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自治体法務検定とは?試験概要やメリット、合格に向けた勉強法を分かりやすく解説!

地方分権が進み、自治体の役割がより一層重要となる中、自治体職員は様々な法的課題に対応するための高度な法務知識が求められている。そのような状況で近年注目されているのが「自治体法務検定」だ。
スキルアップの手段として、職員への研修として、自治体法務検定は法務能力の向上に最適なツールである。本記事では自治体法務検定の概要から、実際に検定を取り入れた自治体の声まで幅広く紹介する。
※掲載情報は公開日時点のものです。
※2025年11月21日に最新情報を反映しました(初回公開:2024年3月5日)
自治体法務検定の概要
自治体法務検定は、一般財団法人日本通信教育学園が設置する「自治体法務検定委員会」が運営する検定である。自治体職員の法務能力を向上させることを目的としたこの検定は、基本法務と政策法務の二つの科目から構成されている。
基本法務は、憲法・行政法・地方自治法・民法・刑法など、自治体職員が共通に備えるべき必要最低限の法律知識を問うものとなっている。政策法務は、法令や制度を解釈・運用するために必要な知識の基礎を問う。
この2科目は同時に受検する必要はなく、1科目のみでも受検可能だ。業務内容や経験に合わせて選択できる。さらに詳しく、試験日程や出題範囲について紹介する。
自治体法務検定の詳細
■日程
自治体法務検定を受検するには、年に2回(9月・2月)の全国一斉受検(オンライン受検方式)、または、20名以上の団体で実施できる団体受検(会場受検方式)のいずれかを選択する。団体受検の日程は別途調整となる。
■試験時間
2026年に実施されるオンライン受検は、以下の時間帯で実施予定である。
- 検定日:2026年2月15日(日)
- 基本法務 10:30~12:30
- 政策法務 14:00~16:00
※引用:自治体法務検定委員会「2025年度 第2回 自治体法務検定(オンライン受検)受検概要」
■出題範囲
基本法務と政策法務の二つの科目に分けられている。基本法務は、憲法・行政法・地方自治法、民法・刑法の知識が問われる。政策法務では地方自治体の行政実務を推進していく上で必要となる知識が問われる。
立法法務、解釈運用法務、評価・争訟法務、自治体運営、住民自治、情報公開と個人情報保護、公共政策と自治体法務が出題範囲だ。
■受検料
受検料はオンラインの場合、令和7年11月現在、基本法務・政策法務ともに5,500円(税込)である。
■受験資格
受験資格は特になく、自治体職員のみならず一般の人々も受検可能だ。
合格基準について
試験は選択問題で全70問、1,000点満点の点数に応じて「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」「認定なし」のクラスに認定される。クラスの合格基準は以下のとおり。
■プラチナクラス(900点〜1,000点)
プラチナクラスに認定される職員はかなり希少な存在だ。令和7年度第1回では基本法務で1名、政策法務で2名がプラチナクラスに認定された。
このレベルの職員は、政策形成や地域の課題解決に必要な条例の立案や、争訟処理などの事務処理を自立して行える高度な知識を持っているといえる。リーダーシップを取るための法務知識を有し、複雑な法的課題に対しても独力で解決策を提案し実行に移すことが可能だろう。
※出典:自治体法務検定委員会「2025年度第1回 自治体法務検定 一般受検 結果報告」
■ゴールドクラス(700点〜899点)
令和7年度第1回の基本法務のゴールドクラスは総受検者の11.11%だった。政策形成に関連する基本的な事務処理を遂行できる知識を有しているレベルで、条例制定や争訟実務など、自治体での法務業務に活かす能力が備わっていることを示す。
※出典:自治体法務検定委員会「2025年度第1回全体講評(基本法務)」
■シルバークラス(500点〜699点)
政策を推進する上での基礎的な法律知識が一通り備わっているレベルだが、条例の立案や争訟処理などの事務処理を一人で行うには、さらなるスキルアップが必要となる。自身のスキル向上に励むことで、上位クラスへと進む潜在能力を有している。
ちなみに、令和7年度第1回の総受検者の平均点は1,000点満点中、基本法務が525点、政策法務が653点である。シルバークラス以上であれば、十分に法務業務における専門性と実務能力を備えていると判断できるのではないだろうか。まずはシルバークラスを目指し、さらなるスキルアップに挑戦してみてはいかがだろう。
自治体法務検定を受験するメリット
自治体法務検定の受験は、職員個人のスキルアップだけでなく、組織全体にとっても多くのメリットをもたらす。自身の法務能力を客観的に証明できるため、キャリア形成において有利に働く可能性がある。
体系的な法務知識が身につく
日々の業務で断片的に法律に触れることはあっても、体系的に学ぶ機会は少ないのが実情である。この検定の学習を通じて、自治体行政の基盤となる法律知識を網羅的かつ体系的に学ぶことができる。これにより、業務の正確性が向上し、自信を持って住民対応や政策立案にあたることができるようになる。
人事評価で有利になる可能性がある
自治体によっては、自治体法務検定の成績を昇進・昇格の際の参考資料として活用する動きが広がっている。 例えば、静岡県沼津市では、政策法務の成績を昇任判断の参考資料として導入しており、職員の自己啓発を促すとともに、客観的な能力評価の一環としている。
自己啓発とモチベーション向上につながる
明確な目標をもつことは、仕事へのモチベーションを維持する上で非常に重要である。自治体法務検定への挑戦は、日々の業務に新たな視点をもたらし、学習意欲を刺激する。合格という成功体験は、大きな自信となり、さらなるスキルアップへの意欲や、より高度な業務への挑戦心にもつながる。
こんな人にオススメ
自治体法務検定は、以下のような職員や自治体にオススメしたい。
■法務セクションで働いている職員
法務部門の職員は日々の業務で法的課題に直面し、対応が求められる。自治体法務検定は法的知識の幅を広げ、より効果的な法務サポートを提供する能力が身につけられるだろう。条例立案に携わる人や、政策立案・推進に携わる人、対住民サービスを行っている人にも、法の理解を深めるために受検をオススメしたい。
■職員への法的知識の研修を考えている自治体
業務内容によって、職員の法務知識の習得レベルにはバラツキが生じるのが現状だ。自治体法務検定を研修の教材として採用すれば、職員の法務知識レベルの向上が期待できる。すでに人材育成事業として内部研修を実施している自治体もあるので、このあと紹介する。
実際の自治体の声(静岡県沼津市)
自治体法務検定を導入している自治体の事例を紹介する。
沼津市:昇任判断の参考資料として検定を導入
沼津市では、自治体法務検定の政策法務を昇任判断の参考資料として導入している。同市では、職員間の法務知識の差が人材育成における課題であったため、検定を通じて知識の統一と向上を図るものとした。
主事級7年目の職員に一律で実施し、日々の業務が法令や条例などにのっとっていることを意識づけるねらいがある。
年功序列による昇任ではなく、積極的にスキルアップに努める職員を育てたいとの期待もある。そのためにも内部の研修だけでなく、自治体法務検定のような外部検定を取り入れることで研修の質を保っている。
今後の課題は受検のサポートであるという。主事級7年目といえば育児中の職員も多く、平日の業務終了後や週末に勉強時間を確保するのがむずかしい。それでも、確かな法務知識がつけば職員だけでなく市民に対するサービスも向上すると見込まれるため、前向きな取り組みを検討している。
自治体法務検定のオススメ勉強法
効率的に学習を進めるためには、適切な教材を選び、計画的に勉強することが不可欠である。ここでは、合格を目指すための具体的な勉強法を紹介する。
公式テキストを活用する
最も重要な学習教材は、第一法規から出版されている「自治体法務検定公式テキスト」である。このテキストは検定の出題範囲を網羅しており、試験問題の多くがこのテキストの内容に準拠して作成される。まずは公式テキストを繰り返し読み込み、内容を完全に理解することから始める。
過去問で出題傾向を掴む
公式テキストと合わせて活用したいのが、過去問題集である。過去問を解くことで、実際の試験の出題形式や問題のレベル、時間配分などを体感できる。また、どのような分野が重点的に問われるのか、自分の苦手分野はどこかといった出題傾向を把握し、効率的な学習計画を立てるのに役立つ。
業務の質や職員のモチベーション向上に
自治体法務検定を受検した職員は、法律知識を深めることで、日常業務に法を意識した行動を取ることができ、組織全体の品質向上につながっている。自治体法務検定で確かな知識をインプットし、日々の業務でアウトプットしていくことで、業務の質の向上も期待できるだろう。
一般的な資格試験のように合格・不合格の判定が出るものではないから、職員のモチベーション向上にも最適だ。繰り返し受検してさらに上のランクを目指すのもよいだろう。今後より多くの自治体で導入されることを期待したい。

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