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神奈川県小田原市

公開日:2023-04-21

部局を越えた庁内検討会で公共施設の課題解決に向けて話し合う。

企画・政策
読了まで:5分
部局を越えた庁内検討会で公共施設の課題解決に向けて話し合う。

公共施設にまつわる意志決定は、施設の所管課以外に様々な課との合意形成が重要になる。しかし、各課の目的が一致せず、庁内連携が難しいと感じることも少なくないだろう。そんな中、小田原市では部局の枠を越えてアイデアを出し合う検討会を設置。民間事業者とも連携し、効率的な施設の利活用を推進しているという。

※下記はジチタイワークスVol.25(2023年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

公民連携のさらなる推進を目指して全庁的に「公マネ検討会」をスタート。

平成31年3月、「公共施設等総合管理計画」の具体策として「公共施設再編基本計画」を作成した同市。持続可能な行政サービスの実現に向け、公共施設の機能や配置を見直すとともに、公民連携による施設の利活用を推進してきた。

「将来的には厳しい財政状況が見込まれマンパワーも限られる中、施設を安全に運営管理していくには、民間の資金やノウハウを活用していくことが重要だと考えました」と朝倉さん。庁内から広く意見を集め、関係課を巻き込んだ仕組みをつくるため、令和2年度に「公共施設マネジメントに関する庁内検討会(以下、公マネ検討会)」が設置された。

施設の所管課以外にも、法務・契約・建築担当など多くの部局が関わってくるため、参加者は様々な課から集まる。会の運営は資産経営課が担い、年度初めに各課へ施設に関する課題や悩みなど、話したいテーマを募集。1回の開催で複数のテーマについて話し合い、時間は1テーマで1~1時間半程度。これまでに、歴史的建造物の利活用、認定こども園の整備、学校プールのあり方などが挙げられた。

初年度は、市として民間提案制度を導入していきたいという意向もあり、制度の理解や体制づくりも兼ねて計9回実施。以降は、テーマの件数に合わせて年に3~4回行っているという。

気兼ねなく課題や悩みを相談し経験や知恵を分かち合う。

各開催にあたっては、資産経営課がテーマを提案した課へヒアリングを行い、目指すゴールを設定。当日は、その課が主体となって自分たちの考えを発表する。「フラットな意見交換ができるよう、参加者には課の代表としてではなく、それぞれの豊かな経験にもとづいたアドバイスを求めています」と杉本さん。

個人的な意見を歓迎することで、誰もが気軽に意見を出しやすい雰囲気が醸成されているそうだ。公マネ検討会には、外部から施設管理や公民連携のアドバイザーも同席。「講師にも目的やゴールを伝えることで、限られた時間内で具体的なアドバイスが得られるよう工夫しています」。

他自治体の先進事例や失敗例など、貴重な話を聞ける場にもなっており、参加者の満足度も高いという。「施設のあり方を検討する際、以前は所管課が関係課に一つずつ確認を取りながら手続きを進めていました。公マネ検討会を設けたことで、事前に様々な課と情報を共有でき、調整作業が円滑に進められるようになりました」と朝倉さん。

導入時こそ、資産経営課からの声かけでテーマを集めていたが、今では所管課から“公マネ検討会でアドバイスを受けたい”と相談が寄せられるなど、庁内で認知が進んでいるという。

開催された公マネ検討会の様子。教育委員会やスポーツ課などから人が集まり、気兼ねなく話し合える場となっている。初年度は20人ほど、その後はテーマに応じて10人ほどが随時参加している。

定期的な情報共有で庁内外連携を円滑化する。

導入を検討していた民間提案制度は、公マネ検討会を経て実現。令和2年度末には、旧支所や歴史的建造物の利活用について提案を募集した。「中でも“旧片浦支所”は当初解体する予定でしたが、ここ数年の社会情勢の変化で、新しい働き方への適地として、利活用することに決めました」と杉本さん。

公募には複数者からの応募があり、駅から近い立地の良さや、周囲の風景を活かして、宿泊可能なワーケーション施設として生まれ変わった。「ここは市街化調整区域内にあり、敷地境界線の課題もありました。ただ、公マネ検討会で事前に他課との連携ができていたので、都度発生する課題にも協力して解決できました」と朝倉さん。

オープン後も事業者と定期的に情報共有し、伴走者として事業が円滑に進むよう取り組んでいるという。「今回の例では、民間に建物を売却したことで、草刈りなどの業務や、施設の維持管理コストの削減といった副次的効果もありました。これまで培ってきた庁内の関係性や、民間とのパートナーシップを軸に、引き続き公民連携を積極的に推進し、魅力的なまちづくりを目指していきます」。

旧片浦支所は「Workcation House U(ワーケーションハウス ユー)」として令和4年6月にオープン。小田原産の木材などを使った温かみのある空間になっている。

小田原市
総務部 資産経営課
左:副課長
杉本 祐子(すぎもと ゆうこ)さん
右:主査
朝倉 嵩雄(あさくら たかお)さん

公マネ検討会は、施設管理の悩みを誰でも気軽に相談できる場です。従来のやり方にとらわれず、多くの人の知恵を借りながら、市の資産を活かせるよう取り組んでいきます。

課題解決のヒントとアイデア

1.検討した内容を活かし各所管課が実行

公マネ検討会の目的は、固定観念に縛られず、色々な角度から検討すること。得られたアイデアやアドバイスをもとに、各所管課が課題解決に向けて動いていく。状況によっては、年度を越えて検討を継続するケースもある。

2.ソフト事業にも展開し自由な提案を募集

公マネ検討会で生まれた民間提案制度の対象を広げ、公共施設の利活用だけでなく、ソフト事業についても募集。実際に、消防士の防火衣に企業広告を貼る提案など、実現に向け協議を進めており、民間事業者と連携する機会が増えている。

3.民間事業者を積極的に巻き込むしかけづくり

サウンディング調査をはじめ、Facebookや「公共R不動産」といったメディアへの広告掲載など、注目される工夫をする。旧片浦支所のように建物を売却する場合は、リニューアル計画を全て事業者に任せ、自由な発想で力を発揮してもらう。

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