自治体への関心度向上のきっかけになることを目指す。
リリースからわずか数カ月で、早くも自治体職員からの注目や反応を集めている自治体ランキングサイト「自治体四季報」。このサイトを開発したのは、これまで選挙にまともに行ったことがなく、自治体のことが分からなかったという2人の若手社員だった。そんな彼らがどのようにして自治体四季報を完成させたのか話を聞いてみた。
※下記はジチタイワークスVol.13(2021年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]株式会社コウダプロ
入社間もない若手2人への無理難題から始まった挑戦。
「コンセプトだけ伝えるから自治体のランキングサイトをつくって!」。「コウダプロ」代表の幸田さんの、そんな唐突な依頼を受けたのは、同社で入社2年目の原口さんと1年目の中田さん。「分からないことばかりで、手探り状態から始まった」と原口さんは語る。まず行ったのは、自治体の評価指標を決めること。独自指標である「自治体スコア」は、①人口増減率②地方税収増減率③人口一人当たり地方税収④財政調整基金増減率⑤人口一人当たり職員人件費を用いてつくられている。この5項目は、中田さんと幸田社長とで決められた。
「最初に見るべきものは、“人口”と“税収”だろうという話になりました。しかし、これだけでは全ての自治体を平等に比較することはできません。公平に比較するにはどうしたらいいのかを考え、独学でインターネットで調べたり、総務省に問い合わせたりし、信ぴょう性の高いデータを集めました。現在の5項目に決めるまでに5カ月ほどかかりました」と中田さん。指標には増減率を含んでいる点も大きな特徴で、「人口数や税収額だけを指標にすると、地方の小規模自治体は都市部に比べて劣っているかのように見えてしまいます。しかし、増減率であらわせば、額が小さくてもプラス2倍になったなど、その頑張りが見えるようになります」と原口さん。
指標が決まったら、次は1,741自治体(市区町村)のデータを収集。「自治体には2年前より古いデータを公開する義務がないので、WEBサイトで見つからない自治体も100以上ありました。そこには電話をして取り寄せました」と中田さんは振り返る。ほかの業務を兼任しながら、データを取りまとめるのに要した期間は2カ月。中田さんは元々エンジニアではなかったそうだが、WEBサイトの構築も併せて勉強し、この自治体四季報をつくったのだという。
徐々に自治体への興味が湧き、初めてふるさと納税を経験。
1,741もの自治体を調べていくうちに、2人の中で様々な変化が起きた。自治体への関心が高まり、ニュースに注目したり、税金の使い道を調べたり、市議会への見学にも出かけるようになったという。「市議会を見学した際、いろんな議員の話を聞く機会を得て、選挙には必ず行こうと改めて感じました。 私たち自身がそうであったように、自治体四季報を見ることが、住民にとって自治体や公務のことをもっと知ろうと思うきっかけになれば……と期待しています」と原口さん。さらに「頑張っている自治体のことを応援したくて、ランキング上位の自治体に、初めてのふるさと納税もしました」と話す。
これからも進化を続け、様々な選択の判断材料に。
令和2年11月にリリースされた自治体四季報。広報紙やSNSで本サイトでの評価を掲載する自治体もあるそうで、「自治体四季報での評価が、自治体の頑張りを応援することになれば嬉しい」と笑みをこぼす。よりよい地域づくりに向けて、日々の業務に励んでいても、災害などの発生により地域経済が低迷することはある。その影響で税収が落ち込めば、ランキングの順位は下がってしまう。これに対し「そういった事情も踏まえて、今の指標だけではあらわしにくい頑張りも見える化できるようにしていきたい」と中田さん。同様に原口さんも、「現在のサイトが完璧だとは思っていません。これからも、職員の皆さんを応援する存在として進化を続けます。このデータのランキングを5年10 年と更新・継続していけば、自治体を適切に評価できる指標になると見込んでいます」と今後の展望を語る。
ふるさと納税の寄付先選びだけでなく、移住先や就職先など、 “どこで暮らすか”という選択場面において、この自治体四季報が有効な判断材料の1つになることに期待したい。
自治体の頑張りを知る情報源に。職員のモチベーションアップにも!
自治体四季報ランキングから分かること
※自治体スコアの評価指標5項目の詳しい算出方法(計算式)については、自治体四季報より確認可能です
自治体四季報とは
総務省が出す「財政状況資料集」および「市町村税課状況等調」といった客観的なデータにもとづく情報サイト。独自指標「自治体スコア」を用いて、1,741自治体をランキング化している。
自治体四季報はこんな場合に使える!
●ふるさと納税で寄付したい自治体を選ぶとき
●納めている税金で、どんな行政が行われているのかを調べるとき
●UIJターンを検討するとき
●引っ越し先を検討するとき
自治体四季報は、複数の自治体の広報紙やSNSを通じて紹介されており、住民の“まち”への関心度向上にも貢献している。
「自治体四季報」の特徴
1.独自開発のランキング
“住民の持続可能な幸福を実現する力(自治体の経営力)”という、見えにくく、評価しづらいものを「自治体スコア」を用いて見える化している。
2.徹底したリサーチ
自治体の公表データは不定期で更新されるため、1, 741市区町村について1つずつ、変更箇所がないかを目視で確認している。
3.ふるさと納税を応援
“頑張っている自治体にこそふるさと納税を”の理念を体現すべく、ランキングページ内に「ふるさとチョイス」のリンクを設置。同ページと比較しながらの選定を可能にしている。
自治体の頑張りを応援します!
ランキングはあくまで自治体を応援するものであって、自治体同士の優劣をつけるためのものではありません。まずは、自身が勤めている自治体の頑張っているところを見つけて、何か1つでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
コウダプロ
左:原口 水月(はらぐち みづき)さん
右:中田 郷(なかた ごう)さん
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