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【セミナーレポート】「質の防災」にどう応えるか〜災害関連死を防ぐ避難所運営と受援体制〜 【DAY2】

防災・危機管理
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【セミナーレポート】「質の防災」にどう応えるか〜災害関連死を防ぐ避難所運営と受援体制〜 【DAY2】

「もし今、大規模災害が起きたら——避難所は開けられるか、水は確保できるか、応援職員を受け入れられるか」。そんな問いを突きつけられたとき、自信を持って「できる」と答えられる自治体はどれほどあるでしょうか。備えの「量」から備えの「質」へ。災害関連死を防ぐための避難所運営と受援体制のあり方を問い直す本セミナーでは、国の指針から自治体の実践、IoT技術の活用まで、すぐに動けるヒントを幅広くお届けしました。

概要

■テーマ:「質の防災」にどう応えるか〜災害関連死を防ぐ避難所運営と受援体制〜【DAY2】
■実施日:令和8年5月28日(木)
■参加費:無料
■申込者数:164人

実効性ある受援計画と避難生活環境改善

織江 潤一 氏
内閣府 政策統括官(防災担当)付 参事官(防災計画担当)付
参事官補佐

宮本 裕喜 氏
内閣府 政策統括官(防災担当)付 参事官(生活環境担当)付
主査付

第1部に登壇したのは内閣府(防災担当)の織江氏・宮本氏。受援計画の骨格となる「受援体制の二層構造」と「受援シートの活用」、空振りを恐れない早期要請の重要性について織江氏に解説いただいた。後半では宮本氏より、スフィア基準に基づくトイレ・生活空間・食事の具体的な整備指針についてお話いただきました。

大規模な災害が発生すると、被災市町村では短期間に膨大な業務が発生し、行政機能が急速に低下する。罹災証明の発行、避難所の運営、住家の被害認定調査、物資の仕分けといった業務が初動期から復旧・復興期にかけて連続して生じるが、多くの市町村では職員数に限りがあり、かつ発災時には参集率も低下する。自治体単独での対応には明確な限界があり、外部からの人的応援を前提とした受援体制を平時から整えておくことが不可欠だ。

受援計画は、全庁対応業務として位置づける

受援計画の骨格となるのは、「受援対象業務の選定」「受援体制の構築」「応援を受け入れる際の心構えとポイント」「受援シートの作成」の4点だ。過去の災害では、避難所運営と罹災証明業務に応援職員が集中した実態がある。平成28年の熊本地震の事例では、避難所運営に延べ4,075人(50%)、罹災証明業務に1,400人(17%)が派遣されており、こうした実績をもとに手引きでは8つの業務についての受援シートのひな形を提供している。各自治体はこれをダウンロードして活用することで、最低限の受援体制を効率的に構築できる。

受援体制の中核となるのは2種類の担当者の設置だ。一つは「庁内全体の受援担当者(受援班)」で、都道府県や応援機関との全体調整を担い、災害対策本部の一班として位置づけられる。もう一つは「各業務の受援担当者」で、避難所運営班や福祉班など、それぞれの現場で応援職員の受け入れと進捗管理を担う。この二層構造によって、多岐にわたる業務を各担当者が分担しながら円滑に対応できる体制をつくる。

応援要請は、空振りを恐れずに早期に

応援を要請する際に最も重要なのは「躊躇しないこと」だ。過去の災害では、被害の全容が把握できないうちに要請をためらい、要請が大幅に遅れた事例もあった。空振りを恐れずに早期に要請することが何より大切であり、特に被災市町村の「災害マネジメント」を支援するために派遣される都道府県職員、総括支援チーム、その他応援職員等を最優先で要請することが有効だ。能登半島地震でも、輪島市では多くの対口支援団体が派遣されたが、三重県が総括支援チームとして災害マネジメントを総合的に支援し、各支援団体の配置調整や活動の全体調整を担うなど、円滑な災害対応に大きく貢献した。もう一つの実態上の課題として、応援職員の受け入れ環境の整備がある。能登半島地震では、応援職員の執務スペースや宿泊場所の確保が追いつかず、業務・生活環境が悪化した。庁舎内にスペースがない場合でも、ロビーにパーテーションを設けるなどの工夫が求められる。宿泊場所については北海道の事例のように、道内の使用可能施設を事前にリスト化し、キャンピングカーの駐車スペースまで含めて整理しておく取り組みが参考になる。

受援シートで、担当者・スペース・人数を事前に固める

受援計画の実効性を高めるためには、計画を「作ること」で終わらせないことが重要だ。山梨県南アルプス市では、各対策部のリーダーを集めて説明会を開き、全庁的な理解を図った上で業務ごとの担当部署・執務室・休憩室・時間軸を一覧にまとめ、見直しを続けている。福岡県大野城市ではPDCAサイクルを活用し、BCP・受援に関するワークと大規模シミュレーション訓練の2段階で訓練を実施している。

避難所の生活環境は、発災直後から整えるもの

内閣府では「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を令和6年12月に改定し、スフィア基準(国際NGOが定めた人道支援の基準)を踏まえた対応を各自治体に求めている。発災直後から良好な避難生活環境の確保を実現するために、トイレの確保・管理、生活空間の確保、食事の質の向上、生活用水・飲料水の確保、要配慮者への保健・福祉サービス等について、平時からの準備と発災後の対応を整理している。

トイレについては、インフラの復旧具合などに応じて適切な種類を選択することが重要だ。発災初期に50人に1基、中期には20人に1基の割合での確保を求めており、女性用と男性用の比率は3対1が一つの目安だ。携帯トイレ・簡易トイレ・仮設トイレ(快適トイレ仕様)・マンホールトイレ・トイレカーと、それぞれ使用時期の異なる種類を平時から組み合わせて備蓄・協定しておくことが求められる。生活空間については、スフィア基準にある1人あたり最低3.5平方メートル程度の居住スペース確保を一つの目安に、事前にレイアウトのひな形を作成しておくことが推奨されている。食事については、炊き出しやキッチンカー、セントラルキッチン方式の活用など平時からの連携体制の構築が有効だ。指定避難所のほか、ホテル・旅館、大学、宗教施設など多様な避難所の確保も積極的に進めることが求められている。

災害時における生活用水の確保について

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小上 和輝 氏
I・T・O株式会社
営業開発部 中日本開発課

第2部に登壇したのはI・T・O株式会社の小上氏。過去の大規模災害で「最も困ったもの」の1位が生活用水だったという調査結果をもとに、学校プールや河川の水を浄化して洗濯・シャワー・手洗いに使える生活用水浄化装置「ウォーターリリーフ」について、能登半島地震での2カ月間の実証事例とともにお話いただきました。

断水は長期化する。飲料水とは別に、使う水の確保を

大規模災害が発生した際、地域のインフラが大きなダメージを受け、住民の生活復帰に時間を要するケースが増えている。水道管の老朽化等により断水は長期化する傾向にあり、阪神・淡路大震災では約130万戸が最大約3カ月、東日本大震災では約256.7万戸が最大約5カ月の断水を経験した。能登半島地震では半年を超えても断水が解消されなかった地域もあった。こうした状況を受け、内閣府の「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」では、飲料水だけでなく生活用水の確保や洗濯・入浴・シャワー設備の整備が明記されており、自治体に対して具体的な対応が求められている。

注目すべきは、熊本地震後に避難者を対象に行われたアンケート調査の結果だ。「避難所での滞在中に最も不足して困ったもの」の1位は飲料水ではなく生活用水(41.6%)であった。実際、能登半島地震においても飲料水は避難所に支援物資として大量に届けられていたが、生活用水は不足し続けていた。洗濯・手洗い・トイレ・シャワーといった日常生活に必要な大量の水の確保が、被災地では依然として大きな課題となっている。

プール水を浄化し、シャワー・洗濯・手洗いに使う仕組み

I・T・O株式会社が総代理店として提供する生活用水浄化装置「ウォーターリリーフ」は、こうした課題に応える製品だ。製造元は水処理機大手・栗田工業のグループ会社であるクリタック株式会社。本装置は、飲料水は備蓄水や給水車に任せ、洗濯・シャワー・トイレ・清掃用途に大量に必要となる「生活用水」の供給に特化した浄化装置である。

仕組みはシンプルだ。学校のプールや河川・井戸・雨水タンクといった水源から原水を汲み上げ、プレコート材(珪藻土パウダー)を使用したバネ式フィルターで濁質を除去し、活性炭フィルターで臭いを取り除いた後、塩素系消毒剤で殺菌する。処理された水は厚生労働省の浴槽水・遊泳プール水の水質基準に相当し、シャワーや洗濯、手洗い、トイレなどに安全に使用できる。最大処理量は1時間あたり2,000リットルで、シャワー4口を同時使用できる能力を持つ。

製品の特長は大きく3点だ。第一は「誰でも使いやすい設計」。家庭用コンセント(AC100V・最大600W)で動作し、ポータブル発電機やEV車からの給電も可能。専用アプリは不要で、装置の設置・ホース接続・フィルター準備・機器接続・ボタン操作という4ステップで誰でも操作できる。第二は「消耗品コストの安価さ」。珪藻土パウダーを使ったバネ式フィルターを採用しているため、膜式ろ過方式と比較してランニングコストが大幅に抑えられる。初回購入時にパウダー100袋と活性炭フィルター4本が付属しており、この付属品だけで学校プール約1杯分(300立方メートル)の生活用水を作ることができる。第三は「厚生労働省基準の水質」。珪藻土パウダーは食品添加物(加工助剤)としても使用されており、塩素消毒を加えることで衛生的安全性をさらに高めている。

能登での2カ月間の実証が示した、装置の使いやすさとコスト

能登半島地震での実証事例では、能登の施設(学校)に本装置を持ち込み、プール水を浄化してシャワー1口・洗濯機2台・仮設手洗い場(蛇口3口)に供給した。設置期間は約2カ月、延べ利用者は約3,800人、処理水量は約100トンに達した。避難者から最も喜ばれたのは洗濯機の利用で、特に女性の肌着を人目にさらさずに洗濯・乾燥できる環境の提供が高く評価された。

本体コストは他社製品より高いが、フィルター等の消耗品を含めたトータルコストでは逆に安くなるという試算結果も出ている。

同社は「ライフライン防災」というコンセプトのもと、ガス(LPガス災害バルク・ガス発電機・ガス空調)と水(生活用水浄化装置)を組み合わせた総合的な避難所対応ソリューションも提案している。

派遣経験を“報告で終わらせない”能登での気づきを自庁の備えに変える具体プロセス

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山下 晃 氏
静岡県 焼津市 防災部 地域防災課
課長

第3部に登壇したのは静岡県焼津市防災部の山下氏。能登半島地震への派遣経験を「報告で終わらせない」ための全庁的なフィードバックプロセスと、被災者支援システムの導入・給水方式の見直し・体育館エアコン設置・ラップ式トイレ整備・水循環型シャワー導入など、派遣知見を起点に着実に積み上げてきた防災対策の具体的な取り組みについてお話いただきました。

静岡県焼津市は東京から西へ約193キロメートル、名古屋から東へ約173キロメートルの中間に位置する港町だ(令和8年3月末時点の人口133,542人、世帯数61,223世帯)。市の東側は駿河湾に面しており、焼津港・小川港・大井川港の3港が立地する。東海地震対策から始まった防災の取り組みは、東日本大震災以降、津波対策を特に重点的に進めてきた。約5キロにわたる防潮堤「潮風グリーンウォーク」が令和7年度に完成し、二段構えの津波対策が整いつつある。

年3回、全市域規模の訓練で安否確認を積み上げる

焼津市の防災対策の中心にあるのが、年3回にわたる市内全域の訓練体制だ。8月の総合防災訓練、12月の地域防災訓練、3月の災害時初動訓練という構成で、いずれも分散型の実施形態をとる。令和7年度は3訓練合計で約21万人が参加した。この高い参加率の背景には、「わが家の安否確認カード」の活用がある。令和3年度から市内全体で様式を統一したこのカードは、各訓練で繰り返し使用することで自主防災会ごとの集計訓練を重ね、現在の形に磨き上げられてきた。

発災直後の情報収集面では、自動飛行ドローンを導入し、運用を進めている。昨年の津波警報発令時、沿岸部への一時避難場所における避難者の状況確認に課題が残ったことを踏まえ、事前設定コースを自動飛行するドローンで避難状況をリアルタイムに把握する運用の構築に取り組んでいる。AI機能による人数の自動カウントや、スピーカーを装着した呼びかけ機能の活用も検討中だ。また、阪神・淡路大震災で救出された方の9割が家族・近隣住民によるものだという教訓から、消防団の指導のもとで実施する「自主防救助隊」の育成訓練も継続しており、令和7年3月末時点で隊員数は1,410名に達している。

派遣職員に求めるのは、自庁に置き換えた目線

能登半島地震への派遣活動からの学びをいかに庁内に還元するか、焼津市が力を入れているのがこの「フィードバックのプロセス化」だ。派遣職員には出発前から「自分たちの街に置き換えて課題を見出して帰ってきてほしい」と伝えており、帰任後は市幹部・議会・若手を含む全職員向けの報告会でその学びを共有し、即座にマニュアル修正に落とし込む体制をとっている。

被災者支援システム、給水方式の見直し、現場から施策へ

派遣で得た知見は具体的な施策に結びついている。まず「被災者支援システムの導入」だ。能登で対口支援として住家被害認定調査や罹災証明書発行を支援した経験をもとに、令和7年度にシステムを新たに導入。紙ベースで行っていた認定調査から証明書交付までの一連のプロセスをデジタル化することで、迅速化・省力化を図る。

「給水活動の見直し」も重要な成果だ。従来は給水車が直接住民に水を配る方式だったが、能登での派遣活動や他の支援自治体との情報共有を経て、仮設タンクを避難所・地域拠点に分散配置し、給水車はタンクへの補水を繰り返す方式に転換した。普通自動車免許で運転できる車両を運用に組み込むことで、免許要件の変化に伴う若手職員の操作可能な車両範囲にも対応している。

体育館エアコン、ラップ式トイレ、水循環型シャワー。着々と進む環境整備

避難所の生活環境改善も着実に進んでいる。市内13小学校・9中学校、計22校の教室や体育館のエアコン設置が完了した。スフィア基準を参考にした自動ラップ式トイレの整備は令和7年度に206基(国交付金活用)、令和8年度にさらに44基の追加整備を予定。令和8年度は軽トラックベースの4WD・寒冷地仕様トイレカーの導入も行い、他地域への派遣支援も見据えた装備の充実を図る。水循環型シャワー(WOTA BOX)も令和7年度に2基を導入し、断水時でも少ない水で温かいシャワーを提供できる体制を整えた。受援計画については令和7年3月に策定を完了し、各部局が主体性をもって災害対応業務を担う全庁横断の体制構築を進めている。

焼津市が強調するのは「防災部局だけが動かす訓練からの脱却」だ。各部局に当事者意識を持たせるため、訓練の立案から実施まで各部局が主体的に担う形を整え、防災部局はそのコントロールと伴走支援に徹するという方向性で取り組みを進めている。

人に頼る防災からデジタルで備える防災DXへ

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野口 修 氏
ビット・パーク株式会社
代表取締役

第4部に登壇したのはビット・パーク株式会社の野口氏。今も約8割の自治体が「人による鍵の受け渡し」に頼るという調査データを示しつつ、遠隔解錠・震動検知・Jアラート連携の3機能を備えたIoT鍵収容箱「ココBOXⅡ」を紹介。2024年の能登半島地震で発災から1分後に自動解錠が作動し、佐渡市民2,830名の避難施設入所を実現した実証事例についてお話いただきました。

災害が発生した際、避難施設を迅速に開放することは住民の命を守る最初の一歩だ。しかし現実には、その鍵をいつ、誰が開けるかという問題が、大規模災害時にたびたび壁になってきた。ビット・パーク株式会社の調査(電話調査、回答数390、令和6・7年度)によると、避難所の鍵の受け渡し方法として「人による直接の受け渡し」が79%(308件)を占め、「キーボックス使用」は16%(63件)、「番号式鍵」は5%(19件)にとどまる。大半の自治体で、校長先生や自治会長、市職員が直接鍵を持って駆けつける運用が今も続いているのが実態だ。

避難所の鍵は今も8割が「人頼み」。発災時の3つの課題

この方式には3つの課題がある。第一に「鍵を持った人が来られない」問題。鍵の所有者自身が被災している可能性が高く、道路状況や交通手段のトラブルに見舞われることも多い。休日・夜間の対応は特に困難だ。第二に「住民への情報提供の遅れ」。発災時に自治体職員は対策本部の設置や関係部署との連絡対応で手いっぱいになり、どの避難所が開放されているかという情報発信が後手に回る。第三に「すでに設置しているキーボックスが機能しなかった」問題。設定震度に到達しなかった・津波や洪水では作動しない・バッテリー残量不足・施設の鍵が入っていなかったなど、実際に機能しなかった事例が報告されている。

リモート解錠、震動検知、Jアラート連携。3つの機能で確実に開ける

こうした課題を解決するために開発されたのが、ビット・パーク株式会社の「ココBOXⅡ」だ。IoTを活用したリモート式の鍵収容箱で、避難所となる学校や公民館の外壁に設置し、施設の鍵を安全に保管しながら、遠隔から解錠・施錠を操作できる。商用電源(AC100V)を基本とし、UPS(無停電電源装置)を内蔵しているため、停電時もUPSにより一定時間の稼働が可能だ。

「ココBOXⅡ」の特長は「即時性」「操作性」「確実性」の3点に整理される。即時性の面では、PCやスマートフォンからのリモート解錠・施錠のほか、震度5強以上を検知した際の震動検知による自動解錠機能を持つ。さらに特許出願済みの機能として、Jアラートと連携した一斉解錠も可能だ(有料オプション)。操作性の面では、専用アプリが不要でWebブラウザから操作でき、複数台を一元管理できる管理画面を提供する。確実性の面では、24時間365日のシステム監視を実施し、バッテリー残量の遠隔確認ができるほか、鍵の内在管理機能(有料オプション)によりどの鍵が取り出されたかもログで追跡できる。

発災から1分、佐渡市で証明された自動解錠の実力

実証事例として特筆されるのが新潟県佐渡市での導入だ。2021年3月に小中学校・公共施設に計28台を全島導入。2024年の能登半島地震発生時(令和6年1月1日16時10分)、発生から1分後の16時11分には28台のうち9台が震動検知機能により自動解錠し、残りは自治体職員によるリモート操作で順次解錠された。発災当日に佐渡市民2,830名の避難施設への入所が確保されたという記録が残っている。この実績をもとに、佐渡市では令和6年3月の市議会定例会において、備蓄倉庫の鍵もリモートキーボックスで保管する改善計画が答弁されている。

同社はこうした防災利用にとどまらず、「フェーズフリー」な使い方も提案している。公共施設の予約管理システムとの連携により、平時の施設利用時に予約確認メールのワンタイムURLから「ココBOXⅡ」を解錠できる機能を開発しており、非常時だけでなく日常的な鍵の受け渡し管理にも活用できる設計になっている。「ココBOXⅡ」は内閣府国土強靱化大賞「ジャパンレジリエンスアワード2025」優秀賞、東京都「東京ソーシャル・イノベーションアワード2025」奨励賞を受賞しており、今秋の防災庁設置に向けた国の重点技術分野にも位置づけられている。

速度と確実性が最優先!災害時に混乱を防ぐ避難指示をサポート

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和田 直樹 氏
株式会社ジチタイワークス

第5部に登壇したのはジチタイワークスの和田氏。郵送・電話による情報伝達の限界とコスト高騰を背景に、全国250以上の自治体に導入されているSMSサービス「ジチタイSMS」の機能・活用事例・料金体系についてお話いただいた。平時の業務効率化にとどまらず、防災無線の届かない地域への補完や、発災時の地区別避難先情報の一斉送信など、災害対応における活用可能性についても紹介しました。

「住民に伝わらない」問題は、日常の業務だけでなく、災害時においても深刻な課題だ。本講演では、ジチタイワークスの和田氏より、自治体向けSMSサービス「ジチタイSMS」の概要と災害時活用の可能性について紹介された。

「郵送・電話では届かない」時代の、新しい連絡インフラ

いま、郵送や電話による情報伝達の限界が顕著になっている。電話をかけても「知らない番号は出ない」「留守電にもつながらない」という状況は珍しくなく、郵送物は「届いても開封されない」ケースも多い。さらに、郵便料金の改定により郵送コストは最大約35%増となっており、自治体財政への圧迫が続いている。こうした背景から、「確実に届き、低コスト・短時間で運用可能」な手段として、いまSMSが注目されている。国内の携帯電話登録数は約2億774万台、スマートフォン普及率も90%を超えており、SMSの到達率は99%(4キャリア到達率・株式会社メディア4u検証試験の結果、受信拒否・圏外・電源OFF除く)にのぼる。

ジチタイSMSは、郵送や電話に代わる効率的な情報伝達を実現するクラウドサービスだ。LGWAN環境で使用でき、専用のPCやソフトウェアのインストールも不要で、普段使いのパソコンからすぐに送信を開始できる。料金体系は「到達した分だけ」の従量課金であり、送付・架電・訪問数の削減につながる。

全庁横断で使える、コスト削減と住民対応の両立

その効果は数字にも表れている。100件の通知を住民へ届けるという業務を例に取ると、従来の郵送方式では対象者の抽出から文書作成・印刷・封入封緘・投函まで約7時間・コスト11,000円(110円×100件)を要していた。ジチタイSMSを活用すれば対象者抽出・本文作成・送信・結果確認の4ステップで約60分・コスト1,000円(10円×100件)に圧縮でき、作業時間は約85%、コストは約90%削減できる。

こうした業務効率化の実績から、全国250以上の自治体への導入が進んでいる(令和7年6月末時点・ジチタイワークス調べ)。部署を選ばない活用範囲の広さも特長だ。税務・国保・介護保険では滞納者への催告連絡、子育て支援では妊娠8カ月アンケートや健診案内、健康増進では受診勧奨連絡と幅広い業務に対応できる。実際に、税金の催告業務で電話50時間の作業をSMS活用で10時間に圧縮(40時間削減)した納税担当課の事例や、住民向けアンケートを136件送信して100件以上の回答を得た子育て支援担当課の事例など、効果の声が寄せられている。

災害時こそ頼れる、SMSの6つの機能と導入のしやすさ

このジチタイSMSの災害対応への活用可能性は特に注目に値する。防災無線が届かない地域・世帯への補完的な情報伝達として、避難情報や避難先の案内をスピーディかつ確実に届けることができる。また、SMSは「シグナリングチャンネル」と呼ばれる比較的軽量な信号経路を使って送信されるため、災害時に回線が込み合う状況でも他の通話やデータ通信と比べて届きやすい特性がある。発災時にCSVファイルを読み込み、地区ごとに異なる避難先情報を自動で差し込んで一斉送信できる機能は、迅速な住民への個別案内を可能にする実用的な仕組みだ。

ジチタイSMSには自治体の情報セキュリティ要件に対応した6つの主要な機能的特徴がある。第一に「LGWANおよび国内4キャリア直結」で、docomo・au・SoftBank・Rakutenへ直接接続することでセキュリティ・着信率・送達結果情報において高品質を実現している。第二に「送達結果の30種類の詳細把握」で、送信済み・圏外・電源OFF・料金未払いなど未達の理由まで可視化し、適切な再対応が可能になる。第三に「個人単位でのURLクリック追跡」で、短縮URLを使って誰がいつ何回リンクをクリックしたか確認でき、「見ていない住民だけに再送」「電話フォロー」といった個別対応につなげられる。第四に「独自ドメインの短縮URL」(オプション)で、自治体名を連想させるドメインに変更することで住民の安心感とクリック率の向上が期待できる。第五に「他人接続判定による誤送信防止」(オプション)で、過去2年以内に3カ月の番号未利用期間があった番号を「他人の可能性あり」と判定し、個人情報の誤送信リスクを軽減する。第六に「ファイル添付・アンケート機能」(オプション)で、Word・PDF・動画など10MB以内のファイル送付や、アンケートフォームのURL化が可能だ。

料金プランは3種類。基本料金プランは初期費用100,000円・月額10,000円・送信費15円/通。1課導入プランおよび全庁導入プランでは初期費用・月額費用ともに0円で、送信費はそれぞれ12円/通・10円/通となっており、月額費用が発生しないお得な構成となっている。導入にあたっては契約書は原則不要で、利用申込書と執行予定表の提出のみで最短翌日から利用開始できる。既存のLGWAN端末のブラウザでURLを検索し、ログイン後すぐに送信画面で作業が始められる手軽さも、自治体での導入ハードルを下げている。

住民側の受け入れ評価も高い。郵送をSMSに変更した際の出産・子育て交付金事業のアンケート結果(妊娠8カ月期アンケート、分母22名)では、「SMSで通知が見れて簡単だった」が81.8%、「SMSによるアンケートへの回答がスムーズにできた」が72.7%に達しており、「郵便の方がSMSより情報が手元に届きやすいと感じた」はわずか0%だった。郵送・電話からSMSへの切り替えは、単なる業務効率化にとどまらない。平時から「届く連絡手段」を整えておくことが、災害時の一報を確実に届けるための備えになる。