められます。施設数が多い場合でも、1つの契約で100施設以上をまとめたり、複数年度にまたがって整備したりすることが可能です。10年の長期契約にすれば、費用を平準化できるほか、製品や施工の保証も契約に含められます。電気代の削減額から賃貸借料を捻出できる事例もあり、保守や予算管理の負担を抑えやすい方法です。ただし、賃貸借では活用できる補助金が限られるという課題があります。

そこで最近出てきたのが「業務委託」として発注する方法です。公共工事というより修繕に近い位置づけとし、設計、機器調達、施工、保守までを一括で委託します。事務負担を減らしながら、民間の技術や提案を取り入れられ、脱炭素化推進事業債などの地方債も検討できます。財源、スピード、性能を総合的に考えると、比較的バランスの取れた手法だと考えています。

無線制御を組み合わせ、快適性と省エネを両立

弊社の無線制御システム「LiCONEX(ライコネックス)」は、ただLED化するだけでなく、調光機能で調光を制御することでさらに削減効果を高められるのが特徴です。

例えば学校では、プロジェクターを使用するときに教室前方だけを暗くしたり、外光に合わせて照度を自動調整したりできます。時間帯ごとのスケジュールを設定すれば、消し忘れの防止にもつながります。

滋賀県の米原市役所では、タブレット1つで照明を管理できる無線制御を導入しました。

さらに、埼玉県深谷市の体育館「深谷ビッグタートル」では、利用目的に合わせて明るさを段階的に変更できるようにしています。単なる電気代削減にとどまらず、施設の使いやすさや管理のしやすさも高められます。

「J-クレジット制度」とは

「J-クレジット制度」についても紹介させてください。省エネ設備の導入などによって削減されたCO2排出量を国がクレジットとして認証し、脱炭素に取り組む企業などへ売却できる制度です。2026年4月からのGX推進法により企業の需要も高まっています。

対象となるには、LEDを設置してから2年以内であること、環境価値が移転する補助金や地方債を活用していないこと、一定の投資回収年数があることなどの条件があります。そのため、補助金を利用しにくい賃貸借事業との組み合わせが考えられます。

自治体が独自にプロジェクトを立ち上げる「通常型」もありますが、事務や販売の負担が大きくなります。既存のプロジェクトに参加する「プログラム型」であれば、立ち上げ費用を抑え、クレジットの創出や販売を運営事業者に任せられるのでおすすめです。販売先や売れ残りのリスクも抑えやすく、成果報酬型で進めることが可能です。

クレジットの売却益を、太陽光発電設備や公用車のEV化など、次のGX投資に活用すれば、LED化を起点に脱炭素施策の後押しにもなります。「環境価値を売却すると自治体の削減効果が悪化するのでは?」という懸念があるかもしれませんが、クレジット発行期間が終われば価値は帰属するため、2050年のカーボンニュートラルには影響しないのでご安心ください。

公共施設のLED化を進めるには、照明器具だけでなく、発注方法、財源、維持管理、環境価値まで一体で考えることが大切です。私たちは、省エネ設備の調査・設計から施工、J-クレジットの活用まで、自治体の状況に合わせた方法を提案していきます。