同市では、平成17年の条例施行細則改正により、保険料の納付方法を口座振替に原則化した。その背景には、不景気など社会状況の変化による収納率の低迷があり、平成15年には過去最低を記録していたという。保険年金課の古川さんは「当市は、納付書より口座振替の方が収納率が高い傾向があります。令和6年2月時点で比較すると、口座振替の方が30%以上高いのです。収納率向上のためにも、口座振替の促進が必要であると考えました」と語る。
「当時は、条例として明文化したことで、窓口がある区役所や支所の担当職員からも口座振替を勧めやすくなったという声が聞かれました。それでも用紙での申請では、手続きに必要な通帳や届出印を忘れたり、書類に記入する時間がなく持ち帰りになったりで、手続きが進まないことも多々ありました」。また、預かった依頼書も印影相違などで銀行から差し戻されることもあり、そのたびに加入者に連絡をするなど、事務負担が増えていたという。
職員の負担軽減のためにも、口座振替に切り替える申請手続き自体を、もっと簡単にできないかと考えた同市。そこで、平成29年に口座振替受付のモバイル端末「CREPiCO（以下、クレピコ）」を購入し、市役所だけでなく16の区役所と6支所も含めて、合計40台を配置した。
納付書は一定数の未納が発生しているため、収納率向上に口座振替を推進しているという。
※令和6年2月の納期内収納実績より
「セイコーソリューションズ」の端末は、銀行のキャッシュカードを読み込み、暗証番号を入力したら口座振替の受付が完了する。そのため、用紙の記入などが不要になったという。「口座振替の手続きは、国保加入時が最大のチャンスです。たいていの人はキャッシュカードを財布の中に持っていますし、手続きに1～2分かかっていた時間も15秒程度と短くなりました。なので、高確率で申し込みにつながります。印鑑にまつわるトラブルからも解放されて、いいこと尽くしです」と話すのは、同課の佐々木さんだ。「バッテリーも搭載されているので、ワイヤレスで持ち運べるのが便利です。例えば、別室で対応した加入者が口座振替を申し込むときなども、場所を移動せずに手続きできます。窓口の担当者や住民からの評判もよく、住民サービス向上にもつながりました」。
同市では端末のリニューアルに伴い、令和5年度からクレピコの新端末に切り替えた。「これまでの数字ボタンからスマホのようなタッチパネルに変わり、より操作が分かりやすくなりました。以前は登録方法を覚えなければなりませんでしたが、直感的に操作ができるようになったと思います。職員は異動があるので、新しく配属になった人への引き継ぎもラクになるのでは」と期待を寄せる。窓口で簡単に手続きできるようになったこともあり、同市の口座振替の登録率は77.6%（令和4年度）と高い状態を維持しているという。
同課では令和6年夏頃の開始を目指し、同端末を活用してキャッシュレス決済の導入を進めている。主に「国民健康保険料納付状況証明書」の発行手数料を支払うときの利用を想定しているという。「納付状況証明書は、外国人の在留に関する手続き時に提出する書類としても利用されており、この数年で申請者が2～3倍になっている状況です。また、決済方法が多様化しているという状況もあり、クレジットカードや各種電子マネー、コード決済などに対応する端末が必要でした」。端末交換時に開かれた操作説明会でこのサービスを知り、同じ端末を利用できるのであればと、キャッシュレス化の実現に向けて動き出したという。
使い慣れた端末でのキャッシュレス化は、職員への負担も軽くスムーズな導入につながるだろう。職員の負担を軽減しながら、住民の利便性向上にも役立つと期待されている。
左から
名古屋市
前・健康福祉局 保険年金課
（現・健康福祉局 障害者支援課）古川 和広（ふるかわ かずひろ）さん
健康福祉局 保険年金課 佐々木 崇人（ささき たかと）さん
端末は高速LTE通信モジュール・バッテリー・プリンターが一体型で持ち運びができる。最新のセキュリティ規格に対応している。
タッチパネルで直感的な操作が可能。職員の異動があっても、負担が少なく操作できるので、スムーズな手続きができる。
口座振替の利用者が増えると、その後の未納催告業務の軽減にもつながる。新規加入時が利用者を増やす最大のチャンス。
口座振替にすることで、支払いや納付督励にまつわる煩雑な業務の省力化につながる。
同サービスが搭載されている「CREPiCO（クレピコ）決済」は、下記の決済方法にも対応している。
●クレジットカード
●デビットカード
●二次元コード
●電子マネー
サービス提供元セイコーソリューションズ株式会社
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