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畳めて運びやすいコンテナが、被災地での医療復旧を助ける

災害現場などに運び込める設置型の医療コンテナ
令和6年の能登半島地震では、被災した医療機関へのサポートにおいて地理的条件が壁となった。効率的に搬入し、短時間で必要な機能を復旧させるため、災害現場で初めて“医療コンテナ”を活用したという。
※下記はジチタイワークスVol.45(2026年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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国立健康危機管理研究機構
危機管理・運営局DMAT事務局
国際対策課長
赤星 昂己(あかほし こうき)さん
物資や人員の出入りが困難な状況で効率的に運び込めるコンテナを活用。
半島の先端で起きた能登半島地震。その地理的条件が被災地への支援を難航させたという。当時、厚生労働省の災害医療担当として現地で配備調整を行った赤星さんは、こう振り返る。「通常なら金沢方面から能登北部まで片道2~3時間で到着するところ、災害の影響で道路が寸断され、10時間以上かかる状況になりました。そのため、被災地外に患者を搬送したり、被災地に必要な物資や人員を運び込んだりすることが難しかったのです。長引くと想定される避難生活、高齢者が多い地域特性を踏まえると、医療提供体制をより強化する必要がありました」。
発災直後、緊急を要する傷病者には災害派遣医療チーム(DMAT)をはじめとする医療関係者が対応していた。被災した現地の病院でも傷病者を受け入れていたものの、建物や設備の損壊により機能に多くの制約があった。そこで、迅速に拠点を確保できる“医療コンテナ”を被災地で初めて活用することになった。「国としてもこれから医療コンテナを普及させる方針がありました。CTやレントゲンなどの医療機器が組み込まれた状態で搬入する“移動型”と、パーツを分解して運び、クレーンなどを使って現地で組み立てる“設置型”の2種類を導入しました」。
導入の際は、県と市町、保健所などが連携。費用負担や建築基準法、消防法などについて確認と調整を重ねた。医療関係者とは現場のニーズを擦り合わせ、寒さ対策や水まわりの整備など現地特有の課題にも一つずつ対応。こうして必要な数と場所、使い道を確認した上で石川県内の8カ所に計34棟コンテナを取り入れた。

設置型は使い方の自由度が高く医療現場の足りない機能を補う。
その中で、コンテナ製品の製造・販売を行う「YUASA(ユアサ)」が提供したのが、設置型の「フラットパック型医療コンテナ」だ。同製品は畳んだ状態で大型トラックに最大4棟を積載できるため、今回のような状況では輸送効率の高さでも貢献したという。組み立てた面積は1棟約13~17㎡。棟を連結させたり、仕切りを入れたりと、ニーズに合わせて間取りを自由に変更できる。
同社のコンテナは同県輪島市(わじまし)や志賀町(しかまち)などに4カ所、計17棟が導入された。地域の診療所では被災した建物が復旧するまでの期間、敷地内に連結して“ミニ・クリニック”として稼働させた。また、被害が大きかった町立病院では、入院病床を補う目的で活用した。ほかにも、移動型医療コンテナと併設する形で広域医療搬送拠点としても使われたそうだ。「移動型の医療コンテナは、中の設備が完成しているのですぐに使える便利さがありますが、建築基準法にもとづき、トラックの荷台に載せたまま稼働します。そうすると段差が生じ、高齢者や車いすの利用者には負担になることも。フラットパックは段差がほぼないので、バリアフリーに近い仕様。さらに、幅広い場面で使えることも、選定した理由です」。

平時から部署を越えて連携し医療機関の情報をつかむ。
コンテナの需要や使い道は発災後の状況によっても変わってくる。発災直後は緊急を要する傷病者が殺到するため、速やかな配備が必要になるという。そのためには自治体同士の連携や、費用・法律・設置の流れに関する確認などが必要だ。「大型の医療コンテナは、目的や責任者が曖昧なまま現地に送ると、適切に使えずに持て余してしまう可能性があります。関係者が連携し、課題をクリアにしてから導入することが重要です。いつどこで災害が起きるか分からない今、自治体の担当者はこうした選択肢を視野に入れ、導入イメージを進めておくことが、有事を助ける備えになると考えています」。
発災から約1週間を過ぎる頃には、持病の薬を求める人が地域のクリニックを訪れたり、避難所の感染対策を取ったりといった医療のニーズが高まる。こうした場面では、病院や医療従事者とのコミュニケーションが大切なので、日頃から福祉関連の部署と連携して、情報収集ができると理想的だろう。
今回のような状況をあらかじめ想定して、事前にコンテナを揃えておくことは難しいかもしれないが、日常でも使うことができれば、利便性が向上する。組み立てられて幅広い使い方ができるコンテナは、平時から別の目的で活用するなど、フェーズフリーに取り入れることで、有事の動きをスムーズにするのではないだろうか。
医療従事者の声

ごちゃまるクリニック
院長 小浦 友行(こうら ともゆき)さん

元・志賀町立富来病院
(現・すこやか整形外科医院 院長)
副院長 中村 健一(なかむら けんいち)さん
有事こそ地域医療の早期復旧が住民の安心感につながる。
地域医療の役割は、治療だけにとどまらない。行き慣れたいつもの病院で医療を受けられることは、住民の心理的なよりどころになるようだ。被災後に医療コンテナを活用した2人の医師に話を聞いた。
迅速に立て直しを図り医療継続の体制を守った。
石川県輪島市(わじまし)で、乳幼児から高齢者までを幅広くケアする地域密着型の診療所「ごちゃまるクリニック」は、3階建ての1階にある診察室・処置室が甚大な被害を受けた。2階で診療を再開したが、建物の補修を行う間、拠点が必要になり、コンテナ4棟を活用したという。「建物が使えなくても、訪問診療は続けていました。ですが、スタッフが集まって電話対応や情報共有を行う事務所が必要に。コンテナが来たことで訪問診療もスムーズになり、その後は外来診療も可能になりました」と小浦さん。コンテナは、4棟を連結してクリニックの敷地内に設置。診療スペースと受付、待合機能と多機能トイレを備えた“ミニ・クリニック”を開き、令和6年2月から5月中旬まで活用した。
一方で、中村さんが在籍していた同県志賀町(しかまち)にある町立富来(とぎ)病院は、地域包括ケア病床を含む60床をもつ。建物が損傷し、2階以上が使えない状態に。被災直後は60人以上の全入院患者を県南の病院へと搬送した。「避難所からの患者の受け入れに加え、高齢者や入院が必要な人も多く、病床が足りない状況だったんです」と話す。コンテナは6棟を連結して入院病床に使われ、主に点滴や酸素投与が必要な慢性期の患者が対象だった。
通い慣れた病院の存在が被災地の支えになった。
2つの病院は、それぞれ地域医療としての大切な役割を担った。ごちゃまるクリニックの仮設診療所は、地域住民の集いの場になったという。「診療再開後は、これまでのように子どもから高齢者まで様々な人たちが訪れました。日頃から通い慣れている場所で直接コミュニケーションが取れることで少しでも日常を取り戻せる。それが安心につながる役割を果たしていたと思います。診察室には間仕切りを入れて個室にしたことで、患者のプライバシーを守れたこともよかったです」と小浦さんは語る。
多くの入院患者を受け入れる富来病院は、地元に病床を確保できたことが有意義だったそうだ。中村さんは「医療スタッフの多くは避難所から通勤していましたが、地域医療を守ろうと必死でした。入院機能を維持できたことで、見舞いに来る家族の皆さんからも喜ばれましたね」と振り返る。
災害の復旧には時間がかかり、平時のようにはいかないことが多いが、そんな状況だからこそ、人と人が会える場所が大切になる。医療コンテナを活用したことで、空間の確保だけでなく地域に根差した医療機関ならではの“つながれる機能”を取り戻せたようだ。

企業担当者の声|過酷な現場対応を知り、支援者が安心して休めるコンテナを開発。

YUASA
建設マーケット企画部
北田 昂大(きただ こうだい)さん
能登半島地震をきっかけに、自治体職員や医療従事者、支援団体の休める場所として開発されたのが、移動式宿泊施設「コンパク」。有事だけでなく、平時は“にぎわい創出の場”として地域イベントの拠点・休憩所など、“フェーズフリー”で活用できるという。
支援に応じる人たちに快適な環境を。
能登半島地震では、自治体職員や医療従事者が、過酷な環境での生活を余儀なくされているという実態を知りました。そこで、現場の最前線にいる皆さんの心身が少しでも休まるような場所をつくりたいと考えて開発したのが、コンパクです。フラットパック型医療コンテナと同様に、折り畳んでトラックで輸送し、現地で組み立てることができます。
内装の標準設備は、シャワーやトイレなどの水まわり、寝具、エアコン、電子レンジなど、生活に必要な家具家電。ビジネスホテルのように便利で快適な空間を提供し、レンタルにも対応しています。また、被災地の環境や状況に応じて、ユニット式の床暖房や、衛星通信の設置も可能。支援する人たちの健康や安全を守ることにつながります。
日常になじむことでいざというときに使える。
有事の場面になればなるほど、“支援する側”の快適性や安全性は後まわしになりがちです。何かが起きてから取り入れることは、予算や時間の制約もある上に、精神的なハードルが高いかもしれません。コンパクは有事に限らず、建設現場の宿舎や地域の拠点、イベントなどにも活用することができます。平時から活用することで、災害が起きた際にも自然と使いやすくなるのではないでしょうか。



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