公開日:
【浅野 耕平さん】伝統工芸品を身に着けて職員の愛着につなげる。

国の制度で指定された伝統的工芸品は、職人の技術によって受け継がれてきた。しかし、近年では暮らしの変化や安価な商品の普及により需要が減少。後継者不足も課題となっている。こうした中、鎌倉市(かまくらし)の浅野さんは、伝統的工芸品を将来につなげていくために、職員が胸に着けるバッジを「鎌倉彫」で制作することを提案し、実現した。
※下記はジチタイワークスVol.41(2025年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

神奈川県鎌倉市
市民防災部 商工課
浅野 耕平さん(入庁9年目)
メディアで取り上げられる機会が増え、鎌倉彫の認知度の高まりを感じている浅野さん。今後は、それを販路拡大にもつなげていきたいという。「鎌倉彫の売り上げ向上につながるような仕組みを、考えていきたいです」と意欲を語る。
入念な準備で、時を待つ。
大学卒業後、都内の民間企業に就職しました。その後、地元のために働きたいと思い、当市の職員に転職。入庁6年目から商工課に所属し、伝統的工芸品である鎌倉彫の振興や、中小企業の支援を担当しています。
鎌倉彫の振興は当市の責務ですが、職員がその歴史や魅力に触れる機会は多くありません。そこで、日常的に着用する職員バッジを鎌倉彫で制作することを思いつきました。身に着けることで対外的なPRになり、ひいては職員が愛着をもつきっかけになるのではないかと考えたのです。このアイデアを形にするため、企画書を作成。職員提案制度に応募しようとしましたが、提出した際に制度の廃止を知りました。それでも市長の目に触れる機会をつくりたいと思い、秘書課の先輩に相談。すると“機会があれば副市長に見せるよ”と言ってもらい、これが第一歩となりました。
しばらく動きがなかったものの、いつでも説明できるように、自費でサンプルを制作して準備を進めていました。また、職員バッジを管理する担当課へ規定や既存の職員バッジの価格確認も済ませていました。その約2年後、副市長から企画内容について問い合わせがあり、ついに実現に向けて動き出したのです。
配慮しつつも妥協せず進める。
依頼する中で、熟練の職人でも職員バッジの丸い型をつくる作業が大変だと判明。そこで、市内に拠点を構え、デジタル工作機械を備えている「ファブラボ鎌倉」に相談しました。まずは鎌倉彫の歴史から説明し、共通認識をもってもらうことに注力。その上で、レーザーカッターによる円形の切り抜きと絵柄の線入れを依頼したのです。最新技術を活用しつつ、職人の仕事を奪わぬように配慮しました。
また、鎌倉彫は手仕事であるため、デザインの統一性を厳密に保つことが難しいという点も課題でした。職人をリスペクトしながらも、品質を維持するためには要望を率直に伝えなければなりません。丁寧に対話することで、最終的には納得のいくものに仕上げてもらえたと思います。
鎌倉彫への愛着を育むための大切な取り組みだと信じて、地道に進めました。令和7年12月時点では課長級以上の職員に貸与していますが、対象を拡大してもらえるよう調整中です。バッジを着けていると”それは何ですか、かっこいいですね“と言われることもあるそうで、鎌倉彫の認知度向上につながっていると感じますね。他自治体からの問い合わせも寄せられており、同じような伝統的工芸品を職員バッジに活用する取り組みが全国に広がっていくことを願っています。


鎌倉彫の詳細はこちら
★あなたのまちのG-people、教えてください。
info@jichitai.works 件名「G-people 情報提供」
次回の投稿
次の記事はありません













