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企業版ふるさと納税で成果を目指す、実践のポイントとは?

自治体を支援する官民の2人が最新動向を語る!
着実に広がりつつある、企業版ふるさと納税。しかし、本格的に活用できている自治体はまだ少ないという。そんな自治体の取り組みを支援する「ジチタイリンク」の松本さんと、内閣府で企業版ふるさと納税を担当する植田さんが、自治体の現状から見える実践のポイントを語る。
※下記はジチタイワークスVol.41(2025年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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左:内閣府 地方創生推進事務局
参事官補佐 植田 皓太(うえだ こうた)さん
右:ジチタイリンク
代表取締役社長 松本 銀士朗(まつもと ぎんじろう)さん

左:内閣府 地方創生推進事務局
参事官補佐 植田 皓太(うえだ こうた)さん
右:ジチタイリンク
代表取締役社長 松本 銀士朗(まつもと ぎんじろう)さん
取り組みが進まない現場で職員が感じている心理的な壁。
松本:企業版ふるさと納税は国の施策として拡充が続き、税額控除の特例措置(※1)も延長されました。それでも、実際は活用が進まない自治体が多いのが現状です。理由の一つは“個人版ふるさと納税の方が寄附を集めやすい”という認識ではないかと感じます。個人版と企業版を同じ担当者が兼務しているケースが多く、個人版の業務の忙しさなどから、どうしても企業版に本腰を入れる優先度が下がってしまうようです。
植田:確かに、企業版は寄附額全体の規模ではまだ小さく、個人版には及びません。しかし企業版には独自の魅力があります。それは単発の寄附にとどまらず、中長期的な官民連携につながる可能性を秘めている点です。例えば企業との協定や、地域での新たなオフィス開設につながるなど、寄附を超えた成果を生み出すことがあります。また、近年では人材派遣型の活用が増えており、お金だけではなく人の交流も生まれています。
松本:そうですよね。成果を出している自治体は、トップや担当課が“挑戦してみよう”という気持ちで一歩踏み出しているところが多い。“どうせ成果が出ない”と動かなければ、当然結果もついてきません。これまでの固定観念を取り払い、企業版の可能性を信じてみることが、まず第一歩だと考えています。
※1 企業が寄附をした際の法人関係税の税額控除の割合を最大9割とする特例措置

自治体と企業をつなぐマッチングの最前線を知る。
植田:企業が寄附を決める背景には大きく2つの要素があります。1つは“地域への思い”です。創業地や自社の工場が立地する自治体など、縁のある地域を応援したいという気持ちが強く働きます。もう1つは“企業のイメージ向上”です。リリースのほか、自治体の広報紙などに社名が出ることで、社会的責任を果たす姿を株主や顧客に示せる。こうした動機が寄附を後押ししています。
松本:ただ、担当職員さんの多くは“どの企業にアプローチすればよいか分からない”と悩んでいますよね。私たちはそうした悩みを解消するために、自治体と企業を結ぶ役割を担っています。これまでに530以上の自治体と契約を結び、企業から集めた寄附総額は累計で20億円を超え、4,300件以上のマッチングを実現してきました。
植田:都道府県や内閣府はマッチングイベントを主催していますし、内閣府認定のマッチングアドバイザー派遣も行っています。こうした、企業と直接つながれる機会への積極的な参加と、外部支援の活用が、成果を高めるポイントだと考えています。また、寄附を希望する企業が積極的にテーマやアイデアを提示して、自治体の事業を募る“公募型”も広がりはじめています。
松本:こうした動きや情報を、いち早くキャッチできるかどうかがカギです。しかし現状では、一部の熱心な担当者にしか届いていない。全国の自治体に向けた発信や、情報を集約する仕組みが求められていると感じます。私たちも何かできないか模索しているところです。
人事異動に左右されず事業の継続性を保つには。
松本:事業継続の大きな課題は人事異動です。3年程度で担当者が代わることが多く、せっかく積み重ねた知見が十分に引き継がれず、プロジェクトが仕切り直しになってしまうケースがあります。
植田:おっしゃる通りです。対策として重要なのは、企業版ふるさと納税担当課だけが頑張るのではなく、関連部署と連携することではないでしょうか。たとえ異動があっても、知識や外部との関係性を切らさず継続できる体制をつくっておくのです。また、首長や幹部を巻き込み、自治体全体の方針として取り組むことも継続性を高めます。
松本:外部パートナーの活用も一つの手です。私たちのような支援事業者は、長期にわたって知見を蓄積することができ、外部でハブとなって庁内の各部署をつなぐ役割もできます。複数の自治体と関わっていますので、ほかの事例を共有できる点も大きなメリットです。外部と連携することで、職員の入れ替わりによる停滞を防ぎ、安定した取り組みを続けることが可能になります。
制度や支援をフル活用し新たな一歩を踏み出そう。
植田:税制の特例措置は令和10年3月まで延長されています。制度開始から寄附額は右肩上がりで、令和6年度には累計631億円を突破しました。人材派遣型や公募型など、新しい形が次々に生まれており、自治体と企業の関係性を変えるツールとして関心が高まっています。今後も制度の拡充を目指していきます。
松本:一方で、自治体のリソース不足やノウハウ不足は依然として大きな課題です。外部パートナーと協力しつつ、自分たちの地域に合った独自のプロジェクトを設計することが欠かせません。寄附を集めること自体が目的ではなく、寄附を通じて地域に持続可能な価値を生み出すことこそが本質です。現場の声を国に届けながら、自治体に伴走していきます。



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