ジチタイワークス

茨城県小美玉市

茨城県小美玉市「Watashi Omitama」

“まちを彩る”PR誌をピックアップ。魅力を取材し研究発表していきます。

※下記はジチタイワークスVol.12(2020年11月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

 

プロから制作のテクニックを学び、市民主体でつくり上げたシビックプライドの結晶。

今年4月にシティプロモーションの一環として発刊された小美玉市の地域情報誌「Watashi Omitama」。タイトルには「冊子を誰かに渡すことで、私の小美玉を多くの人に知ってほしい」という願いが込められ、「私、小美玉」「渡し、小美玉」という2つの意味が合わさっている。

このオリジナリティに溢れる冊子制作には、市民が主役となって参加している。仕様は、タブロイド判で全8ページ。本取り組みに参加した市民が集ったライブ感のある表紙に始まり、イチゴ生産者へのインタビュー、祭神画御朱印、猫がいるスポットの紹介など、ユニークな視点を交えたテーマで記事を構成。コーナーごとにデザインのレイアウトを変えているので、読み手を飽きさせない。

素人っぽさを感じさせないクオリティの高さに驚くが、実はプロのデザイナーやライターから制作のテクニックを学び、小美玉の魅力を編集していったという。参加者は取材、記事作成、デザインなどをテーマにしたワークショップ(全5回のプログラム)を経て、自分たちでネタを考え取材に挑んだ。

この市民編集者を育てる企画を行った中本さんは、住民劇団を企画するなど、文化行政事業を14年やってきた自治体のキーマン。令和元年には酪農のまちをPRする「第1回全国ヨーグルトサミット」の担当者として、地元青年層49人とともに市民を巻き込んだイベントを成功させた。この経験が今回のシティプロモーションの下地となっている。

「ヨーグルトサミットの時にリーダー格になった青年層が、まちをもっと盛り上げていきたいという思いを持ってくれたんですね。それで、どう地域に参画してもらって輪を広げていくかを考えたんです。勉強会だけだとそこで終わってしまう。それをアウトプットして皆で汗をかく何かをやっていくことが大切だと感じました」。

スタッフTシャツなどデザインに気を配ったこのサミットで、それまで希薄だった地域のクリエイターが運営に関わり始めたこともあり、小美玉市の課題でもあった〝デザインと情報編集力を身に付けること〞を目的に、冊子づくりが決定したという。講師の選出は、ヨーグルトサミットの取り組みを密着取材していた編集者に手配を任せ、参加者はフェイスブックで公募。会社員や主婦、農業従事者、映像クリエイター、イラストレーターなど、10代から60代まで、個性豊かな市民が40人近く集まった。
 

市民を主役に、自治体は支援。自分の〞まち〞を語れるように。

〝小美玉の魅力って何だろう〞をテーマに、段階を踏んでその答えを形にしていった本ワークショップ。「ネタについては、シティプロモーション的に広がりが見えるよう意識すること以外はお任せでした。各自の視点からのリサーチや、いろいろな取材対象者を提案する前向きさが見られたので、その雰囲気を大事にしました」。

取材は、4班に分かれ、地元クリエイターを各班に配置してスタート。「私たちはあえて同行しませんでしたが『プロから教わった準備や質問ができた』『笑顔を引き出す撮影のコツが分かった』などの感想や、SNSに投稿された取材風景から上達の程度が分かりました」。初取材の喜びや、気づきの声を反映したエディターズボイスのコーナー枠からも〝市民を主役に〞の意図が伝わってくる。

取材後は先方校正、文章やデザインの細かな調整を何度も行い、半年かけて完成へ。「現物を見たい」「次はうちを取材して」など、様々なリレーションができ始めたという。「今回文章を書かなかった方々も進んで配布役を引き受けてくれて、役割分担ができたんですね。皆のものになったなと嬉しく感じました」。

その手応えを原動力に、現在は来年度末の発行を目指し2号目を制作準備中だ。「この媒体が〝まちにマジになる人を生み出していくきっかけ〞になれば。若者にどんどん参加してもらって地元に愛着と誇りを持ってほしいですね」。

自治体職員が積極的に周囲で協力してくれるパートナーを巻き込んでいければ、共感の輪や発信力は広がっていく。市民の主体性を育む「Watashi Omitama」は、シビックプライドを目覚めさせ、深めていく仕掛けとして魅力的な手本となりそうだ。

 


制作秘話 01

表紙は取材が終わったタイミングで開かれた中締めの食事会風景。市民クリエイターが営むカフェで、参加者の打ち解けた雰囲気が切り取られた1枚。


 

制作秘話 02

「小美たまネコ」ページ(右ページ画像)のチョークアートは、作業も大詰めになって参加者の1人が描いたもの。「いいものにしたい」気持ちが制作に向かわせたという。


 


ワークショップ「デザイナーと学ぶ、やさしいデザインラボ」について

“とにかく楽しむ”をテーマに、各回に情報発信のプロを迎え、全5回のプログラムを実施。
 

 >プログラム①小美玉の情報を整理する(令和元年10月18日)

 参加者が考える小美玉の魅力や特徴を整理し、デザイナーによる「デザインの基礎」講義を行った。
 

>プログラム②ひとへの伝え方を考える(令和元年11月22日)

 グループに分かれ、雑誌をコラージュ。一つの誌面を作り、情報をまとめる体験を行った。
 

>プログラム③取材方法を学ぶ(令和元年12月13日)

 ライター兼カメラマンから、取材に必要なことを学ぶ。参加者同士でインタビューを練習。
 

>プログラム④情報をまとめるための情報共有(令和2年1月14日)

 取材後初のワークショップ。レイアウトについての講義を受け、グループごとに報告。
 

>プログラム⑤情報を発信するためのテクニック(令和2年2月21日)

 PRコンダクターによるSNSを使ったPR方法、注意点を学び、全員の意見をまとめた。

 

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