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奥能登の現場で声を拾い上げ、避難者支援の体制を再構築する。

防災・危機管理
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奥能登の現場で声を拾い上げ、避難者支援の体制を再構築する。

避難者と本部をつなぐ管理システム

令和6年の能登半島地震において、避難所運営は混乱を極めた。その後、石川県は奥能登の市町とともに、避難者を把握・支援するシステムについて検証を重ねてきたという。大規模災害の現場で起きたことと、現在の動きについて話を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.42(2026年2月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

[PR]株式会社バカン

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総務部 デジタル推進監室
地域デジタル推進課
専門員 竹本 太郎(たけもと たろう)さん

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石川県
総務部 デジタル推進監室
地域デジタル推進課
専門員 柳澤 しおり(やなぎさわ しおり)さん


避難者把握の重要性

災害時には、安否確認や物資配分を円滑にするため、避難者名簿の作成が不可欠だ。身分証がない人やスマホが使えない人、着の身着のまま避難してきた人に対しても、負担をかけずに状況を把握する手段が求められるという。

“紙”だけに頼る避難所受付では、日々変わる状況を把握し切れない。

能登半島地震では道路の寸断や通信の途絶など、被害の把握が難しい状況が続いた。避難所運営においても混乱が見られたという。「当課では防災部門と連携し、デジタル技術を活用した支援を行うことになりました。しかし、発災当初の避難者管理は紙ベースで、避難所ごとに様式もバラバラ。その後、市町単位で避難者カードの様式が整備されましたが、データ化するには大変な労力が必要でした」と竹本さんは振り返る。

冬の寒さの中、被災者に手書きでの記入を求めることは、運営側の心理的負担も大きかった。さらに、自宅の納屋や自家用車など、指定避難所以外で生活する人の把握にも苦慮したという。「車中泊などで体調を崩している人がいないかを確認するため、避難者の所在を把握したいと考えました。そこで、避難所の出入りなどの履歴が取れる方法として、ICカードを配布。しかし、履歴の反映にタイムラグがあり、うまく浸透しませんでした」。

同県では令和5年の奥能登地震後から、防災DXに取り組む「バカン」との協議を重ねていた。同社が手がける「避難者マネジメントシステム」の実証に向け、令和6年度の予算化を目指していたのだ。しかし1月1日に能登半島地震が発生し、予算化は白紙に。一方で、同社は発災後から現地に赴き、現場のリアルな状況を見ながらシステムの仕様調整にあたったという。同年9月の奥能登豪雨の際にも、実際に運営を担う人の意見を取り入れ、より直感的に操作できるよう磨き上げていった。

複数の受付方法を用意することで高齢者もスムーズに入所できる。

現場の実情を踏まえて完成した同システムは、マイナンバーカードや免許証の読み取り、LINE認証やWEBフォームへの入力など複数の受付手段を用意。地域特性に合わせて、使いやすいものを選択できるようになった。名簿は自動で生成され、市町の災害対策本部にリアルタイムで共有されるほか、自主避難所などの追加・管理も可能だ。「入所受付の手段が複数あることで、高齢者が多い地域でも受け入れられやすいと感じました。すでに導入している総合防災システムや被災者生活再建支援システムと、スムーズに連携できる点も魅力。システム間のデータ移行は、災害時の大きな負担でしたから」。

令和7年には、輪島市(わじまし)と珠洲市(すずし)、穴水町(あなみずまち)、能登町(のとちょう)の防災訓練で実証実験を行った。システムの使い勝手は好評で、実験中に挙がった“データを印刷して貼り出したい”という意見にも、同社はすぐに対応。「紙の受付票をスマホで撮影するだけで、データがシステムに反映される機能も実装してくれることになりました。紙受付は今後も必要なので、入力の手間が減りそうです」と柳澤さん。

混乱が起きることを想定して平時から“シンプル”を心がける。

実証実験を行った奥能登の4市町では、同システムが本格導入されている。県はその他の市町を対象に説明会を開催し、活用の様子を紹介。“被害の大きかった4市町の知見にもとづいて開発されているので、安心して使える”との声が多く寄せられた。

また、システムを使い慣れておくため、毎年の訓練も継続予定だ。「有事の際にオペレーションを変えるのは本当に大変でした。平時からどれだけシンプルな状態にしておけるかが重要だと感じます」と話す竹本さん自身、震災発生後は、県の物資管理を担当していたという。最初はExcelやホワイトボードで対応していたが、途中でシステムに切り替えたことで、現場は一時、大きく混乱したそうだ。「災害時に本当に使えるシステムを整えておくことの大切さを痛感しました。災害の記憶が新しい今だからこそ、市町や関係部局とともに、前向きに取り組んでいきます」。


企業担当者の思い

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バカン
DX事業本部長
五十嵐 則道(いがらし のりみち)さん

発災後に現地入りし、避難所での職員・被災者の混乱を目の当たりにしました。「震災前に想定していたシステムは、役に立たないのでは?」と思えるほど、災害現場は想定外の事象が多数発生していたのです。

現地では、県・市町の職員や施設管理者、住民の声を取り入れて改良を進めました。皆さんの協力に感謝しています。いざというときに、“現場で本当に役立つシステム”として形にできました。今後も順次、機能強化を進めていきます。

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