地域活性化を目指し、公共施設などの活用法を見直しているものの、旧来の運用方法が観光ニーズの変化に追いつかず、効果を出せずにいる自治体が少なくないようだ。そんな中、東かがわ市では新たな方法で公共施設の活用に取り組んでいるという。市長の上村さんに話を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.16(2021年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]株式会社ダイブ
グランピングとは…
グラマラス(魅惑的な)とキャンピングを組み合わせた造語。多くはホテルのように整った設備と食事、サービスが付帯しており、地域ならではの環境を活かした体験を楽しめる施設もある。
誘致しにくかった客層を新たなターゲットにする。
香川県東部に位置する同市では、大阪・神戸などから四国を訪れる観光客の多くが素通りし、近隣の高松市へ行ってしまうなど、観光滞在地としての認知度が低いという課題があった。「少子高齢化や人口減少の影響もあり、年々まちの空気が後ろ向きになっていくのを感じていました。なんとかしなければ……という思いが常にあり、試行錯誤を繰り返していました」と、上村さんは話す。「観光振興に力を入れようと検討したもののノウハウが乏しく、だからこそ市内外含め外部の事業者に力を借りようと思い、そのタイミングで提案を受けたのが『ダイブ』のグランピング事業でした」。
グランピングは昨今、日本でも急速に広まりつつある“アウトドアレジャー”の1つ。「自然の中で泊まってみたいが、キャンプ経験がないので不安」「準備が大変そう」といった人たちにも、手ぶらで行ける気軽さが不安解消につながり、利用者が急増しているという。
「当初、私をはじめ、職員の多くが詳しい知識を持っていませんでした。しかし、同社から説明を受けるうちに、これまで当市がアプローチできていなかった客層を呼び込めるのではと思ったのです」。同市の代表的な観光スポットは、海沿いの釣り場や漁業体験施設など、どちらかといえば昔ながらの場所が多く、20~30代の若者やファミリー層は、観光誘致の対象になりづらかった。「しかし、最近では、グランピングのようなおしゃれで新しいレジャーを楽しみたいと考える人たちも多いでしょう。そういう方々が訪れるようになれば、まちの雰囲気にも変化が起きると考えました」。
“外部の目”で魅力を発見し事業化を実現する提案力。
同社が提案したのは、公共施設横にグランピング用テントを設営し、運営をしていくプラン。公共施設は本来、住民サービスの一環としてだけではなく、観光客誘致などを期待し設立されたものが多い。そのため、民間企業などに業務委託することで、より効果的な集客や黒字経営を目指しているケースがほとんどだ。しかし、若者やファミリー層の観光ニーズが年々変化している中、依然、管理手法や施設形態が旧来のままであること、また、改装するにしても資金や人材不足などの課題から、実際に黒字経営を維持できているところは数少ないという。
「その点、ダイブが提案するプランは、初期費用を同社が負担する上、運営も丸ごと任せられます。しかも、指定管理者による“自主事業”という運用形式のため、新たな予算組みの必要がなく、庁内からの大きな反対もありませんでした」と上村さん。「自治体側の負担でいうと、条例などの確認作業と地元業者との連携サポートくらい。なにしろ初めてのことなので、地元の方からは集客効果を疑問視する意見も出ましたが、同社担当者の『このエリアだからこそできます!』という力強い声に背中を押されました」。
こうして、令和元年8月「ザランタン東かがわ」がオープン。グランピング用テントは、目の前に瀬戸内海が広がる温泉施設「ベッセルおおち」横の遊休地に設営された。「確かに海はきれいですが、ずっと地元に住む人にとっては、長く滞在しようと思える場所ではありませんでした」と振り返り、「しかし、私たちでは気づかなかった当市の魅力を“外からの目”で開拓してくれました。事業開始後も、同社担当者が飲食店をまわり、おいしいうどん屋のリストをつくるなど、地元に溶け込もうとしてくれる姿勢に感動しました」と語る。
オープン2年目からは、隣接するロッジエリアの客室の内装を豪華に変更。また、夕食やサップ※体験といったアクティビティも用意することで、グランピング施設としてエリア全体の付加価値を高めているという。
※サップ(SUP)=専用ボードに乗ってパドルで進むマリンスポーツ
グランピング自主事業の実施スキーム
自治体のメリット
1.お金・ヒト・ノウハウ不要
テントや設備・物品の購入など、自主事業の開設にかかる費用は全てダイブ側の負担のため、自治体側でのコストは発生しない。また、運営ノウハウや人材もダイブ側が提供する。
2.必要最小限の負担
自治体が担当するのは、既存指定管理者との顔合わせや条例などの確認・申請処理のみ。予算編成などの必要がなく負担が少ない。
3.圧倒的な情報発信と集客
自社メディア「GLAMPICKS(グランピックス)」での情報発信と、施設の共通屋号「ザランタン」の知名度により、リピーターの獲得を期待できる。
4.地域経済への貢献に寄与
指定管理者との協業・共創体制で自主事業を推進。地域内の雇用創出につながるほか、周辺飲食店など他業者との連携も広がりやすい。
Win-Winの関係を築くことが今後の官民連携のあり方。
グランピング利用者の多くは、女性を中心とした若者なので、“女性に響きやすい”といった視点で、水まわりや内装にこだわる必要がある。そのため内装に関しては、より多くの女性に魅力を訴求できるよう“映え”を意識し、インスタグラマーにレイアウトを任せた。同社は、そうした、旧来の運用体制では難しかった利用者ニーズへの対応を柔軟にサポート。さらには、ウッドデッキ工事などを地元業者へ依頼し、できるだけ地域経済に貢献できるようにも配慮しているという。
「これまで、外部事業者が自分たちだけ稼いで、地域とのつながりをほとんど持たないことで、結果的に経済波及効果があまりない、というケースもありました。その点、同社は自分たちのビジネスをしっかり成功させつつ、グランピングを起点として、利用者を市内の観光施設や飲食店などにも誘導する仕組みを考えてくれています」と評価する。今後、様々な分野の官民連携を進める上で大切なのは、“Win-Winの関係を築けるかどうか”とし、「外からの視点をうまく活用して、新しい文化に対する受容性を持たなければ、当市のような小さい自治体は生き残れない。そんな思いがこの事業をきっかけに、職員、市民、関連事業者間で広がりつつあります」と期待を込める。
オープン後間もなくコロナ禍に入ったが、グランピングならではのオープンエアな滞在環境が「3密を回避しつつ余暇を楽しみたい」という客層に好評で、順調な営業を継続している。「グランピングの事例を機に、今後も、市や県内外の様々な事業者と協力し合いながら、地域内で経済を循環させられる環境をつくっていきたいと考えています」と展望を語った。
東かがわ市
市長 上村 一郎(うえむら いちろう)さん
ウェブ検索数が物語るグランピングの期待値
コロナ発生以降も、3密を回避できると注目が集まり、WEBの検索件数も伸びている。今後も、3密回避を前提とした宿泊先選びや、マイクロツーリズム機運が追い風になると期待される。
※令和2年7月~令和3年9月の「ザランタン東かがわ」での実績
ダイブが手がけるグランピング自主事業の例
渓流釣りができる川やバンガローサイト、テントサイトを擁する「阿波森林公園」内に、グランピングテント10張りを新設。既存バンガロー5棟にもグランピングの内装と夕食、アクティビティを付加し、地域コンテンツの再編集を図りました。里山の原風景が残り、観光資源は豊富なものの、稼働率・売上が低迷していた森林公園が、グランピング場開設によって付加価値が高まり、地域が元気になるのを感じています。
岡山県 津山市
総務部
財産活用課
参事 川口 義洋(かわぐち よしひろ)さん
豊かな自然に囲まれた「三瀬高原」に新たな魅力を加え、さらに多くの人々を呼び込めるよう、遊休地だった広場にテント10張りを新設。入浴には既存の「やまびこの湯」を活用し、グランピングで提供する食事には“みつせ鶏”をはじめとした地元食材をふんだんに使用しています。指定管理者や協力企業も「周辺観光資源を巻き込んで盛り上げたい」と意気込んでおり、今後の事業活性化にも期待が持てます。
佐賀県 佐賀市
経済部
観光振興課
主任 廣 桂介(ひろ けいすけ)さん
遊休地となっていた旧「健民センターオートキャンプ場」がグランピング施設として整備されました。隣接する「芦別温泉おふろcafé星遊館」の“カフェ感覚で気ままに過ごせる”といったコンセプトや、若い世代からの注目も相まって、芦別の自然、温泉、食などの地域資源を活かした新たな観光スポットとして人気を得ています。民間ならではの発想と積極的な投資によって魅力ある施設が誕生し、観光誘客と市内への経済波及効果をもたらしています。
北海道 芦別市
経済建設部
商工観光課
係長 木村 智弘(きむら ともひろ)さん
まちにしっかり入り込み、特性に応じた地方創生を一緒に目指していきます。
株式会社ダイブ
グランピング事業
増田 勇人(ますだ はやと)さん
グランピング事業にかかる設備投資や運営ノウハウ、人材の投入は全てダイブが負担すること、そして、指定管理者の業務を“横取り”ということではなく、現状のまま新たな利益を生み出すことが、当社が提案する“公共の指定管理施設×グランピング自主事業”の最大の特徴です。
すでに導入いただいている4自治体の公共施設では、公共性と収益性の両立はもちろん、地域の観光振興にも寄与しており、指定管理者と当社がタッグを組むことでシナジーを生み出せることを証明できたと自負しています。既存の公共事業は、指定管理者が引き続き行い、新規収益事業であるグランピングの開設・運営を当社が担当しています。
収益の一部を指定管理者へ還元するのが基本的なスタイルですが、実施可能な自主事業の枠組みは自治体ごとに異なる場合もあり、指定管理者の業態も様々です。そこで当社は、“業務提携”でも“包括的経営委任”でも柔軟に対応できる体制を整えており、どのような形でタッグを組むのかは、事前に自治体と指定管理者とじっくり協議するようにしています。
また、既存の公共施設とグランピングをどのように組み合わせるのがベターか、滞在中はもちろん施設への行き帰りにどんな“ドラマ”をつくれるかといった点も、十分な下見や調査を行った上で、最善と思われるプランを提案するよう心がけています。地域の力を集めて、公共施設・遊休地のより良い再活性化事業を推進しましょう。
\宿泊客の声 ザランタンに宿泊した方々からこのような声が届いています/
●スタッフの対応がすごく良かったです。夕食も食べきれないほどのボリュームで、海岸でのサップや、たき火でのマシュマロなど、子どももとても喜んでくれました。
●内装がおしゃれで設備もしっかりしていて申し分なかったです。キャンプにはよく出かけるのですが「ザランタン東かがわ」が、これまでで1番良かったと感じました。
●山々の自然に囲まれテントなど設備も充実していてキレイ。阿波温泉に入浴できるのも良いですね。ウッドデッキでのバーベキューも手軽に楽しめて、快適に過ごせました。
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グランピング施設として不向きな立地がある一方で、地元の人々がまだ気づいていない魅力を持つ既存施設や遊休地が多数あります。実際に現地に出かけ、活用の可能性について調査いたしますので、まずは気軽にご相談ください。
お問い合わせ
サービス提供元企業:株式会社ダイブ
TEL:070-3615-3472
住所:〒160-0022 東京都新宿区新宿2-8-1 新宿セブンビル10F
E-mail:glampicks@dive.design
担当:グランピング事業 増田