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企業版ふるさと納税の人材派遣制度を活用し、外部からDXの専門人材を迎え入れる。

庁内外のデジタル活用を後押しする専門人材が伴走
「企業版ふるさと納税」の人材派遣型を活用し、民間企業から専門人材を受け入れた舟形町。デジタルに詳しい人を庁内に迎えることで、業務の効率化が進むだけでなく、職員の意識にも変化が生まれているという。
※下記はジチタイワークスVol.42(2026年2月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

舟形町
まちづくり課
課長 曽根田 健(そねた たけし)さん

舟形町
まちづくり課
課長補佐 沼澤 友幸(ぬまざわ ともゆき)さん

舟形町
総務課
デジタルファースト推進室
室長 佐藤 仁(さとう ひとし)さん
委託事業者から人材を派遣してもらい同じ視点で地域DXを推進していく。
同町では、町民生活の利便性向上や庁内業務の効率化を図るため、令和3年度に「デジタル化推進計画」を策定。取り組みを進める過程で、デジタル人材の強化が不可欠だと考えた。そこで廃校活用プロジェクトを契機に、数年前から信頼関係を築いてきた「一般社団法人おかえり集学校(※)」に相談。企業版ふるさと納税(人材派遣型)の活用について提案されたという。
「同法人は、廃校となった旧長沢小学校を“長沢集学校”として再生し、高齢者向けにスマホ教室を開くなど、地域におけるデジタル活用の普及を担っています。活動の様子を間近で見てきたこともあり、スタッフの人柄や姿勢を信頼できると感じていました」と曽根田さんは振り返る。提案を受けた際にも不安はなく、むしろ期待を抱いたそうだ。
この制度は、民間企業が自社の専門人材を自治体へ派遣し、その人件費相当分を同社が“寄附”という形で負担するもの。企業側は寄附額の最大約9割まで税額控除が受けられ、自治体側は実質的に人件費を負担せずに即戦力を迎えられる。「もともと関係性のある企業なので、当町の事情には精通しています。そのため行政と企業の目指す方向にズレが生まれにくく、目的を共有しながら取り組めるのがメリットです」と手応えを感じている。
※事業開始時の実施主体は「リングロー株式会社」で、その後に一般社団法人を設立
ヘルプデスクやシステムの導入支援でデジタル化と職員の成長をサポート。
令和4年度より同法人から派遣されているのは、廃校をIT交流拠点として再生するプロジェクトを率いてきた甲州 剛(こうしゅう ごう)さんだ。週4日は役場で、週1日は集学校で勤務しているという。同町がまず依頼したのは、職員向けのヘルプデスク業務。パソコンやプリンターなどの不調対応に加え、公式LINEの更新や県の電子申請に関する問い合わせなど、日常的に寄せられる多様な相談対応を任せている。「それまでヘルプデスクは職員1人体制だったため、相談が重なるとほかの業務が止まってしまう状況でした。甲州さんが加わることで、職員はガバメントクラウドへの移行や補助金の交付申請など、基盤整備や制度活用に関わる重要業務に時間を割けるようになりました」と佐藤さん。
また、新システムを導入した際の定着支援にも力を発揮している。保育士業務支援システムを導入した際には、定例会議に参加し、現場で使用する保育士の意見を聞きながら運用のルールや体制を整えてきた。従来は導入そのものが目的になってしまい、定着や運用の見直しまで手がまわらないこともあったそうだ。しかし現在は、甲州さんの伴走支援があるため、定着に向けた安心感が生まれ、新しい取り組みに踏み出しやすくなったという。
さらに職員のデジタルリテラシーにも向上の兆しが見える「。庁内に専門人材がいることで、日常的に相談できる環境が生まれました。業務の中でデジタルに触れる機会が増え、理解も深まり、職員一人ひとりのスキルアップにもつながっています」と笑顔で話す。


役割分担と知識を残す仕組みで専門人材の効果を持続させる。
受け入れにあたって重視したのは、専門人材と職員の役割を明確にすることだ。職員が自立して対応できるようにするため、甲州さんには“支える役割”に徹してもらっているという。「短期的に見ると任せた方が早い場面も多いのですが、中長期的には職員がスキルを身に付けることが重要です。実際に手を動かすのはあくまで職員で、操作手順の整理や確認ポイントの助言など、伴走者として関わってもらっています」と沼澤さんは話す。
また、受け入れる前には、勤務条件についても丁寧に確認を進めたという。「町と法人の両方で雇用する形となるため、社会保険や退職金などの面で本人に不利益が生じないよう細心の注意を払いました。安心して働いてもらうため、また互いの認識を揃えるためにも、重要な工程だったと感じます」。昨今は自治体に限らず、デジタル人材の確保が難しい。通常の募集ですら即戦力を得にくい中、信頼できる人材に来てもらえて本当に心強いという。
一方、専門人材の離任後を見据えた体制づくりも進めている。システムの操作手順などをマニュアル化し、庁内に知識を蓄積していく取り組みだ。「当町としては長く関わってもらいたい意向ですが、将来的に任期や配置が変わる可能性はあります。だからこそ、一緒に進めてきた内容や成果を形に残す工夫が重要です」と曽根田さん。ほかにも関係人口の創出や鳥獣被害対策、防災など、様々な分野で専門人材の力を活かす可能性を感じているという。今後はデジタル以外の領域も視野に入れて、近隣大学との協働など、多様な担い手と連携の幅を広げていきたい考えだ。
















