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地方公務員アワード2025受賞!四街道市の齋藤久光さんにインタビュー。

“目の前にいる一人の幸せ”を原点に図書館の当たり前を問い直す館長の挑戦とは。
株式会社ホルグ主宰「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2025」で表彰され、さらに本誌の特別協賛社賞を受賞した齋藤さんに、その取り組みや思いについて話を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.41(2025年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

四街道市
教育部 社会教育課 図書館
館長 齋藤 久光(さいとう ひさみつ)さん
PROFILE
2001年に入庁し、総務課、スポーツ振興課(※)、厚生労働省への出向などを経験。その後、約11年間にわたり市民協働の推進に携わる。2023年には図書館長に就任。市民が集い、交流する図書館づくりに尽力している。
※現在は文化・スポーツ課に名称変更
Q 図書館長に着任してから次々に改革を進めていますね。

“みんなに必要とされる図書館をつくりたい”と思って動いています。そう考えるようになったのは、ある出来事がきっかけでした。着任直後、私が館内で市民と話をしていると、スタッフから「ここで話さないでください」と注意を受けました。すると、市民から「息苦しいよね」と冗談交じりに言われたのです。静かにするのが当たり前とされていますが、調べてみると、実は明確なルールはなかった。もし私が利用者だったら、音を立ててはいけないような図書館には長居できません。実際に、来館してもすぐに帰ってしまう親子の姿もあり、みんなが気持ちよく過ごせる環境をつくりたいと思ったのです。

“みんなに必要とされる図書館をつくりたい”と思って動いています。そう考えるようになったのは、ある出来事がきっかけでした。着任直後、私が館内で市民と話をしていると、スタッフから「ここで話さないでください」と注意を受けました。すると、市民から「息苦しいよね」と冗談交じりに言われたのです。静かにするのが当たり前とされていますが、調べてみると、実は明確なルールはなかった。もし私が利用者だったら、音を立ててはいけないような図書館には長居できません。実際に、来館してもすぐに帰ってしまう親子の姿もあり、みんなが気持ちよく過ごせる環境をつくりたいと思ったのです。
そこで始めたのが、親子が気軽に立ち寄れる居場所づくり。地域のお母さんにサポーターとして協力してもらい、これまで仕事で関わった人たちにも声をかけました。そして、一般的に図書館ではあり得ないと思われる、飲食ができる時間を設定。おしゃべりや泣き声に対しても、スタッフからの声かけを控えるなど、来館のハードルを下げる工夫を重ねました。その結果、来館者の数が増え、滞在時間が延びたのです。こうした場づくりを支えてくれたのがサポーターの皆さんでした。
市民と取り組む上で意識しているのは、行政が場を提供してあげるといった、上からの態度にならないこと。相手の価値観に共感し、楽しみながら一緒につくる姿勢が大切です。行政側の事情を優先せず、対等な立場で進めるようにしています。
Q “市民協働”が齋藤さんの仕事の軸になったきっかけは?
20代半ば、スポーツ振興課で過ごした経験が転機でした。当時、課員の異動が重なり、私が主体となって動かざるを得ない状況に置かれました。その中で、自分のアイデアを形にする喜びを感じたのです。特に印象深かったのが、ウオーキングマップの制作事業。当初、コースの選定は行政側で行う予定でした。しかし、“これは本当に市民の視点になっているのだろうか”と疑問を覚え、市と連携して活動していたスポーツ指導員と話し合いを重ねることに。そうすると、“実はこんな裏道がある”といった、地元をよく知る市民ならではのアイデアが次々と出てきました。これらの声を反映させることで、温かみのある魅力的なコースをつくることができたのです。制作したマップは、あっという間に在庫がなくなるほど好評で、市民と一緒に行う価値を実感する経験となりました。
こうした過程を通じて、“行政だけが全てを担う必要はない”と気づいたのです。市民やボランティア、専門家など多様な人と取り組むことで、事業は広がるのだと学びました。当時は、“協働”という言葉をまだ知りませんでした。ただ、今振り返れば、私にとっての“市民協働”の原点だったと感じています。
Q 新しいアイデアはどのように生まれるのですか。

大切なのは現場を見ることです。私は常に館内を歩きまわり、1日に1万歩を超えることもあります。例えば、“屋内でも遊べるように”と始めた「図書館でプレーパーク」では、そうした気づきをもとに少しずつ改善しています。当初は午前のみの開催でしたが、ある日の午後、所在なげにいるお母さんの姿が目に入りました。声をかけると、“誰かと話したい”という思いを抱えている様子が見え、午後の回を設けることに。すると、午前と比べて参加者数は少ないものの、立ち寄ってくれる人がいました。数ではなく、目の前の一人に寄り添えたなら、それだけで大きな価値があると感じています。

大切なのは現場を見ることです。私は常に館内を歩きまわり、1日に1万歩を超えることもあります。例えば、“屋内でも遊べるように”と始めた「図書館でプレーパーク」では、そうした気づきをもとに少しずつ改善しています。当初は午前のみの開催でしたが、ある日の午後、所在なげにいるお母さんの姿が目に入りました。声をかけると、“誰かと話したい”という思いを抱えている様子が見え、午後の回を設けることに。すると、午前と比べて参加者数は少ないものの、立ち寄ってくれる人がいました。数ではなく、目の前の一人に寄り添えたなら、それだけで大きな価値があると感じています。
こうした積み重ねの結果、図書館の空気が徐々に変わってきました。以前は“館内で飲食なんてあり得ない”と思っていた職員も、今は柔軟に受け止めてくれるようになりました。また、市民からは“こんなことをやってみたい”と自由なアイデアが寄せられ、利用者が“創り手”に変化しているのを感じています。
さらに、本を借りるだけではなく、待ち合わせや交流の場として足を運んでくれる市民も増えています。図書館が“行ってみよう”と思ってもらえる場所になっているのは、とてもうれしいですね。
Q 最後に、今回の受賞の感想をお願いします。

市民協働は成果が見えづらく、時には“齋藤は何をしているのか”と、周囲から言われる場面もあります。それでも私は、後悔しない生き方をしたいと思って、自分なりの信念をもちつづけてきました。今回推薦してくださった皆さんのおかげで、見てくれている人がいると気づき、大きな勇気になりました。もし今、一生懸命働いても報われないと思っている人がいたら、この受賞が少しでも力になればうれしいです。

市民協働は成果が見えづらく、時には“齋藤は何をしているのか”と、周囲から言われる場面もあります。それでも私は、後悔しない生き方をしたいと思って、自分なりの信念をもちつづけてきました。今回推薦してくださった皆さんのおかげで、見てくれている人がいると気づき、大きな勇気になりました。もし今、一生懸命働いても報われないと思っている人がいたら、この受賞が少しでも力になればうれしいです。
私自身は、受賞したからといって何かが大きく変わるわけではありません。これからも、目の前の一人を幸せにできるよう、自分ができることを一つひとつ積み重ねていくだけだと思っています。
市民とつくる、新しい図書館のカタチ





■推薦者(※)から見た齋藤さんの魅力
※地方公務員アワードでは、推薦者は800文字以内の推薦文を提出する。そのコメントの一部を抜粋。
- 「こういう図書館があっていい」という新しい感覚を育ててくれました。
- 小さい子たちが「さいとうさんに会えるかな」と図書館を訪れています。
- このまちの空気を温かく、前向きに変えてくれる存在だと思っています。











