ジチタイワークス

鹿児島県奄美市

地域の担い手を全国から!「奄美ふるさと100人応援団」と取り組む、魅力ある島づくり。

少子高齢化や人口減少により、地域の担い手不足を課題とする自治体は多い。奄美市もその1つであるが、平成23年度に発足した「奄美ふるさと100人応援団」(以下、応援団)の活動が、新たな地域づくりの担い手を生み続けているという。団員は、奄美と縁のある島内外の人材や店舗。彼らが全国で奄美をPRすることで、長期的な奄美ファンを創出しているのだそう。同市との連携や活動事例を紹介する。

※下記はジチタイワークスVol.15(2021年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

“奄美が好き”という思いと活動への意欲で応援団に認定。

奄美出身者同士が、島外の地域で交流を図るために結成した「奄美会」。元々は集団就職などで島を出た人々が、心のよりどころとして集まったのがきっかけで、現在、北海道から沖縄まで多くの地域で結成されている。平成22年の奄美豪雨災害時には、全国の奄美会から同市に多くの義援物資が寄せられたという。「こんなにも当市のことを思ってくれている人が全国にいるということを、地元住民も認識しましたね」と、紬観光課の川畑さんは当時を振り返る。

平成23年に同市が、公認組織として応援団を発足した際、担当者が全国6カ所の奄美会へ赴き、連携や協力を依頼する説明会を開いた。「皆さん愛郷心が強く、普段から“奄美のために何かやりたい”と思ってくださっており、市からの提案に対し、喜んで協力していただけました」と、同課の重久さん。奄美会などから推薦された応援団の候補者には、市の担当者が直接面談して活動意思などをヒアリング。これまでの活動の実績を加味し、総合的に判断して認定しているという。現在までに、62名(件)を認定し、団員の名刺や、店舗に設置するのぼりなどを提供。全国の奄美会も、団体としてその一員になっている。

奄美出身者に限る必要はない、様々な職種とネットワーク!

応援団の特徴として挙げられるのが、奄美出身者に限らず、様々なきっかけで奄美と縁を持ち続けている人が数多くいること。例えば、“毎年奄美にスポーツ合宿を誘致している”“日本民踊の師範として、多くの生徒とともに奄美公演を度々開催”“たまたま店のお客さんに奄美出身者が多かったことから、店企画で奄美観光ツアーを定期的に実施している”など、実にユニーク。

「皆さん、それぞれの業種で奄美をしっかりPRしてくださっていますので、私たちから、こういうPRをしてほしいといった依頼はしていません。今まで通りの活動を続けていただいています。結果的にそのことが、奄美の良さを広めて、関係人口の増加や各産業への波及効果につながっていると思います」。

また、現在応援団のFacebookページには、2,500名を超える奄美のファンが参加し、応援団との交流や情報交換が行われている。イベントや特産品の情報はもちろん、散歩の風景など日常の何気ない写真も投稿され、奄美の今を感じてもらえる場にもなっているという。

■「奄美ふるさと100人応援団」認定へのきっかけと関わりの一例

全国で活動している応援団員の中から、奄美出身者以外で、応援団となった人々の事例をピックアップ。

〇西陣織と大島紬のコラボ企画
西陣織の仕事を通じて、写真のように、大島紬とコラボしたファッションショーなどを開催。

〇奄美出身者を長年雇用
定期的に奄美関連イベントを実施。写真は島を故郷とする従業員たちとの1枚。

〇ライフワークとして奄美を撮影
仕事の視察で来島して以降、奄美の人や自然を撮影し続けている。「奄美手帖」を毎年制作。

〇奄美の食材を自社で販売
都内の商店街のイベント時には、“ 奄美大島物産展”を出店し、奄美の食材をPRしている。

相互のコミュニケーションを深め、より“しあわせな島”へ。

平成25年の奄美群島日本復帰60周年記念行事の際には、「奄美ファンサミット」を開催。当日は団員を交えて、今後の奄美づくりについて、意見交換をしたという。「環境をしっかり守って、後世に引き継いでほしい」「魅力ある特産品づくりを」「おもてなしの心は忘れずに」といった、観光や特産品、自然遺産など各分野についての提言を得る機会となった。

そのほかにも、市長の朝山(あさやま)さんが、団員に日頃の活動への謝意を伝えるべく、現地へ赴き交流を図る「100人応援団トップセールス会議」を度々開催。さらに、月に1回“応援団通信”というメールを同市から団員へ配信している。団員同士の交流や連携を促進させるとともに、同市とのコミュニケーションを深める働きかけを続けているという。

「島の中にいると気づかないことも、応援団の方々からの提案で、気づくことができる。島民や来島者に、少しでも“しあわせの島”だと思ってもらえるよう、今後もより一層、相互連携していくことが重要だと考えています」。

奄美市
商工観光情報部 紬観光課
左:課長 川畑 博行(かわばた ひろゆき)さん
右:主査 重久 悠一(しげひさ ゆういち)さん

観光目的の来島者数は、リピーターも増えており、おかげさまでずっと右肩上がり。その背景には、応援団の皆さんの普段からのPR活動がきっかけをつくってくれていると考えています。今後も協力を得ながら、一緒に奄美のファンを増やしていきたいです。

課題解決のヒント&アイデア

1.“100人”が目標ではなく、熱意を持った人を厳選

数字を追うと1人でも多く認定しようとして、選考時の精査がおろそかになることも。必ず本人と直接面談し、奄美への思いや活動意欲を確認して認定する。

2.認定後の密なフォローが活動のモチベーションへ

市のニュースやイベント情報、応援団の活動事例についてメールを配信。紙のパンフレットを更新したら送付するなど、こまめな連絡を心がけている。

3.団員からの意見を観光分野や特産品づくりへ反映

ファンサミットで得られた提言のうち、特産品に関わることは地域の物産協会へ情報提供するなど、今後の商品開発や様々な企画へのヒントにつなげている。

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