ジチタイワークス

公務員の服装は「仕事の特効薬」!正しく装えばクレーマー対策にも

「“服”は個人の楽しみ」「オシャレは仕事に関係ない」…そう考える方は多いのではないだろうか。

本記事では、元・都庁職員で、現在はイメージコンサルタントとして活躍している古橋香織さんに、公務員にとっての「服の力」について執筆いただいた。

「公務員にとっての服装は、組織や住民の中で軽やかに立ち回るための【特効薬】になりうるのです」と古橋さん。これまで「服装」に興味がなかった方にこそ、ぜひご覧いただきたい。
 

【元公務員・イメージコンサルタントが語る~服の力のハナシ~】
(1) 服は仕事の「特効薬」!正しく装えば、クレーマーも怖くない ←今回はココ
(2) 「似合う服」、着ていますか?自分も相手も幸せになる、公務員が意識したい服選びのコツ
(3) 自分は「イエベ」?それとも「ブルベ」? 公務員のためのカラーコーディネートのコツ

「都庁を辞めて、イメコンになりました!」

みなさまはじめまして。イメージコンサルタントの古橋香織です。出だしのとおり、私は元東京都の職員として働いており、現在は公務員や政治家専門のイメージコンサルタントとして活動しています。イメージコンサルタントとは、パーソナルカラー診断や骨格診断といった「診断系」が有名かもしれませんが、私の場合は診断だけでなく、その人の立場や趣向を考慮し、似合うものをトータルで提案する「印象プロデュース」のお仕事も行っています。

さて、今回ご縁あってジチタイワークスさんから連載の執筆依頼をいただき、今回から複数回に渡って、「公務員の服」について書かせていただくことになりました。元公務員のイメージコンサルタントとして、読者の皆さまに新たな気づきを提供できればと思っております
では早速まいりましょう!

写真/古橋さん提供​​​​​​

公務員にとっての「服装」の意味を考える

まず、読者のみなさまが公務員に持つ一般的な服装のイメージってどのようなものでしょうか?入庁前、ご自分が内定者だった頃を少し思い出してみてください。おそらく、きちんとしたスタイル(いわゆるコンサバ系)でお仕事をしないといけないのかな、と思っていたのではないでしょうか。しかし入庁後の声を聞くと「ネクタイを締めている人が意外に少ない」「女性はジャケットを着ている人がほぼいない」「意外とみんなカジュアルじゃん」という声が聞こえてきます。こちらは、もちろん部署による部分もある(秘書課や議会対応はジャケット着用回数が増える傾向にある)と思いますが、一般的な市役所はほぼ私が示したイメージで間違っていないのではないでしょうか。
 
一方で民間企業ではどうでしょうか?例えば、公務員の受験者層との併願が多いとされる金融業界の場合、ドレスコードが細かく規定されています。例えばネクタイ必須、中にはカラーシャツ禁止という企業も。一方で女性の場合も髪色に厳しい規定があったりします。近頃は金融業界でもドレスコードの撤廃や服装の自由化が進んでいますが、少なくとも公務員よりは服装に制限があります。理由は、うーん何でしょうか?やはり一人ひとりの社員=組織の代表であるという意識が比較的高いのが、金融業界をはじめとした民間企業の特色といえるのでしょう。幹部が「コーポレートカラー(会社のイメージカラーのこと)を意識して服装を選ぶ」なんて考え方は民間企業ならではです。

では、対する公務員はどうでしょう。新任研修のときに接遇の講師から「組織の代表としてはずかしくない立ち居振る舞いや服装を」と再三いわれるかと思いますが、「自分はこの組織の代表だ!ビシッ!キリッ!」といった意識を持っている人は、残念ながらとても少ない印象です(大変恥ずかしながら都庁職員だった頃の私もそうでした)。それゆえ、公務員として過ごしていく中で、「服装に気を遣わなくては」という気持ちがどんどん薄れていってしまうのだと思います。しかし、私が思うに、公務員の服装、特に比較的若い職員にとっての服装は、組織や住民の中で軽やかに立ち回るための【特効薬】になりうるのです。「う~ん…ちょっといまいちよく分からないんですけど」…と思う方もいらっしゃるかもしれません。次の章以降詳しく解説していきますね。

【相手への特効薬】〜住民との緩衝材の役割〜

さて、みなさんが仮に一住民として役所に手続きに行く際、シャツやジャケットをビシッと着こなす職員とダボッと着る職員がそれぞれ1人ずついるとして、どちらの対応が気持ち良いでしょうか。もし2人とも全く同じ対応をするとしたら、間違いなく前者なのではないでしょうか。

人の印象は数秒で決まります。その数秒のうちになされる評価のうち、大きな割合を占めるのが「見た目」であり、相手がどんな服を着ているかは「この人はこういう人」という評価に直接つながります。怖いですね…!
 
では話は変わります。この「見た目は数秒で決まる」「人の印象がつくられる上で服装は大事な要素を占める」ことを踏まえると、公務員(特に住民対応最前線に立つ若手職員)にとっては、きちんと服を着ることは住民とのスムーズなコミュニケーションを促進します。私たちにとっては何万回のうちの1回の対応かもしれませんが、窓口をはじめとした住民対応は大体の場合“一期一会”であり、住民側も対応する職員がどのような人なのかは強い関心を持って来庁されます。時にはハードクレーマーも来庁されるでしょう。その際はやはり自分に突っ込みどころがないようにしないといけませんし、その1つが「きちんと服を着ること」になります。別におしゃれをする必要は全くありません。「普通のものを教科書通りに着る」ただそれだけで服は自分を守ってくれるし、円滑な職務遂行を助けてくれるのです。

【自分への特効薬】〜異動=転職であるという背景を踏まえて〜

断言します。公務員の異動は転職です!私自身も、昨日までは旅費や安全衛生を担当していた庶務担だったのに、次の日からは悪徳業者に向けて行政指導・行政処分といったゴリゴリの権力行政の仕事をしていた…。そして次の異動では都議会で議員対応をしていた…という経験があります。そうなると仕事の内容がガラッと変わる他、仕事でお付き合いをしないといけない人たちの属性も大きく変わってきます(私は異動のたびに属性が大きく変わったので、それぞれのタイミングで結構悩みました)。

社会的に成功している人や組織内の評価が高い人は、その日の自分の服を選ぶ基準の中で【その日のスケジュールやその日会う相手に合わせて服を選ぶ】ということをとても大切にしています。特に異動の度に心身ともにダメージが大きい(回数を重ねると慣れてきます!)若手職員の方々は、この【相手に合わせて服を選ぶ】という軸を持つことによって自分の印象も良くなります。役所での自己実現って、好印象の積み重ねによってかなうものだと思うので、この発想はぜひ大事にしていただきたいです。

写真/古橋さん提供

みだしなみは相手のため。おしゃれは自分のためというけれど

一般的には、公務員の職場でおしゃれは禁物です。ただ私はそうは思いません。なぜかというと、制約がある中でおしゃれをすることは自分の心を守ってくれるモチベーションの源だから。そのため公務員、特に日々最前線に立つ若手職員のみなさまには、ぜひ周りの目に臆することなく、日頃の服装の中で1つでも【好き】なポイントを取り入れてほしいなと思っています(もちろん!TPOを守った上で、ですね)。そうすることで仕事へのモチベーションは間違いなく上がり、もっと自分を好きになれるはずです。服装でも、【自分をねぎらってあげる】。この姿勢を持つことは、職場で笑顔を保つための必須の条件になってくるのではないでしょうか。


古橋 香織(ふるはし・かおり)

イメージコンサルティングラボColor Commons代表 一般社団法人イメージプロデュース協会認定イメージコンサルタント、AFT1級色彩コーディネーター

1988年生まれ、早稲田大学卒業後フリーターを経て東京都庁に入都。消費生活、議会運営などの業務に携わる他、早稲田大学大学院政治学研究科を修了。地方自治、地方議会について学ぶ。在職中、都議会議員からネクタイのアドバイスを求められたことをきっかけに服装を中心としたノンバーバルコミュニケーションの可能性に興味を持ち、イメージコンサルティングのメソッドを学び、東京都を退職。

現在は政治家の印象プロデュースの他、服装迷子の公務員へのイメージコンサルティングやメイクレッスンなどを行っている。

2021年11月、株式会社ぎょうせいより『公務員男性の服』を出版。一方で女性職員に向けてInstagramで「お役所女子必携コスメ」や自身の活動内容を発信している。
 

 

このページをシェアする
  1. TOP
  2. 公務員の服装は「仕事の特効薬」!正しく装えばクレーマー対策にも