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【セミナーレポート】外出自粛と三密発生 日々変化する人流を捉えるための位置情報活用セミナー

新型コロナの感染拡大“第四波”を防ぐには、観光スポットなどにおける“三密”発生を抑止する政策が重要だと言えます。今回のセミナーでは、人の流れの分散化をはじめ、様々な自治体業務推進のため、“位置情報”をいかに活用すべきかについて検証します。
当日の内容を概要版でお伝えします。参加できなかった方は、次回のセミナー開催にご期待ください。

タグ:位置情報活用


概要

◼タイトル:外出自粛と三密発生 日々変化する人流を捉えるための位置情報活用セミナー
◼実施日:3月5日(金)
◼参加対象:自治体職員
◼登録者数:102人
◼プログラム
Program1
データなくして政策づくりはなし
Program2
KDDI位置情報と自治体様での活用事例の紹介
Program3
位置情報データ活用によるEBPMへの取り組み


Program1
データなくして政策づくりはなし

政策づくりには、データにもとづく“根拠”が求められる。しかし実際には、根拠が薄い実効性の低い政策が進められるケースも少なくはないようだ。民間シンクタンクや中核都市の政策研究所勤務を経て、現在は複数自治体の政策アドバイザーを兼務する関東学院大学の牧瀬 稔さんが、データにもとづく政策づくりの重要性について言及した。

講師

関東学院大学法学部地域創生学科
准教授 牧瀬 稔さん

自治体が陥りやすいPDCAサイクルの罠

まず、自治体における「PDCAサイクル」について考えてみましょう。PDCAにおいて最初の「P」が重要であることは当然ですが、私はPの前、すなわち“データ分析”の方が重要だと考えています。さらにデータ分析の前には、しっかりした“データ収集”が求められます。

私は令和2年、全国4県の市町村を対象に、地方創生の現状と課題に関するアンケート調査を実施し、105団体中101団体から回答を得ることができました。アンケートには「RESAS(地域経済分析システム)」の活用についても盛り込み、自治体の企画部門は、RESASを活用して地方創生を進めているかを尋ねたところ、44.9%の団体がRESASを活用していることが分かりました。逆にいえば「企画部門でも約45%しか活用していない」わけで、他の部門では、さらにデータ活用が行われていないと推察されます。

「EBPM」という新しい概念の登場

3~4年前から、「EBPM(Evidence Based Policy Making)」という言葉が使われるようになりましたが、「Evidence」ではなく、「Episode」つまり、“○○市ではやっているので、うちでもやろう”といった事例にもとづく政策が多く見られます。“以前はこれでうまくいったから”という「Experience」も、政策としてはうまくいきません。

本則である「データに基づく政策」を後押しするため、平成28年12月14日に「官民データ活用推進基本法」が制定・施行され、国や自治体などがオープンデータの取り組みを推進しているようです。同法により、政策づくりに活用できるデータも整備されつつありますが、それを使いこなせる人が少ない点が、今後の「EBPM」推進の課題と言えるでしょう。

データ活用の事例と「lg」アドレスの意味

私が、ここ10数年の間に複数の自治体で調査した、「データに基づく政策」の事例を何点かご紹介します。

【事例1】

<課題>
定住人口が減少しているため転入促進を進めたい。

<対策>
・住民基本台帳をデータベース化し、「どの地域から転入してくるか」を調査したが、転入者がバラバラで絞れなかった。そこで国勢調査を活用し、通勤元を調べたところ、ある程度まで類型化できた。アンケート調査などにより、「職住近接」というデータも得られた。
・通勤元であり、かつ持ち家率が低いなどのデータを根拠に、市町村を限定してプロモーション活動を行った。
・転入増へ変化した。通勤先の会社に広報紙を配付した効果もあった。

【事例2】

<課題>
転出が多く続いている。転出を減らすにはどうすればよいか?

<対策>
・転出を減らすためのデータは思いつかなかったため、実際に転出した住民を対象にアンケート調査を送付してデータを集めた。
・アンケートの結果、転出の理由の多くは就職、結婚などだったため、転出を防ぐ政策は断念した。
・そこで、転出者以上に転入者を増やすことで人口の均衡を図る政策へと転換した。

【事例3】

<課題>
今後、わが市に降りかかる問題を把握して対策を講じたい。

<対策>
・A市の「2030年の人口推計」の人口3区分は、「2005年国勢調査」にもとづく東北地方のB市とかなり近いことがわかった。つまり、B市がA市の未来と言えることが明確になった。
・B市に視察に行って現在発生している問題を把握。先手で政策展開することで、A市に降りかかる問題は回避され、現在は良い数字となっている。「未来を視察する」対策だと言える。

データを収集・分析し、政策づくりにつなげていくことは、政策づくりの基本のはずですが、総体的に「甘い」印象を受けます。その理由は「危機感の欠如」であり、今後、いかに危機感を持つかがポイントと言えるでしょう。データをしっかり押さえて政策づくりを進めると、「成功する」とは言えないまでも、「失敗の確率」は減らせます。

近年、自治体職員の皆さんのメールアドレスの最後には「.lg.」が入るようになったと思いますが、このlgは「Local Government」の略です。地方創生の時代、地方自治体は「地方政府」に変貌することが求められているわけです。

Program2
KDDI位置情報と自治体様での活用事例の紹介

国内の大手キャリア3社が自社の位置情報ビッグデータを活用したサービスの提供を行っている。感染拡大を防ぐ“密”回避策はもちろん、観光事業や催事など、様々な場面での活用が検討されている位置情報データだが、実際にはどのような使われ方をしているのか、KDDIサービス統括本部の田崎 良太さんに語ってもらった。

講師

KDDI株式会社サービス統括本部
パートナービジネス推進部
田崎 良太さん

自治体を取り巻く環境と位置情報の必要性

コロナ禍による緊急事態宣言の発出に伴い、多数の自治体様から弊社の位置情報データを活用していただけるようになりました。東京都内での活用事例を挙げると、例えば浅草・雷門周辺における人流の推移を位置情報で分析した結果、前年と比較してG.W期間中の人出は90.2%減となり、来訪者が大幅に減少したことが明らかになりました。

2度目の緊急事態宣言前・後の人流の変化も大きく、令和2年12月18日~24日までと令和3年1月8日~14日までの、新宿・歌舞伎町における5時~29時の年代別滞在者数の推移を比較したところ、通常は20時以降から人出が増える傾向であるのに対し、飲食店等の営業自粛の影響で、全年齢層で宣言前より30%近く減少している傾向が読み取れます。

内閣官房の「コロナ対策サイト」に、全国の主要観光地の人流が掲載開始されたこともあって、一般市民の皆さんの人流に対する注目度も高まっており、官公庁サイトやメディア各社も、人流分析の発信を盛んに行うようになりました。これに伴い各自治体様には、変化する人流を加味した政策企画や都市計画の立案、人流変化による観光業などへの影響の可視化と対策の実施など、人流変化をスピーディかつ正確に把握する必要性が増大していると言えるでしょう。

KDDIが提供するソリューション

データ利活用で最も大事なことは、データを提供くださるお客様の信頼を裏切らないことと、法を遵守することです。弊社は、度重なる確認・検討を経て、お客様の同意取得からデータ利用までの仕組みを構築。分析・集計結果に秘匿処理を加えた集計表やレポートなどを提供しています。

弊社で保持する位置情報データは「高精度・高信頼性」という特徴があり、調査エリアへの流入出箇所や周遊など、細かな状況の調査が可能な「動態分析レポート(Location Trends)」、ブラウザの簡単操作で、任意のエリアの分析が実施可能な「商圏分析ツール(KDDI Location Analyzer)」、統計データの形式で納品し、お客様保有のデータと組み合わせた分析が可能な「統計データ(KDDI Location Data)」などのソリューションの中から、お客様の分析課題をヒアリングしてご要望にマッチしたサービスメニューを提案中です。

自治体などでの活用事例(抜粋)

弊社ソリューションが、実際に各地の自治体様でどのように活用されているかをご紹介します。まず、コロナ対策として活用いただいた長野県庁様の場合、県外からの流入が多い地域を推定し、外出自粛の効果が薄い地域を推定。次いで、流入経路と想定される駅や高速道I.Cなどの人流を時系列・昨対比で算出・分析し、対策を検討しました。

栃木県庁様は、宿泊施設の稼働状況や観光施設の入場者数から推測する以外に調べる方法がなかった観光客数を、弊社ソリューションによって正確かつ迅速に把握できるようにしました。前年同日や前週との比較による観光客数の増減データをもとに、観光政策を推進。観光客の居住地データをもとに、誘客活動を行うエリアの選定を行ったり、複数観光地の併用状況を分析したりすることで、効果的な観光振興施策の検討が可能になりました。

今後、コロナ禍による人流変化によって、自治体運営上の新たな課題が顕在化することが予測されます。コロナ対策はもちろん、従来の政策企画や観光、防災の領域まで、弊社が保有するビッグデータやソリューションの活用範囲が、さらに広がるものと考えています。
 

Program3
位置情報データ活用によるEBPMへの取り組み

EBPMは“かけ声”だけで進められるものではない。どんなデータをどのように加工し、何のために活用するか…という筋道を明確にしなければ、ビッグデータも宝の持ち腐れになりかねない。業務DX、そしてEBPMに向けた取り組みを20数年前から着々と進めてきた神戸市で、データ利活用を担当する松尾 康弘さんが、これまでの歩みと今後の課題を語ってくれた。

講師

神戸市 企画調整局 企画課
データ利活用担当係長 松尾 康弘さん

神戸市における「働き方改革」の歩み

神戸市は平成29年6月、「働き方改革推進チーム」を結成し「行政事務センター」を設置したのを契機に、働き方改革に向けた取り組みを着々と進めてきました。

きっかけとなったのは、平成7年に発生した阪神・淡路大震災。被災後、行政は財政難状態に陥り、平成27年までに7,000人以上の職員を削減することとなりました。その一方で業務は増え、職員1人あたりの負担が目に見えて増加していました。そこで、「やめる・へらす・かえる」をテーマに掲げ、フリーアドレスの導入やフレックスタイム制の導入、ペーパレス化に向けた取り組み、AIチャットボット導入など、デジタル化を中心とする業務改革を、やれるところから積極的に推進しました。それ以降の主なものは以下の通りです。

・平成30年/タブレットの全庁導入とWEB会議システムの本格導入
・平成31年/在宅勤務制度の取得要件緩和と庁舎内への無線LAN導入
・令和1年/グループウェアおよびチャットツールの全庁導入、「KOBEスマートナビ」
およびFAQ検索システムの導入
・令和2年/サテライトオフィス開設、旅費精算システム導入

令和2年度内には、消耗品調達システム導入と、市営施設100カ所以上へのキャッシュレスシステム導入、庁内セキュアプリントのためのシステムも導入しました。そうした取り組みの結果、令和3年1月時点で電子決裁率は97.3%となったほか、印刷枚数を年換算で約4,200万枚削減しました。
 

電子化推進に伴いデータ利活用の重要性が増大

現在、データ利活用担当者としての最大のミッションは、EBPMの推進です。その一環として進めているのが「GIS(地理情報システム)」の活用推進で、今年1月、新システムに移行したのを機に、指定道路情報配信サービスや土砂災害検索システム、埋蔵文化財地図など、個別のGISを統合したほか、可能なものから統合型GISに移行できるよう、各所属で運用している個別GISを調査中です。

また、行政データ公開の意義やEBPMの重要性を理解し、業務上の課題解決と市民サービス向上につなげるため、平成28年度から神戸市職員のデータ活用リテラシー向上を目的として、国内では初めて「データアカデミー」を実施しました。

データ分析を業務へ落とし込む際のコツ

新型コロナ感染拡大に伴う1回目の緊急事態宣言が発出された直後、当市ではメンバー9人から成る「データ解析チーム」を発足。市内の感染状況のほか、市営地下鉄の乗車数、三宮エリアの歩行者数などを、市のホームページ等を通じて公開しました。元データをオープンデータとして公開したことで、報道各社が独自分析を行った上で記事作成できるようになり、市民が自ら適切な行動を取る判断材料となりました。

ただ、当初扱っていたデータでの分析には限界があったため、KDDIのソリューションを導入。データ収集及び分析の結果、昨年のG.W期間中の買い物客は、住宅地エリア近郊の商店街やホームセンターで上昇傾向が見られること、2回目の緊急事態宣言後、20時以降の繁華街滞在者数は減少しているものの、宣言1回目の時ほど減少していないことなどが判明。これらの結果は可視化して、オープンデータで公開中です。

私が、データ利活用担当としてこれまでに取り組んできた事案を通じ、データを業務に落とし込むためのコツだと思っている点は以下の通りです。

・デジタル革命の急速な進展を意識し、やれることから戦略的に取り組む。
・トップの理解は非常に重要だが、職員側の「変えたい」という気持ちも重要なので、成果は庁内共有し、職員の「やって良かった」を拡散する。
・情報部門、産学連携部門、個人情報所管課など、チーム単位で取り組む。
・民間の知恵や人材は必要だが、それを生かすも殺すも職員次第。圧倒的当事者意識を持って、主体的に取り組む。

当市も上記の事柄を十分に意識しながら、今後、庁内データ連携基盤の整備や政策効果の把握を容易にするためのダッシュボード充実、組織横断体系的にDXを推進するためのDX人材育成、専門人材の育成などに取り組む考えです。
 

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