庁内業務のDXでは、費用や開発スピード、現場での使いやすさがカギになる。官民問わず業務支援を行う「サイボウズ」のデジタルツールを活用してこれらの条件を満たし、庁内に変革のうねりを起こしている川口市のDX推進事例を紹介する。
※下記はジチタイワークスVol.14(2021年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]サイボウズ
コロナ対策で急浮上した業務支援プラットフォーム。
川口市は、以前から業務のデジタル化を推進していた。単純な入力作業はエクセルのマクロを活用するなどして自動化を進めていたが、異動などの際の引き継ぎで課題を抱えていた。
「マクロやVBAを操作するには一定の知識が必要なため、引き継ぎのたびにどこかの部署で支障が起きていました」と同市の早坂さん、会田さんは振り返る。解決策を考える中、千葉県市川市が「kintone(以下、キントーン)」を活用してノーコードでアプリ作成を進めたことを知り、解決への糸口を掴んだという。そんな矢先に起きたのが新型コロナウイルス感染症の拡大だった。
川口市は、その対策の1つとして「川口市小規模事業者等事業継続緊急支援金」を給付することを決定。間近に迫った令和2年5月の受付開始を前に、同市の経済部から情報政策課へ「エクセルでの運用は困難なため受付業務を管理できるシステムがほしい」と緊急要請が入った。そこで浮上したのが、クラウド型で導入もスピーディーなキントーンだ。川口市は迅速に導入を決定し、アプリ構築に向けて動き出した。
導入1週間でアプリ完成!現場も驚いたスピード開発。
キントーンはドラッグ&ドロップでアプリを作成できるという特徴を持つ。早坂さんはこれを活かし、現場担当者に画面を見せながらアプリを作成。その結果、導入後1週間での稼動開始を実現した。アプリは支援金の電子申請における進捗管理で活用。進捗状況はWEB上で申請者に公開され、多いときで1日約300件あった問い合わせ電話も減り、電話対応もサイトへの案内に要する1分程度で済むようになった。「住民、職員双方の負担減ができたと好評でした。処理上のミスを防ぐのにも役立ったと考えています」と目を細める。
このアプリで手応えを感じた早坂さんは、キントーンの操作説明動画を庁内イントラに載せるなどして各課での導入促進に努めた。しかし課題はまだ残っていたと語る。「キントーンはインターネット側にあるため仮想デスクトップ上で動かしていたのですが、立ち上げに時間がかかると不評だったのです。そこで、仮想ブラウザを使うことにしました」。
仮想ブラウザ導入の効果は絶大で、それまで1分20秒ほどかかっていた立ち上げ時間が約10秒まで短縮され、庁内での評価はさらに高まった。キントーンの活用も広がり、公用車運転日報アプリ、データパンチ依頼アプリなどが続々誕生。令和3年3月時点のアプリ数は89にのぼる。新規の相談を受けた際に簡単なテストアプリをつくってみせると「ベンダーに聞いたら数カ月かかるという返答だったのに」と驚きの声が返ってくるそうだ。
川口市でのキントーン活用による業務改善例
自治体コミュニティ活用でさらに可能性が広がる!
この事例に貢献したものが、もう1つある。オンラインコミュニティの「ガブキン」だ。ガブキンはサイボウズが提供している自治体限定の情報交換・アプリ共有コミュニティ。前述の公用車運転日報アプリは、神戸市がガブキンで公開しているものをカスタマイズしたものだ。さらに、他自治体の事例に関するプレゼン資料も共有されているので、上長への説明の際などに重宝しているという。
キントーンの強みを最大限に活かし、行政サービスと働き方改革に役立てている川口市。早坂さんは「熱意ある職員のアイデアがすぐに形にできるというのは、非常に大きな収穫です」と導入の成果を語りつつ、今後のことも見据えている。
「次のフェーズでは旅費精算などの全庁的なものにもキントーンを活用し、職員の負担を減らしてより政策的な業務ができる時間を創出したいと考えています」。
川口市 情報政策課
左:主任 早坂 俊平(はやさか しゅんぺい)さん
右:主事 会田 裕貴(あいだ ひろき)さん
キントーンの活用が様々な部署で抱える「困った」を改善に導く。
「この作業を効率化したい」そんな現場の要望をかなえ、職員の負担を減らし、自治体DXを進めるキントーン。すでに全国で116の自治体と官公庁が導入済だ。
自治体で活きるキントーンの強み
1.ガブキンで他自治体とつながることができる
正式名称は「GovTech kintone Community」。自治体職員限定のコミュニティで、オンラインでの交流を通し、情報交換やキントーン活用ノウハウの共有ができる。定期的にオンラインミーティングやセミナーなどのイベントも開催されており、令和3年4月時点で約80自治体、約200人が参加。約20のアプリが共有されている。キントーンユーザーでなくても参加可能。
2.ノーコードでアプリの開発ができる
ドラッグ&ドロップでアプリが作成可能なため、プログラミングなどの知識がなくても設計・改修が可能。異動で担当者が変わったり、カスタマイズが必要になったりした際にもスムーズに業務を継続することができる。
3.プラグイン、外部サービス連携による高い拡張性
豊富なAPIやプラグインなど、100種類以上の連携サービスがあり、キントーン活用の可能性は無限大に広がっている。LINEやWEBフォームなどを活用した住民向けのオンライン申請や、帳票作成の自動化などにも対応可能。
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