ジチタイワークス

【セミナーレポート】Withコロナ時代で生き残るための “住民と自治体の新しいコミュニケーション様式”を LINE公式アカウントの活用で実現する!

「Withコロナ」時代に突入し、自治体は新しい課題を抱えている。地域住民とのコミュニケーションに制約が生じる中、行政サービスを届けるためにはどうすればいいのだろうか。解決方法の一つとして白羽の矢が立ったのが、市民にも馴染みの深いサービスである「LINE」だ。

課題を前に、自治体と事業者はどう協働し、課題を解決していったのか。WEBセミナーで語られた内容を元に解説する。


セミナー概要

LINE公式アカウントを使いこなす!「Withコロナで求められる行政と市民のコミュニケーション」Webセミナーより

□実施日時:9月4日(金) 14:00~15:30
□参加対象:自治体職員
□参加者数:349人
□当日のプログラム
Program01 基調講演①「コロナ禍における春日市のチャレンジ」
 講師:福岡県春日市 総務部 総務課 課長 神崎由美さん

Program02 基調講演②「LINE FUKUOKAが推進するスマートシティの取り組み」
 講師:LINE Fukuoka株式会社 Smart City戦略室 室長 南方尚喜さん

Program03 「自治体のLINE活用導入のポイント」
  講師:株式会社電通アドギア 未来デザイン室 地域デザイン・ラボ 木村貴光さん

Program04 質疑応答


Program01 基調講演①「コロナ禍における春日市のチャレンジ」

冷静な課題分析から見えてきた「本当にやるべきこと」とは?

コロナ禍は、“情報を得たい”という住民のニーズを増やし、同時に“密を避ける”という課題を生んだ。このジレンマに対して道を開いたのが、春日市とLINEによる取り組みだ。最初に登壇した春日市総務部の神崎さんの話をもとに、春日市のチャレンジを紹介していきたい。

<講師紹介>

福岡県春日市 総務部 総務課 課長 神崎 由美さん
令和2年8月下旬より、「春日市LINE公式アカウント」を開設。LINEを活用し、より多くの市民に暮らしに関わる情報や各種手続きに関する情報を発信している。

春日市は、福岡市の南東に隣接する住宅都市。約11万3,000人の住民に市から情報を伝達する手段は、市報、回覧板などのアナログ手法が中心で、メールやSNSといったデジタルでの発信は補完的な役割を担っていた。しかし、新型コロナの対応に追われる中で「従来の方法では限界があると実感した」と神崎さんは語る。

「春日市では、電話対応を中心とした総合窓口を設置し、土日も含めて稼動しました。『マスクが手に入らない』『給付金のことを詳しく知りたい』『会社の経営が立ち行かない』など問い合わせ内容は様々で、住民の方々の不安が伝わってきましたが、窓口のキャパシティにも限界があります。迅速に解決すべき課題があると感じました」。

神崎さんが感じた課題は、以下の2つだ。

(1)情報伝達手法の限界
電話と窓口での「人対人」による対応では、コロナ禍のような状況で住民のニーズに応えきれなくなる。大切なのは、知りたい人全員に等しく伝えること。

(2)住民の利便性の向上
住民が求めているものはそれぞれ異なる。市報などを通して市から情報を伝える“プッシュ型”ではなく、欲しい情報を必要な時に届けられる“プル型”の仕組みが必要。

 

これらを解決しなければ、「電話が繋がらない」「知りたい情報が届かない」といった住民のストレスをなくすことができず、市職員の負担も重くなるばかりだ。神崎さんは解決法を模索した。

「現場は懸命に対応していますが、つい“やれることはやっている”という思考に陥りがちです。コロナ禍のような未経験の事態に立ち向かうときにこそ“新しいことをやってみる”という思考の転換が必要だと思いました」。

その“新しいこと”の結論が、「LINE」を活用することだった。

庁内の意識をまとめ、承認から運用まで3カ月のスピード導入を実現!

LINE Fukuokaは、2018年度から福岡市とLINE公式アカウントを活⽤した様々な取り組みを推進してい る。春⽇市もLINE公式アカウントの活⽤を検討しており、デジタル化推進に向けての下地はできていた。 とはいえ、まずは庁内の合意形成をしなければならない。

幸い、市長は現状をふまえた上で理解を示し、庁内の意思統一も迅速に完了できた。LINEの担当者も熱意をもって春日市の要望に応え、市長の了承から3カ月という短期間で春日市LINE公式アカウントの運用が開始された。

春日市LINE公式アカウントは、以下の4メニューから成り立っている。

■防災情報
災害発生時、住民が必要な情報をすぐに得られるよう、避難所、ハザードマップ、気象情報などを網羅。

■行政情報
市が発信している情報の中で、個々の住民が欲しているものを自分で選択し、受け取ることができる機能。

■家庭ごみに関する情報
問い合わせの多い「ごみの分別」についてLINE内で調べられる機能。約1,500品目に対応している。

■公共施設の損傷報告
市内の危険箇所の早期発見を目的とし、公園の遊具、街灯、堤防などの損傷を発見した際に通報できる機能。



春日市LINE公式アカウントが運用を開始したのは令和2年8月31日。市報で3ページの特集を組むといった告知効果もあり、9月4日の時点で4,700人が友だち登録している。この数字に手応えを感じつつも、神崎さんはすでに次の動きを見据えている。「まずは好スタートを切りましたが、今後は効果の検証を行いつつPDCAサイクルを回し、先進自治体の事例も学びながら、機能を充実していきたいと考えています」。

また、情報弱者のことも忘れてはいけない。神崎さんは、今まで民生委員や地域の見守りなどで保たれていた「人対人」の絆がコロナ禍では禁じ手となったことに触れ、「社会的弱者に情報が届きにくいという大きな矛盾を解消するために、春日市LINE公式アカウントも含めて、希望する全ての人が情報を受け取れる仕組みを考えていきたい」と結んでくれた。

POINT

課題の冷静な分析

現在の手法による限界を見つめ、地域のために“今何をするべきか”を考える。その結果、“プル型の情報提供”が有効だと判断、LINEの活用という結論にたどり着いた。

マインドの転換

“やれることはやっている”から“新しいことをやってみる”と思考を切り替える。それにより、内向きの発想が外向きに変わり、外部の知見を求めることで突破口が見えてくる。


Program02 基調講演②「LINE Fukuokaが推進するスマートシティの取り組み」

「LINE Fukuokaが推進するスマートシティの取り組み」

ここからは、作り手の視点から自治体におけるLINE活用の可能性について紹介する。

<講師紹介>

LINE Fukuoka株式会社 Smart City戦略室 室長 南方(みなかた) 尚喜さん
福岡市を中心に推進する、LINEの技術を活用した未来志向のまちづくり「LINE Smart City」の事業責任者。

福岡市が自治体アカウントをリードできる理由

LINEは、令和2年9月時点で8千万人/月を超えるアクティブユーザー数を誇る、名実ともに国内ナンバーワンのコミュニケーションアプリだ。「若いユーザーが多い」と見られがちだが、南方さんは「LINEユーザーは40歳以上の方が半数を超えています。幅広い層に訴求できるツールだからこそ、自治体における有用性も高いのです」と強調する。

その言葉の通り、令和元年5月に無料化されたLINEの自治体アカウントは、すでに400を超える自治体が導入している。中でも突出しているのが、「福岡市LINE公式アカウント」だ。

福岡市とLINE、LINE Fukuokaの3者は、AIやFintechなどの先端技術を活⽤し、より豊かで便利な未来志向のまちづくりに向け共働して取り組むため、平成30年8⽉に包括連携協定を締結。LINE Fukuokaは社内に「Smart City戦略室」を⽴ち上げた。 ⽬的は、「LINEを活⽤して⾏政と市⺠の距離を縮め、コミュニケーションの活性化する」というコンセプトを基に、全国の⾃治体のモデルケースとなる事例を創出するためだ。

南方さんは立ち上げ時をこう振り返った。「福岡市は成熟した都市なので、ITでまちを変えるというよりも、現在のまちの在り方にITを持ち込むという手法を選びました。LINEを使って市民の生活をより便利にするという考え方です。代表的な例として“不燃ごみ”に関する機能が挙げられます」。

福岡市は、燃えないごみの収集日が月に一度しかない。このため、うっかりタイミングを逃してしまうということが起こりがちだ。この“困った”を無くすために、福岡市LINE公式アカウントでは事前通知をして捨て忘れを防止するという機能を備えている。

また、福岡市は地理的に黄砂やPM2.5の影響を受けやすい土地でもあるため、市民は飛散状況に敏感になっており、このニーズに応えるため公式アカウント上でPM2.5の値を知らせる。これら地域に合わせたオーダーメイドの機能が歓迎され、福岡市LINE公式アカウントの友だち数は約172万人(※2020年10⽉時点)までになった。福岡市の人口が約160万人であることからも、その人気ぶりがうかがえる。

福岡市LINE公式アカウントの主な機能

■生活情報
引っ越し、子育て、コロナウイルスなど、生活に関する情報をカテゴリー別に検索して調べられる機能。

■防災情報
災害発生時、住民が必要な情報をすぐに得られるよう、避難所、ハザードマップ、気象情報などを網羅。

■公共施設の損傷報告
市内の危険箇所の早期発見を目的とし、公園の遊具、道路、街灯などの損傷を発見した際に通報できる機能。

■行政情報
市が発信している情報の中で、個々の住民が欲しているものだけを選択し、受け取ることができる機能。

■家庭ごみに関する情報
「乾電池は何のごみに該当するのか」といった質問にチャットボットが回答する機能。etc.

インタラクティブな仕組みで“みんなでつくるアカウント”を目指す

これらの基本機能に加え、子どもの生年月日に応じた健診案内や、位置情報とリンクしたおむつ換えスペースの案内などの機能を拡張し、デザインも変更するなど定期的なアップデートも抜かりなく行っている。

この福岡市LINE公式アカウントが支持される理由について、南方さんは「LINEのスマートシティは市民参加型というコンセプトを持っています。福岡市LINE公式アカウントも、行政からの一方的な情報提示ではなく、市民がアクセスし、手続きや不具合の通報を行うことを通し、情報の行き来をみんなで作り上げていくものなのです」と解説してくれた。

粗大ごみの回収も、そんな“市民参加型”の一例だろう。福岡市の住民が粗大ごみを出したい時は、回収の申請、LINE Payでの支払い、回収番号の発行というプロセスを福岡市LINE公式アカウント上で完結できる。住民は発行された番号を白い紙に記入し、粗大ごみに貼って指定の場所に出せばいいという仕組みだ。すでに同市の粗大ごみ回収申請で4人に1人は福岡市LINE公式アカウントを経由しており、満足度は97%を超えているという。

また、こうした数字だけでなく、その動向にも南方さんは注視する。例えば、新型コロナが猛威を振るい始めた頃や、台風が接近している時などは、友だち数が増える傾向にあるという。この事実が、非常時には自治体の発信する情報が必要とされていることを如実に表しているのだ。

今秋から自治体に無償提供開始!「LINE SMART CITY GovTechプログラム」

地域のニーズに応え、着実にファンを獲得してきた福岡市LINE公式アカウント。LINEでは、この仕組みを作るプログラムソースを「LINE SMART CITY GovTechプログラム」と銘打ち、令和2年秋から無償提供する。これにより、各地域でのアカウント展開において、既存のプログラムが転用できるのでコストも時間も圧縮できるようになる。7月の発表直後から申し込みがあり、すでに数十件の事前登録を受け付けているという。

注目度も高いLINE SMART CITY GovTechプログラムだが、南方さんは「LINEを導入すれば完了というものではありません」と念を押す。「重要なのは、地域住民が何に困っているかを知り、それに寄り添っていくこと。そして、サービスを住民に知ってもらい、使ってもらうための広報活動です。そのためにも、自治体ではセクションを超えて横断的に取り組むことが必要になります」。

これらを総合的に成し遂げた結果が、福岡市の“友だち数172万⼈(※2020年10⽉時点)”ということだ。しかし、全ての自治体がそうした取り組みを成功させられる訳ではない。そんな時に頼れるのが、システムの導入から運用までを支えてくれる事業者だ。


Program03 「自治体のLINE活用導入のポイント」

次項では、自治体におけるLINEの活用をサポートする電通アドギア・木村さんの話を軸に、スムーズな導入の実現に向けたポイントを解説していく。

<講師紹介>

株式会社電通アドギア 未来デザイン室 地域デザイン・ラボ 木村 貴光さん
チーフ・プロモーション・ディレクター。自治体向け観光支援事業「チームビルディングツーリズム」リーダー。

自治体のリソース・経験値不足を補う心強いプロ集団

木村さんが所属する電通アドギアの「地域デザイン・ラボ」は、地域の観光支援、販売支援、情報プラットフォーム提供などを通して自治体を支援することを目的としたチーム。様々な自治体へソリューションを提示してきた専門家の目から見ても、「今や情報発信にLINEは欠かせない」と語る。「メジャーなSNSの中でも、LINEの優位性は一目瞭然。スマホユーザーの82.5%という利用率、LINEだけでリーチできるユーザー数、自治体は無償でアカウントが利用できるという点、総合的に見てこれを利用しない手はありません」。

ただし、自治体で問題となるのはリソースと経験値だ。「運用まで手が回らない」「友だち登録数の増やし方が分からない」「メニューはどう構成すれば使いやすいのか」など、様々なハードルがあり、これらをクリアしなければLINEのポテンシャルも十分に発揮できない可能性がある。そういった際に頼れるサービスとして生まれたのが、同社の「Smart City Gear(以下、スマートシティギア)」だ。

地域オリジナルの自治体アカウントを作って「Withコロナ」時代で生き残る!

スマートシティギアは、前述の福岡市LINE公式アカウントをベースに作られている。すでに多くの試行錯誤を繰り返し、住民の声に応え、改良が重ねられたシステムなので信頼性も使い勝手も十分。その上で、同社による運用サービスもパッケージされている。
 

スマートシティギアが提供するサービスの一例

■オリジナルデザインの制作
■友だち登録数アッププロモーション
■市民への告知・導入誘導ツールの制作
■定期的な市民アンケートの実施
■導入後の効果検証
■先行自治体の成功事例の共有
■新しいプロモーションの開発 etc.

 

これらのサービスは自治体の要望に合わせて設計される上、今後もさまざまな機能の追加が予定されている。パッケージは廉価版のミニマムコースから、機能をフルラインナップしたアドバンスコースまで4コースが用意されており、自治体に合わせた個別仕様にも応えてくれる。木村さんは「導入前のアドバイスから、導入時のフォロー、運用中と、全サイクルにわたってサポートします。LINEの持つ可能性を最大限に引き出すこのサービスを、地域のコミュニケーションに役立てていただければ」と期待を寄せていた。

自治体でのLINE活用に関する詳しい情報・お問い合わせはこちらまで!
https://smartcity-gear.jp/


参加者とのQ&A ※一部抜粋

Q.議会への説明はどのように行いましたか?理解はスムーズに得られましたか?
A.当初の予算には計上していなかったので、市長の承認を得て導入が決まった後、「公式アカウントがスタートします」と委員会で報告しました。議会からは特に反発はなく「頑張ってください」とエールをいただきました。(神崎さん)

Q.チャットボットの運用について。自治体の所轄課は分かれていますが、それぞれの課でチャットボットが回答する内容のメンテナンスを行うことは可能ですか?
A.可能です。所管課ごとにチャットボットのシナリオがあります。実際、福岡市では課ごとにメンテナンスを行い、個別にアップデートしています。(南方さん)

Q.福岡市で運用されている、LINE Payとの連携サービスはオプションですか?
A.現状はオプションです。粗大ごみの回収手数料などは、少し個別の開発を加え、⾃治体内の精算フローが整理ができればLINE Payでの⽀払い機能が導⼊できます。東京都で実施している一部税金のLINE Payによる支払いのように、⾃治体様が契約している回収代⾏の事業者と連携できれば収税も可能になります。(木村さん)

New Topics 記事一覧

このページをシェアする
  1. TOP
  2. 【セミナーレポート】Withコロナ時代で生き残るための “住民と自治体の新しいコミュニケーション様式”を LINE公式アカウントの活用で実現する!