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【セミナーレポート】 “自分たちで庁内システムをつくる”という選択  ~ノーコードを活用した業務改善事例のご紹介~

9割を超える自治体が導入済みといわれるグループウェア。豊富な機能を搭載した便利なサービスが世にあふれていますが、庁内では機能の一部しか活用できておらず「せっかく導入したのに」「どうやって広げればいいのか」と悩む担当者も多いようです。
今回のセミナーでは、ノーコードツールを内蔵したグループウェア「desknet's NEO」を活用し、庁内一丸となったDXを展開する自治体の事例を共有。さらに同サービスを提供するネオジャパンの担当者が、ノーコードツールの活用を広げる工夫を紹介しました。

概要

■タイトル:“自分たちで庁内システムをつくる”という選択~ノーコードを活用した業務改善事例のご紹介~
■実施日:2025年6月24日(火)
■参加対象:自治体職員
■開催形式:オンライン(Zoom)
■申込者数:186人
■プログラム:
 第1部:庁内の事務を効率化し、楽にしていくために取り組むこと
 第2部:身近な業務をノーコードで改善!ツール活用のポイントとは?

庁内の事務を効率化し、楽にしていくために取り組むこと

セミナーの前半は島根県大田市の職員が登壇。職員全員が参加し、“住民も、職員も楽になる”を目標とした業務改善について、ノーコードツールの活用を軸に進めた取り組みの内容を3つのテーマに沿って解説してくれた。

[講師]
柿本 将人 氏
大田市
政策企画部 情報企画課 デジタル行政係長

プロフィール

自治体DX担当3年目。オンライン申請の普及、窓口のデジタル化といった市民も職員も楽になる市役所を目指して、業務改善に取り組んでいる。

 

市が掲げた“職員の理想像”と、それを実現するための施策について。

大田市の柿本です。今回は表記のテーマに沿って、当市の取り組みについて紹介します。少しでも参考になれば幸いです。
まず、大田市の目指していることについて。
職員になってほしい姿として、“様々な課題を職員一人ひとりが解決する”、“市民も職員も楽になる行政サービスを行う”、そして“将来を見据えた市全体の課題解決に向けて取り組む”、という3項目を掲げ、これらを実現するために庁内の事務を効率化し、職員の余力と職員同士のコミュニケーションの時間を作りつつ、市民と対話する時間を生み出す。これにより改善を生み出したいと考えています。

続いて、推進体制について紹介します。
当市では副市長を本部長とした情報化対策本部を設置し、情報化対策委員会がその下にあり、さらに若手職員でプロジェクトチームを構成。別枠として、3年前からDX推進員の制度を設け、各課の補佐・係長級が活動しています。

プロジェクトチームは、新しい市役所の働き方を考えることをテーマとし、様々な議論ができればと立ち上げました。これまで、職員が市民役になって窓口で手続きをする窓口体験調査の主導や、Googleワークスペースを使った業務のトライアルなどを進めています。まだ具体的な実績はないのですが、若手の職員たちと一緒に、少しでも前進するための取り組みを行っているところです。

グループウェアとノーコードツールのフル活用で住民にも職員にも恩恵を!

続いて、推進の取り組みについて。当市で進めていることについて、3つのテーマで説明します。
1つ目は、グループウェアを活用した庁内事務の効率化です。「desknet's NEO」を採用し、ここに庁内事務を集約する形で業務を進めています。PCがあればどこでも業務ができるという姿を目指しており、ほとんどの職員に無線PCを整備。庁内や出先機関でも利用できるようにしています。
また、電子決済システムも令和4年から導入しており、全職員がPCだけで業務ができる環境が整いつつあります。出先の職員も含めて大半の職員が使えるようにしているので、年々問い合わせなどが減っている状況です。

ノーコードツールによる自前アプリの作成・活用も進んでいます。AppSuiteというサービスを活用し、庁内事務の効率化を進めているところで、情報企画課では、情報システム関係の申請や、PCの新規配布といったものを同サービスで行っています。
さらに、各課の申請でも活用しており、庁内申請メニューを新たに増やしているところです。AppSuite学習会なども開催して活用を促しています。

活用後の変化としては、問い合わせの減少が一番大きいと感じています。仮に問い合わせがきても、「ここを見たら分かる」という説明で伝わるようになっており、職員の負担軽減にもつながっているようです。現時点では100業務以上のアプリが作成されており、まずは気軽に作って使ってみましょうと周知しています。

2つ目は、オンライン申請の推進です。
こちらもAppSuiteを活用した、庁内申請の内製化です。令和6年度から島根県で共同利用しているオンラインシステムが利用しやすいものに変わったので、情報企画課が作成支援をしつつ手続き数を増やすことに取り組んでいます。

また、当市では住民票のコンビニ交付が未実施なので、昨年度から市民課の職員と一緒にオンライン申請を構築。がん検診の予約についても、電話問い合わせ対応や通知の送付が大変だという話を聞き、自前で作成しました。職員が課題だと思ったところを自ら直していく取り組みが進んできたと感じています。次は何を考えようかと、情報企画課の担当とも話をしているところです。

3つ目の取り組みは、職員研修の実施です。令和5年度から実施しており、一番重視しているのは市長を含めた幹部職員向け研修です。他にも以下の通り、様々なアプローチから研修を実施しています。

こうした研修を通し、業務改善の相談が増えています。その全てに対応はできないのですが、気軽に悩みやアイデアを共有できるよう考えて、できるだけ一緒に作っていけるようにしています。

今後の展望としては、引き続きAppSuiteを中心としたアプリの拡充を図っていきたいと考えています。まずは全職員が気軽に業務改善できる体制になること、そして改善への気づきができる組織づくりが大切。研修も継続していきたいと思っています。

加えて、来庁しなくてもできるオンライン申請の拡充です。本年度は、全庁の手続きの状況把握を予定しており、その中で多く申請があるものを優先してオンライン化したいと考えています。

これらの結果として、“市民も職員も楽になる”という状態を目指し、標準化対応後も見据えつつ取り組みを進めています。

 

身近な業務をノーコードで改善!ツール活用のポイントとは

後半は自治体の業務改善を支援する事業者からの情報提供。ノーコードツールを内蔵したグループウェアの全体像と、具体的な活用方法、自治体における事例など、すぐに業務で活かせる知見とアイデアが共有された。

[講師]
岡部 永遠 氏
株式会社ネオジャパン マーケティング統括部

プロフィール

営業職を経て、現在はマーケティング職に着任。主にセミナーを通じた製品のプロモーションを担当している。

 

グループウェアが浸透しない課題と、それを乗り越えるためのツール。

今日、皆さんにまずお伝えしたいのは、業務改善がもっと身近に、“自分たちの手で改善できる”、という点です。これまで、「紙の申請書を電子化したい」「Excelの集計をラクにしたい」といった現場の声があっても、「情報システム部門などの詳しい人に担当してもらうもの」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。ですが、今日ご紹介する“ノーコードツール”を活用すれば、現場の職員が自分たちで、改善できます。
当社はビジネス用のコミュニケーションツールを自社で開発・販売しており、主力製品はグループウェアの「desknet's NEO」、ノーコードツールの「AppSuite」、ビジネスチャットの「ChatLuck」の3製品です。
自治体においても多数の導入実績があり、全国19の都道府県庁を始め、各地の市役所、役場などでご利用いただいています。今回は、ノーコードツールを活用した改善事例を紹介します。


業務効率化や、情報共有の手段として、多くの自治体でグループウェアが導入されています。そうした中、利用の実態が予定の確認やお知らせの閲覧などにとどまり、機能が十分活かされていないケースも。背景には、グループウェアの機能が庁内の細かな業務に合致しづらい、現場のITリテラシーの問題、情シスの人手不足などが挙げられます。こうした状況だと、業務改善も進みません。

そこで注目されているのが、専門知識がなくても職員が業務に合わせたアプリを作れるノーコードツールです。desknet's NEOはグループウェアの中にノーコードツールが内蔵されており、グループウェア利用の延長線上で庁内業務を支える業務アプリを広げていくことができます。基本操作はドラッグ&ドロップ。ITに詳しくない方でも簡単に作成できるので、情報システム部に依頼しなくとも、現場の職員自身で業務改善を進められる点が特徴の1つです。


ノーコードツールの活用事例として、例えば民間企業信用調査依頼書、住民相談の履歴管理、館林市役所の市民の声を集めるアプリ、八女市役所での庁内PCの管理アプリなどがあげられます。当社のツールはデータを集約するアプリを作ったり、申請書を作ってワークフローとしてまわしたりと、様々な用途で利用できるのが特徴です。

照会業務、申請業務での活用事例と、職員が得られたメリットについて。

ここからはノーコードツールを活用した具体的な改善例を紹介します。最初に紹介するのは、照会業務です。
ある自治体では、研修受講者の管理をする際、各課にExcelファイルを添付してメール送付し、参加者名や受講コースを記入して返信してもらう方法をとっていました。この場合、ファイルをとりまとめる作業が必要で、集計や進捗確認に手間がかかります。


現在はノーコードツールを使って、参加者情報を記録するアプリを作成。各課が同時に入力できるようにしています。スムーズな運用が定着したポイントは3つあります。
1つ目は、入力された情報を一覧で確認でき、集計もできるという点。2つ目は、管理者と回答者で表示情報を切り分けられる点。3つ目は、選択内容によって入力欄をだし分けできる点です。現場の負担も、ノーコードツールなら手軽に改善できます。

次に紹介するのは、申請業務の事例です。
こちらの自治体では、ワードやExcelで作成した申請書に記入し、印刷、回覧、押印という流れで処理していました。また、情報システム部門が管理している専用のワークフローシステムを使っている場合もあり、申請書を変更・追加したい場合は都度依頼や確認が必要でした。


そこで当社のノーコードツールを導入。管理者権限のもとで担当課が自ら申請書を作成でき、編集も可能なので、より迅速な申請業務を実現しています。職員が作成した見栄えの良い伺い書フォームが活用され、上図の通り細かい工夫も施されています。

こうした事例で現場担当者が自ら改善に取り組んでいけるのはなぜか、主な理由となるのは下記5つです。
 

このような仕組みにより、属人化の防止や過去データの有効活用が実現できます。

身近な業務での成功体験で、庁内でのIT活用はどんどん加速する。

ここまでノーコードで何ができるのかをご紹介してきましたが、実際、現場で作ったアプリを“一部の人だけが使う” 状態になってしまうと、せっかくの取り組みが定着しません。ここからは、作ったアプリを庁内でどう活用していくか、広げ方や工夫を紹介します。
ポイントは庁内での共有と、スモールスタートです。照会業務のような簡単なアプリを1つ作って、複数人で使ってみることをオススメします。庁内での勉強会の開催や、各課から1人ずつ集めたチームで横断的に改善を進めるといった工夫もできます。こうした取り組みの中で、「自分にもできるかも」という雰囲気が広がり、結果的にデジタル人材の育成にもつながるのです。

ご紹介した業務以外にも、“その課ならではの業務”があると思います。例えば、共有備品の管理、ヒヤリハット共有など、答弁管理アプリなど、現場で独自に行っている業務
──こうしたものにも、ノーコードツールは対応できます。それぞれの課が“自分たちの業務に合ったアプリ”を自分たちで作成できるので、「どうすれば業務がもっと効率化されるか」を考えながら、自然と“デジタルを使いこなす力”も身についてきます。それでもハードルが高いと感じる方にも安心していただけるよう、当社では様々なサポートを用意しています。初期設定や各機能の使い方を解説する「Let’s study Appsuite」や、導入事例・ノウハウがまとめられた「みなとデスクネッツ」というメディアもご用意しています。初めての方でもひとつずつ手順を確認しながらアプリ作成に取り組めます。さらには専任のスタッフがヒアリングの上、業務内容を整理しながら、実際のアプリ化、システム化までを一緒に支援したり、代行したりすることも可能です。

ご紹介しました、当社製品は、クラウドだけでなくオンプレミスでもご提供が可能です。
自治体様では、セキュリティ要件に応じて庁内サーバー上での運用を希望されるケースも多いため、仮想基盤やIaaS環境への構築など、柔軟に対応しています。こうした対応の幅の広さも、実際に導入を進めやすい理由のひとつです。

最後に、間もなくリリース予定の新機能について。
desknet's NEOに生成AIアシスタント機能が実装されます。将来的にこの生成AIアシスタントはグループウェア内の庁内データを活用し、必要な情報を瞬時に引き出せるようになります。外部漏えいの心配がないセキュアな環境でRAGを実装可能です。ぜひご期待ください。
 

お問い合わせ


ジチタイワークス セミナー運営事務局
TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works

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