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空き家を再生し、地域を明るくする“コミュニティ大工クラブ”。

キャリア・働き方
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空き家を再生し、地域を明るくする“コミュニティ大工クラブ”。

DIYで空き家の再生などに取り組みながら、地域の人たちと交流する公務員のサークルがある。令和4年度から活動する「鹿児島県庁コミュニティ大工クラブ(以下、CDC)」と、令和7年9月に誕生した「熊本県庁CDC」だ。両CDCのメンバーは、令和8年2月に鹿児島市内で初めて交流。古民家でともに作業を行う様子などを取材した。

※記事の掲載情報は公開日時点のものです。

熊本県庁CDCメンバー

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村橋 友介(むらはし ゆうすけ)さん

2019年、熊本県入庁。阿蘇地域振興局 総務振興課に在籍していた2022年から、地域のイベントなどを無償で手伝うレンタル公務員の活動を開始。20244月に土木部 河川課に異動してからも継続している。

鹿児島県庁CDCメンバー

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黒木 裕哉(くろき ひろや)さん

1994年、鹿児島県入庁。農業土木の技術職として、離島など県内各地で勤務。休日に様々な地域活動に参加し、DIYを始める。県庁職員のDIY仲間で「鹿児島県庁コミュニティ大工クラブ」を立ち上げ、副部長を務めている。

DIYで地域とつながり、仲間の輪を広げる。  

熊本県庁CDCを立ち上げたのは、土木部 河川課の村橋 友介(むらはし ゆうすけ)さん。阿蘇地域振興局に所属していた令和41月から、地域住民の依頼に応え、休日に様々な仕事を無償で手伝うレンタル公務員の活動を続けている。「住民と直接関わる業務は限られている県庁の職員にとって、より近い距離で地域と交流できる機会としてやりがいを感じていました。同じ思いをもった仲間を庁内で集めたいと考えていた令和73月、DIYの現場で鹿児島県庁CDCの存在を知りました」。

▲熊本県CDCの、初活動の様子。県庁メンバーと参加者の皆さん。
▲熊本県CDCの、初活動の様子。県庁メンバーと参加者の皆さん。

そこで出会ったのが鹿児島県庁CDCの立ち上げメンバーである、北薩地域振興局 農村整備課の黒木 裕哉(くろき ひろや)さん。農業土木の技術職として離島に勤務していた頃、DIY作業を通して地域の人たちと関わるようになった。それをきっかけに、鹿児島本土に戻ってから本格的に活動しているという。

サークルの名前になっているコミュニティ大工は、地域コミュニティの協力のもと、空き家の再生などの大工仕事を担う人材のこと。鹿児島県内各所で、DIYによる空き家再生に取り組む民間の加藤 潤(かとう じゅん)さんが自らをそう名乗るようになってから、徐々に地域に浸透した概念だという。黒木さんが鹿児島県庁でCDCを立ち上げたのも、加藤さんとの出会いが背景にある。加藤さんの活動に参加している過程で、県庁職員にもDIY好きの輪が広がり、サークルとして動きはじめることになった。

▲設立当初の鹿児島県庁CDC。
▲設立当初の鹿児島県庁CDC。

「村橋さんとは、“地域と関わりたい思い”が一致し、意気投合しました。レンタル公務員の活動とも親和性が高いと感じたのです」と黒木さん。村橋さんは「レンタル公務員としてもDIYの作業を手伝うことはありました。仲間と複数人で取り組むという形に合っているし、完成後の達成感も得られる。黒木さんが“熊本県庁でもサークルを立ち上げたら?”と、背中を押してくれたのが大きなきっかけとなりました」と振り返る。

組織を越えて初めて交流。鹿児島市内でDIY作業を楽しんだ。  

普段はそれぞれの地域で活動している両県庁のCDCは、2月の休日に鹿児島市で初めて交流した。両県庁の職員のほか、普段から活動をともにする民間のメンバーや学生も参加。計約20人で、情報共有や共同作業、懇親会などを行った。

まずは鹿児島県庁CDCが作製した町内会の掲示板を見学。台風で壊れてしまった掲示板を復旧させたいと町内会から依頼を受け、休日に約4時間ほどで完成させたという。「公務員なので、報酬はいただきません。材料費とその日にみんなで食べるお昼ご飯代だけですね。コミュニティづくりや活性化も含めて頼ってもらえたらと思っています」と黒木さん。

▲鹿児島県庁CDCで作製した町内会の掲示板を見学。
▲鹿児島県庁CDCで作製した町内会の掲示板を見学。

次に、同市名山町の飲食店街を訪れた。名山町には、築70年以上の長屋をリノベーションしたレトロな店舗が並ぶ“名山堀(めいざんぼり)”がある。このエリアの案内所としてオープンを控える「めいざんち」は、鹿児島県庁CDCがリノベーションに携わった場所だ。めいざんちでコミュニティ大工の加藤さんも合流し、これまでの活動実績などを紹介。コミュニティ大工の活動は、プロの業者に頼めないような状態の空き家再生に適しており、行政の目指す地域課題の解決にもつながるという。

その後は参加者全員でのDIY作業。チームに分かれ、めいざんちのオープンに向けて必要な設備を整えた。黒木さんのチームは丸のこ(先端に円盤状の刃が付いた工具)で木材をカットしたり、インパクトドライバーでねじを締めたりして、入口に設置するポストを作製。村橋さんは加藤さんのチームで、ロフトにかけるはしごづくりに挑戦。全く形のなかった平らな木材を削るところから始め、約1時間で完成させた。DIYは、工具を使った大工仕事だけではない。情報案内のチラシを掲示する場所を壁につくったり、授乳室の窓に目隠しの布を付けたり。本棚の整理などの軽作業にも、楽しみながら取り組んでいた。

▲黒木さんたちはポストを作製。
▲黒木さんたちはポストを作製。

▲村橋さんたちはロフトのはしごをつくった。
▲村橋さんたちはロフトのはしごをつくった。

一人ひとりが楽しむことで、まちに多面的な価値を生む。

サークル活動の先輩である鹿児島県庁CDCから、仲間を増やすことや、活動を継続するためのノウハウを吸収したいとの思いで交流していた村橋さん。一日を通して、様々な気づきがあったという。「まずは、今日熊本から一緒に来てくれたメンバーが4人もいることが、すごいことだと実感しました。庁内の掲示板で募集して、仲間になってくれた人たちです。自分一人で始めたところから、楽しく活動しているうちに少しずつ形になりました。今いる仲間に感謝したいと改めて思います」。

レンタル公務員とCDCの活動に共通する地域に飛び込む面白さは、熊本県庁から参加したほかのメンバーも同様に感じているようだった。何でも便利になっている今の時代だからこそ、自分の手を動かすことで人に喜んでもらえるものに魅力を感じる自分自身で形にする面白さを実感するこういう活動についていくことで、たくさんの人と接点ができると、振り返っていた。

組織を越えて交流したことを機に、「次は熊本県内で一緒に活動できれば」と話す黒木さん。「自分たちのサークル活動だけでも、普段関わらない職員と知り合えるいい機会です。他自治体の職員同士でつながれると、学びや楽しさが増しますね」。このような行政によるコミュニティ大工の活動は九州地方で広がりつつあるようだ。

最後に、この活動でうれしかったエピソードを話してもらった。「完成形が目に見えるので、一緒に参加したメンバーと達成感が味わえること。そして、九州の公務員でつながれたことです」(村橋さん)。「遅い時間まで作業をしていたとき、ある若手のメンバーが、“CDCの残業ならどれだけやってもいいと言ってくれたこと。楽しみながら、一生懸命、ゆるくお手伝いする方針です」(黒木さん)。

活動に参加する動機は、空き家対策や建築の知識習得から、地域交流、ストレス解消など幅広い。きっかけはそれぞれでも、集まって活動することで、行政課題の解決や地域のつながりづくりに寄与している。地域のつながりが希薄化し、課題が複雑化する昨今。CDCは楽しみながらまちをよくしてくれる頼もしい存在だろう。

村橋さんのこれまでの活動